背景:尿路系のなかで尿管や腎孟の腫瘍は, 技術的に生検組織が得られにくく, 術前に確定診断をつけることが困難な場合が多い. 今回, われわれは膀胱洗浄液と尿管カテーテル尿 (以下, 分腎尿) の細胞診により腫瘍の診断と発生部位の推定が可能であった症例を経験したので報告する.
症例:70歳, 男性. 平成元年, 他院で膀胱腫瘍 (移行上皮癌, Grade3) を指摘され, 膀注療法で寛解した. 平成4年, 再発し, 経尿道的腫瘍切除術とBCG膀胱注入治療を受けた. 平成11年, 肉眼的血尿に気づき, 他院を受診した. 逆行性腎孟造影により右尿管下部の壁不正像を指摘され, 当院へ紹介され, 受診した. 平成12年1月, 右下部分腎尿の細胞診にて移行上皮癌の疑い (Class IV) と判定された. 画像診断と細胞診の結果より右尿管の移行上皮癌が強く疑われ, 同年2月, 右腎尿管全摘術が施行された. 組織学的には, 右尿管中部~下部にかけての移行上皮内癌と診断された.
結論:画像上, 尿管腫瘍が疑われた症例で, 膀胱洗浄液と分腎尿の細胞診より, 悪性が示唆され, 尿管の病変部位の推定が可能であった.
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