日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
40 巻, 4 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 岩崎 聖二, 川村 公彦, 小林 幸弘, 松本 武夫, 児玉 哲郎, 永井 完治, 鹿股 直樹, 長谷部 孝裕, 横瀬 智之, 落合 淳志
    2001 年 40 巻 4 号 p. 317-323
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:肺大細胞神経内分泌癌 (Large cell neuroendocrine carcinoma以下LCNEC) の細胞学的特徴を見い出すことを目的に細胞像の検討を行ったので報告する.
    方法:LCNECと診断された24例の腫瘍捺印標本を用いて検討を行った.
    結果:背景は壊死性で腫瘍細胞は結合性が弱く, 孤立性および集塊を形成していた. 孤立性の腫瘍細胞は裸核状を呈する変性細胞であった. 集塊は重積が軽度で比較的平面的であった. ロゼット様配列を多くの症例に認めた. 細胞質は淡明で, 核は小型から中型で中等度の大小不同を認めた. 核形は類円形から楕円形で長楕円形の核も認め, 核縁は薄く円滑であった. クロマチンは細穎粒状で比較的均等に分布し, 比較的明瞭な核小体を認めた. 核分裂像を示唆する所見が得られたが, 細胞診標本中の壊死や変性細胞の核との鑑別は困難であった.
    結論:組織学的にLCNECと鑑別を要する腫瘍は非定型カルチノイド, 小細胞癌などの神経内分泌腫瘍や低分化非小細胞癌などが挙げられるが, 細胞学的にも同様と考えられる. 今後の課題として他の神経内分泌腫瘍や低分化癌との鑑別や擦過, 喀痰における細胞学的検討が必要と思われる.
  • 乳腺穿刺吸引細胞診報告様式 (日本臨床細胞学会) と関連して
    垣花 昌彦, 浦崎 政治, 佐々木 陽一
    2001 年 40 巻 4 号 p. 324-335
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:乳腺穿刺吸引細胞診の標本にはかなりの頻度で観察不能な標本 (不適正標本) がみられる. 細胞診報告を記載する時に, 臨床医に標本の適正性評価について的確な情報を伝える方法論を確定する基礎的研究を行った.
    方法:1988年1月から1995年12月までの8年間に, 賛育会病院外科において2,106例の乳腺疾患に2,797回の穿刺吸引細胞診を行った. このうちの不適正標本を細胞数過少と検体処理不良とに分類して, それぞれの群の成績を検討した. さらに, 穿刺術者別, 病理組織型別に成績の分析を行った.
    成績:不適正標本群は総穿刺数の11.2%でその大部分は細胞数過少例であった. この要因には穿刺術者の採取技術が最も関係し, 術者によりその頻度は1.1%から35.8%と開きがあった. 次には穿刺対象の組織型との関連がみられた. 良性病変では乳腺症と線維腺腫, 悪性病変では硬癌に適正な検体が採取されにくい症例がみられた.不適正標本群の中で再検査を行った症例では診断成績が向上した.
    結論:1) 穿刺吸引細胞診の報告には標本の適正性をまず第一に報告する必要がある. 2) 穿刺技術の定型化, 穿刺術者の穿刺技術向上が必要である. 3) 組織型により適正標本が採取されにくいことがあり, 組織型推定の一助になることもある. 4) 不適正標本例の再検査は診断成績向上に有効である.
  • 米本 行範, 田中 まゆみ, 相馬 雅行, 田家 真奈, 長峯 則夫, 安蔵 充, 袴塚 純一
    2001 年 40 巻 4 号 p. 336-343
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:子宮頸部腺異形成の細胞像をより明確にするために検討を加えた.
    方法:3例の子宮頸部腺異形成を共存した子宮頸部上皮内腺癌例を対象とした. 術後組織標本の上皮内腺癌と腺異形成の病変に対応する細胞像を術前の細胞診標本から検出し, これらを上皮内腺癌と腺異形成を推定する細胞とし, 比較検討した. さらに腺異形成と良性病変との鑑別点を検討した.
    成績:上皮内腺癌を推定した細胞では, 細胞集塊の所見として核重層高度と細胞配列不整高度と核重積性高度が認められ, 核所見として核形不整が認められ, 核染色性として核濃染中等度以上などの所見がすべて認められたが, 腺異形成を推定した細胞では, これらの所見の少なくとも一つは認められなかった. 腺異形成を推定した細胞を核異型の特徴より, 核重積タイプ, 大型核タイプ, 細長核タイプの3つに分けると, 核重積タイプではmicroglandularhyperplasiaや化生細胞との鑑別が難しく, 大型核タイプでは修復細胞との鑑別が難しく, 細長核タイプではこれらの病変との鑑別が比較的容易であった.
    結論:腺異形成と上皮内腺癌との鑑別点は, 後者で認められる所見の一部を前者では欠くことであった. 前者を核異型の特徴からタイプ分けをすることにより, 良性病変との鑑別に有用であった.
  • 皆川 幸久, 中本 周, 佐々木 陽子, 板持 広明, 島田 宗昭, 紀川 純三, 寺川 直樹
    2001 年 40 巻 4 号 p. 344-348
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:子宮頸部上皮内腺癌 (AIS) の細胞診所見の特徴を知ることを目的とした.
    方法:AISと最終診断した8例の細胞診所見を解析した. また, 画像解析装置を用いて腫瘍細胞の核計測を行い, 正常15例および内頸部型腺癌15例と計測値を比較・検討した.
    成績:細胞診でAISの推定が可能であったものは, 8例中6例であった. 残りの2例の内1例では腺異型を, 1例では扁平上皮系の異型を認めた. 全例で壊死性背景は欠如しており, 正常頸管腺細胞の混在がみられた. 軽度の重積性集塊, 不規則な柵状配列, ロゼット形成が認められたが, 孤立散在性の腫瘍細胞の出現が最も特徴的であった. 核の最大径・面積ともにAIS細胞での計測値は正常頸管腺細胞と浸潤癌細胞のほぼ中間に位置し, 浸潤癌細胞とは有意差はみられなかった. また, AIS細胞では変動係数が最大であり, 計測した細胞の中に正常頸管腺や腺異形成由来の細胞が混在している可能性が示唆された.
    結論:腫瘍性背景を伴わず, 正常頸管腺細胞に混在した大小不同の腫瘍細胞の孤立散在性出現はAISの細胞診所見の特徴の一つであると推察された.
  • 子宮頸部細胞診における検討
    中本 周, 佐々木 陽子, 岡田 早苗, 松ノ谷 尚子, 皆川 幸久
    2001 年 40 巻 4 号 p. 349-353
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的と方法:当院では, 細胞診標本の適正・不適正判定法を独自に作成し1996年11月より日常業務として運用してきた. その有用性を明らかにする目的で子宮頸部細胞診3,000件の標本適正・不適正を患者年齢別および採取医師別に解析した.
    成績:子宮頸部細胞診標本には, 不適正標本が34.3%含まれていた.その割合は閉経後 (50歳以降) では414~48.8%, 閉経前 (50歳以前) では29.3~32.3%であり, この差異の主因は乾燥であった. 一方, 採取医師別の不適正標本率は最大54.7%, 最小25.8%であり, この差異の主因は採取細胞量の不足であった.
    結論:1) 子宮頸部細胞診では不適正標本が少なからず発生していた. 閉経後患者では標本乾燥への留意が特に必要であり, 採取医師は採取手技と標本処理法についての工夫と学習が必要である.2) この様に標本の適正・不適正判定は細胞診断の精度管理にきわめて重要であり, 一方では診断結果の信頼性を知る診療情報としても重要である.
  • 佐藤 康晴, 藤原 恵, 栗原 寛治, 和田 健一, 梶原 忠雄
    2001 年 40 巻 4 号 p. 354-357
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:胸水細胞診で診断し得た縦隔原発硬化性大細胞型B細胞リンパ腫 (mediastinal large B-cell lymphoma: 以下MLBL) の1例を経験したので報告する.
    症例:患者は19歳, 男性で近医にて前縦隔腫瘤, 胸水貯留ならびに血中LDの上昇を指摘され, 当院紹介入院となり, 胸水細胞診と前縦隔腫瘤のCTガイド下生検が施行された. 胸水中には一点を中心として核が平面的に分葉しクローバー状を呈するものや好中球のように糸状核で核が連結されるものなどが認められ, いわゆる“multilobated nuclei”の形態を呈する腫瘍細胞が出現していた. 前縦隔腫瘤の生検組織には多分葉核を示す大型異型細胞がびまん性に増殖し, 膠原線維の増生による硬化像を伴っており, MLBLと診断された.
    結論:MLBLは核形態と臨床病理学的事項が特徴的であり, 細胞像を詳細に観察し, 臨床所見も考慮すれぼ細胞診に於いても診断可能であると考えられた.
  • 腹水細胞像, および遺伝子解析と電子顕微鏡像
    横山 いさみ, 山下 和也, 横澤 正志, 三富 弘之, 本告 匡, 木田 芳樹, 岡安 勲
    2001 年 40 巻 4 号 p. 358-362
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:multilobated B細胞性リンパ腫は, 悪性リンパ腫においてまれな腫瘍である. 今回, 膵周囲リンパ節原発と推定されたmultilobated B細胞性リンパ腫の1例を経験したので, その腹水細胞所見を中心に遺伝子解析, ならびに電顕所見を加えて報告する.
    症例:37歳, 男性. 近医での腹部エコーとCTスキャンで膵癌が疑われ, 当院に紹介受診, 精査目的にて入院となった. 入院時の腹水細胞診では, 中型~大型の異常リンパ球が多数出現していた. 異常リンパ球は, 核のくびれが著明で3分葉以上のものが50%以上を占め, さらに一点を中心とした菊花様の多分葉核が特徴的で, multilobated B細胞性リンパ腫が示唆された. 剖検にて, 膵周囲リンパ節を中心に, B細胞性リンパ腫細胞の多臓器転移が認められた. 遺伝子解析では, immunoglobulin heavy chain遺伝子再構成を示すbandが認められ, 単クローン性が確認された. 電顕的検索では, 粗面小胞体, ミトコンドリア, 脂肪滴および微絨毛様構造を認めた.
    結論:細胞診において, 上記特徴と遺伝子解析, 電顕所見は診断に有効と考えられた.
  • 佐藤 允則, 小枝 吉紀, 水野 義己, 横井 太紀雄, 原 一夫
    2001 年 40 巻 4 号 p. 363-367
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:悪性黒色腫が肺に発生することはきわめてまれで, その細胞像の報告はほとんどみられない. 今回肺原発悪性黒色腫の1例を経験したので報告する.
    症例:35歳, 男性. 右肩痛を主訴に受診. 胸部X線, 胸部CTおよび気管支鏡検査にて気管支腔内に突出する腫瘤が認められ, 肺切除術施行. 病理組織学的に肺原発悪性黒色腫と診断された. 擦過細胞診にて腫瘍細胞は平面的かつシート状に粗な結合を示し, 類円形で偏在傾向を示す核を伴っていた. クロマチンは顆粒状で軽度増加し, 少数の腫瘍細胞には核内封入体を認めた. 腫瘍細胞にメラニン色素は認めなかったが, 免疫染色にて腫瘍細胞はS-100蛋白陽性, HMB-45一部陽性で, サイトケラチンは陰性であった.
    結論:メラニン色素を認める場合, 悪性黒色腫の診断は比較的容易であるが, 無色素性悪性黒色腫は細胞像のみからの診断は困難であり, 免疫染色あるいは補助的な電顕検索にて確定診断が得られると考える.
  • 大原 栄二, 高橋 保, 植田 庄介, 三谷 美湖, 森木 利昭, 黒田 直人, 園部 宏, 大朏 祐治
    2001 年 40 巻 4 号 p. 368-371
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:横紋筋肉腫が腹腔内に転移をおこすことはまれである. 臀部に発生した多形型横紋筋肉腫が腹腔内に転移をおこし腹水中に腫瘍細胞が認められた症例を経験したので報告する.
    症例:28歳, 男性. 左臀部の腫脹と痔痛で発症し, 生検により多形型横紋筋肉腫と診断され腫瘍切除術が施行された. 術後化学療法を行い経過観察されていたが1年後に腹水をともなう腹腔内腫瘍が認められた. 腹水細胞診では, 多形性の強い腫瘍細胞が孤立散在性あるいは小集塊状に出現していた. 横紋構造は認められなかったが, 病歴から横紋筋肉腫の転移が疑われた. 組織像は臀部の腫瘍と類似し免疫染色では横紋筋のマーカーが陽性であった.
    結論:転移経路にも興味がもたれた症例で, 腹水細胞診では多形型肉腫の所見であったが, 横紋構造は認められず確定診断は困難であった. 診断には免疫染色の補助が必要と思われた.
  • 浅利 智幸, 奈良 幸一, 細部 貞廣, 斎藤 謙
    2001 年 40 巻 4 号 p. 372-377
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:慢性甲状腺炎では, 時に濾胞上皮細胞が核異型を伴うため, 悪性細胞との鑑別が重要である. また, 甲状腺の多結節病変の診断においては, 良性病変と悪性病変とが共存している可能性も考慮する必要がある.
    症例:患者は41歳, 女性. 近医で甲状腺腫を指摘され, 平成9年12月当院外科を受診. CT, US像で腺腫様甲状腺腫が疑われた. 経過観察のCT像で大きさが増大し, ホルモン値の充進がみられたため, 平成12年3月に右甲状腺亜全摘が施行された. 摘出された右甲状腺には, 大結節1個と小結節が数個認められた. 大結節の擦過細胞診は, 慢性甲状腺炎が疑われた. 小結節の擦過細胞診は, リンパ球が少数みられる中に, シート状配列や小濾胞構造を示す細胞集塊が認められた. これらの細胞は細胞質が顆粒状で, 核の大小不同, クロマチンの増加が著しかった. 慢性甲状腺炎の際の濾胞上皮よりも核異型が強くみえて, 悪性細胞も考えられたが, 核クロマチンパターンが一様なため悪性と断定できなかった.
    結語:本症例のような核異型の強い濾胞上皮細胞の診断には, follicular carcinoma, oxyphilic cell typeの合併を否定しなければならない. 背景のリンパ球に加えて, 核クロマチンパターンや細胞質所見が重要であると考えられた.
  • 稲垣 朋子, 荒川 昭子, 国村 利明, 大池 信之, 永井 智子, 福田 ミヨ子, 上倉 恵子, 諸星 利男
    2001 年 40 巻 4 号 p. 378-382
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:病理組織学的に確定されたsolid cystic tumor (SCT) の4切除例を経験し, その捺印細胞診像について形態学的立場から検討を行ったので報告した.
    症例:症例はすべて女性で, 年齢は12, 14, 30, 31歳であった. 4症例中3症例は被膜形成が認められ, 中心部に壊死を伴う偽嚢胞状腫瘍を示した. 残る1例は被膜形成を欠き, 中心部に壊死を伴わず, 充実性腫瘍としてみられた. 細胞学的には出血性壊死性背景に異型に乏しい小型, 均一な腫瘍細胞が乳頭状構造を示した. 壊死を高度に伴う1例は, viableな細胞成分に乏しく, ghost状の乳頭状集塊を認めた.
    結論:SCTの細胞診断を行う上で, 類似した画像所見を呈する島細胞腫, 腺房細胞癌, 膵芽腫との鑑別が必要であり, 毛細血管性間質を軸とする乳頭状構造はSCTに特徴的な所見と考えられた.
  • 広川 満良, 越川 卓
    2001 年 40 巻 4 号 p. 383
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 樋口 佳代子, 黒川 聡, 楠木 秀和
    2001 年 40 巻 4 号 p. 384-390
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:多形腺腫は唾液腺領域にて最も頻度の高い良性腫瘍であるが, 典型例の穿刺吸引細胞像はMay-Giemsa染色 (以下Giemsa染色) において異染性を示す間質性粘液成分とともに緩い結合性を示す上皮性細胞集団が出現し, 集団の辺縁や背景の粘液中に異型に乏しくさまざまな形態を示す筋上皮細胞が認められるのが特徴で, 大部分の症例では穿刺吸引細胞診による確定診断が可能である. しかし, 多形腺腫はその構成成分の一つである筋上皮細胞の増生パターンの違いから多様な組織細胞像を示し, 細胞診断上種々の腫瘍との鑑別が必要となることがある.
    方法と成績:われわれは吸引検体の細胞所見および組織学的特徴から多形腺腫の多様性を1) 小型筋上皮細胞の増生, 2) 紡錘形筋上皮細胞の増生, 3) 形質細胞様筋上皮細胞の増生, 4) 異型筋上皮細胞の出現, 5) 扁平上皮化生の出現, 6) 基底膜成分優位な間質の増生, 7) 粘液の貯留した偽腺腔の形成一の7型に分類しそれぞれについて吸引細胞診における鑑別診断を検討した.
    結論:唾液腺穿刺吸引細胞診ではこのような多形腺腫の多様性を念頭に診断にあたるべきと考える.
  • 組織像からみた細胞像
    森永 正二郎, 折笠 英紀, 降幡 雅子, 中山 洋一, 河野 健史, 山本 由紀子, 長渡 久美, 古澤 亜希子
    2001 年 40 巻 4 号 p. 391-396
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:ワルチン腫瘍の組織像からみて, その穿刺吸引細胞診の所見がどのように解釈されるかを明らかにする.
    病理所見:主に円柱状の好酸性細胞とリンパ組織からなり, 乳頭状, 管状, 嚢胞状に発育する. 上皮は, 時に扁平上皮や杯細胞, 線毛細胞への化生を示す. 間質には, リンパ球のほか, 形質細胞, 組織球, 好中球, 肥満細胞がみられる. 嚢胞内には粘液, 壊死物質, 脱落変性した好酸性細胞, リンパ球, マクロファージ, 好中球, 同心円状構造物, コレステリン結晶などが含まれる.
    細胞所見と問題点:組織上の構成成分のいずれもが出現しうる. そのうち好酸性細胞とリンパ球がそろえぼ, 診断は比較的容易であるが, 実際には嚢胞内容液が採取されてくることが多い. 好酸性細胞自体は好酸性細胞腫などワルチン腫瘍以外でも出現しうる. 嚢胞内容液が採取されてきた場合には, 脱落した好酸性細胞の同定が診断の決め手となる. 壊死物質や粘液も特徴的だが特異的ではなく, 壊死性悪性腫瘍との鑑別が問題となる. 化生性扁平上皮細胞は扁平上皮癌との鑑別が, リンパ球優位の場合には正常リンパ節, 悪性リンパ腫などとの鑑別が問題となる.
    結語: 好酸性細胞の同定を軸として, 注意深くその他の所見を捕らえ, 鑑別を行えぼ, 高い精度でワルチン腫瘍の推定診断が可能である. 細胞診によって推定診断ができれば, 手術の適応やその範囲決定といった治療方針に大きく影響するので, この腫瘍を認識し, 他の腫瘍と識別することはきわめて重要である.
  • 捺印細胞診を用いた組織構築との比較検討
    原田 博史, 河原 明彦, 横山 俊朗
    2001 年 40 巻 4 号 p. 397-404
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:唾液腺由来粘表皮癌は粘液産生細胞, 中間細胞, 扁平上皮さらに淡明細胞が種々の割合で混じる悪性腫瘍であるが, その生物学的悪性度は様々で, 近年では細胞異型, 組織構築による3段階の細分類が一般化しつつある. 今回われわれは細胞診所見における各亜型間の差異について比較検討を行った.
    方法:症例は本教室に登録されたものから十分な検索に足るものを抽出し, この組織所見と術中迅速診断時に採取した捺印細胞診標本とを比較検討した.
    成績:捺印細胞診では粘液様ないし炎症性の背景中に各細胞が孤立散在性あるいは疎な集塊を形成しながら出現し, 高悪性になるほど細胞異型を増し, 扁平上皮成分が優位になる傾向がみられたが, その他, 出現様式などについては明確な差異は認められなかった.
    結論:高悪性型では細胞診上に明確な粘液産生細胞が現われないなど粘液産生の所見に乏しく, この点が診断上重要な問題点と考えられるが, このような場合, 河原らの記載した, 外形は扁平上皮の特徴を示しながらも胞体内に粘液空胞を有するIn-2型細胞の認識が的確な診断に有用と思われた.
  • 三宅 康之, 広川 満良, 則松 良明, 高須賀 博久
    2001 年 40 巻 4 号 p. 405-410
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:腺様嚢胞癌の細胞所見の解読には組織像を把握していることが必須であることから, 特に組織像との対比を焦点に, 腺様嚢胞癌の診断に役立つ細胞所見や鑑別診断についてまとめることにした.
    組織および細胞所見:腺様嚢胞癌は組織学的に箭状型, 充実型および管状型の3つに分類される. 細胞診標本では, 飾状型は異染性を呈する球状物が細胞集塊内あるいは背景にみられるのが特徴的である. この物質にはパパニコロウ染色で淡染性の間質性粘液 (粘液球) とライトグリーン好染性の基底膜物質 (硝子球) の二種類がある. 硝子球が出現する腫瘍の鑑別診断としては, 基底細胞腺腫, 基底細胞腺癌, 多形腺腫, 多形低悪性度腺癌, 上皮筋上皮癌などが挙げられる. 充実型は腫瘍細胞が大型細胞集塊を形成して出現し, ジグソーパズル様に配列しているのが特徴的であり, 小細胞癌や基底細胞様扁平上皮癌との鑑別が問題となる. 管状型は出現細胞は少なく棍棒状あるいは索状の細胞集塊として出現し, 多形低悪性度腺癌との鑑別が困難である.
    結論:粘液球および硝子球は腺様嚢胞癌の特徴として広く知られているが, それらは腺様嚢胞癌だけにみられる所見ではないこと, また, 腺様嚢胞癌には充実型や管状型の場合もあり, 診断には多くの鑑別すべき疾患があることに留意すべきと思われる.
  • 田中 陽一, 宜保 一夫, 小野田 雅美, 荒井 義雄, 伊藤 由美, 小出 紀
    2001 年 40 巻 4 号 p. 411-417
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:腺房細胞癌のgrowth pattern別の細胞像について述べた.
    方法:組織診の確定した4つのgrowth patternについて細胞像を検討した.
    成績:1) Solid pattern: ライトグリーンに淡染する泡沫状, 顆粒状の広い細胞質を有する細胞が, 集塊状あるいは単離細胞として認められる. 核は小型円形で) 大小不同や核形不整はみられない. 小型核小体もみられるが, クロマチン増量は軽度である.
    2) Microcystic pattern: 細胞の少ない空胞状の構造として認識される. 細胞の形態は腺房様で, 核の異型は乏しい.
    3) Papillary-cystic pattern: 乳頭状の集塊が主体で, 単離細胞は少ない. 集塊の辺縁には腺房様構造が観察される. 2) および3) では砂粒体やvacuolated cellがみられる.
    4) Follicular pattern: 甲状腺濾胞に似た構造がみられ, 腔内には好酸性の物質がみられる.
    結論:papillary-cystic patternを除いてgrowth patternと予後や臨床態度との相関関係はみられないといわれている. しかし) 4つのgrowth patternにみられる腺房様構造, 乳頭状構造, vacuolated cell) 砂粒体は腺房細胞癌の細胞診断において重要である.
  • 組織像からみた細胞所見
    長尾 俊孝, 小山 芳徳, 小野寺 清隆, 麻生 晃, 堀内 文男, 石田 康生, 菅野 勇
    2001 年 40 巻 4 号 p. 418-426
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:近年, 唾液腺腫瘍の術前診断において穿刺吸引細胞診は, その正診率の高さから広く受け入れられており, 重要性がますます高まってきている. しかし, まれな疾患に関しては依然として満足できる様な正診率は得られていないのが現状であろうと思われる. 現在, 唾液腺腫瘍の組織診ならびに細胞診は, WHO分類 (第2版) に基づいて行われているが, そこには多数の頻度的にかなり低い疾患が含まれている. 一搬的な唾液腺腫瘍の細胞診に関する解説書は多くみられるが, この様なまれな疾患についてはほとんど取り扱われていない.
    目的:本稿では, まれな唾液腺腫瘍の内, 組織学的あるいは細胞学的に特徴のある疾患 (良性では, 基底細胞腺腫, 筋上皮腫, オンコサイトーマ, 悪性では, 基底細胞腺癌, 悪性筋上皮腫, 上皮一筋上皮性癌, 唾液導管癌, 未分化癌) について, 自験例を提示しながらその疾患概念と臨床的特徴, 組織像, および細胞像の総説的な解説を行った.
    結論:実際の唾液腺腫瘍の細胞診を行うにあたっては, 個々の疾患の特徴となる臨床像と組織像を把握し, 細胞像からどこまで組織像を類推できるかが重要な診断の鍵になると思われる.
  • 高木 尚広, 野沢 佳弘, 北條 洋, 阿部 正文, 鈴木 不二彦
    2001 年 40 巻 4 号 p. 427-428
    発行日: 2001/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report a case of peripheral primitive neuroectodermal tumor of the abdominal cavity in a 24-year old woman. Cytology of ascites consisted of numerous individualy scattered cells and a few small clusters. Tumor cells were small to medium size, with a high nuclear/cytoplasmic ratio. Their nucleoli were prominent. The histology of abdominal tumor in the abdominal cavity showed features similar to cytologic findings. An inmmunohistochemical study showed tumor cells were positive for MIC 2, vimentin, and cytokeratin. We showed the usefulness of immunohistochemistry in the cytology of this rare case.
feedback
Top