日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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47 巻 , 3 号
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原著
  • 松井 成明, 安田 政実, 涌井 架奈子, 伊藤 仁, 平林 健一, 梶原 博, 村上 優, 佐藤 慎吉, 長村 義之
    2008 年 47 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/30
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    目的: 子宮頸部領域における Glucose transporter-1 (以下, GLUT-1)の発現と病変の進行との関連を検討した.
    方法: 細胞診, 組織診が同時期に実施された Cervical intraepithelial neoplasia (以下, CIN) 60 例と浸潤性扁平上皮癌 10 例を対象とした. Papanicolaou 染色脱色細胞標本とパラフィン包埋組織切片を用い, CIN, 浸潤性扁平上皮癌における GLUT-1 の発現を検討した.
    成績: 細胞診での GLUT-1 陽性率は, CIN1: 0%, CIN2: 40%, CIN3: 100%, 浸潤性扁平上皮癌: 100%. CIN2, 3 についての発現細胞をタイプ別にみると CIN2 では, 中層, 傍基底型異型細胞のそれぞれにみられ, CIN3 では主に傍基底型異型細胞に認められた. 浸潤性扁平上皮癌では, ほぼすべての腫瘍細胞に発現を示していた. 一方, 組織学的にみた CIN の GLUT-1 発現部位は増殖帯にほぼ一致し, CIN1: 基底側 1/3, CIN2: 基底側 1/2, CIN3: 上皮内全層に発現を示していた. 浸潤性扁平上皮癌では, 癌真珠および顕著な角化細胞以外, すべてに発現が認められた. Koilocytosis を伴う CIN についてもおおむね増殖帯に一致した発現を示していたが, 一部の症例では表層近傍に及ぶ koilocytes に GLUT-1 発現が認められた.
    結論: 子宮頸部領域における GLUT-1 発現は, CIN から浸潤癌へと進行するに従い, おおむね異型細胞に一致して増加が認められ, 病変の進行度を予測する指標になると考えられた.
  • 小畠 勝己, 竹下 盛重, 神原 豊, 大神 明子, 松本 慎二, 鍋島 一樹, 川本 研一郎, 鵜池 直邦
    2008 年 47 巻 3 号 p. 177-182
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/30
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    目的: 縦隔大細胞型 B 細胞性悪性リンパ腫 (mediastinal large B-cell lymphoma: 以下, MLBL) の細胞学的特徴を明らかにする.
    方法: 過去 10 年間, 福岡大学病理学教室にて, 組織学的に MLBL と診断された 11 例について臨床像, 捺印標本の細胞像〔Papanicolaou (以下, Pap 染色, Giemsa 染色) 〕, 免疫組織的特徴を検討した.
    成績: (1)細胞診上, 腫瘍細胞の出現パターンをびまん型, 集簇型, 散在型の 3 つに分類した. びまん型は, 大型のリンパ球様細胞が敷き石状, 単調な腫瘍細胞の出現をみる. 集簇型では, 腫瘍細胞は重積性を示す細胞集塊として出現し, 核は大型の円形∼楕円形で, クロマチンは粗大顆粒状, 細胞質が泡沫状を呈する. 散在型では, 細胞数は少なく, 大型核を有する腫瘍細胞が散在性に認められ, 多核例もみる. (2)免疫組織染色では, CD23: 5 例, CD10: 3 例, Bcl-2: 8 例, Bcl-6: 9 例, MUM-1: 8 例, CD30: 8 例陽性であった. Bcl-2, Bcl-6 領域の probe を使い DNA Fluorescence in situ hybridization (FISH) 法で染色体転座の有無を調べたが, 全例で陰性であった. Epstein Barr virus encoded RNA (EBERs) を同定する ISH 法では, 全例感染を認めなかった.
    結論: MLBL は細胞学的に 3 型に分けられた. 集簇型例は悪性上皮性腫瘍と鑑別が困難であった. 縦隔腫瘍では, 上皮細胞様にみえる悪性リンパ腫があることを念頭に置き, 細胞診断する必要があると考えた. 散在型では, ホジキンリンパ腫に類似の細胞浸潤像を呈した.
  • 鍵弥 朋子, 中村 美砂, 森 一郎, 谷口 恵美子, 西上 圭子, 尾崎 敬, 覚道 健一
    2008 年 47 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/30
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    目的: 細胞診用に採取された尿を用いての遺伝子解析が可能な保存温度条件を明らかにするため, 尿の保存温度と時間経過による尿中細胞 DNA, RNA の変性・減少と細胞形態の変化を観察し検討した.
    方法: 自然尿を採取時から 15 日後まで 3 種の温度条件 (−20℃, 4℃, 25℃) で保存し, DNA, RNA を抽出した. PCR 法で p53 を検出可能であったものを DNA が保存されたと判定した. RT-PCR 法でβactin を検出可能であったものを RNA が保存されたと判定した. DNA, RNA 検出の再現性の確認のため, 9 例の尿を用いて検討した. 細胞形態は 2 回遠沈法で固定塗抹, パパニコロウ染色を行い観察. 顕微鏡下で細胞数を計測した.
    成績: 採尿直後に処理すれば DNA, RNA とも PCR 可能な状態で抽出できた. 尿を−20℃, 4℃で保存すれば DNA は 15 日後, RNA は 11 日後に抽出したものから目的配列を PCR 法で増幅可能であった. 抽出効率は男女間で差はみられなかった. 形態的検討では, 保存期間が長くなるにつれ塗抹細胞量が減少した. 細胞形態保存は 4℃保存が最も適していた.
    結論: 尿の至適保存温度は, 細胞形態保存は 4℃, 核酸保存は−20℃, 4℃であり, DNA は 15 日後, RNA は 11 日後の尿から抽出可能であった.
  • 矢羽田 一信, 中山 富雄, 楠 洋子, 寺本 友昭, 北市 正則
    2008 年 47 巻 3 号 p. 189-195
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/30
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    目的: 静止画像を用いた Telecytology の診断成績を向上させるために Telecytology の問題点について検討した.
    方法: 呼吸器検体 142 例を対象とした. 適正露出で撮影するためにデジタルカメラのブラケティング機能を使用した. 標本の全体像と細胞の大きさを把握するため対物 20 倍でパノラマ撮影し, 画像編集ソフトでパノラマ画像を作成した. 異型細胞の画像を並べて比較するために画像編集ソフトでインデックス画像を作成した. 細胞検査士と細胞診専門医の良悪判定が異なる場合は画像を追加撮影し再判定した.
    成績: ブラケティング機能は, 過剰露出による異型扁平上皮細胞の過大判定を改善した. 対物 20 倍で撮影したパノラマ画像は, 標本全体の把握に役立つと同時に細胞の大きさの誤認による異型扁平上皮細胞の過大判定を改善した. インデックス画像は送信枚数を増加できると同時に細胞の異型度や大きさの比較を容易にし, 異型扁平上皮細胞の過大判定を改善した. 追加撮影による再判定は, 通常の顕微鏡診断との一致率を向上させた.
    結論: デジタルカメラの機能や画像編集ソフトの使用および追加撮影による再判定は Telecytology の問題点を改善し, 診断成績を向上させた.
症例
  • 細井 佳世, 真鍋 朋子, 塩岡 忠夫, 白石 誠, 中野 正行, 荻野 哲朗, 大崎 博之, 平川 栄一郎
    2008 年 47 巻 3 号 p. 196-199
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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    背景 : 乳腺のアミロイドーシスは比較的まれな病変で, 臨床的あるいは画像診断的に乳癌と鑑別が難しい病変である. 今回われわれはシェーグレン症候群に合併した乳腺のアミロイド腫瘤を経験したので報告する.
    症例 : 79 歳, 女性. 数日前より左乳房 D 領域に腫瘤を自覚し, 近医を受診. 穿刺吸引細胞診では, 血液成分のみで, 上皮成分を認めず検体不適正であった. 切除術生検では, 乳腺間質および血管壁に淡好酸性物質の著明な沈着が認められ, 乳管および小葉は萎縮消失していた. この物質はコンゴー赤染色で陽性, 偏光顕微鏡を用いた観察により黄緑色を示し複屈折性が証明され, アミロイドと同定された. 穿刺吸引細胞診では上皮成分がなく検体不適正としたが, 再検討した結果, ライトグリーン好性の壊死様無構造物質を認めた.
    結論 : パパニコロウ染色標本において, ライトグリーン好性の壊死様無構造物質が観察された場合, 壊死物や粘液, 石灰化小体以外にアミロイドの存在も念頭に置く必要がある. 偏光顕微鏡を用いた観察により黄緑色を示し複屈折性が証明できれば, 容易にアミロイドの同定が可能であり, 細胞診検査は, 腫瘍性病変のスクリーニングのみならず, 変性病変や炎症性病変の検索においても重要であると考える.
  • 佐藤 勝明, 寺内 利恵, 朝倉 善史, 竹中 美千穂, 中野 万里子, 黒瀬 望, 上田 善道, 廣川 満良
    2008 年 47 巻 3 号 p. 200-204
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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    背景 : 甲状腺好酸性細胞型濾胞癌は, 明瞭な濾胞構造から充実性増殖するものまで多彩である. 今回われわれは, 穿刺吸引細胞像を検討する機会を得た, 索状構造が顕著な好酸性細胞型濾胞癌の 1 例を報告する.
    症例 : 71 歳, 女性. 超音波検査で多発性甲状腺腫瘤を指摘されていた. 右葉上極腫瘤からの穿刺吸引細胞診では, きれいな背景に, 大型で不規則重積性を示す細胞集塊が点在し, 索状構造や transgressing vessels が認められた. 細胞境界が不明瞭な腫瘍細胞が, 合胞体性集塊を形成しており, 裸核も散見された. 腫瘍細胞は比較的小型均一で, 細胞質は顆粒状を示し, 核小体は小型だが明瞭であった. 組織学的に, 腫瘍は径 1.2 cm で, 高度の静脈浸潤を伴い多結節性に広汎浸潤する好酸性細胞型濾胞癌であった. 術後約 12 ヵ月が経過した時点で再発や転移は認めていない.
    結論 : 穿刺吸引細胞像で好酸性細胞型腫瘍の推定は可能であり, 本例でみられた豊富な細胞量, 不規則重積性の細胞集塊, 細胞境界が不明瞭な小型細胞, 明瞭な核小体は悪性を示唆する所見と考えられた. 好酸性細胞型濾胞癌の細胞診では, 低分化癌でみられるような孤立散在性細胞は目立たず, 細胞結合性の評価が両者の鑑別に有用であった.
  • 尾花 ゆかり, 生沼 利倫, 杉谷 雅彦, 小松 京子, 関 利美, 砂川 恵伸, 楠美 嘉晃, 根本 則道
    2008 年 47 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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    背景 : 悪性胸膜中皮腫の画像所見は胸水貯留, 胸膜肥厚像, 腫瘤影を示すことが多いとされるが, 原因不明の胸水貯留のほかは, 明らかな異常を認めず, 胸水細胞診が診断の契機となった悪性胸膜中皮腫 (stage Ib) の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 60 歳代, 男性. 背部痛を主訴に近医を受診し, 胸部 X 線にて左胸水貯留を指摘され胸水細胞診にて悪性中皮腫の可能性が疑われ, 精査目的で当院を紹介された. 胸部 X 線, CT, 胸腔鏡検査等の画像検査を施行するも左胸水貯留のほか, 明らかな腫瘍所見は得られなかった. その後, 毎月定期的に外来で検査が施行されたが, 初診 5 ヵ月後の胸腔鏡下胸膜生検で最終的に悪性中皮腫, 上皮型と診断した. 患者は化学療法を受け, 初診から約 4 年が経過した現在も存命中である.
    結論 : 本症例のように, 胸水細胞診は特徴的な画像所見が出現する以前の中皮腫症例の早期発見の契機となる可能性があり, このことを念頭において診療にあたることが重要と考えられた.
  • 木村 朋子, 森 正樹, 前川 秀樹, 太田 諒, 法木 左近, 今村 好章
    2008 年 47 巻 3 号 p. 211-215
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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    背景 : 鼻腔・副鼻腔原発の悪性黒色腫は比較的まれであり, 胸水中に腫瘍細胞が出現した例の報告はきわめてまれである. 今回, 胸水中に腫瘍細胞が出現した副鼻腔原発悪性黒色腫の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 72 歳, 女性で, 鼻出血を主訴に来院した. 頭部 CT により左副鼻腔から眼窩内および頭蓋底に浸潤する腫瘍を認め, 生検が施行された. 組織学的には, 主に副鼻腔粘膜下に核異型の高度な上皮様腫瘍細胞の胞巣状発育がみられた. 一部の腫瘍細胞の細胞質内にメラニン顆粒を認め, 粘膜内にも少数の腫瘍細胞が存在していたことから副鼻腔原発悪性黒色腫と診断した. その後, 呼吸困難が出現し, 左大量胸水のため, 胸水細胞診が施行された. 細胞学的には, 血性の背景に腫瘍細胞が小集塊状あるいは孤立散在性に比較的多数出現していた. 腫瘍細胞核は大型・空胞状で好酸性の核小体が目立ち, 細胞質はライトグリーン好性で厚みがあったが, 明らかなメラニン顆粒は認められなかった. しかし, 免疫細胞化学的にはメラノサイトのマーカーである melan A (MART-1), PNL2 (melanoma), HMB45 および S100 蛋白がすべて陽性であった. 以上の細胞所見と臨床経過を併せて左副鼻腔原発悪性黒色腫の左胸腔転移と診断した.
    結論 : 胸水中の腫瘍細胞にメラニン顆粒が確認できなかったため, 悪性中皮腫や転移性癌との鑑別が問題となったが, 本症例の確定診断には免疫細胞化学的染色が有用であった.
  • Yasuyuki KITAGAWA, Nobuhito FUJII, Hironori KATAYAMA, Hiroaki ISOBE, Y ...
    2008 年 47 巻 3 号 p. 216-219
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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    背景 : 多形型横紋筋肉腫は成人にみられる稀な軟部肉腫の一つであり細胞像の報告は少ない. 穿刺吸引細胞診にて推定診断が可能であった症例を経験したので報告する.
    症例 : 84 歳, 女性. 約半年前から左前腕の腫脹を自覚していた. 前腕尺側を中心に約 18 cm 長の腫瘤を認めた. MRI では尺骨から皮下に及ぶ腫瘤を認め, T1 および T2 強調画像で多彩な信号を示し内部の出血性変化も疑われた. 穿刺吸引細胞診では著明な異型性, 大小不同を認め, 特徴的な出目金様細胞を多数認めたことから多形型横紋筋肉腫を疑った. さらに, 細胞転写法後に免疫細胞染色を施行したところミオグロビンに陽性を示し, 多形型横紋筋肉腫と推定診断した. 生検で組織学的に多形型横紋筋肉腫であることを確認した. 腫瘍は前腕を広範囲に浸潤していたため上腕にて切断した.
    結論 : 今回の症例から, 多形型横紋筋肉腫は特徴的な細胞像を示し, さらに細胞転写法を用いた免疫細胞化学が有用であることが示唆された.
特集 <子宮内膜細胞診における診断精度向上への新しい挑戦>
  • 矢納 研二, 清水 恵子
    2008 年 47 巻 3 号 p. 220
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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  • 長谷川 壽彦
    2008 年 47 巻 3 号 p. 221
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル 認証あり
  • 桜井 孝規, 清水 恵子, 小椋 聖子, 則松 良明
    2008 年 47 巻 3 号 p. 222-226
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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    内膜増殖症や類内膜癌の組織診断においては, 腺管の増殖, すなわち腺管密度の増加の有無と細胞異型の有無の判断が診断の重要な構成要素になっている.
    組織での腺管増殖は細胞診での構造の多彩さとほぼ比例しているが, 生理的あるいは良性病態でも出現しうる内膜腺の多彩さを知らないと, 過剰診断に至る可能性がある. ここでは分泌期の腺管形態や内膜炎, 子宮筋腫, ポリープ, ホルモン剤投与時などにみられる腺管形態の幅を提示するが, 異常腺管の出現量と割合が重要であることがわかる.
    また異型増殖症, 類内膜癌の診断でしばしば強調される細胞異型の有無については, 増殖症における細胞異型の判断は, 診断者間一致率があまりよくないことで知られている. これは増殖症や類内膜癌でみられる細胞異型が往々にして軽いことに起因するが, だからこそ構造的な異常の把握が必須になっている. もちろん細胞異型が強ければ診断が容易になるのは間違いないので, 細胞異型の把握も非常に重要である. ところが, 内膜細胞には腫瘍だけではなく, 本来は良性病態である種々の化生/変性でも, 時に癌と紛らわしい異型をみることがあり, そのような異型の出現パターンや臨床上の特徴を把握することも誤診を避けるためには重要である. ここでは無排卵性月経でみられる細胞変化を提示するが, このような変化は増殖症や癌に伴って出現することもあり, 過剰評価は避けるべきではあるが背景の所見にも気をつけないと, 過小評価してしまう危険性もまた存在する.
  • 吉田 志緒子, 楠 奈々子, 石山 功二, 杉山 田隆男, 則松 良明, 清水 恵子, 塚崎 克己, 伊藤 良彌, 長谷川 壽彦
    2008 年 47 巻 3 号 p. 227-235
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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    目的 : 子宮内膜細胞診疑陽性判定における診断精度は必ずしも高くはないとされている. 今回その精度向上を目的に, 子宮内膜細胞診の判定基準について検討した.
    方法 : 増殖期内膜, Endometrial glandular and stromal breakdown (EGBD), 子宮内膜増殖症 (Endometrial hyperplasia : EH), 子宮内膜異型増殖症 (Atypical endometrial hyperplasia : AEH), 高分化型類内膜腺癌 (Endometrioid adenocarcinoma grade 1 : G1) の合計 70 例を対象とし, 異常細胞集塊占有率, 付随所見出現率, 間質細胞凝集塊出現率を検討した. また疑陽性判定をして病理組織学的診断結果 (組織診断) と不一致であった 97 例の再評価を試みた.
    成績 : 各病変の特徴は, EGBD では化生細胞性不整形突出集塊が主体に出現し間質細胞凝集塊も高率に認められた. EH では拡張・分岐集塊が, AEH では拡張・分岐集塊と増殖期類似細胞性不整形突出集塊が主体に出現していた. G1 では増殖期類似細胞性不整形突出集塊と乳頭・管状集塊が主体でさらに付随所見も高率にみられた. 化生細胞性不整形突出集塊を除いた異常細胞集塊の占有率では, 各病変の間に有意差がみられた. 症例の再評価では, 97 例中 67 例 (69.1%) が組織診断と一致した.
    結論 : 各病変に出現する特徴的な細胞像の把握およびそれらの数的把握は, 診断精度の向上に有効であることが示唆された.
  • 矢納 研二, 則松 良明, 上森 昭, 中村 豊, 山崎 卓也, 奥田 容山, 山脇 孝晴, 北畠 修生, 村田 哲也, 白石 泰三
    2008 年 47 巻 3 号 p. 236-242
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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    目的 : 子宮内膜細胞診における標本作製の諸問題を把握し, それらの解決方法を検討する. また, 臨床運用に即した報告形式を考察し, 細胞採取より報告までの診断システムを作成する.
    方法 : 1. 子宮内膜細胞診における標本の適正を定義し, その定義に基づいて過去に診断された標本を再評価する. 2. 適正標本を作製するための手技的問題を検討する.
    成績 : 1. 標本が不適性である原因として, 臨床情報不足が最も高頻度に認められ, 9.0%であった. 次いで細胞採取量の不足が多く, 5.7%に認められた. 2. 細胞診標本においては, 内膜から採取された検体の圧挫を行わず, 直接塗抹する方法が観察性に優れている. また, 観察性を低下させる因子としての出血性背景や標本の乾燥は, 標本を作製する際の工夫や注意によって改善される必要がある.
    結論 : 子宮内膜細胞診において, 婦人科医による正しい臨床情報提供の再認識が求められる. また, 細胞検体の採取・塗抹においては観察性を保ち十分な細胞量を得る工夫が必要である. 今後, 子宮内膜診断システムにより, 精度の高い細胞採取および標本作製が実現され, より高い精度の診断が実現されることが期待される.
  • 則松 良明, 清水 恵子, 香田 浩美, 原田 美香, 梶谷 博則, 森谷 卓也, 和仁 洋治, 大野 英治
    2008 年 47 巻 3 号 p. 243-248
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
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    目的 : 無排卵周期による Endometrial glandular and stromal breakdown (EGBD) において, 認められる化生の細胞学的な特徴を明らかにする.
    方法 : EGBD 32 例, Disordered proliferative phase (DPP) 38 例, 増殖期内膜 49 例, 単純型内膜増殖症 34 例, 複雑型内膜増殖症 29 例を用い, 各病変における, 1) 化生の出現頻度, 2) 化生性不整形突出集塊の出現頻度および占有率, 3) 間質細胞凝集塊を含む Metaplastic clumps with irregular protrusion (MCIP) の出現頻度, 4) MCIP 中での間質細胞凝集塊の免疫染色所見 (CD10) について検討した.
    成績 : EGBD 例では, 化生細胞の出現頻度 (93.8%), 化生性不整形突出集塊の出現頻度 (90.6%) および占有率 (16.1%), 凝集間質細胞塊を含む化生性不整形突出集塊での出現頻度 (93.1%) は他病変と比べ有意に高値であった. また, 化生性不整形突出集塊中での間質細胞凝集塊は CD10 陽性であった.
    結論 : 間質細胞凝集塊を伴う化生性不整形突出集塊の出現は, 乳頭状化生由来であり, それらは内膜表層被覆上皮に起こり, EGBD を示唆する有用な指標になりうると考えられた.
  • 清水 恵子, 則松 良明, 小椋 聖子, 桜井 孝規, 森谷 卓也, 桜井 幹己
    2008 年 47 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル 認証あり
    目的 : われわれは, 子宮内膜細胞診において構造異型を加味した判定基準を用いることにより正診率が向上することを報告してきたが, 今回, 判定者間の整合性と再現性の向上を目的に集塊を再定義し, 疑陽性例の成績を検討したので報告する.
    方法 : 1999 年 5 月∼2006 年 4 月 (7 年間) の細胞診疑陽性例のうち組織診が施行された 144 件を対象とし, 細胞集塊を 9 種類に分類した判定基準を用いた期間 (1999 年 5 月∼2004 年 4 月 (5 年間), 期間 A) と, 4 種類に整理した判定基準を用いた期間 (2004 年 5 月∼2006 年 4 月 (2 年間), 期間 B) の成績を検討し, その一部に対して有意差検定を行った.
    成績 : 期間 A の細胞診疑陽性 106 件の組織診断は, 非増殖性内膜 40 件 (37.7%), 内膜増殖症 65 件 (61.3%), 類内膜腺癌 grade 1, 1 件 (1.0%) で, 期間 B の細胞診疑陽性 38 件の組織診断は, 非増殖性内膜 12 件 (31.6%), 内膜増殖症 25 件 (65.8%), 類内膜腺癌 grade 1, 1 件 (2.6%) であった. また, 期間 A と期間 B の成績には統計学的有意差を認めなかった.
    結論 : 集塊を統合した新判定基準においても, 従来法と同様に十分な成績を得られる可能性が示された.
短報
  • 佐久間 貴彦, 高水 竜一, 古田 美知子, 大橋 寛嗣, 川野 潔
    2008 年 47 巻 3 号 p. 255-256
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル 認証あり
    We report a case of acinic cell carcinoma of the parotid gland. A 33-year-old man noticing a slow-growing mass in the right parotid gland was found in fine-needle aspiration to have abundant epithelial cells with little atypia. Although rich cellularity suggested a neoplastic nature, other cytological clues for specific diagnosis were not seen. The resected tumor was histologically acinic cell carcinoma. With this histological diagnosis, reviewing the FNA specimens indicated that, in the cases of low-grade cancer, cellular atypia were of little help as diagnostic clues. Detailed knowledge of histological subtypes of acinic cell carcinoma appears to be essential for accurate cytological diagnosis.
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