目的 : 浸潤性乳管癌における分子細胞遺伝子学的診断の有用性とエストロゲン受容体 (ER), プロゲステロン受容体 (PgR) の発現とHER-2遺伝子の増幅および核grade分類との関連を明らかにする.
方法 : 浸潤性乳管癌と診断された121例を対象とした. DNA ploidyはlaser scanning cytometer (LSC) にて測定し, 染色体不安定性 (CIN) は多くの腫瘍で染色体数の異常が高頻度に生じるとされる染色体7, 11, 17と18番セントロメアプローブ (CEP) を用いたfluorescence
in situ hybridization (FISH) により評価した. また, FISHにてHER-2遺伝子増幅の有無を, さらに免疫組織化学的染色にてER, PgRとKi-67の発現を, 細胞診標本で核grade分類を評価した.
成績 : DNA ploidyとCINとは有意に相関していた (p<0.0001). DNA ploidyは, HER-2, ER/PgRとKi-67およびリンパ節転移の有無とも相関していた (p<0.0001, =0.03, <0.0001, =0.02). Grade分類のG1はdiploid, CIN (-) であり, G3はaneuploid, CIN (+) であった (p<0.0001). G2はdiploidとaneuploidの双方が混在していた.
結論 : DNA ploidyとCINは乳癌の形質発現を反映しており, これらと相関する細胞診grade分類は, 腫瘍の悪性度評価に有益な情報を提供しうる.
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