目的: 縦隔大細胞型 B 細胞性悪性リンパ腫 (mediastinal large B-cell lymphoma: 以下, MLBL) の細胞学的特徴を明らかにする.
方法: 過去 10 年間, 福岡大学病理学教室にて, 組織学的に MLBL と診断された 11 例について臨床像, 捺印標本の細胞像〔Papanicolaou (以下, Pap 染色, Giemsa 染色) 〕, 免疫組織的特徴を検討した.
成績: (1)細胞診上, 腫瘍細胞の出現パターンをびまん型, 集簇型, 散在型の 3 つに分類した. びまん型は, 大型のリンパ球様細胞が敷き石状, 単調な腫瘍細胞の出現をみる. 集簇型では, 腫瘍細胞は重積性を示す細胞集塊として出現し, 核は大型の円形∼楕円形で, クロマチンは粗大顆粒状, 細胞質が泡沫状を呈する. 散在型では, 細胞数は少なく, 大型核を有する腫瘍細胞が散在性に認められ, 多核例もみる. (2)免疫組織染色では, CD23: 5 例, CD10: 3 例, Bcl-2: 8 例, Bcl-6: 9 例, MUM-1: 8 例, CD30: 8 例陽性であった. Bcl-2, Bcl-6 領域の probe を使い DNA Fluorescence in situ hybridization (FISH) 法で染色体転座の有無を調べたが, 全例で陰性であった. Epstein Barr virus encoded RNA (EBERs) を同定する ISH 法では, 全例感染を認めなかった.
結論: MLBL は細胞学的に 3 型に分けられた. 集簇型例は悪性上皮性腫瘍と鑑別が困難であった. 縦隔腫瘍では, 上皮細胞様にみえる悪性リンパ腫があることを念頭に置き, 細胞診断する必要があると考えた. 散在型では, ホジキンリンパ腫に類似の細胞浸潤像を呈した.
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