目的:細胞異型度1の移行上皮癌細胞と良性小型異型尿路上皮細胞との鑑別のために, 核溝とその形態の種類別出現頻度を明らかにする.
対象: 正常尿路上皮細胞 (膀胱洗浄液細胞診で陰性判定され, 尿路上皮癌や前立腺癌の既往歴がなく, 膀胱鏡検査などの泌尿器科的検索で膀胱粘膜に異常所見が認められなかった8例8検体), 良性小型異型尿路上皮細胞 (15例16検体), 移行上皮癌細胞 (44例60検体).
方法:各細胞を1検体20個以上を無作為に選出して観察し, 核溝の出現頻度, 形態を調査し比較した. 核溝の形態は1型: 核の長径に一致して認められる, 2型: 短く多方向に認められる, 3型: 長く多方向に認められる, に分類した.
結果:核溝の出現頻度; 正常尿路上皮細胞10%, 良性小型異型尿路上皮細胞35%, 移行上皮癌細胞異型度1, 2, 3はおのおの77%, 56%, 68%であった.
核溝の種類別出現頻度; 1型, 2型, 3型の順に1群の正常尿路上皮細胞では大型核を有する胞が4%, 7%, 2%, 小型核を有する細胞が2%, 4%, 1%であった. 良性小型異型尿路上皮細胞では6%, 17%, 12%であった. 移行上皮癌細胞では細胞異型度1が11%, 31%, 35%, 細胞異型度2が9%, 27%, 20%, 細胞異型度3が6%, 35%, 27%であった.
統計解析結果; 核溝の出現頻度は細胞異型度1の移行上皮癌細胞と良性小型異型尿路上皮細胞との間に有意差が認められた (p<0.01, t-test). 種類別出現頻度では各細胞群間に有意差は認められなかった (
X2-test).
結論:核溝の出現頻度は細胞異型度1の移行上皮癌細胞と良性小型異型尿路上皮細胞との鑑別のために有用である.
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