背景 : セルブロックは組織構築の保持がよく特殊染色の追加が容易である点で, 塗抹細胞診よりも優れている. しかし, 操作が煩雑で十分な細胞量の回収が難しいことから, 普及していない. そこで, 診断確定にセルブロックが有用であった甲状腺癌例を経験したので報告する.
症例 : 30 代, 男性. 前頸部の最大径 6.5 cm の腫瘤の穿刺吸引細胞診で, 悪性細胞が認められたが, 低分化癌, 濾胞癌, 小細胞癌, 悪性リンパ腫の鑑別が困難であった. 治療法選択のために組織診断確定が必要であったが, 生検が困難な場所であった. そこで, 再度穿刺吸引細胞診が行われ, セルブロックが作製された. セルブロック標本では, N/C 比が高い腫瘍細胞が, 部分的に濾胞様の構造をとって, 多数みられた. 腫瘍細胞には核の縦溝や核内封入体はみられなかった. 免疫染色では, 腫瘍細胞はサイログロブリンが強陽性で, サイトケラチン, ビメンチン, Thyroid transcription factor-1 も陽性であった. 神経内分泌系のマーカー (シナプトフィジン, クロモグラニン A) は陰性であった. 以上の所見から, 甲状腺濾胞癌と診断した. 甲状腺全摘術と頸部リンパ節郭清が行われ, 切除検体の組織診断も甲状腺濾胞癌であった.
結論 : 穿刺吸引材料のセルブロックが, 組織診断確定に有用であった甲状腺癌例を報告した. 頸部等の生検が困難な部位の病変の診断に, 穿刺吸引材料のセルブロックが有用である.
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