日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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40 巻, 1 号
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  • 河野 美江, 戸田 稔子, 脇田 邦夫, 高橋 正国, 入江 隆, 紀川 純三, 寺川 直樹
    2001 年 40 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:10代女性の子宮頸部擦過細胞診における異常例の頻度とその背景を知ることを目的とした.
    結果:松江生協病院産婦人科を受診した10代女性164例に対し子宮頸部擦過細胞診を行った. クラスIIIa以上の細胞診異常例は12例 (7.3%) にみられ, 11例がクラスIIIa, 1例がクラスIIIbであった. 細胞診異常例12例中4例が妊娠例であり, 性行為感染症が7例にみられた. 追跡が可能であった10例中7例では, 7~84ヵ月の間に細胞診判定が正常化した. クラスIIIbであった1例は子宮頸部円錐切除術で高度異形成と診断された.
    結論:細胞診異常例が高率にみられたことから, 10代であっても子宮頸部擦過細胞診を行うことが重要であると考えられた. また, 細胞診判定に際してはsexual activityが高い例では性行為感染症を含む炎症性変化に注意が必要であることが示された.
  • 笹川 基, 西川 伸道, 塚田 清二, 本間 滋, 高橋 威, 佐藤 由美
    2001 年 40 巻 1 号 p. 4-8
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:子宮体癌の診断における子宮頸部細胞診の意義解析を目的とした.
    方法:子宮体癌184例を対象とし, 子宮頸部細胞診での内膜癌細胞出現率, および出現率と関連する諸因子について解析した.
    成績:(1) 術前の子宮頸部細胞診成績は, class III21例, class IV5例, classV55例であり, class III以上の症例は81例 (44.0%) であった.(2) 臨床進行期が進むほど, また不正性器出血のない症例で有意に陽性率が高かった. 組織型, 組織学的分化度, 未産/経産, 閉経, 腹腔細胞診と陽性率との間に有意な相関はなかった.(3) 再検鏡可能な50例で, 正常子宮内膜細胞の出現について検討した. 12例 (24.0%) の子宮頸部細胞診で正常子宮内膜細胞が観察された (月経1~13日目1例, 月経14日目以降1例, 閉経期8例, 不明2例).また, 8例では腫瘍性背景が認められた.
    結論:子宮頸部細胞診の本質的意義は子宮頸部病変の発見にあるが, 半数近くの症例で子宮体癌発見のきっかけとなりうることが判明した. また, 閉経期などに子宮頸部細胞診に出現する正常子宮内膜細胞や腫瘍性背景も, 子宮体癌を診断する上で重要な参考所見であると考えられた.
  • 中村 充宏, 今村 好章, 山口 直則, 河田 尚子, 中山 啓三, 中島 徳郎
    2001 年 40 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮頸部扁平上皮癌の1亜型である子宮頸部乳頭状扁平上皮癌 (Papillary squamous cell carcinoma: PSCC) の2例について報告する.
    症例:症例1は69歳女性で, 子宮頸部より外向性に発育する径5cmの腫瘍を, 症例2は47歳女性で, 子宮頸部より乳頭状に発育する径4cmの腫瘍を認めた. 細胞診ではどちらの症例でも乳頭状に増生する小型類円形の異型細胞を認めた. 核分裂像が散見され, 乳頭内には血管を含む間質成分がみられた. 核異型は症例1では軽度, 症例2では中等度から高度であった. また, 症例2では扁平上皮異形成類似の大型空胞細胞や移行上皮癌類似の細胞も認められた. 組織学的にはどちらの腫瘍も十数層の異型細胞の乳頭状増生からなり, 間質には, 線維性血管芯を有していた. 免疫組織化学的に腫瘍細胞はCytokeratin 7 (CK7) 陽性, CK20陰性であり, 通常の子宮頸部扁平上皮癌と同様の染色性を示した. Human papillomavirus (HPV) 感染の有無について検索したが, どちらの症例も陰性であった.
    結論:PSCCの細胞像は多彩であるが, 細胞所見を十分に理解し, 臨床所見を加味することによりPSCCの診断は可能と考えられた.
  • 松浦 祐介, 田中 真由美, 柏村 正道, 白幡 聡
    2001 年 40 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:ヒト免疫不全ウイルス (human immunodeficiency virus: HIV) 感染婦人に子宮頸部上皮内腫瘍の検出率が高いことや浸潤子宮頸癌を合併する頻度が高いことが海外の文献で報告されているが, 本邦での報告はいまだきわめて少ない. 今回われわれはHIV陽性女性に発生した子宮頸部異形成の1例を経験したので報告する.
    症例:31歳, 日本人女性. 夫が血友病で非加熱血液製剤の投与を受けHIVに感染し異性間の性的接触により感染した. 1996年4月 (28歳時), 妊娠したため当院小児科より紹介初診となった. 初診時の子宮頸部擦過細胞診でmilddysplasiaを疑われた. コルポスコピーでは異形成が疑われ, 子宮頸部生検でmild dysplasiaと診断された. 妊娠についてはcluster of differentiation (CD) 4陽性細胞数の低値など免疫状態を考慮し, 人工妊娠中絶術を施行した. その後当科外来で経過観察となったが, 途中子宮頸部の擦過細胞からpolymerase chain reaction-restriction fragment length polymorphism (PCR-RFLP) 法によりhuman papillomavirus (HPV) DNAが検出された. 31歳時に再び妊娠し, 1999年12月 (妊娠36週) に選択的帝王切開術を施行し, 健児を得た. 分娩後2ヵ月目の子宮頸部擦過細胞診・コルポスコピーに所見なく, HPVDNAも陰性であった. また, HIV感染の病状も安定している.
    結論:HIV陽性女性においては定期的に子宮頸癌検診を行う必要があり, また, HPVを含めてsexually transmitted disease (STD) の検索も必要である.
  • 中原 裕子, 栢尾 純子, 斉藤 忠, 石井 譲, 外丸 和弘, 田丸 淳一, 武田 敏, 三方 淳男
    2001 年 40 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮頸部擦過細胞診で悪性腺腫 (Adenomamalignum) が示唆された2症例を経験したので報告する.
    症例:症例1は48歳, 症例2は41歳, ともに経産婦で帯下の異常を主訴に来院した. 症例1, 2ともに頸部は腫大し, 画像診断で腫瘤病変並びに多嚢胞形成がみられた. 両者ともCA125の上昇を認めたがその他検査値には異常を認めなかった. 子宮頸部i擦過細胞診では多量の粘液を背景に, 細胞質内に黄~黄緑色の異常粘液を含む異型細胞の出現をみた. 核は基底部に位置しクロマチンは細頼粒状融解状で, 核内にはときに著明な核小体を認めた. 粘液による核の圧排像も観察された. 臨床からの詳細な情報の提供とこれら細胞診所見より悪性腺腫が示唆され, 円錐切除組織診にて診断が得られ, 摘出手術が施行された.粘液染色では症例1, 2ともPAS染色は強陽性なのに対し, ALBやHID-ALB染色では染色性の低下がみられた. HIK1083は症例1, 2ともに陽性を示していた.
    結論:細胞異型に乏しいとされる悪性腺腫は, 臨床所見や特殊染色の結果を考慮することで診断が可能と思、われた.
  • 増田 隆夫, 工藤 圭美, 桑原 淳, 石川 由起雄, 赤坂 喜清, 秋嶋 由里, 岡部 一裕, 木口 英子
    2001 年 40 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:卵巣甲状腺腫性カルチノイドは, 比較的まれな腫瘍であるが, われわれは本腫瘍の捺印細胞診を観察し, さらに捺印標本の免疫組織化学を施行し得た症例を経験したので, その細胞像および捺印細胞診の有効性について報告する.
    症例:64歳の女性.下腹部膨満感を主訴とし, 腫瘍マーカーは, CA125 43U/ml, CA19-942.6U/mlと若干の上昇を認めた.画像診断で, 成熟型奇形腫が疑われ開腹手術を施行.左卵巣腫瘍は成熟型奇形腫, 右卵巣腫瘍は甲状腺腫性カルチノイドと診断された.右卵巣腫瘍の捺印細胞診では, 小型で, 細胞質の狭いほぼ均一大の腫瘍細胞ロゼット状, 索状, あるいは濾胞状に配列し, 背景には, 好酸性の無構造物質が出現していた.これら腫瘍細胞はところによっては軽度の重積性があるが, 多くはゆるい結合性を示していた.また, 捺印標本の免疫組織化学では, これら腫瘍細胞の一部にchromogranin Aが陽性であった.上記の細胞所見より卵巣甲状腺腫性カルチノイドと考えられた.病理組織所見でも同診断が支持された.
    結論:卵巣腫瘍の捺印細胞診は, 腫瘍診断の一助となり, 免疫組織化学の併用は確定診断に有用と思われた.
  • 松井 成明, 宮永 茂樹, 河原 亜紀, 北村 隆司, 滝本 雅文, 塩川 章, 太田 秀一
    2001 年 40 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:原発性肺癌の中の神経内分泌腫瘍としては, カルチノイドや小細胞癌が挙げられる.しかし, 以前から形態的および生物学的にこれらの中間に位置する腫瘍が指摘されていた.現在のWHO分類ではlarge cell neuroendocrine carcinoma (以下, LCNEC) が新たに独立している.われわれは2例のLCNECを経験したので報告する.
    症例:症例1は68歳, 男性, 左肺上葉に8.5×5.0cm大の腫瘤が, 症例2は71歳, 男性, 右上葉に1.5×1.1cm大の腫瘤を認めた.これらの細胞像は'ロゼット様構造を含む大小の細胞集団や線状集団が出現していた.腫瘍細胞の多くは類円形から紡錘形で, N/C比は高く, ライトグリーンに淡染性あるいは砂粒状の細胞質を有していた.また, 核は類円形で中心に位置し薄い核膜と繊細なクロマチンが観察された.背景には多数の壊死を認めたが, 核線の出現はわずかであった.
    結論:本例の細胞像は, 従来から報告があるように腫瘍細胞の大きさ, 核形および細胞集団のそれぞれに同様の所見が認められた.また, 菲薄な核膜と繊細なクロマチンを有した類円形核や背景における核線の有無に留意することも必要と思われた.
  • 清水 進一, 浅野 正宏, 山田 哲司, 澤木 由里香, 山田 真人, 赤澤 康弘, 坂田 ふみ子, 小林 寛
    2001 年 40 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:好酸性砂粒細胞性腫瘍はまれな唾液腺腫瘍で, その細胞所見に関する報告は少数にすぎない.右耳下腺に発生した好酸性腺腫の1例を経験したので, その特徴的な細胞像, 組織像および電顕像を報告する.
    症例:70歳, 女性. 右耳下腺部腫瘤を主訴に当院を受診し, 腫瘍切除術を受けた.捺印細胞標本では, ライトグリーンに好染する豊富な細砂粒状の細胞質を有す腫瘍細胞が孤在性あるいは種々の大きさの上皮性結合を示す細胞集塊としてみられた.核は類円形で明瞭な核小体をもつものもみられたが, 明らかな核異型や核分裂像は認められなかった.組織学的にも細胞診と同様の腫瘍細胞が一部腺管形成を伴う胞巣状の増生を示すが, 浸潤性増殖は認められなかった.電顕的には細胞質を充満するように多数のミトコンドリアが認められた. 以上の所見から好酸性腺腫と診断した.
    結論:細胞診的にも特徴的な細胞所見から好酸性砂粒細胞性腫瘍の推定は可能であるが, 腺腫と腺癌の鑑別は時に困難なこともあり, 詳細な組織学的検索が必要であると考える.
  • 河原 明彦, 横山 俊朗, 安倍 秀幸, 山口 知彦, 杉島 節夫, 原田 博史, 鹿毛 政義, 伊豆丸 慎介
    2001 年 40 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:唾液腺導管癌 (salivary duct carcinoma: 以下SDC) は主に耳下腺に好発するまれな唾液腺腫瘍であり, SDCの細胞像に関する報告は少ない.われわれは耳下腺原発SDCの1例を経験し, 捺印細胞診を用いて詳細な細胞観察を行い, その細胞学的特徴を報告する.
    症例:71歳の男性で, CT, MRIにて右耳下部に約5.0×2.5cmの辺縁不整な腫瘤が認められた.術中迅速時に作製した捺印細胞診標本では, 多量の壊死物質を背景に, 大型で軽度重積性を伴うシート状集塊と豊富な細胞質を有する多稜形細胞が孤在性に出現していた.腫瘍細胞は円柱状から多稜形細胞など細胞質形態に多彩性を有しており, しばしば核内封入体や細胞質内空胞が観察された.組織学的には, 嚢胞状, 充実性, 乳頭状や飾状構造などさまざまな増殖形態を示していた.腫瘍細胞は多稜形細胞や円柱状細胞の他に, アポクリン様の特徴を有した細胞もみられた.
    結論:SDCは細胞形態的に粘表皮癌, 好酸性腺腫および好酸性腺癌や転移性腺癌との鑑別が必要である.そのため, SDCの存在を認識し, 細胞の大きさや細胞形態および細胞質染色性の多彩性に着目した細胞観察が重要である.
  • 鶴田 誠司, 野本 豊, 新保 千春, 根岸 春美, 飯島 美砂, 小島 勝, 城下 尚, 鈴木 豊
    2001 年 40 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:蛋白濾出性腸症を伴う腸管T細胞性リンパ腫enteropathy type intestinal T-cell lymphoma (ETCL) はWHO分類で独立した亜型として取り上げられているが, 本邦ではまれな疾患である. 今回その1例を経験したので報告した.
    症例:51歳, 男性.下肢浮腫, 低蛋白血症を主訴とし来院. 十二指腸に潰瘍を伴った腫瘍を認め外科にて手術施行.T細胞性悪性リンパ腫の診断にて化学療法, 放射線治療を行うも全身状態は悪化し, 永眠された.
    捺印細胞所見は反応性の組織球を背景に, 中型から大型の細胞が単調に出現していた. 分裂像が散見された.核は類円形でくびれや脳回状を示すものも認められた. クロマチンは粗で点状に凝集していた. 核小体は明瞭な核縁に付着するように数個認め, 胚中心芽球に類似した. Giemsa標本では, 細胞質は塩基性で, アズール顆粒を認めた.
    免疫組織化学およびin situ hybridizationによりcCD3, CD56陽性, EBER陰性であった.
    結論:ETCLは予後不良であり, 急速な経過をとることもあり, 迅速な診断が要求される.多数の抗体を用いたマーカーの検索ができない場合でもGiemsa標本において細胞質内にアズール顆粒を認めることにより, ETCLを推定でき, 正確かつ迅速な診断につながると考えられた.
  • 田中 義成, 神原 昭吉, 吾妻 康次, 下川 功, 岸川 正大
    2001 年 40 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:アポクリン癌の形態を示した非浸潤性乳管癌の症例を経験したのでその細胞像を記載し, 特に良性アポクリン化生細胞との鑑別について文献的考察を加え報告する.
    症例:74歳女性で, 主訴は右胸痛であった. 穿刺吸引細胞診では, 背景に壊死様物質が多量にみられ, 細胞採取量は豊富であった. 細胞集塊の結合性は弱く, 重積性があり, 細胞集塊の辺縁, 細胞境界は不明瞭であった. 細胞質は細穎粒状~泡沫状で, 一部はエオジン好性を示していたため, アポクリン癌が疑われた. 摘出標本の組織診では非浸潤性乳管癌であり, アポクリン化生部分が優位を占めていた.
    結論:細胞像による良性アポクリン化生細胞とアポクリン癌細胞の鑑別に特に有用な所見は, 細胞集塊の結合性, 重積性, 辺縁, 細胞境界と考えられた. 組織学的にアポクリン化生は良性病変の指標と考えられる場合があるので, 細胞診による鑑別は重要である.
  • 森 裕二, 品川 俊人, 木村 文一, 鈴木 文子, 南出 めぐみ, 吉元 真, 水口 國雄
    2001 年 40 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:前立腺のまれな腫瘍である神経内分泌癌: Neuroendocrine carcinoma (以下NEC) を経験したので報告する.
    症例:患者は78歳, 男性, 頻尿を主訴に来院した. 前立腺針穿刺組織検査で高分化腺癌が認められた. 尿細胞診においても腺癌を疑う異型細胞がみられた. 治療を開始し経過観察を行った. その後尿細胞診では異型細胞の出現は認められなかったが, 3年5ヵ月後に排尿困難を訴えTURを施行, 組織学的に一部腺癌を含むNECが認められた. ほぼ同時に施行された尿細胞診では腺癌由来の細胞は認められなかったが, 小型でN/C比が高く, クロマチンの増量した裸核状異型細胞が小集塊, 孤立散在性, また一部ではインディアンファイル状配列を呈して認められ, NEC由来の腫瘍細胞と診断した. 免疫組織化学的にNECはneuron specific enolase (NSE), synaptophysin, chromogranin Aが陽性であり, 腺癌部分ではprostatic specific antigen (PSA), prostaticacid phosphatase (PAP) が陽性であった.
    結論:尿細胞診スクリーニングにあたっては腺癌の既往歴を有してもNEC細胞が出現する可能性のあることを考慮することが重要と思われた.
  • 南 利江子, 西川 裕子, 大矢 美香子, 塚本 龍子, 橘 真由美, 埴岡 啓介, 前田 盛
    2001 年 40 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:膀胱原発悪性腫瘍の0.5%以下ときわめてまれな神経内分泌癌の, 自然尿中における細胞 学的特徴について検討した.
    症例:過去5年間に神戸大学医学部およびその関連病院で経験した4例 (男性1例, 女性3例, 平均年齢64歳) を対象とした. 全例に血尿を認めた.(尿細胞診所見): 症例1~3ではリンパ球よりやや大きなN/C比大の小型腫瘍細胞が, 孤立散在性あるいは結合性の比較的緩い小~ 中型の集塊を形成して出現していた. 核型は類円形~多稜形 (不整形), 核小体は不明瞭, クロマチンは細穎粒~穎粒状, 融解状で増量していた. 対細胞形成, 木目込み配列, indianfile状およびロゼット様配列が観察されたが, 集塊の辺縁は不規則でほつれ状態であった. 症例4では腫瘍細胞は小型でほぼ均一な円形~類円形, クロマチンは胡麻塩様細穎粒状, 核小体は比較的明瞭で核圧排所見に乏しいなどの特徴が認められたが, その他の所見は症例1~3と同様であった.(病理組織所見): 症例1~3は肺の小細胞癌にきわめて類似し, 症例4は好酸性細穎粒状の細胞質, 明瞭な核小体, 円形~類円形核を有するほぼ均一な小型腫瘍細胞がシート状に増生していた. 4例とも好銀穎粒陽性で, 免疫組織化学, 電顕的検索にて神経内分泌癌と診断された.
    結論:尿細胞診においてもその細胞学的特徴は良く保持されており推定診断は可能と考えられ, selectivehighriskscreeningとしての尿細胞診の有する意義は大きいと考えられた.
  • 山本 智子, Kiyotaka WAKUI, Toshiko KANAMURO, Yuji NONAMI, Noriyuki SHIBATA ...
    2001 年 40 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Background: Malignant pheochromocytoma cytology is reported in a very rare case showing morphologic alteration and increased proliferation following onset.
    Case: A 59-year-old man diagnosed with pheochromocytoma eventually died of repeated tumor recurrence over a period of 34 years. Histologically, tumor cells became small and uniform with decreasing granular cytoplasm and higher indices of cell proliferation and death one year prior to the patient's death. Stump specimens from a tumor at autopsy showed small tumor cells with prominent nucleoli and faintly granular cytoplasm. Some cells exhibited nuclear inclusion. Anisonucleosis was not conspicuous and occasional mitotic figures were seen.
    Conclusion: Cytological findings in our case are representative of malignant pheochromocytoma with high growth. Occasional mitoses and the small, uniform appearance of tumor cells may help in cytologically diagnosing malignancy in pheochromocytoma.
  • 羽場 礼次, 小林 省二, 三木 洋, 串田 吉生, 竿尾 光祐, 野間 勝之, 矢野 好人, 山川 けいこ
    2001 年 40 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:大網原発の悪性GISTは非常にまれな腫瘍で, その細胞学的な報告は文献上みられない.
    症例:73歳の男性が右上腹部痛を主訴に来院. 超音波とCTおよびMRI検査では, 左上腹部に巨大腫瘤がみられ, 肝臓には2個の転移性腫瘍がみられた. 5-FUとCDDPの化学療法が行われたが, 約9ヵ月後に永眠され剖検が行われた. 腫瘤は大網に存在し, 大きさが約22.3×16.0×7.0cmの充実性腫瘍であった. 腫瘤割面のi擦過細胞診では, 紡錘形から多辺形の腫瘍細胞が孤立散在性に出現し, 豊富な胞体はライトグリーンに好染し, 核は円形から楕円形で, 大小不同と不整が強く, クロマチンは細穎粒状であった. また多核や巨核あるいは核内封入体も認められた. 組織学的には, 腫瘍細胞は好酸性の豊富な細胞質を有し, 束状, シート状に増生し, 問質には豊富な血管増生が認められた. 免疫組織化学では, CD34, CD117, vimentinが陽性であったが, 平滑筋actin, desmin, S-100 protein, NSEは陰性であった.
    結論:細胞像のみからGISTを判定することは困難であったが, 腫瘍径を参考にすれば, 細胞異型, 細胞密度, 壊死性背景などから悪性の判定は可能と考えられた.
  • 安達 章子, 兼子 耕, 野首 光弘, 三田 健司, 伊佐山 絹代, 舟橋 幸子, 糸山 進次, 小島 孚允
    2001 年 40 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:われわれは術中迅速診断時に擦過細胞診が有用であった眼窩に発生した異所性髄膜腫の1例を経験したので報告する.
    症例:54歳, 男性. 3年前より左眼瞼下垂を自覚し左上眼瞼部に腫瘤を触知され, 当院を紹介され受診. 画像 (CT, MRI) にて左眼窩前方, 上眼瞼挙筋上部脂肪織内に約1.5cmの腫瘤性病変を認め, 腫瘤摘出術が施行された. 術中迅速診断時, 凍結切片では悪性上皮性腫瘍の浸潤ないし転移が疑われた. 同時に行われた擦過細胞診では良性病変が疑われ細胞が渦巻き状に配列すること (whorls), 核内偽封入体 (pseudoinclusions) を有することより髄膜腫が示唆された. 永久標本の組織所見・免疫染色の結果より髄膜上皮型・移行型髄膜腫の診断が得られた.
    結論:本症例は異所性髄膜腫という眼窩内腫瘍では非常にまれな組織型が術中迅速細胞診での特徴的な細胞所見 (whorls, pseudoinclusions) によって推定することができ, 細胞診が非常に有用であった典型例である.
  • 横山 良仁, 坂本 知巳, 丸山 英俊, 佐藤 重美, 齋藤 良治
    2001 年 40 巻 1 号 p. 85-86
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report a patient with primary non-Hodgkin's lymphoma of the uterine cervix diagnosed by a uterine cervical smear that demonstrated abnormal lymphocytes. Tissue from the uterine cervix showed malignant diffuse largecell lymphoma. She experienced complete clinical remission following combined chemotherapy and irradiation therapy.
  • 佐藤 啓司, 長浜 純二, 加島 健司, 駄阿 勉, 横山 繁生
    2001 年 40 巻 1 号 p. 87-88
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report cytologic findings on a steroid lipid cell tumor of the ovary in a 45-year-old woman suffering from masculinization, including amenorrhea since the age of 41, hoarseness and hirsutism. Computed tomography revealed a right ovarian tumor. Serum androgenic hormones elevated before surgery returned to the normal range 10 days after the tumor was resected. An implint cytology specimen was composed of 2 types of tumor cell-those with abundant pale cytoplasm with occasional vacuoles and those with less cytoplasm stained well with light green reflecting the histological pattern of the tumor.
  • 保坂 典子, 小林 明子, 櫻井 博文
    2001 年 40 巻 1 号 p. 89-90
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Imprinting cytology using fresh brain materials obtained surgically from a 65-year male with a sparsely granulated pituitary adenoma revealed relatively large cells with inclusion bodies in the nuclei and severe pleomorphism. Other cells were small and round with granular cytoplasm and small granular nuclei. Immunohistochemically, growth hormone stained in cytoplasm and CAM 5.2 at the nuclear periphfery with a granular pattern, but findings for ACTH, PRH, CK, and EMA were negative. These findings on the brain species revealed a sparsely granulated adenoma of the pituitary gland, confirming the utility of cytologoly, in addition to histopathology, in diagnosing brain tumors.
  • 久住 利香, 鳥居 良貴, 山本 格士, 名方 保夫, 八十嶋 仁
    2001 年 40 巻 1 号 p. 91-92
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    Cell transfer is applicable to broken slides and the preparation of multiple slides from a single smear on limited cytological material. We clarified the effectiveness of cell transfer by different mounting media and used resulting preparations to conduct immunocytochemical staining. Our results indicate that temperature and time in softening were affected by the properties (viscosity and xylene components) of mounting media. Cellular preservation and reactivity of most antigens are maintained following transfer. Cytological materials prepared by cell transfer are therefore suitable for immunocytochemical study.
  • 2001 年 40 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 2001/01/22
    公開日: 2011/11/08
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