日本臨床細胞学会雑誌
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43 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 今井 律子, 夏目 園子, 橋本 政子, 高木 里枝, 深津 俊明, 佐竹 立成
    2004 年 43 巻 5 号 p. 311-315
    発行日: 2004/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:細胞異型度1の移行上皮癌細胞と良性小型異型尿路上皮細胞との鑑別のために, 核溝とその形態の種類別出現頻度を明らかにする.
    対象: 正常尿路上皮細胞 (膀胱洗浄液細胞診で陰性判定され, 尿路上皮癌や前立腺癌の既往歴がなく, 膀胱鏡検査などの泌尿器科的検索で膀胱粘膜に異常所見が認められなかった8例8検体), 良性小型異型尿路上皮細胞 (15例16検体), 移行上皮癌細胞 (44例60検体).
    方法:各細胞を1検体20個以上を無作為に選出して観察し, 核溝の出現頻度, 形態を調査し比較した. 核溝の形態は1型: 核の長径に一致して認められる, 2型: 短く多方向に認められる, 3型: 長く多方向に認められる, に分類した.
    結果:核溝の出現頻度; 正常尿路上皮細胞10%, 良性小型異型尿路上皮細胞35%, 移行上皮癌細胞異型度1, 2, 3はおのおの77%, 56%, 68%であった.
    核溝の種類別出現頻度; 1型, 2型, 3型の順に1群の正常尿路上皮細胞では大型核を有する胞が4%, 7%, 2%, 小型核を有する細胞が2%, 4%, 1%であった. 良性小型異型尿路上皮細胞では6%, 17%, 12%であった. 移行上皮癌細胞では細胞異型度1が11%, 31%, 35%, 細胞異型度2が9%, 27%, 20%, 細胞異型度3が6%, 35%, 27%であった.
    統計解析結果; 核溝の出現頻度は細胞異型度1の移行上皮癌細胞と良性小型異型尿路上皮細胞との間に有意差が認められた (p<0.01, t-test). 種類別出現頻度では各細胞群間に有意差は認められなかった (X2-test).
    結論:核溝の出現頻度は細胞異型度1の移行上皮癌細胞と良性小型異型尿路上皮細胞との鑑別のために有用である.
  • 藪下 竜司, 宮地 努, 森 隆弘, 大島 孝平, 館野 みちる, 奥村 英雄, 城殿 隆, 市野 雅之, 河合 尚子, 社本 幹博
    2004 年 43 巻 5 号 p. 316-320
    発行日: 2004/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:婦人科細胞診における精度管理方法の一つとして, 結果を報告する前にすべての陰性標本を異型細胞の見落とされやすい部分を中心にスクリーニングを行い, 見落とし率の改善を図ることを目的とした. さらに, 平成14年7月に導入したFocal Pointを利用してのCyto Naviを用いたチェックも施行し, 前者のスクリーニングによる報告前チェックの見落とし率との比較検討を試みた.
    方法:対象は平成13年2月から平成15年5月までに受託した8万8972件の婦人科細胞診検体である. 平成13年2月から平成14年6月までの陰性と判定された標本は, 異型細胞の見落とされやすい部分を中心としたファーストスクリーニングにおける報告前チェックを, 平成14年7月から平成15年5月までの陰性標本についてはCyto Naviチェックを行った.
    成績:報告前チェックを始める前の平成13年2月までの見落とし率は0.43%であったが, その後, 報告前チェックを行うことにより, 0.15%の見落とし率にまで改善することができた. また, Cyto Naviチェックにおいても見落とし率は0.15%であり, 同程度の改善が得られた.
    結論:人間が行う細胞診検査で起こる異型細胞の見落としは, スクリーニングすることによる報告前チェックにより見落とし率の大幅な改善ができた. この方法による結果は, より客観的な方法であるFocal Pointによるスクリーニングと同程度の成績であった.
  • 山田 美保, 服部 学, 横山 大, 柿沼 廣邦, 渡辺 純, 品田 純, 小中 千守, 蔵本 博行
    2004 年 43 巻 5 号 p. 321-326
    発行日: 2004/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:横紋筋肉腫は比較的小児に多い悪性腫瘍であり, 成人の胸壁に発生するものは非常にまれである. 今回われわれはその1例を経験したので報告する.
    症例:症例は31歳, 男性. 左腋窩と左肩に痛みを感じ, 左前胸部に広がったため近医を受診したところ, 胸部X-Pにて左肺野に巨大な陰影を指摘された. そのため, 当院を紹介され受診した. CTにて左前胸腔内に腫瘤が肺を圧排して認められたため, 胸壁由来のものと推測された. 経皮的生検と針洗浄細胞診が施行され, 細胞診でClass V, 生検では悪性と判定されたが, 両者ともに組織型の判定は困難であった. 腫瘍摘出術が施行され, その捺印細胞診では,(1) 結合性のない多形性細胞,(2) 大小さまざまで単核または多核の腫瘍細胞,(3) ライトグリーンに好染する顆粒状の細胞質,(4) 核偏在性で, 核は類円形を基本に異型が強いものが多くを占める所見を呈した. 組織標本では, 多形性の強い大小さまざまな腫瘍細胞が種々の方向に錯綜して配列していた. 免疫組織化学的検索ではMyoglobin, Desmin, HHF35が陽性を示した.
    結論:胸壁発生の横紋筋肉腫は非常にまれであるため, 細胞診で診断するのは困難であるが, 特徴的な細胞像の的確な把握により診断することが可能である.
  • 前田 智治, 古谷 敬三, 古谷 知子, 井上 信行, 木下 幸正, 大泉 えり子, 河野 兼久
    2004 年 43 巻 5 号 p. 327-330
    発行日: 2004/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:術中迅速診断に圧挫細胞診が有用であった乳頭型髄膜腫を経験したので報告する.
    症例:18歳, 女性.約8ヵ月前より頭痛, ふらつきが出現し, CT, MRIで左小脳橋角部から中頭蓋窩に6×5cm大の腫瘤と水頭症が認められた.神経鞘腫や髄膜腫などの頭蓋底腫瘍を疑い, 腫瘍摘出手術を施行した.確定診断のため, 術中迅速検査が施行された.材料より凍結切片の組織標本と圧挫による細胞診標本を作成した.凍結組織標本では大小不同のみられる核と広い細胞質をもつ細胞が, 一部に偽ロゼット様構造をもちシート状増殖を示し, 良性・悪性および病理診断に苦慮したが, 同時に施行した圧挫細胞診標本では線維血管を軸とした乳頭状構造が明瞭で, 核異型, 核クロマチン増量は乏しく, 乳頭型髄膜腫と術中報告をした.永久組織標本では腫瘍細胞が線維血管周囲に乳頭状に増殖する所見が明瞭で, 免疫染色ではEMA陽性, GFAP陰性で, 最終診断は乳頭型髄膜腫とした.
    結語:術中迅速診断において, 人工的修飾が加わりにくい圧挫細胞診は組織検査の補助診断として有用である.
  • 片山 博徳, 前田 昭太郎, 細根 勝, 原 博, 山王 直子, 志村 俊郎, 横山 宗伯, 内藤 善哉
    2004 年 43 巻 5 号 p. 331-334
    発行日: 2004/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:脳腫瘍の迅速組織診断では, 凍結によるartifactのために診断に難渋することが少なくなく, 細胞診の併用が有用である.今回, 術中迅速診断に細胞診と迅速免疫染色が有用であった膠芽腫 (肥絆細胞型) の1例を経験したので報告する.
    症例:50歳, 女性, 左側頭部に強い頭痛を認めたがそのまま放置した.同部位に頭痛が持続し, 1ヵ月後に当院脳神経外科を受診した.MRIにて左前頭葉に3×2cmの腫瘍性病変を認め, 腫瘍摘出術が施行された。術中圧挫細胞診では円形-類円形のライト緑好性の細胞質および偏在性の異型核からなるN/C比大の異型細胞が主体の腫瘍であった.
    組織所見でも凍結によるartifactがみられたが, 基本的に細胞診と同様の腫瘍細胞がみられた.第一に膠芽腫 (肥胖細胞型) が考えられたが転移性腺癌, 悪性リンパ腫との鑑別のために迅速免疫染色 (所用時間約10分) を行った.GFAP (+), keratin (-), LCA (-) であり膠芽腫 (肥胖細胞型) と診断した.
    結論:膠芽腫 (肥胖細胞型) の術中迅速診断に圧挫細胞診および免疫染色が有用であった.
  • 設楽 保江, 高橋 亘, 柴田 理恵, 森川 征彦
    2004 年 43 巻 5 号 p. 335-339
    発行日: 2004/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:小児副腎皮質癌はまれな腫瘍で, 診断にも注意が必要である.
    症例:4歳, 女児, 腹部腫瘤, 男性化兆候があり, 内分泌学的に副腎性アンドロゲンの高値を認めた. 摘出腫瘍の大きさは12.0×8.0×7.5cm, 430g. 被膜に覆われた赤褐色の腫瘍で, 割面は膨隆し出血壊死性で下大静脈内への腫瘍浸潤を認めた. 組織学的には好酸性の腫瘍細胞が充実性に増殖しており, 核は大小不同を示し大型異型核を有する細胞も目立った. 電顕的に, 滑面・粗面小胞体が発達し, 球状の糸粒体が豊富で, 脂肪滴も多く, 副腎皮質細胞に特徴的な像がみられた. 捺印細胞診では, 出血壊死性の背景にやや大型で類円形の腫瘍細胞が散在性にみられ, その細胞質は厚く豊富で好酸性の顆粒を有し, 核は偏在傾向を示し大小不同があり核クロマチンは粗く増量していた. 多核細胞, 核内空胞も散見された.
    結論:本症例の病理組織像はアンドロゲン産生副腎皮質癌のそれと合致していた. 本腫瘍の診断には, 細胞の異型度, 腫瘍の大きさ, 内分泌学的データを加味することが必須と思われた.
  • 遠藤 浩之, 石原 法子, 樋浦 賢太郎, 三木 弘美
    2004 年 43 巻 5 号 p. 340-344
    発行日: 2004/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:乳腺Metaplastic carcinomaの一亜型であるMatrix-producing carcinomaを経験したので報告する.
    症例:37歳, 女性, 左乳房腫瘤を自覚して当院を受診. 穿刺吸引細胞診は検体不適正であったが, 触診や画像診断で悪性が疑われた. 生検にて腺癌と診断され, 手術が施行された. 組織診は腫瘍辺縁部に浸潤性乳管癌成分があり, 腫瘍の中心部にいくにしたがって粘液様基質が増加し, 粘液型軟骨肉腫様となっていた. 癌細胞と粘液様基質の間に紡錘形細胞が介在せずMatrix-producing carcinomaと考えた. なお, 穿刺吸引細胞診標本では粘液様基質を背景に, 類円形腫瘍細胞が不整集塊状から孤立散在性に出現し, それらの間に移行像を示していた. また, 粘液様基質を腫瘍細胞が取り囲む細胞像が特徴的であった.
    結論:乳腺Matrix-producing carcinomaはまれな腫瘍である. 細胞診にて粘液様基質を背景に, 異型の強い腫瘍細胞が集塊状から孤在性に出現する場合は, 本組織型も念頭におく必要があると思われた.
  • 豊岡 辰明, 岩永 彩, 館 裕一, 奥 竜太, 内藤 愼二
    2004 年 43 巻 5 号 p. 345-346
    発行日: 2004/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    We report a rare case of inflammatory pseudotumor arising in the left submandibular gland. A 74-year-old man underwent selective neck dissection for a left submandibular gland mass. Imprint cytological examination of the specimen revealed numerous lymphocytes, plasma cells and myofibroblastic cells. Histopathology showed fibroblastic spindle cells with numerous mature plasma cells arranged in poorly formed fascicles and in a vaguely storiform pattern. The lesion mass was diagnosed as an inflammatory pseudotumor. Thus, diagnosis could be hypothesized from the cytological findings alone.
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