目的 : 悪性中皮腫 (malignant mesothelioma, 以下MM) と反応性中皮細胞 (reactive mesothelial cells, 以下RM) の鑑別を目的としてMMの細胞質の多彩性に着目し, パパニコロウ染色 (以下Pap.) での細胞質の染色性とケラチン, HBME-1およびEMAの発現との関連性について検討した.
方法 : 対象はMM5例, RM24例である. 体腔液標本にcytokeratin : clone AE1+AE3 (以下CK) 抗体, HBME-1抗体, およびEMA抗体を用いて免疫染色を行い, その反応像とPap. 像との関連性について検討した.
成績 : MMでのCK陽性像は1) びまん型, 2) リング型, 3) 核周囲型に分類された. びまん型は5例すべてに認められ, リング型は5例中3例, 核周囲型は5例中2例に認められた. その陽性所見はおおむねPap. 像のライトグリーンの染色性に一致していた. MMに特徴的な細胞所見は, (1) 泡沫状やレース状の細胞質をもち, 細胞辺縁が空胞化を示すCKびまん型弱陽性細胞, (2) 中心部が淡染, もしくは小空胞で占められ, それを囲むように陽性所見を示すCKリング型細胞であった. HBME-1においてはMM, RMの両者に陽性所見を認めた. EMAは4例のMMで多数の細胞が陽性となり, 1例はほとんどの細胞が陰性であった. しかし, HBME-1, EMAともにPap. 像との関連性はみられなかった.
結論 : MMではPap. における細胞質の染色性が多彩であり, CKびまん型弱陽性やリング型を示す異型細胞がMMを疑う所見となる可能性が示唆された.
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