日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
45 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 原 喜与一, 桂 榮孝, 九嶋 亮治, 井上 修平, 陣内 研二
    2006 年 45 巻 4 号 p. 219-226
    発行日: 2006/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的: 気管支擦過標本および気管支肺胞洗浄液標本 (以下, 気管支標本) から, 肺アスペルギルス感染を推定できるための条件を検討した.
    方法: パパニコロウ染色を施した気管支標本の内, 背景に多核白血球の多い炎症性背景, または壊死物が多い異常背景を呈した標本について, 菌糸およびシュウ酸カルシウム結晶を検索した後, 真菌染色を施行し真菌を検索した.また, 培養菌糸の電子顕微鏡観察も加えた.
    成績: 炎症性あるいは壊死性背景を呈した148例の気管支標本から, 27例の肺アスペルギルス感染と2例の肺放線菌感染が診断できた.これら29例のうち, パパニコロウ染色標本から菌糸の識別が可能であったのはわずか13例であり, 真菌染色を施行して初めて菌糸の存在が確認できたのは16例であった.シュウ酸カルシウム結晶は3例に見いだし, すべてアスペルギルス感染を推定する契機となった.電子顕微鏡観察において, アスペルギルス菌糸が死菌化すると, 菌糸内部が空洞化し菌糸壁にも菲薄化と断裂化を生じ, パパニコロウ染色の染まりが明らかに減弱した.
    結論:気管支標本からアスペルギルス菌糸を見いだすには, パパニコロウ染色標本だけでは菌糸を識別できないことが多く, その原因として, 死菌化による菌糸内部の空洞化と菌壁の菲薄化に伴い, 淡染または非染するのが原因と考えられた.多核白血球または壊死物の多い背景を呈する気管支標本においては, シュウ酸カルシウム結晶の検索, および真菌染色を施行しアスペルギルス菌糸を見いだすことは, 肺アスペルギルス症の診断に有用であると考える.
  • 武井 英博, 鈴木 博義
    2006 年 45 巻 4 号 p. 227-231
    発行日: 2006/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的: 髄芽腫の細胞像と鑑別診断を検討し, 術中細胞診への有効性を考察した.
    方法: 材料は, 組織学的に単一組織像 [腫瘍の80%を主な3種類のタイプ: 古典的 (C), 結節 (N), 大細胞/退形成 (LC/A) のうちの1種類からなっているもの] と診断がついた43例の, 術中迅速診断時に作製された細胞像を検討した.
    成績: C, Nタイプは細胞像では鑑別は不可能で, 肺小細胞癌類似の細胞所見を呈していた.LC/Aタイプは大型の多形細胞の増殖からなり, クロマチンの凝集, 核小体が目立った.著明なカニバリズム, 大型核小体, 核異型と, 多数の細胞分裂像, アポトーシス像はLC/Aに多く認められ, ロゼット形成はどのタイプにも認められた.興味深い所見として, 傍核細胞内封入体, 細胞体内空胞, カニバリズムがみられた.
    結論: 著明なカニバリズム, 大型核小体, 核異型と, 多数の細胞分裂像, アポトーシス像は, 術中迅速診断で髄芽腫のLC/Aとそれ以外のタイプとの鑑別に有用である.鑑別診断では, atypicalteratoid/rhab doidtumorが最も問題になるが“rhabdoid cells”ロゼットの形成を探すことで, 鑑別は可能になるかもしれない.
  • 標本作製法を中心に
    小椋 聖子, 清水 恵子, 江木 さつき, 則松 良明, 桜井 幹己
    2006 年 45 巻 4 号 p. 232-237
    発行日: 2006/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的: 自然尿を用いた尿細胞診による低異型度尿路上皮病変の検出に適した標本作製法を見いだす.
    方法: 組織診にて尿路上皮癌Gradelと診断され術前に自然尿細胞診が行われた170検体と, 同期間に疑陽性とされたが腫瘍性病変が認められなかった誤疑陽性50検体を対象とした.標本作製法はオートスメアによる遠心直接塗抹法 (A法) 36検体, すり合わせ法 (S法) 44検体, すり合わせ法にスプレー固定標本を加えたスプレー併用法 (SS法) 52検体, サイトスピンによる遠心直接塗抹法 (C法) 38検体である.A, S, SS法ではパパニコロウ染色とギムザ染色を併用し, C法ではパパニコロウ染色のみを施行した.各法における細胞診成績の統計学的有意差の有無と誤疑陽性症例の細胞像を検討した.
    成績:(1) 4法問の陽性率に有意差は認められなかった.(2) 4法間における誤疑陽性率ではA法がSS法に比べ, 有意に高かった (p<0.05).
    結論:(1) 簡便なすり合わせ法においても, ギムザ染色を併用することで特別な機器を必要とする遠心直接塗抹法に準じた成績を得ることができる.(2) 誤疑陽性判定を減少させるためには, ギムザ染色施行時の検体処理法は遠心直接塗抹法よりすり合わせ法が適している.
  • 上村 直美, 児玉 省二, 笹川 基, 本間 滋, 生野 寿史
    2006 年 45 巻 4 号 p. 238-241
    発行日: 2006/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的: 子宮頸部細胞診で, クラスIII, IIIaと診断された二次検診の組織診断の現況を明らかにすること.
    対象と方法: 新潟県立がんセンター新潟病院外来で, 2001~2003年までに子宮頸部細胞診でクラスIII, IIIaに対してコルポ診下に組織検査を実施した症例.
    成績: 289名 (クラスIIIが45名, クラスIIIaが244名) の組織診断結果は, 軽度異形成39名, 中等度異形成19名, 高度異形成33名, 上皮内癌40名, 浸潤癌14名で, 142名49.1%(クラスIII53.3%, クラスIIIa48.4%) に腫瘍性病変を認めなかった.二次検診の端緒となった経緯から外来群, 検診群で組織診断結果を比較すると, クラスIIIで異常なしは外来群5例中1例 (20.0%) に対し, 検診群は40例中23例 (57.5%) で, 検診群は半数以上が腫瘍病変を発見できなかった.細胞診クラスIIIaでは, 組織学的に異常なしは外来群17例中3例 (17.6%) に対し, 検診群は227例中115例 (50.6%) で, クラスIIIと同様に検診群で半数以上が腫瘍病変を発見できなかった.
    結論: 検診群では細胞診クラスIII, IIIaの約半数に組織学的腫瘍病変が確認できず, ベセスダ分類によるHPV診断の影響がうかがえた.
  • 治療前予後判定への有用性
    西村 由香里, 渡辺 純, 上坊 敏子, 川口 美和, 新井 努, 服部 学, 岡安 勲, 蔵本 博行
    2006 年 45 巻 4 号 p. 242-249
    発行日: 2006/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    目的: Thinlayer法による子宮内膜細胞診材料を用い, 術前予後判定法としての有用性を検討した.
    方法: 2004年4月~2005年5月の子宮内膜癌44例における, それぞれの外来時, 手術摘出時採取標本を対象とした.複数枚作製したThinlayer標本を用いてcyclin A, p53, Progesterone Receptor B (PR-B), Estrogen Receptor-α (ER-α) を免疫細胞化学染色し, 臨床病理学的因子と比較した.
    成績: cyclinA, p53が陽性である症例は, 低分化で, stageが進行しており, 脈管侵襲があり, 筋層浸潤が深いといつた悪性度の高い傾向を認めた.また, PR-B, ER-α が陽性であるものは, 高分化で, earlystageであり, 脈管侵襲はなく, 筋層浸潤が浅いといった悪性度の低い傾向を認めた.外来時および手術時採取標本におけるこれら各因子の染色結果は, 有意に相関していた.
    結論: Thinlayer法にて複数の標本を作製することにより, 免疫細胞化学への応用が可能となった.また, 術前予後判定法としての有用性が期待される.
  • 近内 明子, 小原 明, 金守 彰, 田丸 盛夫, 田丸 順子, 栗田 佳子, 佐藤 英章
    2006 年 45 巻 4 号 p. 250-253
    発行日: 2006/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景: 上皮筋上皮癌は, 全唾液腺腫瘍の約1%を占める比較的まれな低悪性度癌である.われわれは, 耳下腺に発生した上皮筋上皮癌の1例を経験したので, その細胞ならびに病理組織学的所見を中心に, 鑑別診断も含め報告する.
    症例: 65歳, 男性.約3年前より左耳下腺の腫脹を自覚し, 当院耳鼻科を受診した.諸検査の結果, 耳下腺腫瘍と診断され腫瘍摘出術が施行された.捺印細胞所見では, N/C比の高い小型細胞からなる上皮性細胞集塊と, 細顆粒状クロマチン, 小型核小体を有するやや大型の裸核状細胞が出現し, 一部では粘液球を取り囲む配列を示していた.細胞像からは, 腺様嚢胞癌が疑われた.組織学的には, 硝子化間質によって区画された胞巣状を呈し, Cytokeratin陽性の単層の円柱上皮からなる腺管構造の外側にS-100蛋白陽性の大型淡明細胞を認め, 上皮筋上皮癌と診断した.腫瘍一辺縁には節状構造もみられた.
    結論: 上皮筋上皮癌の診断には, 導管上皮と筋上皮由来の2種類の腫瘍成分を認識することと, 節状構造から細胞成分が出現した場合には, 腺様嚢胞癌などの節状構造を示す腫瘍との鑑別が重要と思われた.
  • 原田 勉, 佐々木 綾子, 杉澤 きよ美, 半田 雅則, 川口 詳司, 江口 正信
    2006 年 45 巻 4 号 p. 254-258
    発行日: 2006/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景: 髄外性形質細胞腫のなかでも顎下腺に発生する形質細胞腫はまれな腫瘍である.今回, 左顎下部の腫瘤を主訴とし, 細胞診にて診断の困難であった顎下腺原発髄外性形質細胞腫を経験したので報告する.
    症例: 62歳, 男性, 左顎下部腫瘤に気付き徐々に増大.穿刺吸引細胞診ではN/C比の上昇や核クロマチンの増量および核偏在傾向を呈する, リンパ球の2~3倍の大きさの類円形異型細胞を少数認め, Giemsa染色にて上記異型細胞の原形質は好塩基性を呈した.推定診断として, 形質細胞様細胞型筋上皮腫等が疑われ, classIIIと判定し, 腫瘍摘出術が施行された.肉眼的には充実性および浸潤性増殖を示す腫瘍を認めた.組織学的には好酸性に染色される豊富な細胞質と, 偏在傾向を示す類円形核を有する腫瘍細胞の髄様性増殖を呈し, 核不整や核分裂像も散見された.メチルグリーン・ピロニン染色では赤染する細胞質を認め, 電顕的には粗面小胞体の発達した形質細胞由来を示唆する像を呈しており, 免疫組織化学的所見を含め髄外性形質細胞腫と診断された.
    結論: 顎下腺における髄外性形質細胞腫はまれな腫瘍であるが, その存在を念頭におき, 孤立性に出現する異型細胞を注意深く観察することが重要と思われた.
  • 永井 祥子, 土屋 眞一, 佐藤 春明, 横山 宗伯, 田村 浩一, 杉崎 祐一
    2006 年 45 巻 4 号 p. 259-262
    発行日: 2006/07/22
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    背景: 男性乳腺に発生したInvasive micropapillary carcinoma (以下IMPC) を経験したので報告する.
    症例: 73歳, 男性.1ヵ月前より右乳輪外側に径7mm大・無痛性の硬い腫瘤を自覚し, 外来を受診.穿刺吸引細胞像は血性ではあるが, 比較的清明な背景の中に小型~中型の乳頭状型・多形型を呈する癌胞巣が島状に多数出現していた.集塊辺縁部は細胞質で覆われたものが多く, 一部に微絨毛様の所見も認められた.また血管結合織性問質を伴った集塊も随伴していた.組織学的には, 網目状の問質によって隔てられたIMPCの典型的な像に加えて, 隣接する間質内に乳頭状の構築 (papillary subtype ofIMPC;P型) からなる像がみられた.また連続切片作成により, 従来から指摘されている腔形成型IMPC (lumen forming typeof IMPC;L型), 充実型IMPC (solid type of IMPC;S型) とP型および細い問質を有する乳頭腺管癌との問に連続性が確認された.
    結論:連続切片の結果から, IMPCの亜型である従来のL, S型に加えて, 乳頭腺管癌類似のP型 (乳頭状型) を提唱したい.
feedback
Top