日本臨床細胞学会雑誌
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44 巻, 6 号
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  • 米国における実際
    武井 英博, 鈴木 博義, 高橋 尚美, Suzanne Z. Powell
    2005 年 44 巻 6 号 p. 333-337
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    下垂体手術の術中迅速診断において細胞診の有用性は広く認識されており, 米国では, 通常, 迅速細胞診が凍結組織診断に代わって用いられている. これらの検体の大部分は下垂体腺腫からなり, 迅速診断は腺腫の確認, その他のトルコ鞍部に発生する腫瘍の除外を主たる目的とする. 下垂体腺腫は, 腺房構築が破壊されているため, 捺印法により容易に細胞が剥離するのに対し, 構築が保たれている正常下垂体からの剥離細胞は少ない. 細胞像のみならず剥離した細胞数も診断に有用なため, 細胞診は圧挫法よりも捺印法のほうが一般に推奨されている.
    下垂体腺腫の細胞所見は増殖する細胞の均一性を最大の特徴とし, 短い索状, 小集塊, 乳頭状, 腺房形成などの構造も認められる. これらの構造は, まれに遭遇する転移性癌との鑑別を困難にしている要因の一つである. 核は正常下垂体のそれと比較してわずかに大きく, やや楕円形の割合が増しており, いわゆるゴマ塩状のクロマチン, しばしば小型の核小体を有する. 核の大小不同が目立つことや多核の細胞も散見されるが, 核のクロマチン所見はどの細胞にも共通している. 胞体の染色性はさまざまで, ホルモン産生上のサブタイプの決定は不可能である.
  • 北村 和久, 西尾 由紀子, 三田 和博, 佐川 弘美, 石井 みどり, 本野 紀夫, 稲山 嘉明
    2005 年 44 巻 6 号 p. 338-344
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:CDX-2免疫染色が腹水腺癌細胞の原発巣推定に有用であるかを, 特に卵巣癌との鑑別に視点をあて検討した.
    方法:腹水中に腺癌細胞が出現し, 原発巣の判明した33例を対象とした (大腸癌6例, 胃癌7例, 膵癌5例, 胆嚢癌3例, 卵巣癌12例). Pap標本を用いCDX-2免疫染色を行い, 核染の強さと陽性細胞比率の組み合わせにより1+~4+に評価し, 4+を高発現群とみなした.
    成績:大腸癌で全例陽性 (6/6), 膵癌 (2/5), 胆嚢癌 (1/3), 胃癌 (2/7) の順であった. 大腸癌は6例中5例が4+, 1例が3+で, 高発現群が多かった. 他の消化器癌は2+~1+, 卵巣癌や中皮細胞は全例陰性であった. 同一症例の免疫組織染色では, 大腸癌全例が高発現群で, 一部の膵癌や胃癌例を除き, ほぼ同様の傾向がみられた.
    結論:高発現を呈する腹水中の腺癌細胞は大腸癌由来の確率が高いという点に着目すれば, CDX-2免疫染色が他の消化器腺癌との鑑別に有用である. 卵巣癌細胞は検索したかぎり全例陰性で, 卵巣癌との鑑別に有用と思われた. すなわち, CDX-2免疫染色は体腔液中に出現する腺癌細胞の原発巣推定の一助になると考えられた.
  • 星 利良, 佐藤 之俊, 都竹 正文, 宝来 威, 石川 雄一
    2005 年 44 巻 6 号 p. 345-352
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:肺大細胞神経内分泌癌 (LCNEC) と肺小細胞癌 (SCLC) の鑑別を目的とし, それらの細胞像を比較検討した.
    対象と方法:対象は摘出材料の組織学的検索にてLCNECと診断された22例とSCLC, intermediatetype (IMT) 20例. それらの経気管支針穿刺および摘出材料の捺印標本を用い, 細胞集塊, 細胞の出現様式, 細胞の大きさおよび性状について比較検討した.
    結果:LCNECは構成細胞数が60個以上の大型集塊での出現が目立ち, その集塊は辺縁の結合性が強く柵状配列がみられた. SCLCは散在性での出現が多く, 集塊で出現してもその結合性は弱かった. LCNECはSCLCと比較して, 細胞面積が120μm2で核小体の目立たない腫瘍細胞の出現率が低かった.
    結論:今回LCNECとSCLCとの鑑別点として, 出現形式, 集塊の構成細胞数集塊辺縁の結合性および配列, 核小体の目立たない小型腫瘍細胞の出現頻度が重要であることが示された. これらの細胞所見からLCNECとSCLCの細胞学的診断は可能であると考えられる.
  • 各種染色・FISH法への応用と影響
    石田 克成, 谷山 清己, 戸田 環, 藤本 貴美子, 村上 慶子, 本下 潤一, 藤本 淳也
    2005 年 44 巻 6 号 p. 353-359
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的:細胞転写法の所要時問の短縮化を目的として, その改良を行い, 免疫染色やFISH法への影響を検討した.
    方法:胃腺癌11例の腹腔洗浄液, 同4例の腫瘍部擦過細胞および浸潤性乳管癌6例の腫瘍部擦過細胞を対象とした. 未転写スライドを比較対照とし, 細胞転写5方法で細胞転写スライドを作製した. 腹腔洗浄液と胃腺癌擦過細胞では, PAS反応, 免疫染色 (Ber-EP4, cytokeratin (CK) 5/6) を行い, 染色強度を比較した. また, 乳管癌擦過細胞では, HER-2DNAプローブを用いたFISH法を行い, シグナル強度を比較した.
    成績:転写5方法 (A~E) での所要時間は, A: 2日, B: 2日, C: 1時間, D: 40分, E: 23分であった. PAS反応とBer-EP4免疫染色では対照スライドに比べ, 染色強度・シグナルの軽度減少がみられたが, 判定への影響はなかった. CK5/6免疫染色では対照スライドに比べ, 転写4方法 (A, C, D, E) のスライドで染色強度の増加がみられた. FISH法では転写5方法中, E法が最も良好であった.
    結論:E法での細胞転写法はきわめて短時間で完了し, 日常の細胞診断に有用である.
  • 関田 信之, 斉藤 博子, 西周 裕晃, 鈴木 学, 板倉 明司, 桑原 竹一郎
    2005 年 44 巻 6 号 p. 360-363
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:悪性線維性組織球腫は軟部悪性腫瘍の約25%を占める最も頻度の高い軟部肉腫である. われわれは今回, 病理学的に炎症型悪性線維性組織球腫と診断された症例を経験したので, その細胞像を中心に報告する.
    症例:50歳代, 男性. 主訴は左側腹部痛. 腹部超音波検査にて腹壁に最大径約30mmの腫瘤を認めた. 穿刺吸引細胞診では, 多数の大型の細胞が孤立散在性に出現していた. 個々の細胞は紡錘形細胞, 巨細胞, 多核細胞など多彩であり大小不同が強く, 淡い胞体と大型の核小体を有していた. 摘出腫瘍の組織は, 出血・壊死および炎症細胞浸潤を伴っており, 腫瘍細胞は特徴的な花むしろ様の配列を示していた. 免疫染色を行ったうえで, 炎症型悪性線維性組織球腫と最終的に診断された.
    結論:細胞診で特徴的な細胞像をとらえることは重要であるが, 細胞所見からのみで本疾患を診断するには限界がある. やはり, 診断の確定には種々の臨床情報に加えて十分な材料で検討された病理組織診断情報を必要とすると考えられた.
  • 関 邦子, 石山 宮子, 横溝 香, 千葉 諭, 飯田 萬一
    2005 年 44 巻 6 号 p. 364-369
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:まれな腫瘍である破骨細胞様巨細胞 (osteoclast-like giant cell, 以下OGC) を伴った肺の多形癌を経験したので報告する.
    症例:70歳, 男性. 血疾を主訴にCTで右肺に腫瘤を認め精査となった. 喀疾に変性異型細胞とOGCを認め, 針生検時細胞診では不整形腫大核をもつ異型細胞とOGCが認められ, 組織診では単核~多核細胞のびまん性増生がみられたが確定診断は困難であった. 腫瘤の増大が認められ右肺下葉摘出術が施行された. 手術材料からの細胞診では, 核形不整や多核化が顕著で多形性に富んだ異型細胞とOGCが多数混在して認められた. 組織診で多形性に富む肉腫様細胞の増生が腫瘍の主体を占め, 混合型腺癌が混在し, 広範な出血壊死を認めた. 肉腫様細胞に上皮マーカーが陽性であり, 多形癌に該当する腫瘍と考えた.
    結論:肺多形癌はまれな腫瘍で, 細胞診での推定は困難なことが多いが, 判定困難な異型細胞とともにOGCを認めた場合, 肉腫様成分を伴う多形癌を考慮に入れて鏡検する必要があると思われた.
  • 刀稱 亀代志, 伊藤 以知郎, 渡部 庸一, 大野 幸代, 永田 かおり, 徳重 佐矢加
    2005 年 44 巻 6 号 p. 370-375
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:肺のoncocytic carcinoidはまれでoncocyteに類似した腫瘍細胞が主体を占めるcarcinoid tumorの一亜型であり, その細胞所見の詳細な記述は少ない. 今回われわれはoncocytic carcinoidの1例を経験したので報告する.
    症例:62歳, 男性. 検診胸部異常陰影指摘. 胸部CTにて右B10cが関与する境界明瞭な結節を認め, 経気管支穿刺吸引細胞診にて腫瘍性病変を疑い, 経気管支肺生検においてcarcinoid tumorの診断, 右肺下葉切除された. 腫瘍捺印細胞所見からはoncocytic carcinoidを推定し, 組織学的検索, 電子顕微鏡的検索により, typical carcinoidの亜型であるoncocytic carcinoidと診断された.
    結論:経気管支穿刺吸引細胞診において好酸性細胞主体の像がみられた場合, oncocytic carcinoidも念頭に置く必要があると思われたが, 細胞所見のみでoncocytic carcinoidと断定することは不可能であり, 確定診断には組織学的所見, 免疫組織・細胞化学的所見, 電子顕微鏡的所見を総合的に判断する必要がある.
  • 佐々木 健司, 神田 真規, 米原 修治, 倉西 文仁, 黒田 義則
    2005 年 44 巻 6 号 p. 376-380
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:乳腺の多形腺腫はきわめてまれな良性腫瘍である.ここでは, その1例について穿刺吸引細胞所見を中心に報告する.
    症例:患者は75歳, 女性である.腫瘤摘出の約1ヵ月半前に左乳房の腫瘤に気づいて他院を受診し, 乳癌の疑いにて当院外科に紹介された. マンモグラフィではカテゴリー3, 触診では悪性が疑われて穿刺吸引細胞診が行われた. 穿刺吸引標本では乳管上皮細胞とアポクリン化生細胞, 筋上皮細胞よりなっていた.乳管上皮細胞やアポクリン化生細胞は数少なかったが, 筋上皮細胞は上皮様集塊や粘液腫様パターンを示して多数出現していた. また, 軟骨細胞や類骨もみられた. いずれの細胞にも多形性や核の異型性, 核分裂像は認められなかったことから, 多形腺腫を推定した. 病理組織学的には唾液腺に発生する多形腺腫と同様の像を示した. 上皮様集塊や粘液腫様部分を構成する細胞は免疫組織化学的にも筋上皮細胞に一致した.
    結論:種々の出現パターンを示す筋上皮細胞が多数みられるのが本腫瘍の特徴であり, 多形腺腫の診断には筋上皮細胞の形態学的多彩性に着目する必要があると考えられた.
  • 磯崎 岳夫, 植草 正, 平林 寧子, 海老原 善郎
    2005 年 44 巻 6 号 p. 381-384
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:膀胱の尿路上皮癌 (urothelial carcinoma) のきわめてまれな亜型であるmicropapillary variantの腹腔洗浄細胞診での細胞像を経験したので報告した.
    症例:患者は78歳の男性で, 他院にて原発不明の転移性膀胱腺癌と診断された. その後, 当院にて経尿道的膀胱腫瘍切除 (TURBT) 材料から組織学的に膀胱原発のurothelial carcinoma, micropapillry variant (以下UC・MPV) と診断された. 胃・空腸吻合術時に行われた腹腔洗浄細胞診では結合性の強い乳頭状細胞集塊が多数認められ, 集塊を構成する細胞の多くは核クロマチン増量を示す腫瘍細胞であった. 細胞質の泡沫状変化や空胞化を認める細胞からなる集塊もみられた.このような細胞には核偏在が目立ち, N/C比は低い傾向にあった.また, 一部の腫瘍細胞の細胞質内に粘液様物質が観察され, 免疫組織化学的にCEAの発現を認めた.
    結論:小乳頭状細胞集塊の出現, 細胞質の空胞化がUC・MPVの細胞学的特徴となりうる可能性が示唆された.
  • 坂田 慶太, 岩田 洋介, 浅野 敦, 今吉 由美, 児玉 千里, 佐々 敏
    2005 年 44 巻 6 号 p. 385-389
    発行日: 2005/11/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景:子宮原発形質細胞腫はきわめてまれである. われわれは腹水の細胞診で悪性腫瘍細胞を認めたが診断に苦慮し, 抗免疫グロブリン抗体を使用した免疫組織化学的検査で診断できた子宮原発形質細胞腫を経験したので報告する.
    症例:57歳, 女性. 下腹部痛で大垣市民病院産婦人科を受診し, 腹水細胞診と子宮内膜組織生検で形質細胞腫と診断され, 子宮全摘術, 両側付属器摘出術と大網虫垂切除術が施行された. 腹水中には孤立散在性の腫瘍細胞を多数認め, 粗大なクロマチンと核小体の目立つ偏在する異型核, 核周明庭, 好塩基性の細胞質が特徴であった. 核クロマチンが正常形質細胞に似た車軸様の腫瘍細胞はほとんどなく, 未分化癌, 他の肉腫との鑑別が難しかった. 腫瘍細胞は上皮と非上皮細胞のマーカーがvimentinとEMAを除いて陰性であったため, 診断に苦慮したが, 免疫グロブリンIgGとλ鎖が陽性となり腹膜播種のある子宮原発形質細胞腫と診断した. 手術後は化学療法を施行されたが1ヵ月後に死亡した.病理解剖は実施しなかった.
    結論:免疫グロブリンの免疫組織化学的検査は, 診断が難しい髄外性形質細胞腫に有用であった.
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