日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
47 巻 , 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 金城 満, 亀井 敏昭, 是松 元子, 杉島 節夫, 及川 洋恵, 佐藤 雅美, 岩崎 常人, 市原 清志
    2008 年 47 巻 6 号 p. 407-415
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/04
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 近年, VDT 作業のような近業従事者に視機能異常や種々の身体的不定愁訴が発生することが指摘され, 旧労働省から昭和 60 年 12 月 20 日付けで「VDT 作業のための労働衛生上の指針について」が出され, 健康障害の可能性が指摘され, その対策をする旨の勧告がなされた. しかし, 同様の近業業務でありながら, 顕微鏡を用いた長時間業務については触れられていない. 過去の論文を逍遥するに, わずかな報告がみられるにすぎない. 今回は, 当学会に所属する細胞検査士の顕微鏡を用いた長時間業務の身体, 特に視機能に及ぼす影響を疫学的立場から解析し, 明らかにしようとした.
    方法 : 平成 16 年 8 月∼平成 17 年 11 月の約 2 年間で, 当学会が主催する各種の研修会や学会に出席した細胞検査士のうち, このプロジェクトに積極的に希望された細胞検査士 1061 人にデジタル型屈折計を用いて, 両眼の屈折度を測定し, その場で用意された視機能および関連する身体症状に関するアンケートの質問事項に回答を求めた. また, この期間に約 1 年の間隔で 2 回の検査およびアンケート調査を受けた細胞検査士が 86 人あり, これらの 86 人のうち, 調査に不備のあった 1 例を除いた 85 人について, 屈折度検査および視機能/身体症状等についても分析を行った.
    今期間中に検査を受けた 1061 人中で, 約 1 年の間隔で 2 回の検査を受けた 85 人 (男性は 42 人, 女性 43 人) について屈折度の変化, 検鏡時間, 検鏡枚数について, 統計学的に検討した.
    この 2 年間に視機能検査を受けた 1062 例のアンケート調査票を分析し, 進行性の視力低下と関連する要因を, 年齢, 性, 検鏡時間, 検鏡枚数を目的変数として, 多重ロジスティック回帰により解析した. さらに, 進行性の視力低下の相対リスクを高める検鏡枚数についても同解析から推定を行った.
    2 年分 1062 例のアンケート調査票から, 視力以外の症状や眼以外の症状, 頭痛, 肩痛, 上腕の痛み, 肘痛, 手首痛, 腰痛などについても解析した.
    成績 : 細胞検査士は男女ともに屈折度の点からみると, 近視に傾いており, その中央値 (median) は-4D で, 左右差, 男女差はみられなかった. 視力についても近視が多かったが, 視力低下は男性が細胞診業務開始後 7.4±7.3 年, 女性では 4.6±5.5 年に発生しているという結果で, しかも 2 回検査の結果から, 約 1 年間の顕微鏡作業は屈折度に影響を与えていることが示唆された.
    次に, 45 歳以下で視力低下が固定したものを除外した 799 例を対象として, 進行性の視力低下の有無を目的変数として多重ロジスティック回帰分析でその要因を解析した. その結果, 進行性視力低下は, 女性で起こりにくく, 年齢, 検鏡時間または検鏡枚数の増加と関連していた. さらに, 一日の検鏡枚数で階層化し, 40 枚以下を基準カテゴリーに, 40∼60, 60∼80, 80∼100, 100∼枚の 4 カテゴリーに対するダミー変数を作成して, 進行性視力低下との関連を調べたところ, 各カテゴリーの相対危険度を表すオッズ比は, 1.92, 3.07, 2.87, 1.49 であった. これから, 60 枚以上で進行性視力低下のリスクがより高まると考えられた.
    視力以外の症状についての質問には一日のうちで, 常時自覚的な眼の疲労感のような症状がでているか, あるいは悪化していると回答したのは, 男性では 388 人中 289 人 (74.5%) があると答え, 女性では 516 人中 417 人 (80.8%) があると回答した. 眼痛ありと答えたのは男性で 11 人 (2.8%), 女性で 19 人 (3.6%), 強いまぶしさを感じるという検査士は男性で 22 人 (5.7%), 女性で 41 人 (7.9%) であった. また, 眼瞼痙攣については男性で 7 人 (1.8%), 女性で 8 人 (1.6%), 眼の乾燥感は男性で 18 人 (4.6%), 女性で 57 人 (11.0%), 飛蚊症は男性では 26 人 (6.7%), 女性で 46 人 (8.9%), 近くが見辛いという症状は男性で 111 人 (28.6%), 女性で 94 人 (18.2%) であった. また, 眼以外の症状については, 頭痛については男性で 9 人 (2.3%), 女性では 19 人 (3.7%) にみられた. 肩痛は男性で 32 人 (8.2%), 女性で 113 人 (21.9%), 上腕の痛みについては男性で 13 人 (3.4%), 女性で 32 人 (6.2%), 肘痛については男性で 10 人 (2.6%), 女性で 22 人 (4.3%), 手首痛については男性で 13 人 (3.4%), 女性で 23 人 (4.5%), 腰痛については男性で 71 人 (18.3%), 女性で 86 人 (16.7%) であった. 肩痛, 腰痛などが高率にみられた.
    結論 : 長時間の顕微鏡観察業務は, 視機能をはじめ, 他の身体的不定愁訴の原因になりうることが示された. この細胞診スクリーニング作業を今後進めるに当たっては, 60 枚以上の多数枚数の長時間連続検鏡を避ける必要があり, 今後視機能およびその他の身体症状のリスクを極力低下させるためにも何らかの対策が必要と考えられる.
  • 櫻井 博文, 上垣外 明子, 丸山 聡, 北澤 彩子, 保坂 典子
    2008 年 47 巻 6 号 p. 416-419
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/04
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 胆・膵管細胞診の正診率向上のため, 変性の少ない擦過細胞診の疑陽性例 (Class III) の検討を行った.
    方法 : 当科に提出された胆・膵管擦過細胞診標本 248 件のうち, 疑陽性例は 67 件 (27.0%) であった. そのうち特殊症例を除き, 組織診で確定診断された 40 例 (良性 16 と悪性 24) について, 出現細胞の(1)核長径, (2)細胞長径, (3)N/C 比, (4)核型所見, (5)核小体の有無, (6)クロマチン所見, (7)粘液の有無, (8)Cluster 長径, (9)Cluster 乳頭状所見, (10)Cluster 重積性, (11)Cluster 辺縁所見, (12)Cluster 結合性, (13)孤立散在性の 13 項目について有意差の検討を行った.
    成績 : 定量的に検討した(1)∼(3), (8)項目について, 有意差は認められなかった. また, 定性的に検討した残り 9 項目のうち, (5), (9), (10)については軽度の差が認められた. それぞれの良性 : 悪性比は, (5)=43.8% : 20.8%, (9)=37.5% : 50.0%, (10)=37.5% : 62.5%であった. 他 6 項目については有意な差は認められなかった.
    結論 : 疑陽性例 (Class III) の良性群と悪性群においては, 決定的に有意な差は認められず, 擦過細胞診標本においても非常に難解であると考えられた. しかし, 核小体の有無では, 良性群に陽性率が軽度高い傾向がみられ, 良性細胞を疑陽性へと悪性よりに判定している可能性があり, また Cluster の乳頭状所見や重積性では悪性群に軽度高い傾向が認められ, 疑陽性例の細胞所見の判定に役立つ可能性が示唆された.
  • 赤松 節, 姫路 由香里, 生田 直美, 島垣 二佳子, 丸岡 央, 児玉 省二
    2008 年 47 巻 6 号 p. 420-424
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/04
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 子宮頸がん検診の標本作製法について, Liquid based cytology (以後 LBC と記す) と直接塗抹法 (従来法) について標本の適否状況, および発見病変を比較し, LBC の有用性を検討した.
    対象 : 平成 17, 18 年度の 2 年間に, 新潟県内で実施された検診件数 7 万 6676 件を対象とした.
    方法 : LBC (Cervex ブラシ採取 4 万 3857 件, 綿棒採取 2896 件, スパーテル採取 2521 件, その他 758 件) と従来法 (綿棒採取 464 件, スパーテル採取 2 万 6180 件) について The Bethesda System (以後 TBS と記す) 2001 の基準と一部 TBS 方式を参考に標本適否判定を検討した. 受診歴別に初診 (LBC 1 万 1596 件, 従来法 6086 件) と再診 (繰り返し LBC 2 万 914 件, 繰り返し従来法 2 万 562 件, 従来法の後 LBC 1 万 7518 件) について発見病変を検討した.
    成績 : 不適標本割合では, LBC は従来法に比し有意に低率であった (P<0.001). 採取器具別の比較 (綿棒とスパーテル) では, 細胞数および移行帯細胞の出現について LBC は従来法に比し有意に低率であった (P<0.001). 受診歴別の発見病変では, 初回受診者では LBC から浸潤癌が多く発見された. 再診者では, LBC を繰り返したグループからは上皮内癌 (CIS) 1 名, 浸潤癌 0 に対し, 従来法を繰り返したグループからは CIS 3 名, 浸潤癌 2 名が発見された.
    結論 : LBC は適正標本の作製及び検診効果に優れている.
  • 松井 成明, 安田 政実, 涌井 架奈子, 平林 健一, 梶原 博, 伊藤 仁, 村上 優, 佐藤 慎吉, 長村 義之
    2008 年 47 巻 6 号 p. 425-429
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/04
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 子宮体部明細胞腺癌 (以下, 明細胞腺癌) および類内膜腺癌の hepatocyte nuclear factor-1 beta (以下, HNF-1β) 発現について酵素抗体法を用いた検討を行った.
    方法 : 組織, 細胞学的に子宮体部腺癌と診断された 38 例 (明細胞腺癌 : 6 例, 類内膜腺癌 G1 : 15 例, G2 : 12 例, G3 : 5 例) を用いた. 判定に際しては, 腫瘍細胞の核に発現を示すものを陽性とし, 半定量的に評価した (− : 陰性, 1+ : 30%以下, 2+ : 30∼70%, 3+ : 70%以上).
    成績 : 明細胞腺癌における HNF-1β発現は, 細胞, 組織標本のいずれも全例に種々の程度で認められた. 類内膜腺癌の HNF-1β発現は, 細胞標本では, G1 : 13% (2/15 例), G2 : 17% (2/12 例) , G3 : 20% (1/5 例) であったのに対し, 組織標本では G1 : 0% (0/15 例), G2 : 8% (1/12 例), G3 : 20% (1/5 例) であった. また, 細胞, 組織標本のそれぞれで比較した場合, 細胞標本で高い発現率を示していた.
    結論 : HNF-1βは, 卵巣原発明細胞腺癌同様に子宮体部原発例においても応用可能であると考えられた. しかしながら, 類内膜腺癌のなかには, HNF-1β発現を示す例が存在し, とりわけ G3 に多い傾向を認めたことより, 本抗体を用いた明細胞腺癌と類内膜腺癌の鑑別には留意が必要と考えられた.
  • 小林 織恵, 梅澤 聡, 小林 弥生子, 田村 和也, 大田 昌治, 瀧 和博, 上森 照代, 古田 則行, 平井 康夫
    2008 年 47 巻 6 号 p. 430-436
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/04
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 子宮癌肉腫の術前細胞診を再検討し, 術前細胞診の意義を検討した.
    方法 : 過去 7 年間に武蔵野赤十字病院で術後組織診断にて子宮癌肉腫と診断された 9 例 (頸部 1 例, 体部 8 例) を対象とした. 術前の頸部・内膜細胞診および組織診を, 術後組織診断と比較検討した. また, 術前細胞診を再鏡検し肉腫成分の特徴を明らかにして, 細胞診による術前診断の有用性について考察した.
    成績 : 悪性腫瘍陽性率は術前細胞診で 6 例 (67%), 術前組織診で 8 例 (89%) と高率だが, 癌肉腫の術前正診率は 0 例 (0%), 1 例 (11%) と細胞診, 組織診とも術前診断は困難であった. 術前細胞診の再検討では, 4 例 (44%) で癌肉腫を推定しえた. 細胞診による肉腫成分の特徴は, 1) 孤立散在性に出現する, 2) 核縁が非薄でクロマチンの付着や肥厚を認めない, 3) クロマチンは細顆粒状で不均等な凝集像がない, 4) 核型は不整で切れ込みや脳回転様などの不規則な陥入がみられることがある, 5) 核小体の腫大や数の増加がみられることがある, などであった.
    結論 : 子宮癌肉腫の術前細胞診断は困難であるが, 肉腫成分の特徴を念頭において術前診断することは, 診断率向上に寄与することが示唆された.
症例
  • 加戸 伸明, 町田 知久, 伊藤 仁, 中村 直哉, 中村 雅登, 早川 賢治, 長村 義之
    2008 年 47 巻 6 号 p. 437-441
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/10/28
    ジャーナル 認証あり
    背景 : 眼内悪性リンパ腫はまれな腫瘍であり, ブドウ膜炎との鑑別が難しく, 診断が困難とされる. 今回, 眼球硝子体内容液細胞診で診断しえた眼内悪性リンパ腫の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 77 歳, 男性. 両眼混濁が出現したため近医を受診し, ブドウ膜炎を疑われ加療を受けるも改善せず, 当院紹介となった. 明らかな腫瘤を認めなかったが, 混濁の著しい右眼の硝子体に対し試験的に穿刺細胞診を行ったところ, リンパ腫細胞を認めた. その後, 左眼に対しても硝子体内容液の細胞診を行い, 右眼と同様にリンパ腫細胞を認めた. ブアン固定 cell block 標本を用いて, 免疫細胞化学染色を行い, diffuse large B cell lymphoma と診断した. さらに, PCR 法を用いて免疫グロブリン遺伝子再構成の検索を行ったところ, 単クローン性の増殖が確認された.
    結論 : 明らかな腫瘤形成がなく組織生検が不可能で, 細胞診検体が唯一の確定診断材料となった眼内悪性リンパ腫の 1 例を経験した.
短報
feedback
Top