日本臨床細胞学会雑誌
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43 巻 , 1 号
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  • 松浦 祐介, 安永 耕介, 田中 真由美, 川越 俊典, 土岐 尚之, 柏村 正道
    2004 年 43 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    目的:当科で経験した若年者子宮頸癌症例を検討し, 若年者に対する子宮頸がん検診の意義を明らかにする.
    方法:過去18年間に当科で初回治療を行った子宮頸癌症例662例 (40歳以上536例・30歳代111例・20歳代15例) を対象に臨床進行期・病理組織型・がん検診受診歴を中心にretrospectiveに検討した. また, 30歳未満の15例については治療を含めた臨床所見について検討した. 統計学的有意差検定にはx2検定を用いた.
    成績:40歳未満の上皮内癌症例は頸癌126例中64例 (51%) であり, 40歳以上の頸癌536例中99例 (18%) に比較して有意に上皮内癌の占める割合が高かった (p<0.0001). 病理組織型については40歳以上・未満で有意な差は認めなかったが, 上皮内腺癌はすべて40歳未満の症例に認められた. 3年以内の検診受診歴がある者は40歳未満で31%, 40歳以上では23%であり, 両者間で有意な差を認めなかったが, がん検診受診歴のない症例では有意に進行癌の割合が多かった (p<0.0001). 30歳未満の症例15例中8例は上皮内癌であったが, 7例は浸潤癌 (1a1期3例, 1b1期・2a期・2b期・3b期各1例) であり, 浸潤癌症例のうち, がん検診受診歴がある者は1例のみであった.
    結論:若年者の子宮頸癌では初期癌が多い傾向にあり, 妊婦をはじめ産婦人科受診者に対しては積極的に子宮がん検診を施行することが重要である. また, 20歳代でも30歳代と同率の浸潤癌症例がみられたことから考えて検診対象者の年齢に対する検討も必要である.
  • 関本 一義, 田中 昇
    2004 年 43 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:妊娠36週以後分娩にいたるまで妊婦検診のたびに膣壁細胞診を行い, その成熟指数で頸管開大遅延の有無を予測できるかを検討した.
    方法:妊娠36週より分娩にいたるまでの妊婦検診の際に膣壁細胞の成熟指数を2回以上検索しえた末経産婦340例を対象に, その中層型細胞数の変動と分娩時の安産, 子宮口の開大に長時間を要した難産および帝王切開の間に関連がないかを検討した.
    成績:妊娠36週時より分娩までの間で成熟指数の中層型細胞の占める割合が10%以上減少した症例は224例あり, そのうち210例までが安産であった.
    一方, 中層型細胞の減少が10%以内の症例は80例で, 頸管開大遅延に伴う難産と帝王切開症例は, あわせて48例あり, 難産になる傾向がうかがわれた.
    結論:妊娠36週に入った妊産婦の膣壁スミアの成熟指数を継続的に調べることで分娩時の頸管開大遅延に伴う難産の症例が予測できると考えられた.
  • 大金 直樹, 鴨志田 伸吾, 佐籐 嘉洋, 中村 満美子, 田村 猛, 梶原 博, 安田 政実, 長村 義之, 亀田 陽一, 飯田 萬一
    2004 年 43 巻 1 号 p. 14-19
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:甲状腺細胞診標本を対象に, I型糖鎖抗原であるDU-PAN-2およびCA19-9の発現を免疫細胞化学的に検索し, 乳頭癌の鑑別診断におけるDU-PAN-2の細胞学的マーカーとしての有用性について, 両者の比較に基づいて検討した.
    方法:組織学的に診断が確定された, 穿刺吸引および手術材料捺印により採取された計58例の甲状腺疾患細胞標本 (乳頭癌30例, 濾胞性病変15例, その他13例) を対象とし, DU-PAN-2およびCA19-9の発現を免疫細胞化学的に検索した. 判定基準は陽性を示す腫瘍細胞が10%以下を+, 10~50%以下を2+, 50%以上を3+とした.
    成績:DU-PAN-2およびCA19-9の感度は, それぞれ乳頭癌: 80%, 70%, 濾胞性腫瘍: 0%, 7%その他の病変0%, 15%であり, 両抗原の乳頭癌に対する特異度はDU-PAN-2: 100%, CA19-9: 89%であった. 陽性細胞の多寡と染色性から検討してみると, CA19-9に比べDU-PAN-2の陽性細胞が多く観察される傾向があった. また, DU-PAN-2が陰性の場合, CA19-9陽性細胞は少数であったのに対して, CA19-9が陰性の場合は, DU-PAN-2の陽性細胞が多く認められる傾向があった.
    結論:甲状腺乳頭癌においてDU-PAN-2の感度, 特異度はともにCA19-9のそれらよりもやや上回る程度であった. しかしながら, とりわけCA19-9陰性ないし弱陽性例では, DU-PAN-2の陽性細胞が多数認められる傾向がみられ, 甲状腺の細胞学的鑑別診断においてDU-PAN-2は乳頭癌の有用なマーカーとなりうることが示唆された.
  • 清水 健, 是松 元子, 小川 さおり, 佐々木 英夫, 堀越 多美子, 佐藤 豊彦, 正和 信英
    2004 年 43 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:乳腺穿刺吸引細胞診での, 検体処理方法による細胞診断の行いやすさの違いについて検討した.
    方法:乳腺腫瘤184例に対し各症例とも吹き出し, パッチン, すり合わせの3法で穿刺吸引材料を処理し標本を作製した. 結合性, 不規則重積, 筋上皮細胞との2相性, 細胞質, 核形不整およびクロマチンの6項目に関し, 細胞観察や良悪性の判定に適した部分の標本上に占める割合の多寡などを比較検討した.
    成績:細胞異型が目立ち細胞判定が容易な悪性症例群 (71例) と異型が目立たず判定が困難な悪性群 (59例) で, 大型・中型集塊における不規則重積の有無, 筋上皮細胞との2相性, 細胞質の性状, 核形不整, クロマチンの観察や判定に関し, すり合わせ法で作製された標本で適した部分が有意に多かった. 上皮増生を伴う良性例 (14例) では, 不規則重積と筋上皮細胞を評価しやすい部分がすり合わせ法で多かった. 逆に吹き出し法とパッチン法では適した部分が少ないことに加え, 細胞や核が濃縮し本来の異型性が忠実に表現されないなど質的に劣る場合もあった.
    結論:不規則重積の有無と個々の細胞所見が把握しやすい集塊をより多く含み, 組織型推定も行いやすい “すり合わせ法” が検体処理に適していた.
  • 森 裕紀子, 松本 直樹, 鈴木 啓太郎, 田部 宏, 西井 寛, 渡辺 明彦, 落合 和彦, 田中 忠夫
    2004 年 43 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:卵管癌は術前診断が5%と低いまれな婦人科腫瘍である. 特徴的な症状や検査所見に乏しいため術前診断が困難である. 繰り返し行った子宮内膜細胞診が陽性であり細胞診と画像診断により術前に卵管悪性腫瘍を疑った卵管原発癌肉腫の1例を経験したので報告する.
    症例:49歳, 0経妊0経産, 不正出血にて初診となる. 初診時, 右卵管留膿腫を認めたが, 子宮腟部, 子宮内膜細胞診は陰性であった. 骨盤内腹膜炎に関しては抗生剤投与により容易に軽快した. 不正出血が続くため, 繰り返し細胞診を施行したところ3回目の子宮内膜細胞診はclass Vで腺癌を疑った. 子宮内膜組織診は陰性で, CT, 経膣超音波で骨盤腫瘍を認めたため卵管癌と術前診断した. 内性器全摘出術+骨盤リンパ節郭清術+大網切除術を施行した. 病理診断は卵管癌肉腫 (悪性上皮成分: 類内膜腺癌, 肉腫成分: 平滑筋肉腫) pT3cN1M0, FIGO IIIc期であった. 術後TN (Taxol 180mg/m2, NDP100mg/body) 療法を6コース行い術後11ヵ月再発徴候を認めない.
    結論:閉経後の婦人が不正出血を認めた場合に, 子宮内膜細胞診を繰り返し行うことおよび画像診断は卵管の悪性腫瘍の診断において重要である.
  • 足立 賢哉, 斉藤 豪, 田中 綾一, 西村 誠, 芦原 康氏, 伊東 英樹, 工藤 隆一
    2004 年 43 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮頸部扁平上皮癌と子宮類内膜腺癌の同時性重複癌症例を経験したので報告する.
    症例:症例は65歳女性. 不正性器出血により近医受診し, 子宮頸部細胞陽性のため精査目的にて, 当科紹介となる. 初診時の子宮頸部細胞診は扁平上皮癌細胞 (+) であり, 生検で浸潤型扁平上皮癌, また経膣超音波所見にて子宮内膜の肥厚を認め, 子宮内膜細胞診陽性, 内膜組織診で分化型類内膜腺癌を認めたため, 子宮頸癌Ib1期と子宮内膜癌Ia期の重複癌と診断された. 術後の組織所見は子宮頸癌がpT1b1N0M0, 内膜癌がpT1bN0M0であった.
    結論:内性器間の同時性重複癌の報告は頻度として少ない. 同時性重複癌の予後は単一の癌とそれぞれの進行期別に比較した場合, 特に不良とはいえないと考えられる.
  • 長田 憲和, 岩下 寿子, 藤谷 真弓, 三野 直純, 山本 嘉昭
    2004 年 43 巻 1 号 p. 38-41
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮体部に小細胞癌と腺棘細胞癌が共存し, 多彩な細胞像を呈した1例を経験したので報告する.
    症例:52歳, 女性. 不正性器出血を主訴に当院を受診し, 内膜細胞診では3種の腫瘍細胞が出現していた.(1) 重積性と軽~ 中等度の異型を有する腺癌細胞,(2) 異型に乏しい扁平上皮細胞,(3) 裸核状で, 核形不整と細穎粒状クロマチンを示す小型類円形細胞.広汎子宮全摘出術後の検討では, 小型の腫瘍細胞は壊死を伴って充実性に増殖し, NSEとchromogranin Aが明らかに陽性で, 小細胞癌 (神経内分泌癌) と診断された.また, 腺棘細胞癌 (Grade 1) の共存があったが, 両者に移行像はなかった.
    結論:子宮内膜細胞診において上述した (3) の所見が認められた場合には, 小細胞癌の存在も念頭に置き, 同時に類内膜腺癌などと共存する例が多いことに留意して鏡検する必要があると思われた.
  • 吉田 好雄, 宮崎 ミカ, 黒川 哲司, 河原 和美, 今村 好章, 山本 宝, 紙谷 尚之, 小辻 文和
    2004 年 43 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:腹膜原発のextraovarian peritoneal serous papillary adenocarcinoma (EPSPC) は, 腹膜表面の播種性腫瘤が主病変である比較的まれな疾患である. 子宮頸部細胞診が発見の契機となった, 腹膜原発のEPSPCの1例を経験したので報告する.
    症例:57歳, 閉経50歳, 定期の子宮頸部細胞診で異常を認めたため精査目的で入院となった. 入院時の細胞所見は, 比較的きれいな背景の中に, 核・細胞質比の高い腺癌細胞が, 平滑で丸みを帯びた小集塊として認められた. 腫瘍マーカー検査ではCA125, CA72-4が異常高値を示した. 円錐切除診では明らかな腺癌組織を認めず, 子宮内膜組織診で一部腺癌組織を認めた. 子宮体癌の診断で開腹術を施行した. 子宮および卵巣に明らかな病変を認めず, 腹腔内に多数の播種性病変を認めた. 組織学的には子宮内膜, 卵巣実質に腺癌組織を認めなかったが, 播種性病変には砂粒体を伴った腺癌組織を認めた. 以上の開腹所見と組織所見より, 腹膜原発のEPSPCと診断した.
    結論:子宮頸部細胞診で腺癌細胞を認めたときは, 子宮原発の腺癌や卵管, 卵巣由来の腺癌以外に, 腹膜原発のEPSPCも念頭に置くべきである.
  • 竹森 正幸, 西村 隆一郎
    2004 年 43 巻 1 号 p. 47-50
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:Extraovarian peritoneal serous papillary adenocarcinoma (EPSPC) は, 漿液性乳頭状卵巣癌との鑑別が困難な, 比較的まれな疾患の一つである. 卵巣癌細胞がしばしば子宮内膜細胞診標本中に認められることは報告されているが, EPSPCの腫瘍細胞が子宮内膜細胞診標本中に認められたという報告はみられない.
    症例:51歳. 大量の腹水が認められ, 腹水穿刺細胞診によって腺癌と診断された. しかし, 消化器検査では異常なく, 卵巣腫大も認められず, 開腹手術によってEPSPCと確定診断した. 術前に, 腹水中と同様の腫瘍細胞が子宮内膜細胞診標本中にも認められたが, 術後の病理組織学的検索では, 子宮内腔に悪性所見は認められなかった.
    結論:子宮内膜細胞診で認められた腫瘍細胞は, 腹水中の腫瘍細胞が子宮腔内に迷入したものと考えられた. EPSPCの術前診断は困難であるが, 子宮内膜細胞診標本の注意深い観察がEPSPC診断の端緒となる可能性が考えられた.
  • Hiroshi FUSHIKI, Hideo YOSHIMOTO, Tomomi IKOMA, Eiko MAEDA, Terahata S ...
    2004 年 43 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    はじめに, 卵巣原発の癌肉腫は非常にまれである.今回, 救急外来受診後急激な経過をたどった本症例を経験したので報告する.
    症例は, 80歳, 2妊2産.家族歴および既往歴は特記すべきことなし.腹部膨満感, 食欲低下, 嘔吐のために当院救急外来受診し入院となる.超音波断層法およびCTにて大量の腹水と約10cm大の腫瘤がみられた.その後腹水貯留のため呼吸不全が悪化し, 腹水を約3,000ml排液し, 同時に細胞診も施行した.腫瘍マーカーはCA125が49.5U/mlとやや高値を示したのみであった.入院後9日目に, 輸液などの全身管理の甲斐もなく永眠された.腹水の細胞所見は, 大型の細胞が出現し, 核は不整形であり核密度が高く散在性であった.また, 核小体の腫大, クロマチンの増量および核縁の不整がみられ, 肉腫様の悪性細胞と診断した.剖検により, 右卵巣原発の癌肉腫であった.癌腫部分は類内膜腺癌であり, 肉腫部分は悪性線維性組織球腫様であった.今回, 高齢でかつ癌性腹膜炎の状態で来院され急速な経過をたどった本症例を経験したので報告した.
  • 瀬尾 典久, 服部 学, 豊永 真澄, 渡辺 純, 新井 努, 川口 美和, 上坊 敏子, 蔵本 博行
    2004 年 43 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    背景:卵巣癌肉腫はきわめてまれであり, 卵巣悪性腫瘍の1%以下とされている. 加えて, 腹水中に出現した卵巣癌肉腫の細胞所見を詳細に記載した報告もまれである. また, これらの報告では腺癌と組織型推定されている. 今回, 再発患者の腹水中に肉腫と判断される細胞が出現した症例を経験したので, その細胞像と病理組織像を比較検討した.
    症例:50歳, 女性. 主訴は下腹部痛. 平成12年6月, 内診および画像診断により最大径20cm大の卵巣腫瘍が指摘された. 同年7月, 術中の腹水細胞診にてClass V腺癌, 迅速組織診にて癌肉腫とされ, 単純子宮全摘術, 両側付属器切除術, 大網切除術および骨盤リンパ節郭清術が施行された. その後, 化学療法が行われたが再発し, 翌年3月, 腹腔内再発腫瘍切除術が施行された. 同時に行われた術中の腹水細胞診にて, 上皮性結合, 細胞質内の粘液や核縁の肥厚は認められず, 細顆粒状のクロマチン, 核の切れ込み, 核小体周囲の明庭などが確認されたところから, 肉腫細胞が示唆された.
    結論:まれな卵巣癌肉腫の細胞所見を呈示した. 腹腔内に進展する場合, 腺癌と細胞診断されることが多いが, 本症例では肉腫が再発の原因であった.
  • 山西 陽子, 大林 千穂, 塚本 龍子, 前田 盛, 林 祥剛
    2004 年 43 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/12/05
    ジャーナル フリー
    背景:mucinous cystadenocarcinomaの多くは消化器や卵巣に発生し肺原発はまれである.今回われわれは肺原発のmucinous cystadenocarcinomaを経験したので報告する.
    症例:77歳, 女性. 主訴は咳嗽, 労作時呼吸困難.胸部単純X線写真にて異常影を認め, 利尿剤投与によっても縮小しなかった右下葉の径7cmの腫瘤影に対し経皮的肺穿刺吸引細胞診を施行した. わずかに吸引できたきわめて粘稠性の高い粘液中には細胞成分をほとんど含まず, 1ヵ所にのみ変性したシート状細胞集塊を認めた. 悪性の可能性を否定できず右下葉切除となった. 手術材料から得られた粘液の塗沫および嚢胞壁の擦過細胞診では大きなシート状細胞集塊を認めた. 腫瘍は68×58×68mmの単房性嚢胞を形成し, 組織学的な検索によりmucinous cystadenocarcinomaと診断した.
    結論:mucinous cystadenocarcinomaでは術前診断が困難であるとされるが, 肺穿刺吸引においてきわめて粘稠性の高い, 細胞成分の少ない粘液を採取された場合, 本症例も念頭に置く必要があると考えた.
  • 宮平 良満, 宮本 敬子, 岩井 宗男, 角谷 亜紀, 九嶋 亮治, 岡部 英俊, 澤井 聡, 藤野 昇三
    2004 年 43 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:肺芽腫は胎児肺の腺様期に類似した上皮性部分と問葉性部分から構成されるまれな腫瘍で上皮成分は異型性が弱いのが通例である. 今回, われわれは上皮成分に多形性の強調されたbiphasic pulmonary blastomaの症例を経験したので報告する。
    症例:80歳, 男, 肺炎にて入院中, 右上肺部にmass lesionの増大を認めたため, 胸腔鏡下右肺上葉の部分切除術を施行した. 術中迅速時の捺印細胞診では腺癌様細胞と肉腫様細胞が混在して認められたことから, 癌肉腫の可能性が考えられた. しかし, 組織所見で紡錘形細胞が束状に配列する像や多形性に富む横紋筋肉腫の像が複雑に混じり合うなかに胎児肺類似の腺管上皮が増生する像が認められたことから肺芽腫と診断された.
    結論:肺芽腫は肺腫瘍としてはきわめてまれな腫瘍であるが, 増殖能力が高く, 腺管上皮や間葉系成分の性格によっては予後が異なってくる. 細胞や組織形態のみならず, 免疫学的所見も参考にしながら, より詳細に腫瘍細胞の性格を捉えて診断していくことが重要である.
  • 山下 展弘, 加地 澄子, 勝山 栄治
    2004 年 43 巻 1 号 p. 70-74
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:肺芽腫は腫瘍性の上皮成分と未熟な問葉系成分が混在した二相性を示すまれな腫瘍で, その細胞像の報告は少ない.
    症例:69歳, 男性. 湿性咳噺を主訴とし, 肺癌疑いにて当院紹介となる. 胸部X線, CTにて右肺上葉S1に直径約5cm大の境界明瞭な腫瘤を認めた. エコー下肺生検にて未分化な悪性腫瘍細胞を認めた. 肺穿刺細胞診ではN/C比がきわめて高く, ほぼ裸核様で繊細なクロマチンの増加した肺小細胞癌を思わせる細胞や, 偏在核で腫大した核小体を1~数個みる腺癌を思わせる細胞集塊が混在し出現していた. 肺癌疑いにて上葉切除術を施行した. 術後病理所見で, 類内膜腺癌類似の腺癌の成分と, 一部に軟骨肉腫への分化をみる肉腫様成分を認め, 二相性肺芽腫と診断した.
    結論:未分化な細胞や腺系細胞集塊が混在し出現する腫瘍には, 画像所見などの臨床所見も検討し, 肺芽腫も鑑別診断に含めることが必要である.
  • 高橋 信二, 及川 希, 波多野 吉治, 田中 昇, 小林 信幸, 加納 英人, 根本 哲生, 春日 孟
    2004 年 43 巻 1 号 p. 75-78
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:尿細胞診で発見された前立腺の小細胞型神経内分泌癌と中・高分化型腺癌との移行を示す稀有な1例を経験したので報告する。
    症例:73歳, 男性. 肉眼的血尿を主訴として2001年7月来院. 尿細胞診は小細胞型悪性細胞と腺癌との混在を示した. PSA値は39.2ng/ml. 前立腺生検で中・高分化型腺癌および膀胱生検で小細胞型未分化癌. 前立腺・膀胱重複癌が疑われ9月膀胱前立腺全摘, 回腸導管造設術を施行. 全摘材料の病理組織診断は小細胞癌との移行, 分化を伴う前立腺中・高分化腺癌, pT4, pN1であった. 術後, 縦隔リンパ節, 肝転移. 全経過9ヵ月. 2002年4月死亡, 剖検.
    結論:当初生検では前立腺・膀胱重複癌の診断であったが, 全摘材料についての検討では, 病理学的には小細胞型神経内分泌癌への分化, 移行を示す前立腺腺癌で, 膀胱の病変はその浸潤であった症例である.
  • 熊谷 久治郎, 新池谷 保, 山岡 育代
    2004 年 43 巻 1 号 p. 79-81
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:膀胱の好酸球性肉芽腫は非常にまれである. 今回, 尿中にLangerhans細胞の出現をみた1例を経験したので報告する.
    症例:61歳, 女性, 顕微鏡的血尿と軽度の膀胱炎症状のため受診した. 尿細胞診では組織球様細胞がゆるい結合性集団として, あるいは孤在性にみられ, 好酸性顆粒の目立たない好酸球も少数認めた. 組織球様細胞は切れ込みを有する特徴的な核の像を示していた. 膀胱鏡では多発性の小隆起性病変を認め, 生検では核に溝や切れ込みを有する組織球の増殖と好酸球およびリンパ球浸潤がみられた. 免疫組織化学的には組織球はS-100蛋白陽性, CD68, およびリゾチーム陰性で好酸球性肉芽腫と診断された. これらの所見は他の類似細胞とLangerhans細胞との鑑別に重要である.
    結論:Langerhans細胞は特徴的な細胞像を示すので, 細胞診は好酸球性肉芽腫の診断に役立つと思われる.
  • 武井 英博
    2004 年 43 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 2004/01/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    細胞診は, 組織診と比べ主観的な要素が大きく, その診断過程に細胞検査士によるスクリーニングがあり, さらにGold standardとして, 生検による組織診があるため, その精度管理は独特である. 米国では, 1988年に改正された法律 (CLIA'88) に基づき細胞診の精度管理がなされている.
    当院 (Medical Center of Louisiana) では, 毎月末に精度管理のためのカンファレンスが開かれており, 今回は, この際, 使われるレポートに基づき, 米国の子宮頸部細胞診の精度管理について紹介する.
    カンファレンスでは, 1) その月の検体数とその推移, 2) Bethesda Systemに基づくAdoquacyの評価, 3) Negative症例のRescreen, 4) 細胞診と組織診の対比, 5) High-grade squamous intraepithelial lesion (SIL) 症例の5年前までのNegativeスライドのRescreon, 6) Atypical squamous cell of undetermined significance (ASCUS): SIL比, 7) 診断カテゴリー別の診断比率, 8) Turnaround Time, について検討される.
    精度の高い診断レポートを臨床医へ供給するため, その精度管理は病理医が中心的な役割を果たさねばならない.
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