日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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48 巻 , 4 号
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原著
  • 大橋 実, 鈴木 孝幸, 今井 淳, 小川 久美子
    2009 年 48 巻 4 号 p. 159-165
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/09
    ジャーナル フリー
    目的 : 細胞診検体の, より詳細な検討を目的として, 骨髄穿刺検体の凝集剤として用いてきた hematoxylin によるセルブロック (以下 CB) の作製法と有用性を検討した.
    方法 : 各種 hematoxylin による血液凝集感度とタンパク含有量の異なる液状検体の凝集感度を検討し, 至適条件を決定した. 擦過および塗抹検体 224 例の余剰細胞集塊, 体腔液沈渣 46 例および尿沈渣 9 例について hematoxylin S solution (以下 HxS) を滴下して凝集塊を作製後, 定法どおりホルマリン固定を行い, CB を作製した. 適宜免疫染色等の追加検討を行い, 細胞診所見と比較した.
    成績 : 各種 hematoxylin の内, HxS および Gill's hematoxylin V solution は良好な凝集能を示した. 蛋白含有量の少ない尿沈渣には, 重合ウシアルブミンの追加により, HxS にて凝集塊を形成した. 擦過および塗抹検体からの HE 像は, 細胞の収縮, 染色性の不均一化がみられたが, 5 例 (2.2%) で, より詳細な所見が得られた. 体腔液および尿沈渣での HE 染色像は細胞診とほぼ同等で, それぞれ 14 例 (30.4%) と 1 例 (11%) でより詳細な診断が得られた.
    結論 : HxS を用いた CB 作製法は, 簡便で免疫染色や特殊染色への応用も可能であり, 有用であると考えられた.
  • 神尾 淳子, 佐藤 丈晴, 室井 祥江, 柴田 眞一, 石田 卓, 森村 豊
    2009 年 48 巻 4 号 p. 166-169
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/09
    ジャーナル フリー
    目的 : 肺癌検診喀痰細胞診における肺門部扁平上皮癌の発見頻度について集検成績より検討した.
    方法 : 1987∼2005 年度の 19 年間の喀痰細胞診受診者総数 16 万 9840 名を対象とし, 1995 年度まで (前期) の成績と 1996 年度以降 (後期) の成績を比較した.
    成績 : 集検喀痰細胞診による発見がん数は 19 年間合計 270 例 (10 万対 162.6) であった. 前期のがん発見率は 10 万対 183.0 に対し, 後期は 10 万対 146.2 と減少していた. 早期肺扁平上皮癌の発見数においては肺門部発生と末梢部発生で, 前期と後期の頻度に大きな差は認められなかった (p=0.70, χ2検定).
    結論 : 集検喀痰細胞診は肺門部早期扁平上皮癌の発見に現在でも有用である. 今後は, 受診対象者を高危険群に絞り込み, 受診者数を増やすことで効果的な検診が実施できると思われた.
  • 矢羽田 一信, 寺本 友昭, 清水 恵子, 南雲 サチ子
    2009 年 48 巻 4 号 p. 170-175
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/11/09
    ジャーナル フリー
    目的 : 細胞検査士のレベルを知り, それを評価するための客観的で, かつ基準データとなるような資料を蓄積し, 今後の細胞診の精度管理のための具体的手法を確立することである.
    方法 : 対象は 2005∼2007 年に日本臨床細胞学会大阪府支部細胞検査士会で行った自己採点方式スライドカンファレンスに参加し, 有効回答をした細胞検査士 152 名の成績である. 出題領域は全域で出題数は 3 年間で 100 問である. 1 問のスライド枚数は 2 枚で投影時間は 1 分とした. 回答は五者択一で, 用紙は回収後, 成績を集計し, 再度画像, 選択肢について再評価した. 回答用紙には経験年数, 勤務施設の種類, 勤務状況, 業務内容などの設問を付加した.
    結果 : 平均正解率は 2005 年 74.3%, 2006 年 69.1%, 2007 年 79.3%であり, 各標準偏差は 13.0, 10.5, 8.8 と年々ばらつきは小さくなった. 各問題の正解率は 22∼100%までばらつきがあり, 問題により習熟度に差がみられた. 勤務施設と経験年数と成績の関係は病院勤務では経験年数に関係なくほぼ平均値を維持していたが, 検査センター, 検診センター勤務では経験年数とともに成績は低下した. 日頃, 主に鏡検している領域と経験年数でみた場合の成績は経験年数 20 年未満では成績に差はみられなかったが, 20 年以上でほぼ全域を鏡検している群に比し, それ以外の群では成績が約 10%低下した.
    結論 : 成績は勤務施設, 経験年数, 日頃, 主に鏡検している領域の影響を受けばらつくことがわかった. また, 本法は細胞診の外部精度管理の一方法として有用と考えられた. 今後は問題を習熟度別に分類し, 評価方法の体系化を検討したい.
症例
  • 矢野 哲也, 藤井 丈士, 吉田 文子, 大橋 健一
    2009 年 48 巻 4 号 p. 176-180
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 形質細胞性腫瘍は臨床的に骨軟部腫瘍として認識されることがある. 今回, 胸壁に発生して切除された未分化形質細胞腫を経験し, 捺印細胞診が他の悪性腫瘍との鑑別診断に有用であったので報告する.
    症例 : 82 歳男性. 約 1 ヵ月前より左前胸壁腫瘤を認め, 増大傾向を示すために切除目的に紹介入院. 胸部 CT で左胸壁に約 10 cm 径の腫瘤を認め, 隣接する肋骨に浸潤所見を認めた. 骨シンチでは左胸壁に限局する集積像を認めた. 肋骨合併胸壁腫瘍切除術が施行された. 術後の血清・尿免疫電気泳動で Bence Jones-κ型 M 蛋白血症の病態が推定された. 患者は紹介元病院に転院した後に多発性骨髄腫に進展して死亡した.
    組織所見 : 腫瘍は肉眼的に乳白色髄様充実性を呈し, 第 5 肋骨の一部が腫瘍内で消失していた. 組織学的に中∼大型類円形核と明瞭な核小体を有する腫瘍細胞が髄様に増殖する悪性上皮様腫瘍であり, 核分裂像が多く奇怪な多核巨細胞や核破片 (apoptosis) が目立った. 鑑別診断には低分化癌の転移, 類上皮肉腫, 退形成性の強い形質細胞性腫瘍, びまん性大細胞性リンパ腫などがあげられた.
    腫瘍捺印細胞所見 : 腫瘍細胞は結合性に乏しく, 多くが孤立散在性に出現したが, 一見上皮様結合を示す部分もみられた. 核は大小不同と核形不整が目立ち, 多くは単核だが 2 核∼多核もみられ, 大型で好酸性の核小体が目立った. 核偏在や核周明庭, 細胞質空胞変性もみられた.
    酵素抗体法 : 腫瘍細胞は kappa+, lambda−, IgG+/−, IgA−, IgM−, CD3−, CD20−, CD79a−/+, CD30−, MPO−, MUM1+, CD138+, CD56+, synaptophysin−, CD99+, EMA+/−, cytokeratin−, vimentin+, desmin−, HHF35−, SMA−, S100−であった.
    結論 : 細胞異型の強い未分化形質細胞腫で非典型的な組織像から一見低分化癌の転移や肉腫との鑑別も要したが, 捺印細胞像による観察が診断に有用であった.
  • 鈴村 香奈芽, 前田 昭太郎, 細根 勝, 片山 博徳, 東 敬子, 岩瀬 裕美, 劉 愛民, 内藤 善哉
    2009 年 48 巻 4 号 p. 181-186
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 中皮腫の早期診断には体腔液細胞診が有用であるが, 診断に難渋する症例も多い. 体腔液細胞診のみで中皮腫と確定診断した腹膜悪性中皮腫の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 59 歳, 男性. 原因不明の腹水貯留にて来院した. PET で異常所見なし. 細胞所見は, 組織球などの炎症細胞を背景に核小体が肥大した 2 核∼多核の中皮細胞が多数みられ, 相互封入像も認めたことから中皮腫と推定診断した. 時間の経過とともに乳頭状集塊もみられた. 細胞転写法を用いた免疫細胞化学染色を行い, calretinin, CK5/6, mesothelin, D2-40, E-cadherin, EMA, p53 (陽性率 : 51%) 陽性, CEA, MOC31, Ber-EP4 陰性であった. さらに, 腹水から作製したセルブロックによる電顕検索で細長い微絨毛を豊富に認め, 中皮腫と確定診断した.
    結論 : 体腔液細胞診では診断に難渋する中皮腫でも, 細胞転写法を用いた複数の抗体による免疫細胞化学染色およびセルブロック法による電顕検索を行うことにより, 腹水材料のみでも悪性中皮腫と確定診断することは可能である.
  • 佐藤 孝之, 藤井 丈士, 矢野 哲也, 吉田 文子, 中山 大子, 大橋 健一
    2009 年 48 巻 4 号 p. 187-191
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 悪性黒色腫は欧米に比べて日本では罹患率が低く, 日常の細胞診断業務のなかで体腔液中に出現した細胞像を経験することは少ない. 体腔液中に腫瘍細胞が出現した悪性黒色腫症例をさかのぼって検索してその臨床的背景と細胞学的特徴を検討した.
    症例 : 1989∼2008 年の約 20 年間に虎の門病院病理部において悪性黒色腫の組織診断が付されたのは 406 件/256 名であり, 経過中に体腔液細胞診が施行された 13 名のうち, 悪性黒色腫細胞の体腔液中への出現は 6 名 (2.3%) にみられた. 6 例の内訳は胸水 5 例/腹水 1 例で, 患者は男 5 名/女 1 名で年齢は 26∼72 歳 (中央値 56 歳). 全例が皮膚原発で, 体腔液貯留は原発巣診断後 5.5∼135 ヵ月 (平均 31.7 ヵ月) に出現した. 予後不良で全例死亡し, 体腔液細胞診における腫瘍細胞出現から死亡までの期間は 18∼45 日 (平均 38.2 日) であった. 診断に有用な細胞学的所見として, 結合性低下 (6/6), 著明な核小体 (6/6), 多核化 (5/6), メラニン顆粒 (4/6), 細胞質の空胞化 (5/6) が挙げられた. 小集塊状に出現した例 (3/6) も認めた. 背景所見として全例に反応性中皮細胞やリンパ球の出現を認めた.
    結論 : 体腔液中に出現する悪性黒色腫ではメラニン顆粒がみられない場合, 悪性黒色腫の診断は臨床経過なしには困難なことが多く, 悪性中皮腫や反応性中皮細胞, 低分化腺癌が鑑別診断に挙げられる. 臨床経過や免疫細胞化学 (MART1/melan A, HMB45, S100) を併せた総合的なアプローチが有用と考えられる.
  • 小山田 裕行, 伊藤 仁, 宮嶋 葉子, 芹澤 昭彦, 加戸 伸明, 梶原 博, 梅村 しのぶ, 長村 義之
    2009 年 48 巻 4 号 p. 192-196
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 神経芽腫群腫瘍は神経堤由来とされ, 主として 4 歳頃までに発生するが, 年長期や, 成人例もまれにみられる. 今回われわれは 18 歳女性の副腎に発生した大型多核細胞を多数伴った低分化型神経芽腫を経験したので報告する.
    症例 : 近医にて左副腎腫瘍を指摘され来院. 術前検査にて無機能性副腎腫瘍と診断され, 腹腔鏡下左副腎摘出術施行. 術中, 腫瘍内の嚢胞状内容液の吸引細胞診が行われた. その細胞所見は, 小型∼中型の円形∼楕円形および短紡錘形の腫瘍細胞が散在性に認められ, 大型の多核腫瘍細胞が多数混在し, 腫瘍細胞間は神経細線維状を呈していた. また, 大型の多核腫瘍細胞は, 細胞質が豊富で, 核偏在性を示し, 高度の核異型を有していた.
    結論 : 副腎腫瘍を細胞診で経験する機会は少ない. 18 歳女性の副腎に発生した多核巨細胞を伴う神経芽腫を経験した. 神経芽腫は一般的に乳幼児に発生し, その細胞像は小型類円形で細胞質に乏しい均一な腫瘍細胞よりなる. しかし, 年長期や成人にもみられ, 細胞像も著しい多形性を示す場合があることを念頭において鏡検することが肝要と考えられた.
  • 石田 光明, 吉田 桂子, 宮本 敬子, 岩井 宗男, 宮平 良満, 山本 将司, 九嶋 亮治, 岡部 英俊
    2009 年 48 巻 4 号 p. 197-200
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 粘液性副腎皮質腺腫の 1 例を経験したので, そのタッチスメア像について, 鑑別診断の検討を含め報告する.
    症例 : 60 歳, 女性. 約 7 年前から高血圧で投薬治療を受けていた. 腹部超音波検査で右副腎腫瘍を指摘され, 腹腔鏡下副腎腫瘍摘出術が施行された. タッチスメア標本では豊富な粘液性背景の中, 大小不同の類円形から多角形細胞が結合性の緩い集塊を形成し, 紡錘形細胞も散見された. 核は細胞質の中心に位置し, 核クロマチンは細顆粒状で, 均等に分布していた. 大型核や核小体の目立つ大型細胞が散見されたが, N/C 比は低く, 分裂像や壊死はみられなかった. 細胞質内に粘液はみられず, 細胞外粘液はアルシアンブルー染色陽性で, ヒアルロニダーゼで消化された. 以上の所見から粘液性副腎皮質腺腫と推定された. 病理組織学的検索で粘液性副腎皮質腺腫と診断した.
    結論 : 副腎皮質腺腫は細胞外粘液の貯留を伴うことがあり, その粘液はヒアルロニダーゼで消化されたので, 粘液癌の転移との鑑別が可能となることが明らかとなった. また細胞形態の多彩性に紛らわされることなく, 壊死の有無や分裂像の増加を検討することが副腎皮質癌との鑑別に有用であると考えられる.
  • 高木 早苗, 重元 久志, 栗栖 佳宏, 武島 幸男
    2009 年 48 巻 4 号 p. 201-205
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 結節性筋膜炎は, 皮下深部に好発する線維芽細胞の増殖を主体とした反応性増殖性病変である. 約半数は上腕から前腕にかけて発生し, 乳腺領域には非常にまれである. 今回われわれは穿刺吸引細胞診および切除生検により結節性筋膜炎と診断した 1 例を報告する.
    症例 : 57 歳, 女性で, 3 週間前より左乳腺腫瘤を自覚して来院した. 左乳腺 AB 領域に約 4 cm 大の可動性良好な腫瘤を認めた. マンモグラフィーでは, 病変は, 比較的境界明瞭で内部は均一, 分葉状であり, 娘結節を認めた. 葉状腫瘍の疑いで穿刺吸引細胞診が施行された. 穿刺吸引細胞診では少量の異型の弱い乳管上皮細胞とともに軽度の核異型を呈する線維芽細胞様細胞が多数採取され, 線維腺腫や葉状腫瘍を疑った.
    病理組織学的には背景に間質性粘液を伴って幼弱な線維芽細胞が錯綜して増殖し, 免疫組織化学的染色では, 増生細胞はアクチン陽性, Kp1 陽性, デスミン弱陽性, CD34 弱陽性であった. これらの所見と臨床経過から, 結節性筋膜炎と診断された.
    結論 : 乳腺の穿刺吸引細胞診において, 多数の非上皮性成分が採取された場合, 線維腺腫, 葉状腫瘍とともに結節性筋膜炎も鑑別診断の一つにあげる必要がある.
  • 濱中 貴久子, 手塚 文明, 佐藤 輝彦, 高橋 真紀, 鈴木 博義, 朝野 晃, 和田 裕一
    2009 年 48 巻 4 号 p. 206-210
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 子宮頸部のいわゆる悪性腺腫は最小偏倚腺癌とみなされ, その腫瘍細胞の異型の軽さから細胞診で悪性と診断することが困難とされている. 私どもは興味ある細胞像を示した 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 29 歳女性. 2 年前からみられた帯下がさらに増量し, 子宮頸部擦過細胞診にて悪性腺腫が疑われたため, 広汎子宮全摘術が施行された. 擦過細胞標本には大小多数の結合性の良い細胞集塊が出現し, 2 型に区別された. 一つ (細胞集塊 A) は, 大部分を占めるもので, 異型の軽い豊富な粘液を有する円柱細胞のシートから成っていた. ほか (細胞集塊 B) は, 少数であるが, 異型の明らかな粘液のない腺細胞から成っていた. 細胞集塊 B の細胞は核の腫大とクロマチン増量, N/C 比の増大, 明瞭な核小体を示し, ところにより好中球の侵入を伴った. 摘出子宮の頸部は著しく肥大し, 組織学的に異常腺管の massive な増殖が認められた. 増殖の中心部では小葉構造がなく, 腺管が分岐を繰り返して増量拡大し, その細胞は異型性が軽度で豊富な胃型粘液を産生していた. これに対し, 増殖の先進部は粘液産生に乏しく異型の目立つ腺細胞が出現し, 間質浸潤を示していた. 細胞標本に認められた細胞集塊 A および B は, それぞれ腫瘍の中心部と辺縁部の変化に由来していると見なされた.
    結論 : 明らかな異型を示す悪性細胞は腫瘍の先進浸潤部に由来すると見なされた. 最小偏倚腺癌の細胞診断では, 多くの異型の軽い粘液産生細胞の中に, 比較的少数の悪性細胞を見出すことが鍵となる. また, 正しい診断を得るためには適切なサンプリングが大切である.
  • 遠藤 隆, 藤井 丈士, 中西 美紗緒, 太田 明宏, 沼田 ますみ, 中野 嘉子, 望月 眞, 遠藤 久子
    2009 年 48 巻 4 号 p. 211-215
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : Peutz-Jeghers (PJ) 症候群は皮膚粘膜色素沈着を伴う遺伝性消化管ポリポーシスで, その 3∼24%に癌化を伴い, 卵巣性索間質腫瘍, 子宮頸部高分化腺癌, 乳癌などの他臓器腫瘍合併が知られている. 今回 PJ 症候群に合併し, 胸水と腹水に腫瘍細胞が出現した子宮頸部腺癌の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 39 歳, 女性. 幼少期より PJ 症候群による腸重積を繰り返していた. 腹痛と下血, 発熱を主訴に当院消化器科を受診. 初診時に下腹部腫瘤を認め, 上下部消化管内視鏡で著明なポリポーシスを認めたが, 内視鏡的にも消化管生検でも悪性所見はみられなかった. 腹部 CT で子宮頸部肥厚と両側胸水・腹水がみられ, 胸腹水細胞診が陽性であった. 子宮頸癌疑いで婦人科に転科し, 子宮頸部細胞診と生検が施行され, 内頸部型腺癌 (臨床病期IV期) と診断した. 緩和ケアが選択され, 腫瘍進行とともに約 1 ヵ月後に死亡した.
    胸水・腹水細胞所見 : 炎症性背景に中等大∼大型異型細胞が孤立性∼小集団で出現していた. 核は類円形で偏在し, 明瞭な核小体と微細なクロマチンを有し, 胞体はライト緑好性で泡沫状, 橙色に淡染する粘液空胞も認められた.
    子宮頸部擦過細胞診 : 粘液豊富な高円柱状細胞が柵状配列を示す集団で出現しており, 黄色調を帯びた胞体内粘液もみられた. 核小体が明瞭で細胞異型の目立つ重積性集塊も混在してみられた.
    子宮頸部組織生検 : 胞体内粘液の豊富な高円柱状細胞が柵状∼乳頭管状に配列する内頸部型腺癌であり, 充実性に増生する細胞異型の目立つ部分が混在していた. 酵素抗体法では腫瘍細胞は cytokeratin (CK) 7 (+), CK20 (−), CDX2 (−), carcinoembryonic antigen (+), estrogen receptor (−), progesterone receptor (−), MUC1 (+), MUC2 (−), MUC5AC (+), MUC6 (+), HIK1083 (−/+), cyclooxygenase-2 (+) であった.
    結論 : PJ 症候群に合併する子宮頸部腫瘍は, いわゆる悪性腺腫か粘液豊富な高分化腺癌が多く報告されているが, 本症例では悪性腺腫というよりは多彩な像を呈する明らかな腺癌であった. PJ 症候群で体腔液中に粘液陽性の腺癌細胞が出現した場合, 子宮頸部腺癌も鑑別診断に考慮する必要がある.
  • 牛腸 理江, 中村 恵美子, 宮川 恭一, 金本 淳, 清水 敏夫, 川口 研二
    2009 年 48 巻 4 号 p. 216-219
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 卵管癌は婦人科悪性腫瘍の 0.3∼1.0%を占める予後不良の疾患である. 近年その発生にタモキシフェン投与や乳癌の遺伝子異常が関与する症例が報告されている.
    症例 : 58 歳, 3 経妊 3 経産. 50 歳時左乳癌にて左乳房摘出. 術後タモキシフェン投与中, 1 年後の検診の子宮頸部擦過細胞診で内膜癌を疑う細胞が出現した. 子宮頸部・内膜組織検査では明らかな悪性所見は認めなかった. 臨床的に子宮・卵巣・卵管に腫瘍は確認されなかったが, 子宮内膜癌や卵巣癌を否定できず 2 ヵ月後子宮両側付属器・大網切除術を施行. 肉眼的に子宮・付属器に腫瘍性病変は認めなかった. 子宮・卵巣・卵管の全割標本から両側卵管上皮内癌が認められた. 術後 2 年で横隔膜下, 4 年後に心外膜近傍のリンパ節転移が発見され摘出. その後 3 年経過するが再発は認めず現在も存命中である.
    結論 : 子宮頸部・内膜細胞診で腺癌細胞が出現しているにもかかわらず, 臨床的に腫瘍を確認できない場合には卵管癌も考慮し, 詳細な検索が必要である.
  • Katsuo USUDA, Motoyasu SAGAWA, Hirokazu AIKAWA, Masakatsu UENO, Yuichi ...
    2009 年 48 巻 4 号 p. 220-225
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/01/28
    ジャーナル 認証あり
    背景 : 肺多形癌は稀な肺悪性腫瘍であり, その細胞所見は文献でも明確となっていない.
    症例 : 肺多形癌と病理学的に診断された 2 例について, 切除腫瘍の捺印細胞所見を retrospective に検討した. 細胞所見で診断に重要な細胞所見を抽出し, その出現頻度を検討した. 肺多形癌の診断に重要な細胞は, 巨細胞・多核細胞・2 核細胞・奇怪核・核分裂像・癌細胞と好中球の混在所見, および腺癌細胞・大細胞癌細胞等であり, 多彩な細胞所見を呈した. 驚くことに, 肺多形癌の細胞所見には紡錘状細胞は全く認められなかった.
    結論 : 肺多形癌の細胞診断においては, 紡錘状細胞の有無にかかわらず, 多彩な腫瘍細胞の出現を確認すれば, 肺多形癌を強く疑うことが可能である.
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