日本臨床細胞学会雑誌
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46 巻, 6 号
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原著
  • ―WHO分類による再評価―
    小椋 聖子, 桜井 孝規, 清水 恵子, 江木 さつき, 則松 良明, 桜井 幹己
    2007 年 46 巻 6 号 p. 315-322
    発行日: 2007/11/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 尿細胞診の成績向上のため, 尿路上皮癌Grade1の細胞像の理解を深める.
    方法 : 1994年6月~2004年3月の間に術前自然尿細胞診と経尿道的膀胱腫瘍切除術が施行され, 組織学的に尿路上皮癌Grade1, あるいはGrade1優位と診断された154例を対象とした. これらに対しWHO分類による評価を行い, 最も強い異型部分により低悪性度乳頭状尿路上皮性腫瘍 (Papillary urothelial neoplasm of low malignant potential : 以下PUNLMPとする), 低異型度尿路上皮癌 (Papillary urothelial carcinoma, low grade : 以下Low UCとする), 高異型度尿路上皮癌 (Papillary urothelial carcinoma, high grade : 以下High UCとする) に再分類し, 各病変の術前細胞診成績の検討とPUNLMP症例の細胞像の検討を行った.
    成績 : 対象となった154例のうち151例が再評価により, PUNLMP28例, Low UC108例, High UC15例に分類された. PUNLMP症例の術前自然尿細胞診の陽性率および疑陽性を含む陽性率は, Low UC, High UC症例に比べ, 有意に低かった. PUNLMP疑陽性症例ではLow UC症例に比べ, 異型の少ない尿路上皮細胞が散在性に出現していた.
    結論 : PUNLMPは自然尿細胞診による陽性, 疑陽性率がGrade1の尿路上皮癌のなかでも特に低く, 尿細胞診成績を低下させていた. また, PUNLMPの細胞診断には散在性に出現する小型異型尿路上皮細胞に着目することが重要である.
  • ―新報告様式導入による変化―
    秋保 信彦, 遠藤 希之, 井沢 路世, 熊谷 勝政, 長嶋 真紀, 武山 淳二, 八重樫 弘, 渡辺 みか, 森谷 卓也
    2007 年 46 巻 6 号 p. 323-331
    発行日: 2007/11/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 乳腺における 「細胞診および針生検の報告様式 (日本乳癌学会)」 に従った細胞診成績を導入前と比較し, 導入の意義を検討した.
    方法 : 15470検体を新報告様式導入前後で2期に区分し, (1) 診断区分ごとの比率, (2) 新報告様式の数値目標, (3) 英国乳腺スクリーニング基準 (QA) による感度・特異度などの係数, を比較検討し, (4) 癌例において, 細胞診で初回に悪性判定できなかった症例の診断確定までの追跡を行った.
    成績 : (1) 新報告様式導入により悪性疑い症例の比率が増加し, 検体不適正率・鑑別困難率が低下した. (2) 新報告様式の目標値では悪性疑い症例中のがん症例の割合と, (3) QAの基準値では偽陰性率 (Fls-) が, 導入前後を通じ目標に到達しなかった. (4) 診断確定のための追加検査のうち, 再度の細胞診で悪性判定されたのは18.5%だった.
    結論 : 数値変化の原因として, 新報告様式の導入効果 (組織型推定と根拠となる細胞所見の記載・臨床への判定理由フィードバック) が考えられた. 新報告様式の数値目標は精度管理上有益で, QAや文献データとの比較が可能となった.
  • 池本 健三, 古屋 智子, 小賀 厚徳, 河内 茂人, 山本 滋, 岡 正朗, 佐々木 功典
    2007 年 46 巻 6 号 p. 332-337
    発行日: 2007/11/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 浸潤性乳管癌における分子細胞遺伝子学的診断の有用性とエストロゲン受容体 (ER), プロゲステロン受容体 (PgR) の発現とHER-2遺伝子の増幅および核grade分類との関連を明らかにする.
    方法 : 浸潤性乳管癌と診断された121例を対象とした. DNA ploidyはlaser scanning cytometer (LSC) にて測定し, 染色体不安定性 (CIN) は多くの腫瘍で染色体数の異常が高頻度に生じるとされる染色体7, 11, 17と18番セントロメアプローブ (CEP) を用いたfluorescence in situ hybridization (FISH) により評価した. また, FISHにてHER-2遺伝子増幅の有無を, さらに免疫組織化学的染色にてER, PgRとKi-67の発現を, 細胞診標本で核grade分類を評価した.
    成績 : DNA ploidyとCINとは有意に相関していた (p<0.0001). DNA ploidyは, HER-2, ER/PgRとKi-67およびリンパ節転移の有無とも相関していた (p<0.0001, =0.03, <0.0001, =0.02). Grade分類のG1はdiploid, CIN (-) であり, G3はaneuploid, CIN (+) であった (p<0.0001). G2はdiploidとaneuploidの双方が混在していた.
    結論 : DNA ploidyとCINは乳癌の形質発現を反映しており, これらと相関する細胞診grade分類は, 腫瘍の悪性度評価に有益な情報を提供しうる.
  • 郭 翔志, 杉山 裕子, 荒井 祐司, 古田 玲子, 秋山 太, 紀 美和, 竹島 信宏, 平井 康夫, 瀧澤 憲, 荷見 勝彦
    2007 年 46 巻 6 号 p. 338-343
    発行日: 2007/11/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 子宮頸部リンパ上皮腫様癌 (Lymphoepithelioma-like carcinoma : LELC) はまれな腫瘍で, 若年者に多く, リンパ節転移率が低く, 予後が良好であるとされている. 術前診断として行われる生検では特徴的所見がないが, 細胞診では特徴的な所見が存在するかを検討した.
    方法 : 当院で1996~2000年の間に子宮頸癌で手術を施行し術後組織診断にてLELCと診断された6例を対象とし, 非角化型の扁平上皮癌症例の細胞像と比較検討した.
    成績 : 術前に細胞診, 組織診にてLELCと診断されたものはなかった. 癌の細胞像は核クロマチンが細顆粒状に濃染し, 核小体は目立たず, 非角化型扁平上皮癌と区別できなかった. リンパ球の割合も通常の扁平上皮癌と比較して多くはなかった.
    結論 : 術前に腫瘍表面から採取された細胞像では, 深部の腫瘍先進部にリンパ球浸潤を認めるLELCを推定することは困難であった.
  • 大沼 眞喜子, 田勢 亨, 加藤 浩之, 植木 美幸, 阿部 美和, 竹内 美華, 永瀬 智, 松永 弦, 佐藤 郁郎, 立野 紘雄
    2007 年 46 巻 6 号 p. 344-349
    発行日: 2007/11/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 子宮頸部乳頭状扁平上皮癌 (PSCC) は, 生検では浸潤の診断が困難である. そこでPSCCの診断と組織発生について検討した.
    方法 : 1995~2005年に宮城県立がんセンターで診断されたPSCC20例について, 臨床所見, 細胞診, 組織診, CK7・CK20・P16INK4aの免疫組織学的検討を行った.
    成績 : 主訴は不正性器出血で, 多くは肉眼的に乳頭状浸潤癌を示した. 腫瘍径は25~60mmで12例が40mm以上だった. 臨床進行期はI期3例, II期12例, III期5例であった. 組織診では腫瘍細胞は血管を取り囲んだ間質を中心に重層性, 乳頭状に増殖し, 組織所見より移行上皮型8例, 扁平上皮型4例, 混合型8例に亜分類された. 細胞診では腫瘍性背景に小型悪性細胞や角化型悪性細胞などが認められ, すべて浸潤扁平上皮癌の診断であった. CK7・CK20免疫染色では, PSCCは移行上皮癌よりは扁平上皮癌の所見を示した. P16INK4aを用いたHPV検索では19例が陽性を示した.
    結論 : PSCCは肉眼所見や細胞診が浸潤の診断に有用である. CKの所見やP16INK4a陽性によりPSCCは扁平上皮癌由来と考えられる.
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