日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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46 巻, 5 号
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原著
  • 森村 豊, 千葉 聖子, 伊藤 眞理子, 高橋 一弘, 菅野 薫, 添田 周, 渡辺 尚文, 藤森 敬也, 山田 秀和, 佐藤 章
    2007 年 46 巻 5 号 p. 251-255
    発行日: 2007/09/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 子宮がん検診で異常細胞がみられた症例の転帰を調査し, 現行のクラス分類や経過観察の問題点を検討する.
    対象と方法 : 1995~1999年の福島県の子宮がん検診で要精検とされたものの経過を調査し, 初回時と経過中の陽性反応的中率を比較した. また高度異形成以上の要治療群と異常細胞が消失した群で, 検査回数, 観察期間について比較検討した.
    成績 : クラスIIIa 3372例中, 初回精検で103例, 経過中65例の要治療病変がみられ, 陽性反応的中率は3.1%から5.2%へと有意に上昇した. 2388例 (70.8%) は異常細胞が消失した. クラスIIIb 271例中, 初回で79例, 経過中28例の要治療病変がみられ, 的中率は29.2%から39.9%へと有意に上昇した. 74例 (27.3%) は異常細胞が消失した. 観察終了例では有意に観察期間が長く, 検査回数も多かった.
    結論 : 要精検者を経過観察することにより, 要治療病変の発見率が有意に増加する. 一方, 多くの例では異常細胞が消失するが, 長期, 頻回の経過観察を要し効率が低下している. クラス分類による要精検者の一律な取扱いにかわり, 記述的診断で観察の簡略可能例と, 厳重な観察の必要な例への振り分けを考える必要がある.
  • 松井 成明, 涌井 架奈子, 伊藤 仁, 安田 政実, 佐藤 慎吉, 長村 義之
    2007 年 46 巻 5 号 p. 256-261
    発行日: 2007/09/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 肺硬化性血管腫 (screlosing hemangioma, 以下, SCH) の細胞学的特徴および高分化型腺癌との細胞学的相違点について検討した.
    方法 : 気管支擦過細胞診 (キュレッテージ) および術中捺印細胞診において, 硬化性血管腫と診断された5例と, 肺高分化腺癌10例を用い, 各症例における背景, 細胞集団の出現パターン, 個々の腫瘍細胞の細胞学的特徴について検討した.
    成績 : 細胞学的にSCHは以下の出現パターンを呈していた. A type : ライトグリーンに濃染する器質化間質を軸とした乳頭状集団, B type : 器質化間質を伴わない乳頭状集団, C type : シート状細胞集団, D type : 腫瘍細胞で構成された充実性集団, E type : 散在性細胞.
    A~Dを構成する腫瘍細胞は, いずれも大小不同に乏しい類円形核を有しており, 核膜は薄く切れ込みくびれのみられるものはわずかであった. また, E typeの腫瘍細胞は, 他の細胞群と比較して顕著な核異型を示していた. 細胞学的に高分化腺癌との鑑別においては, 1) SCHにおける細胞の多彩性を認識, 2) A, D typeの細胞集団を指摘, 3) 器質化間質, 4) 集団を構成する個々の核, 細胞質所見の詳細な観察が重要と考えられた.
    結論 : SCHは, 主だった5つのtypeが混在し, それぞれが特徴のある所見を呈していた. SCHの細胞診断に際しては, 標本内に出現する各細胞集団を指摘し, これらの構成細胞を詳細に観察することが肝要と考えられた.
  • 今井 律子, 夏目 園子, 大池 里枝, 田中 瑞穂, 氏平 伸子, 佐竹 立成
    2007 年 46 巻 5 号 p. 262-265
    発行日: 2007/09/22
    公開日: 2008/07/18
    ジャーナル フリー
    目的 : フィルター法 (以下F法と略す) とオートスメア法 (以下A法と略す) を用いて検体処理した自然尿細胞診標本の退色の程度に違いがあるか検討した.
    対象 : 同一検体を用いてF法とA法で標本作製してから7年経過した10標本, 5年経過した62標本を用いた.
    方法 : 2方法で作製されたPapanicolaou染色標本中の尿路上皮細胞と好中球の退色の程度を検討した. 退色の程度は退色なし (-), 軽度退色 (+ : 細胞質の色調消失, 核の色調軽度消失), 高度退色 (2+ : 細胞質および核の色調消失) の3段階に分類した.
    結果 : 1) F法で作製された標本中の尿路上皮細胞には7年経過しても退色を認めなかった. 2) A法で作製された標本中の尿路上皮細胞は5年経過で (-) 18/62 (29%), (+) 29/62 (47%), (2+) 15/62 (24%), 7年経過で (-) 1/10 (10%), (+) 5/10 (50%), (2+) 4/10 (40%)の標本に退色がみられた.
    結論 : F法で作製された標本は専用フィルターと散乱板を用いて標本が作製されるため, 光の透過性が低く, A法に比べ光反応による退色がおきにくかったものと考えられる.
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