背景 : 放線菌症の確定診断には細菌培養検査による放線菌の証明が必要であるが, 嫌気性菌である
Actinomyces israeli の分離培養は容易でない. 今回, 子宮内避妊器具 (intra uterine contraceptive device ; IUD) を長期間装着後, 骨盤内放線菌症を発症し, 摘出した付属器膿瘍内容物の塗抹細胞診で放線菌症と診断された 1 例を経験したので報告する.
症例 : 50 歳, 2 経妊 2 経産婦. 約 20 年前に IUD を装着し, 以来未交換であった. 下腹痛を伴った発熱を認め, 前医で抗菌剤治療を受けたが症状の再燃を反復していた. ダグラス窩膿瘍が疑われ, 緊急開腹術を施行した. 術後, 症状は軽減したが, 7 日後には再び発熱を認め, ダグラス窩膿瘍の再発を指摘され, 当科に紹介された. 当科初診時, 経腟超音波断層法および MRI で子宮内に IUD を認めた. 抗菌剤治療施行後, 単純子宮全摘出術, 両側付属器摘除術および癒着剥離術を行った. 摘出標本では子宮体部内腔に IUD を認めた. 摘出標本の割面細胞診では, 多数の好中球, 組織球を背景に不定形の菌塊が散見され, Grocott 染色で多数の微細な分枝を有する菌糸が確認され放線菌症と診断された.
結論 : IUD 装着者における骨盤内感染症の場合, 細胞診が鑑別診断の一助になると思われた.
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