上皮型悪性中皮腫 (EMM) は胸水剥離細胞診にて反応性中皮 (RM) との鑑別に難渋することが多い. 今回両者の細胞像を比較検討し鑑別に有効な細胞所見を報告する.
対象は EMM の胸水細胞診標本 15 例と多数の RM を含む細胞診陰性の胸・腹水標本 17 例. 細胞配列, 胞体の厚み, 核の大小不同, 核の大きさ, 核数, 核形, 核縁, クロマチン, 核小体数, 細胞診断, 推定病理診断, 核分裂像, 細胞相接像, 胞体内空胞を比較検討した.
細胞配列は, EMM は集塊が, RM は孤立が優位であった. 核の大小不同は, EMM は 2 倍以上 4 倍未満, RM は 2 倍未満が最も多かった. 核の大きさはいずれもリンパ球核の 2∼4 倍が最多だが EMM は 5∼6 倍の細胞が存在した. 核数は, 2 核以上の細胞が EMM の 2 割, RM の 1 割を占めた. 核小体数はいずれも 1∼2 個が最も多く RM では 0 個が 2 割を占めた. 核分裂像は EMM 症例の 27%, RM 症例の 6%に存在した. 胞体内空胞は EMM 症例の 67%, RM 症例の 12%において 20%以上の細胞に認められた.
両者の鑑別には, 細胞配列, 胞体内空胞が有用で, 核の大小不同, 核の大きさ, 核数, 核小体数, 核分裂像を併用することが望ましい.
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