背景:子宮頸部粘表皮癌は, 1997年版の子宮頸癌取扱規約では項目が削除され, 腺扁平上皮癌の範疇に含まれるまれな腫瘍である. 今回, 特徴的な子宮頸部粘表皮癌の細胞像を呈した1例を経験したので報告する.
症例:54歳. 集団検診時に, 子宮頸部細胞診陽性のため, 近医を受診した. 子宮頸部細胞診はclass V (扁平上皮癌), 子宮頸部組織診で腺扁平上皮癌と診断され, 7月上旬に当院紹介受診となった. 診察所見で, 子宮頸部に長径20mmの腫瘍を認めたため, 精査治療目的で入院となった.
1998年7月中旬, 当院に入院. MRI断層撮影で子宮頸部後唇に30×20×23mmの限局した腫瘍が認められた. 集塊を構成する細胞は, 細胞質がやや豊富で厚く扁平上皮様形態を示す細胞と細胞質内に粘液を有し核偏在性を呈する腺系細胞が混在して認められた. 子宮頸膣部の細胞診所見は, 血性背景の中に, 腫瘍細胞が平面的な小集塊として出現. 子宮頸癌Ib1期と診断され, 7月下旬に手術を施行した. 病理組織学的所見は, 非角化型扁平上皮癌の胞巣と粘表皮癌の胞巣があり, 両者の間の移行像が認められた. 粘表皮癌の胞巣部分では, 組織構築および癌細胞の細胞質は扁平上皮癌の性格を示し, それらに混じって細胞質内に粘液を豊富に含んだ癌細胞が認められた.
結論:子宮頸部原発の粘表皮癌は, 腺扁平上皮癌の範疇に含まれるが, そのなかで, 他の腺扁平上皮癌に比較して, 細胞病理学的に特徴的な像を示し, かつ, 臨床的にリンパ節転移頻度が比較的高いために, 細胞診による病変推定が必要であると考えられた.
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