日本臨床細胞学会雑誌
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48 巻 , 3 号
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原著
  • 松浦 祐介, 卜部 理恵, 鏡 誠治, 川越 俊典, 土岐 尚之, 蜂須賀 徹, 柏村 正道
    2009 年 48 巻 3 号 p. 91-96
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
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    目的 : がん検診受診歴を有する浸潤子宮頸癌症例の臨床的特徴や細胞診を検討し, がん検診の精度管理上の問題点を検証する.
    方法 : 過去 23 年間に当科で治療を行った子宮頸癌のうち, 3 年以内にがん検診受診歴のある I b 期以上の 70 例を対象に組織型・細胞像・臨床所見を中心に後方視的に検討した.
    成績 : 浸潤癌のなかで検診歴がある症例の比率は 13.2%であった. 70 例の組織型は扁平上皮癌 43 例, 非扁平上皮癌 27 例で, 検診歴のない群に比較して腺系の腫瘍が有意に多く, 年齢が若い傾向にあった. また, II期までの早期症例が多かった. 不正出血などの自覚症状を有した症例は 56 例 (80%) あり, 当科治療時に明らかに肉眼的浸潤癌であった症例は 40 例 (57%) であった. 異常細胞診を指摘されながら精検が未施行や患者自身が放置していた症例が 10 例あり, 異形成の診断で経過観察されていたものは 11 例であった. 他の 49 例は 3 年以内の細胞診は陰性と判断されていた.
    結論 : 細胞診によるがん検診には約 10%の偽陰性率があり, なかでも頸部腺癌では高率である. 診察時の肉眼所見や臨床症状も正確な診断に必要であり, さらに細胞採取器具の検討や LBC・HPV 検査の導入を考慮する必要がある.
  • 濱中 貴久子, 手塚 文明, 高橋 真紀, 畠山 カヨ, 齋藤 邦倫, 鈴木 博義, 櫻田 潤子
    2009 年 48 巻 3 号 p. 97-102
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
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    目的 : 膵の嚢形成を伴わない solid pseudopapillary tumor (SPT) の組織形態の成り立ち, 細胞像および免疫組織化学的プロフィールの特徴を検討した.
    方法 : SPT と対照の内分泌腫瘍 (ET) について組織標本および細胞標本の観察と免疫組織化学的検索を行った.
    成績 : SPT は上皮様細胞の樹枝状間質を伴う充実性増殖から成り, その規模増大につれて実質域中心に変性壊死を生じ, そこにスペースと偽乳頭状構造を形成した. 腫瘍細胞は大きさの一様な小型類円形で, 円形核と細顆粒状の核クロマチンを有する. 結合性が弱く孤在性が多く, 免疫組織学的に VM, α1-antichymotrypsin, NSE と CD56 に陽性, CK と chromogranin A に陰性, βcatenin と cyclin D1 の核内集積を示した. ET は類似の細胞像を呈したが, 核の大小不同, 粗顆粒状の核クロマチン, CK 陽性, chromogranin A 陽性, VM 陰性が対比的であった.
    結論 : SPT は特徴的な組織形態と細胞像を示し, 免疫組織化学的検討から上皮・間葉・内分泌の分化を超えた pluripotential stem cell に由来する可能性が示唆された.
  • 古旗 淳, 広岡 保明, 松本 俊治, 石 和久, 東井 靖子, 橋川 加奈子, 阿部 佳之, 権田 厚文
    2009 年 48 巻 3 号 p. 103-109
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
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    目的 : 診断しやすい胆汁標本作製のため, 胆嚢の擦過細胞を用いて核形態の正確な経時的変化を調べ, それに対する各種保存液の有効性を検討した.
    方法 : 胆嚢結石症 15 例の摘出胆嚢壁の擦過細胞を胆嚢内胆汁と保存液との等量混合液に加え, 5 分間, 1 時間, 4 時間, 8 時間, 24 時間, 48 時間室温で放置した. 遠心後の沈渣を Papanicolaou 染色標本とした. 用いた保存液は生理食塩液, 20%ウシ血清アルブミン液, RPMI1640 培地, 50%エタノール液, CytoRich 液および YM 液である. 無添加の胆汁を対照とした. 核の形態変化と染色性を観察した.
    成績 : 擦過細胞は無添加の胆汁に加えた直後に強い核の円形化, 縮小および濃染を示し, 4 時間後に最強となった. これに対し CytoRich 液または YM 液を添加した場合, 24 時間後までこれらの変化は軽度で, 73%以上の高い核染色性保存率を保持することができた.
    結論 : CytoRich 液または YM 液は胆汁中の擦過細胞の核形態の保持に最も高い効果を示した. 貯留胆汁中の剥離細胞に対しても, これらの保存液を胆汁採取後できるだけ速やかに添加することで大幅な核の形態変化の軽減が可能と考えられた.
  • 甲斐 俊一, 保里 美帆, 後藤 英貴, 加島 健司, 駄阿 勉, 矢田 直美, 横山 繁生
    2009 年 48 巻 3 号 p. 110-113
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/25
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    目的 : 乳癌センチネルリンパ節 (SLN) の術中細胞診において, Diff-Quik 染色を用いた多割面捺印標本の診断精度と有用性, 腫瘍径・組織型と転移の関連性について検討した.
    方法 : 対象は Diff-Quik 染色で SLN の術中細胞診を施行した乳癌 225 例で, 一割面 (半割, 135 例) および多割面捺印標本 (90 例) による結果を術後の組織診断と比較した. また, 腫瘍径と組織型による SLN 転移の陽性率についても検討した.
    成績 : 一割面捺印標本では, 組織学的に転移のあった 38 例中 8 例が細胞診で偽陰性であった (特異度 92.3%, 感度 78.9%, 正診率 94.1%).
    8 例の転移は径 2 mm 以下で, うち 6 例は顕微鏡的転移であった. 一方, 多割面捺印標本の転移例 15 例はすべて診断できた (特異度, 感度, 正診率ともに 100%). 15 例中 8 例は径 2 mm 以下の微小転移で, うち 2 例は顕微鏡的転移であった. 腫瘍径・組織型と転移に明らかな相関はみられなかったが, 浸潤性小葉癌と微小乳頭癌は小さな腫瘍でも転移がみられた.
    結論 : 乳癌 SLN の術中細胞診には, 簡便かつ短時間で行える Diff-Quik 染色による多割面捺印標本が有用と考えられた.
症例
  • 木下 勇一, 山口 直則, 有馬 良一, 中山 啓三, 安田 迪之, 足立 靖, 鷹巣 晃昌, 四方 伸明
    2009 年 48 巻 3 号 p. 114-118
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/16
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    背景 : 神経内分泌系悪性腫瘍としては肺に発生する小細胞癌が頻度も高くよく知られているが, 神経内分泌癌 (Neuroendocrine carcinoma : NEC) が肺以外の臓器に発生することはまれである. 今回われわれは子宮体部原発と考えられる NEC の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 64 歳, 3 経妊 3 経産. 腹部痛を主訴に来院. 画像検査で腹腔内∼骨盤腔内を占拠する巨大な腫瘤を認めた. 術前の子宮頸部擦過標本では結合性の疎な異型核を有する大小不同を伴う大型の類円形腫瘍細胞を多数認めた. 免疫細胞化学染色において synaptophysin が陽性を示した. 摘出された子宮体部は著明に腫大しており, 腫瘍は体部の大部分を占め, 頸部の一部にも及んでいた. 組織学的に腫瘍細胞は特徴的配列を示さず広範な出血・壊死を認めた. 核分裂像も多数認めた.
    結論 : 子宮体部を中心に広範な浸潤を示した NEC の症例であり, 子宮体部原発が疑われた. 子宮体部原発 NEC の報告は少なく, 今後の症例蓄積による臨床病理学的検討が必要であると考えられた.
  • 土田 秀, 中里 宜正, 神山 晴美, 原口 理恵子, 飯島 美砂, 吉田 勤, 田中 良太, 杉原 志朗
    2009 年 48 巻 3 号 p. 119-123
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/16
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    背景 : 濾胞樹状細胞肉腫 (follicular dendritic cell sarcoma : FDC sarcoma) はまれな腫瘍で多彩な組織像を呈し, 組織診でも低分化な癌や悪性リンパ腫との鑑別が困難な例も存在する. 今回, 捺印標本で扁平上皮癌を推定した肺原発 FDC sarcoma の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 63 歳, 女性. 胸部 computed tomography により左肺門部に左下葉気管支を巻き込む径 3 cm 大の充実性腫瘤が認められた. 気管支鏡検査時の捺印標本では, 核の腫大した比較的広い細胞質をもつ腫瘍細胞が平面的な集塊を形成し, また散在性にも出現していた. 組織学的には腫瘍細胞が束状, 交錯状に配列しながら増殖し, 免疫組織化学的検索では CD21+CD35, Follicular Dendritic Cell, Desmin, Smooth Muscle Actin が陽性であった.
    結論 : 本腫瘍の多くは背景に多数のリンパ球を認めるため, 胸腺腫やリンパ上皮腫との鑑別が, 腫瘍細胞の形態からは扁平上皮癌との鑑別が重要となるが, 肺のようなまれな発生部位で標本の背景にリンパ球の出現が少ない症例では, FDC sarcoma を細胞診で推定することは困難なことが多いと考えられるが, クロマチンが繊細で扁平上皮癌の所見と異なる場合は本症を考慮する必要があると思われた.
  • 中川 美弥, 松岡 拓也, 溝上 美江, 田上 圭二, 神尾 多喜浩
    2009 年 48 巻 3 号 p. 124-128
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/16
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    背景 : 胸腺に発生する腺癌はまれである. 今回, 胸腺に発生した腺癌を経験したので, 細胞像を中心に報告する.
    症例 : 47 歳, 女性. 検診の CT で縦隔に異常陰影を指摘された. CT や MRI では, 上縦隔に 5 cm 大の異常陰影を認め, 胸腺腫が疑われた. 胸腔鏡下針生検で悪性と診断されたため, 腫瘍摘出術が施行された. 捺印細胞診では, 少量の壊死を背景に, N/C 比の高い腫瘍細胞がシート状, 柵状または散在性に出現していたが, 部分的に核配列の乱れた腺腔様構造を認めた. 腫瘍細胞には核の大小不同と核形不整, 粗大顆粒状の核クロマチンの増量がみられ, 明瞭な核小体と核分裂像を認めた. なかには細胞異型に乏しい腺腔構造が観察された. 組織学的には腫瘍細胞が腺管状または乳頭状に増殖し, 腺腔内壊死や核分裂像を認めた. 癌辺縁にはハッサル小体を有する胸腺組織が観察された. 免疫組織化学的に腫瘍細胞表面の一部に CD5 が陽性であり, 胸腺原発の腺癌と診断された.
    結論 : 前縦隔腫瘍の細胞診で, 異型が弱くとも明らかな腺腔構造をとり, 核の大小不同や核形不整, 核配列の乱れを示す上皮細胞が鏡検される場合には, 胸腺由来の腺癌も考慮すべきである.
  • 荒川 文子, 仲間 盛之, 村田 行則, 石田 剛
    2009 年 48 巻 3 号 p. 129-134
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/16
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    背景 : 嚢胞内に増殖し, 間質浸潤を認めた男性乳腺アポクリン癌の症例を経験したので, その細胞像について報告する.
    症例 : 83 歳男性. 4 ヵ月前右胸部の腫瘤を指摘. 超音波検査では, 充実成分を伴う嚢胞性病変であった. 針生検後, 右乳房切除術施行. 切除検体に穿刺吸引細胞診を行い, 嚢胞内容物と嚢胞内充実成分の細胞を採取した. 嚢胞内容物では, 背景に細胞質が泡沫状の細胞を散在性に認め, そのなかに核小体明瞭な円形核と泡沫状の豊富な細胞質を有する細胞が平面的集塊でみられた. 嚢胞内充実成分では, 核の肥大と大小不同, 明瞭な核小体, ライトグリーンに染まる豊富な細胞質を有する細胞が平面的および軽度の重積性のある集塊でみられた. 集塊辺縁部に細胞のほつれがあり, snout 像, 細胞質内小腺腔, tail 状細胞もみられ, アポクリン癌と推定診断した.
    結論 : 嚢胞内病変で, 泡沫状細胞とアポクリン分化を示す細胞が出現した場合, 乳腺症を第一に考えるが, 男性の乳腺症はまれである. 出現細胞の結合性がゆるいことや泡沫状細胞が類円形核と厚い細胞質をもっていた場合には, アポクリン癌の可能性があることを考えて鏡検すべきである.
  • 西村 理恵子, 寺本 典弘, 香川 昭博, 山本 珠美, 滝下 照章, 門田 信也
    2009 年 48 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/16
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    背景 : セルブロックは組織構築の保持がよく特殊染色の追加が容易である点で, 塗抹細胞診よりも優れている. しかし, 操作が煩雑で十分な細胞量の回収が難しいことから, 普及していない. そこで, 診断確定にセルブロックが有用であった甲状腺癌例を経験したので報告する.
    症例 : 30 代, 男性. 前頸部の最大径 6.5 cm の腫瘤の穿刺吸引細胞診で, 悪性細胞が認められたが, 低分化癌, 濾胞癌, 小細胞癌, 悪性リンパ腫の鑑別が困難であった. 治療法選択のために組織診断確定が必要であったが, 生検が困難な場所であった. そこで, 再度穿刺吸引細胞診が行われ, セルブロックが作製された. セルブロック標本では, N/C 比が高い腫瘍細胞が, 部分的に濾胞様の構造をとって, 多数みられた. 腫瘍細胞には核の縦溝や核内封入体はみられなかった. 免疫染色では, 腫瘍細胞はサイログロブリンが強陽性で, サイトケラチン, ビメンチン, Thyroid transcription factor-1 も陽性であった. 神経内分泌系のマーカー (シナプトフィジン, クロモグラニン A) は陰性であった. 以上の所見から, 甲状腺濾胞癌と診断した. 甲状腺全摘術と頸部リンパ節郭清が行われ, 切除検体の組織診断も甲状腺濾胞癌であった.
    結論 : 穿刺吸引材料のセルブロックが, 組織診断確定に有用であった甲状腺癌例を報告した. 頸部等の生検が困難な部位の病変の診断に, 穿刺吸引材料のセルブロックが有用である.
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