日本臨床細胞学会雑誌
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42 巻, 2 号
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  • 術中迅速診断における細胞診の有用性
    佐藤 信也, 鍋島 一樹, 大野 招伸, 日野浦 雄之, 横上 聖貴, 宮原 大作
    2003 年 42 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:Xanthomatous meningiomaは髄膜腫の亜型であるmetaplastic meningiomaに分類される腫瘍の一つである.今回, われわれは術中迅速病理検査において, 凍結組織標本のみでは診断に苦慮した本症例を経験したので, その特徴ある細胞像を中心に報告する.
    症例:57歳, 男性.右後頭部痛を自覚し, 脳神経外科を受診.頭部MRIで脳腫瘍を指摘された.腫瘍は右運動野-前運動野に存在する脳実質外腫瘍で, 臨床的に髄膜腫が最も考えられたが, 診断確定のため術中病理検査が施行された.凍結切片では, 明るくぬけた背景に核と血管だけが目立ち, 髄膜腫の診断は困難であった.しかし細胞診標本では, 腫瘍細胞は集塊状に出現し, 一部に渦巻き状配列を認めた.核は小型で類円形, 大小不同やクロマチンの異常増量は認めなかった.脳実質外腫瘍で上皮様形態を示し, 髄膜腫に相当する細胞所見であった.さらにsmearの詳細な観察では, 細胞質が大小空胞で充満した泡沫状細胞が細胞集塊の内部に多数認められた.術後の組織標本では, 小型類円形核と泡沫状の細胞質を有する細胞が豊富な血管を伴ってみられ, 脳実質内への浸潤は認めなかった.特殊染色と免疫染色結果を含め, xanthomatous meningiomaと診断した.
    結論:泡沫状変化が目立つ本腫瘍においても, 細胞診標本では髄膜腫の特徴は保たれており, 詳細な観察によって, この組織亜型の推定は可能である.
  • 添田 周, 森村 豊, 小野 次子, 橋本 歳洋, 大和田 真人, 山田 秀和, 柳田 薫, 佐藤 章
    2003 年 42 巻 2 号 p. 112-115
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:卵巣癌による癌性髄膜炎はきわめてまれである.今回われわれは, 髄液細胞診で診断し, 剖検にて確認された卵巣癌による癌性髄膜炎の1例を経験したので報告する.
    症例:54歳, 女性.近医で卵巣腫瘍と診断され当科を受診した.超音波, 骨盤CT上卵巣癌が疑われ手術を施行した.卵巣類内膜腺癌 (stage III c) の診断でTJ療法 (paclitaxel 250mg, carboplatin650mg) を施行中, CA19-9の再上昇を認め, EAP療法 (etoposide 140mg×3days, adriamycin35mg×2days, cisplatin 56mg×2days) に変更した.しかし, 経過中痙攣が高頻度に出現するようになった.頭部CTに異常所見を認めなかったが, 脳脊髄液細胞診にて悪性腺細胞を認め, 癌性髄膜炎と診断された.methotrexateの髄腔内投与 (10mg/回) を施行したが奏効せず, 術後4ヵ月目に死亡した.
    結論:頭痛, 痙攣などの神経学的所見を認めた場合には, 髄膜刺激症状を認めない場合でも, 頭部の画像的検査とともに髄液細胞診を行うことが, 癌性髄膜炎の早期診断に有用である8) .
  • 山下 展弘, 勝山 栄治
    2003 年 42 巻 2 号 p. 116-120
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:内反型移行上皮癌 (以下内反型TCC) はその表面平滑な外観より, 内反性乳頭腫 (以下IP) との鑑別が困難な場合がある.IPと癌が合併あるいはIPが癌化したとされる症例が報告されているが, 最近ではその多くはむしろ病変全体が内反型TCCとする意見がある.われわれはIP様病変を合併した腎盂原発内反型TCCの1例を経験した.
    症例:75歳男性.主訴は血尿.CT, MRIで, 右腎盂内に直径4cm大の辺縁平滑な腫瘤影を認めた.自然尿細胞診では, 濃染核および核型不整を示す異型細胞が孤立散在性あるいはclusterを形成し出現し, grade 2のTCCとした.右腎摘出後の病理所見では, 細胞異型性のない腫瘍細胞が腫瘍の内方に向かい増殖するIP様の成分と, grade 2相当の異型上皮が腫瘍の外方に向かい乳頭状に増殖する通常のTCCの成分が混在していた.両者の移行像をみる点および内方に増殖しIP様にみえる部分の一部に細胞異型性をみた点より, 病変全体を内反型TCCと診断した.
    結論:内反性増殖を示す腫瘍の診断には内反型TCCも鑑別に加え検討する必要があると考えられた.
  • 前田 啓之, 福田 幹久, 徳島 武, 中井 勲, 西村 正道
    2003 年 42 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:von Recklinghausen病 (neurofibromatosis type 1: NF1) に肺原発悪性黒色腫を合併した1例を経験したので報告する.
    症例:患者は45歳女性.自覚症状は特に認めていない.小学生頃よりNF1と診断されており, 1988年に左乳癌, 1994年に右乳癌でそれぞれ根治手術を施行された.その後当院通院加療中に右肺異常影を指摘され1996年6月入院した.胸部CT上, 右肺下葉の腫瘍で30mm大, 境界明瞭, 増大傾向を認めた.CTガイド下穿刺吸引細胞診にて黒褐色の微細顆粒を細胞質内に有する異型細胞を認めるほか, 多核巨細胞を含む異型細胞の存在, 核は円形や紡錘形など高度な多形性を示し核内封入体が存在するなど悪性黒色腫が疑われた.全身検索で他に異常を認めなかった.肺原発悪性黒色腫を疑い右肺下葉切除術および縦隔リンパ節郭清を行ったが多発脳転移などをきたし1997年3月に死亡した.剖検は実施できなかったが臨床的に悪性黒色腫を示唆する病変を他臓器に認めなかった.細胞像・組織像などから肺原発悪性黒色腫と診断した.
    結論:NF1には悪性黒色腫を含む悪性腫瘍を合併することが多いとされる.肺原発悪性黒色腫はまれであり, さらにNF1に合併したとする報告例はなくきわめてまれな症例と思われた.組織診断にて肺原発悪性黒色腫と診断したが, 細胞診では特徴的な細胞像を示すことから悪性黒色腫を疑うことが可能であり, 術前診断に有効であった.
  • 今村 友夏, 寺内 利恵, 山下 学, 朝倉 善史, 中野 万里子, 黒瀬 望, 野島 孝之, 牧野田 知
    2003 年 42 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮頸部擦過に直腸腺癌細胞をみた1例を経験した.細胞像を見直し, 免疫組織化学的に大腸腺癌, 体部腺癌, 頸部腺癌と比較検討した.
    症例:78歳, 女性.2, 3年前より不正出血を認めたが, 痔からの出血と思い放置していた.不正性器出血を認め, 重度貧血と子宮頸癌を指摘され入院となった.子宮頸部に4×3cmの腫瘍を認め, 子宮頸部生検, 頸部擦過にて腺癌の診断がなされた.その後, 6×5.3cm, type 2型の直腸癌が発見され, 腫瘍は膣から子宮頸部に直接進展しており, 肉眼所見より直腸癌の子宮頸部浸潤と診断された.
    結論:免疫組織化学的に, 大腸癌はcytokeratin 20 (CK20), carcinoembryonic antigen (CEA) が陽性を示すが, 体部, 頸部腺癌はcytokeratin 7, CA 125, estrogen receptor, progesteronereceptorの陽性傾向があり, 鑑別に有効であった.今回の頸部腫瘍は免疫染色にてCK20, CEA陽性であり直腸癌の浸潤であることが証明された.子宮頸部擦過に直腸腺癌細胞を認めることもあり, 鏡検に注意する必要があると思われる.
  • 衣笠 万里, 宮崎 義彦, 辻本 直樹, 瀬井 歩, 佐々木 正道, 古本 三保子, 古本 勝, 中川 敏代
    2003 年 42 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮頸部の紡錘形細胞癌は非角化型扁平上皮癌のまれな一亜型である. 今回, その1例について報告し, 文献的考察を加える.
    症例:42歳経産婦, 褐色帯下を主訴として受診, 子宮頸部に限局した辺縁隆起を伴う潰瘍性病変が認められた. 細胞診では上皮内癌を疑わせる傍基底型異型細胞が出現しており, 生検組織診では上皮内癌とともに紡錘形細胞からなる肉腫様病変が認められた. ただちに広汎子宮全摘術が施行された. 術後捺印細胞診では上皮内癌様細胞とともに複数個の核小体を有する大型の核と辺縁不明瞭な淡い細胞質を有する肉腫様細胞がみられた.組織診では上皮内癌成分とともに, 紡錘形腫瘍細胞の問質へのびまん性浸潤が認められ, 両者の問には移行部分がみられた. これら紡錘形細胞はケラチン (KL-1) 陽性であり, 電顕像でもデスモゾーム結合が認められたことから, 癌肉腫ではなく紡錘形細胞癌と診断された. 5年後現在, 患者は無病生存中である.
    結論:本症例では早期発見・治療が可能であったが, 女性性器の紡錘形細胞癌は予後不良例も多く, その点は癌肉腫とも共通している. 現時点では細胞診・生検組織診による早期発見が最も有効な治療手段である.
  • その術前細胞診断は可能か
    田中 躍, 杉浦 賢, 武内 務, 黒瀬 圭介, 佐治 晴也, 加藤 久盛, 中山 裕樹
    2003 年 42 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:当科における子宮内膜間質肉腫症例について細胞診による術前診断の可否を明らかにすること.
    症例:1991年1月から2002年1月までに当院で初回治療を行った子宮内膜間質肉腫症例は5例であった. これらを対象とし術前細胞診標本の細胞学的検討を行った. また術前細胞診所見と病理組織診や臨床事項との相関について検討した.
    結論:術前細胞診では5例中3例でClass III以上の診断となっていた. しかし子宮内膜間質肉腫に特徴的な細胞診所見を示していたのは1例のみであり, 子宮内膜間質肉腫の術前細胞診のみによる診断は困難と思われた.その術前診断のためには術前細胞診陽性の場合も典型的な細胞像を示さないことも多いことを念頭に臨床所見や術前組織診所見もあわせて注意深い観察を行うことが必要と思われた.
  • 土屋 眞一, 三宅 康之
    2003 年 42 巻 2 号 p. 143
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
  • 乳腺症型線維腺腫を中心に
    阿部 英二, 中村 淑美, 豊島 里志
    2003 年 42 巻 2 号 p. 144-148
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    乳腺穿刺吸引細胞診において, 常に乳癌との鑑別が問題となるのが線維腺腫や良性乳頭状病変である. 今回, 線維腺腫のなかで特に乳頭腺管癌との鑑別が問題となる乳腺症型線維腺腫について, その細胞像および良悪の鑑別点を乳癌例と対比しながら細胞学的検討を行った. 乳腺症型線維腺腫の細胞像は, 一般的な線維腺腫の細胞像に加え, 乳腺症に出現する細胞集団 (乳頭重積状・節状・充実重積状・クサビ状) が認められる. よって増殖の強い細胞集団を散見する場合, 全体像をよく把握したうえで, 各細胞出現様式について詳細な細胞の観察を行い, 総合的に判断することが重要である.
  • 乳管内乳頭腫
    北村 隆司, 那須 直美, 池田 勝秀, 増永 敦子, 楯 玄秀, 光谷 俊幸, 渡辺 糺, 太田 秀一
    2003 年 42 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:穿刺吸引細胞標本における乳管内乳頭腫 (IDP) の細胞学的特徴と細胞異型に乏しい高分化乳癌との鑑別点について解説した.
    診断:典型的DIPでは散在性細胞は少なく, 腺上皮細胞, 筋上皮細胞, および間質結合織より構成される結合性の高い乳頭状集塊が観察される. また, 壊死を起こしたIDPでは多量の壊死物質が認められるが, 出現する腺上皮細胞は変性核でN/C比も通常のIDPにみられるものと同様である.
    鑑別:乳頭癌とIDPの鑑別では,(1) 細胞相互, および間質と上皮細胞の結合性,(2) 集塊内の筋上皮細胞の有無,(3) 散在性細胞の細胞異型 (特にクロマチン形態とN/C比) の観察などが, また, 高分化な乳癌とIDPに由来した重積集団の鑑別では (1) 腺腔への細胞極性の有無,(2) 細胞重積の形態,(3) 化生変化の有無などが良・悪性の鑑別のポイントとなる.
    結語:IDPと高分化乳癌では細胞学的に類似した所見がみられるが, その診断においてはIDPの細胞学的の特徴やIDPと高分化な乳癌との差異を明確に認識した上で診断に臨む必要がある.
  • 腺腫
    伊藤 仁, 宮嶋 葉子, 梅村 しのぶ, 安田 政実, 長村 義之
    2003 年 42 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:乳腺に発生する腺腫についての細胞学的検討を行った.
    方法:組織学的に典型例と考えられた乳頭部腺腫3例, 管状腺腫2例, 乳管腺腫3例を対象とし, その穿刺細胞診標本を用いて細胞学的特徴について検討した.
    結果:腺腫は結合性が強く散在性細胞はほとんど認められなかった. 乳頭部腺腫では, 硬化性腺症でみられる楔状細胞集塊や上皮過形成に類似した間質を伴わない乳頭状細胞集塊などが認められた. 前者には筋上皮細胞が観察されたが, 後者では筋上皮細胞が明らかでなく, 乳頭腺管癌との鑑別が困難であった. 管状腺腫は線維腺腫の細胞像に類似していたが, 背景にみられる裸核細胞は少なかった. また, 上皮細胞として, 乳管由来と考えられる比較的N/C比の高い細胞集塊と末梢の小葉内細乳管上皮細胞に類似した細胞集塊が認められた. 後者の細胞は豊富な細胞質を有し, N/C比は低く, 柔らかい微細クロマチンが特徴であり, ときに微小な管腔内に分泌物が認められた. 乳管腺腫は, 基本的には間質を伴う細胞集塊で出現する乳管内乳頭腫の細胞像を呈していた. 乳頭腫に比べ管腔構造が目立ち, しばしば管腔内部に分泌物が充満していた. また, きわめて高度の核異型を伴うアポクリン化生細胞がみられる症例があった.
    結論:細胞診における腺腫の推定診断は困難であるが, 結合性, 発生部位, 細胞の出現パターン, 組織像の多様性を認識することにより, 誤陽性を防ぐことが可能と考えられた.
  • 乳房温存術標本断端擦過細胞診での検討
    加藤 拓, 唐司 則之, 高橋 久雄, 諏訪 朋子, 徳泉 美幸, 安藤 智子, 上原 敏敬
    2003 年 42 巻 2 号 p. 162-167
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:乳房温存術における切除標本断端擦過細胞診にて出現する良性乳管内増殖性病変と非浸潤性乳管癌の細胞像について比較検討した.
    方法:擦過細胞診標本はDiff-Quik染色およびPapanicolaou染色にて判定し, 細胞像を (1) 異型のない乳管内増殖性病変,(2) 異型を伴う乳管内増殖性病変,(3) 非浸潤性乳管癌・非コメド型,(4) 非浸潤性乳管癌・コメド型の4病変に分類した.
    結果:主要な細胞所見について (1)-(4) の順に述べると,(1) 背景には線維芽細胞, アポクリン化生細胞などをみる. 乳管上皮細胞は結合性が強くシート状または管状の集塊を示し, 核は類円から楕円形である.集塊表面には筋上皮細胞の濃縮短紡錘形核の付着を多数みる.(2) 背景は (1) に加え, ときに泡沫細胞をみる. 乳管上皮細胞は2, 3層の重積性を示し, 筋上皮細胞の付着を少数みる. 集塊内の細胞は流れるような配列で, 核は楕円から紡錘形を示す. 集塊中に不整な管腔形成をときに認め, その周囲細胞は楕円形核を示す.(3) 背景は泡沫細胞, ときに石灰化小体などをみる. 乳管上皮細胞は3層以上の重積性を示すが, 結合性がやや弱い. 細胞は類円形均一, 核は密で均等な核間距離を伴う. クロマチンは濃染, 核小体は認めない. 集塊中に円形の管腔形成をときに認め, 周囲細胞は類円形核を示す.(4) 背景は (3) に加え壊死を伴う. 乳管上皮細胞は3層以上の重積性集塊とそこから剥離散在する細胞をみる. 核は大小不同が強く, 核形不整を認める.クロマチン濃染で著明な核小体と核分裂像をみる.
    結論:細胞の観察は迅速性を要するためDiff-Quik染色が有用である.(1) と (4) の鑑別は比較的容易である.(2) と (3) においての鑑別点は背景に出現する細胞の種類, 乳管上皮細胞集塊の採取量, 構成する細胞と核形, 中で形成される管腔の形および周囲細胞核, 付着する筋上皮細胞などに注目することである.
  • 葉状腫瘍-間質細胞に関する細胞学的検討
    植嶋 輝久, 森谷 卓也, 植嶋 しのぶ, 工藤 浩史, 山根 哲実, 羽原 利幸, 秋保 信彦
    2003 年 42 巻 2 号 p. 168-174
    発行日: 2003/03/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:乳腺細胞診で陽性にとられやすい腫瘍の一つに葉状腫瘍がある. 本腫瘍は良性-境界病変-悪性に分類され, 正しい診断と悪性度の予測が必要と思われる. そこで, 穿刺吸引細胞診標本を見直し, 間質細胞の性状を中心に再検討した.
    方法:36例の葉状腫瘍 (良性20例, 境界悪性15例, 悪性1例) を3群に分類し, 採取細胞量, 間質細胞集塊の細胞密度, 裸核状間質細胞の核形状, 裸核細胞の核径 (長径, 短径), 細胞診標本中の核分裂数, 相接する裸核細胞の出現頻度について比較検討を行った. また, 線維腺腫10例とも比較した.
    成績:葉状腫瘍は, 線維腺腫よりも円形裸核細胞の比率および相接する裸核細胞の出現頻度が有意に低かった. 境界病変葉状腫瘍は, 良性葉状腫瘍や線維腺腫より不整形核や核分裂数が有意に多かった. 核径は悪性度が増すにつれて大きくなったが, 有意差は得られなかった.
    結論:細胞診で上皮間質性の混合腫瘍を疑う際に, 間質細胞の性状の観察は線維腺腫と葉状腫瘍の鑑別に役立つものと期待される. また, 細胞像は葉状腫瘍の悪性度により異なっており, それぞれの組織像を反映しているものと思われた.
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