目的:下咽頭癌は早期に特異的な症状が発現しにくいため, 確定診断時に進行癌であることが多く早期発見が望まれている.早期下咽頭扁平上皮癌発見における喀痰細胞診の有用性の評価を目的とし, その細胞像について検討した.
対象と方法:平成5-15年度の喀痰集検受診者11万237人からの発見癌201例のうち, 下咽頭扁平上皮癌が確定診断された8例を対象とした.同症例の蓄痰標本に出現した中等度異型以上の異型扁平上皮細胞, および扁平上皮癌細胞について細胞学的検討を行った.
成績:発見された下咽頭癌の病期は, I期: 3例, III・IV期: 5例であった.喀痰中の異型上皮細胞および癌細胞数は, I期: 50.8個, III期: 333.3個, IV期: 427.4個で, I期癌では進行期癌と比較し有意に少数であった (P<O.05).さらに異型上皮細胞および癌細胞のタイプ別出現比率では, 傍基底型異型細胞の出現が特徴的であり, また病期が進行しても変性萎縮異型細胞の顕著な増加は認められなかった.
結論:細胞量が十分に塗抹された喀痰標本をより詳細にスクリーニングすることで, 下咽頭癌が早期発見される可能性もあり, 喀痰細胞診の有用性が示唆された.
抄録全体を表示