日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
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48 巻 , 5 号
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原著
  • 伊藤 仁, 宮嶋 葉子, 加戸 伸明, 芹澤 昭彦, 町田 知久, 梅村 しのぶ, 長村 義之
    2009 年 48 巻 5 号 p. 257-262
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 臨床的および病理組織学的にも癌との鑑別が問題となる乳管腺腫の細胞学的特徴について検討した.
    方法 : 組織学的に乳管腺腫と診断された 9 例を対象とした. 穿刺吸引細胞診標本のパパニコロウ染色標本を用いて, 種々の細胞学的所見について評価し, 臨床的所見および組織学的検討を加えた.
    成績 : 60 歳以上の高齢者に多く, 超音波診断により癌が疑われていた症例が 6 例あった. 細胞診は, 悪性疑い 3 例 (アポクリン癌疑い 2 例), 鑑別困難 3 例, 良性 3 例であった. アポクリン化生細胞は 4 例に認められ, 2 例では高度の核異型を示していた. 3 例において細胞質内に明らかな粘液を有する細胞が認められた. 8 例において, 明らかな腺細胞と筋上皮細胞の二相性を示す集塊が混在していた. 腺上皮細胞の結合性は比較的良好であった. 細胞診で粘液を有する細胞が認められた 3 例では, 組織学的に PAS 反応が強陽性を示した.
    結論 : 乳管腺腫では異型性の強いアポクリン化生細胞や細胞内粘液を有する細胞がみられることがあり, 乳腺細胞診において, それらと良性細胞集塊が混在して出現した場合には, 乳管腺腫を念頭において慎重に判定することが overdiagnosis を防ぐうえで肝要と考えられた.
  • 紀 美和, 杉山 裕子, 鈴木 奈緒子, 坂本 公彦, 宇津木 久仁子, 竹島 信宏, 平井 康夫, 古田 則行, 秋山 太, 滝澤 憲
    2009 年 48 巻 5 号 p. 263-267
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 若年性子宮体がんは一般に早期がん, 高分化型類内膜腺癌の頻度が高いとされている. 若年性子宮体がんの病理細胞診断学的特徴を明らかにし, その特徴をもとに若年性子宮体がん早期発見の手がかりを見付けることを目的とした.
    方法 : 2000 年 1 月∼2006 年 12 月の 7 年間に当院で治療した 39 歳以下の子宮体がん (39 歳以下群) 48 例を対象とし, 病理細胞診断学的特徴について, 40 歳以上の子宮体がん (40 歳以上群) 671 例と後方視的に比較検討した.
    成績 : 病理組織学的特徴として, 両群ともに類内膜腺癌 Grade 1 の頻度が高く, 扁平上皮への分化を伴う類内膜腺癌の頻度は 39 歳以下群が 40 歳以上群に比較して有意に高かった (31.3% vs 17.6% (p=0.033)). 細胞診断学的特徴として, 扁平上皮への分化を伴う所見の割合は 39 歳以下群が 40 歳以上群に比較して有意に高かった (34.9% vs 9.4% (p<0.001)).
    結論 : 若年者の内膜細胞診において扁平上皮への分化を伴う異型内膜細胞を認めた場合は, 子宮内膜癌の存在に留意し, 病理組織検査を実施する必要があると考えられた.
  • 前川 観世子, 廣川 満良, 柳瀬 友佳里, 隈 晴二, 宮内 昭, 加藤 良平, 越川 卓, 覚道 健一, 坂本 穆彦
    2009 年 48 巻 5 号 p. 268-273
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 甲状腺低分化癌の細胞像に関する報告は少なく, 細胞学的特徴についても明確にされていない. 本研究では低分化癌の細胞学的特徴とそれらの診断的意義を明らかにすることを目指した.
    方法 : 甲状腺低分化癌 57 例を対象とし, 組織標本上に占める低分化成分 (索状, 島状, 充実性) の比率により, 1 群 (20%以下), 2 群 (20∼50%), 3 群 (50%以上) に分けて, 細胞診所見を検討した.
    成績 : 組織標本における索状, 島状, 充実性パターンに相当する細胞診標本上の出現様式は, それぞれ索状集塊, 島状集塊, 疎結合性集簇で, それらの出現率は 45.6%, 21.1%, 10.5%であった. 核分裂像は低分化癌の 24.6%にみられ, 特に濾胞癌型低分化癌 3 群では 7 例中 5 例にみられた. 乳頭癌型低分化癌では高分化型乳頭癌の特徴として一般的に知られている所見が乏しかった. 濾胞癌型低分化癌では核が腫大し, 核小体が目立つ症例が多かった.
    結論 : 甲状腺低分化癌の細胞診では, 細胞所見よりも出現パターンが重要視されるべきと思われた. 低分化成分が主体を占める低分化癌症例においては低分化癌の推定が可能と考えられる.
  • 大野 幸代, 渡部 庸一, 刀稱 亀代志, 徳重 佐矢加, 渡邊 麗子, 伊藤 以知郎
    2009 年 48 巻 5 号 p. 274-279
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/22
    ジャーナル 認証あり
    目的 : われわれは, 針, ブラシなど細胞採取器具の洗浄液に, 従来生理食塩水や RPMI1640 を用いてきた. しかし, 細胞の変性や膨化をきたすことが多く, 細胞形態の観察, 判定にしばしば困難を感じていたため, 以下に示す 4 種類の溶液を用いて細胞診標本を作製し, 細胞形態保存能の比較検討を行った.
    方法 : 肺および大腸の進行期腺癌病変から腫瘍細胞をブラシ擦過採取し生理食塩水, RPMI1640, 乳酸リンゲル液, 低分子デキストラン加乳酸リンゲル液 (以下 D-リンゲル液) に浮遊させ, Papanicolaou 染色 (以下 Pap) 標本, メイ・ギムザ染色 (以下 MG) 標本を作成し, 1) Pap 標本にて形態保持の状態を 5 項目にて評価, 2) MG 標本にて核形の保存状態を観察した.
    成績 : D-リンゲル液を使用した標本は, 他の 3 種類の溶液を用いた標本に比べ, 1) Pap 標本における形態保持の観点のうち, 核クロマチン, 核膨化, 核形状の 3 項目で特に良好な評価であり, 2) MG 標本で観察した核形の保存状態も良好であった.
    結論 : D-リンゲル液は, 一部の細胞で軽度の核濃縮傾向が認められるが, 検討した範囲では最も有用な細胞洗浄液であると考えられた.
症例
  • 牛島 倫世, 山川 義寛, 高越 優子, 加藤 潔, 岡田 英吉
    2009 年 48 巻 5 号 p. 280-284
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : 子宮内膜間質肉腫はまれな疾患で予後不良であり, 術前診断は困難である. 子宮内膜細胞診・組織診が診断の契機となった 1 例を報告する.
    症例 : 52 歳, 4 回経妊 2 回経産, 50 歳閉経. 主訴は不正性器出血. 経腟超音波で子宮体部に径 5.5 cm の腫瘤を認めた. 子宮内膜吸引細胞診陽性であり, 内膜生検にて間質細胞に著明な核異型と核分裂像を認め, 子宮内膜間質肉腫が疑われた. CT で腫瘤は辺縁が不均一に造影され, MRI では T2 強調像できわめて不均一であり, 出血性壊死を疑わせる所見であった. 病変は子宮内に限局しており, 腹式単純子宮全摘術・両側付属器摘出術を施行した. 病理所見では, 子宮内腔に広茎性ポリープ状腫瘤を認め, 多くの核分裂像を伴った多形性の腫瘍細胞からなっており, 脈管侵襲を認めた. 免疫染色では CD10, vimentin に陽性, cytokeratinAE1/AE3, SMA, S-100, ER に陰性であり, high-grade endometrial stromal sarcoma と診断された.
    結論 : 本症例では免疫染色を含む細胞診, 組織診が子宮内膜間質肉腫の診断に有用であった.
  • 米田 操, 小塚 裕司, 今井 裕, 柴原 亜希子, 北山 美佳, 内田 克典, 白石 泰三
    2009 年 48 巻 5 号 p. 285-289
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : 十二指腸・膵頭部領域にカルチノイド腫瘍が認められることは比較的まれである. Endoscopic ultrasound guided fine needle aspiration (以下 EUS-FNA) 時の Diff-Quik 染色が診断に有用であったカルチノイド腫瘍を経験したので報告する.
    症例 : 60 歳代, 男性. 悪心, 嘔吐を主訴とし腹部超音波検査において十二指腸粘膜下・膵頭部領域に約 18 mm の円形腫瘤を認めた. 2 回の上部消化管の内視鏡検査では異常を指摘されなかった. EUS-FNA 時における Diff-Quik 染色の細胞所見では, クロマチンの増量したごましお状の核, ロゼット形成, 2 核・3 核細胞が認められ, カルチノイド腫瘍の疑いとされた. Pap 染色においても同様の所見であった. セルブロックでは, 異型細胞に核内封入体を認め, 免疫染色で CD56 陽性, synaptophysin 陽性となりカルチノイド腫瘍と確定診断した. 血中腫瘍マーカー, 内分泌ホルモンの上昇は認めなかった. 摘出標本では, 胞巣状配列を示し, 脈管浸潤, リンパ節転移, 核内封入体が認められた. 免疫染色では, セルブロックと同様に CD56 陽性, synaptophysin 陽性であった.
    結論 : EUS-FNA 時における Diff-Quik 染色の迅速診断は, カルチノイド腫瘍の細胞診断に有用と考えられた.
  • 稲山 拓司, 丸山 香代子, 阿部 健一郎, 猪野 晋慶, 原 繁一, 伊古田 勇人, 高橋 幸男, 諏訪 敏一
    2009 年 48 巻 5 号 p. 290-295
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : Intraductal papillary mucinous neoplasm (以下 IPMN) 由来の浸潤癌については, 通常の浸潤性膵管癌と同様で予後は悪いとされているため, 早期診断が重要であり, 早期診断における細胞診の有用性が報告されている. 術前の組織診断は困難であったが, 十二指腸浸潤部の粘液吸引細胞診で癌細胞を検出しえた膵管内腫瘍由来の浸潤癌を経験したので報告する.
    症例 : 63 歳男性, 食欲不振を主訴に来院された. 腹部 MRI にて, 膵頭部に内部の乳頭状構造をみる嚢胞性腫瘤が認められた. 内視鏡にて, 十二指腸粘膜に粘液分泌性の腫瘍の直接浸潤部が認められた. 同部位より細胞診と組織生検が行われ, 粘液の吸引細胞診では, さまざまな大きさの乳頭状やシート状の集塊が認められた. これらの良性細胞以外に, クロマチンの増加した核と粘液を欠いた細胞質からなる高 N/C 比の異型細胞が不規則重積性の集塊で認められ腺癌と診断した. 生検材料からは, 良性の範囲内の乳頭状増殖性病変しか認められなかった. 膵癌の臨床診断で, 膵頭十二指腸切除術が施行された. 手術検体では, 腫瘍の大部分は intraductal papillary mucinous adenoma (以下 IPMA) に相当していた. しかし一部では IPMA に連続した管状腺癌が認められ, これが十二指腸に直接浸潤して, その内腔に露出していた.
    結論 : 組織生検で癌細胞を検出することができず, 細胞診だけが術前に IPMN 由来の浸潤癌の確定診断をもたらした症例であった.
  • 宅見 智晴, 齋藤 生朗, 木村 文一, 古屋 能孝, 高清水 恵子, 山下 茂郎, 八木 昌人, 瀧 和博
    2009 年 48 巻 5 号 p. 296-300
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : 唾液腺原発のリンパ上皮癌 (lymphoepithelial carcinoma) は, 全唾液腺腫瘍の 1%以下を占めるまれな腫瘍である. 今回われわれは耳下腺原発のリンパ上皮癌を経験したので穿刺吸引および捺印細胞像と組織像を呈示し, 細胞診断上の留意点について文献的考察とあわせて報告する.
    症例 : 50 歳代, 男性. 左耳下部の腫脹を主訴に当院耳鼻咽喉科を受診. 耳下腺腫瘍が疑われ, 穿刺吸引細胞診が行われた. 穿刺吸引細胞診では, リンパ球を背景に不規則性重積と流れを示す大小の異型細胞集塊を認めた. 異型細胞の細胞質は淡く細胞境界は不明瞭であった. 核は類円形から紡錘形を呈し, 軽度の核形不整を示し, 核クロマチンは粗く増量していて, 核小体が目立つものは少なかった. 耳下腺摘出が施行され, 左耳下腺内に 3.0 cm 大, 周囲との境界不明瞭な灰白色充実性腫瘍を認めた. 組織学的に, 腫瘍細胞は不規則な島状ないし充実性胞巣を形成しており, 胞巣間に高度のリンパ球浸潤が認められた. 腫瘍細胞の核は類円形から多角形を示し, 核小体は明瞭であった. 上咽頭未分化癌に類似した組織像を示すことから耳下腺原発のリンパ上皮癌と診断された.
    結論 : 唾液腺穿刺吸引細胞診で, 多数のリンパ球を背景に不規則性重積を示す扁平上皮癌様異型細胞集塊を認めた場合には, 本腫瘍も念頭において診断する必要がある.
  • 岩上 みゆき, 米山 こずえ, 鹿児嶋 真紀, 神山 晴美, 土田 秀, 原口 理恵子, 飯島 美砂, 杉原 志朗
    2009 年 48 巻 5 号 p. 301-305
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : Myeloid sarcoma (MS) は, 骨髄芽球あるいは未熟な骨髄系細胞が髄外に腫瘤を形成する病態である. 今回われわれは, 穿刺吸引細胞診で病変を推定し得た乳腺 MS の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 48 歳, 女性. 右乳房のしこりに気づき来院. 触診および画像診断で左右の乳房に多発性の腫瘤を認め, 穿刺吸引細胞診と針生検組織診を行った. 細胞診において Papanicolaou 染色では, 大小不同のある小円形細胞が孤立散在性に出現していた. Giemsa 染色では, N/C 比が高く, 細網状の核クロマチンを有する小型異型細胞が認められた. 赤芽球と前骨髄球もみられ, 異型細胞は白血病細胞と考えられた. 追加の血液検査からは Acute myeloid leukemia (AML) が推定された. 生検組織では, 乳腺組織に小型腫瘍細胞の浸潤が多量にみられ, 免疫染色では Myeloperoxidase, CD43, CD68 陽性であり, 乳腺 MS と診断された. 白血病は AML, M2 であった.
    結論 : MS はさまざまな部位での発生の報告があり, いかなる部位にも生じ得る. 小円形腫瘍細胞を認めた場合, 血液疾患の既往の有無にかかわらず, MS の可能性を考慮に入れて検索にあたることが重要と考えられた.
特集 <細胞診はどこまで中皮腫に迫れるか>
  • 木村 伯子, 畠 榮
    2009 年 48 巻 5 号 p. 306
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
  • 濱川 真治, 柏崎 好美, 近藤 洋一, 小坂 美絵, 森 一磨, 清水 誠一郎
    2009 年 48 巻 5 号 p. 307-311
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 体腔液中に出現する中皮腫細胞の形態学的特徴について検討した.
    方法 : 1990∼2005 年の間に当院の病理組織診断にて中皮腫と診断され, 体腔液中に上皮型中皮腫細胞が出現した 10 例を用いて, 形態学的特徴について観察した.
    成績 : 背景は組織球やリンパ球が主体で, 集塊状と孤立散在性に多数の腫瘍細胞が出現する症例が 7 例であった. 中皮腫細胞集塊は球状や乳頭状に出現する症例が 9 例, 花弁様配列や亀甲様構造を形成している症例が 6 例, 相互封入像が 5 例に観察された. 孤立散在性細胞は, N/C 比が比較的小さく, 細胞質に重厚感を認め, 軸対称性の 2 核細胞を 7 例に認めた.
    結論 : 体腔液中に出現する中皮腫細胞は多彩な細胞集塊を呈し, 球状集塊や乳頭状集塊をはじめ花弁様配列や亀甲様細胞接着構造を呈する細胞集塊, 相互封入像などが多く観察された. これらの多彩な細胞集塊形成は, 体腔液を用いた中皮腫細胞診断において, 所見の一つの指標になると考えられた.
  • 畠 榮, 森谷 卓也, 岩知道 伸久, 亀井 敏昭
    2009 年 48 巻 5 号 p. 312-318
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 体腔液細胞診に出現する collagenous stroma (以下 CS) を有する細胞集塊について, 背景となる中皮細胞集塊 (悪性中皮腫および反応性中皮細胞) の形態学的特徴と, CS の診断的有用性について検討する.
    対象と方法 : 悪性中皮腫 36 例と反応性中皮細胞群 4,306 例を再検討し, CS を有する細胞集塊が認められた 148 例 (悪性中皮腫 23 例, 反応性中皮細胞群 125 例) を対象とした. CS の表面を構成する中皮細胞の形態により, 細胞集塊をI型からIII型に分類し, 各型の出現頻度ならびに疾患との関連について検討を行った. また, CS に対して細胞化学染色, 免疫細胞化学染色ならびに電子顕微鏡的検索を施行した.
    成績 : I型細胞集塊は, 反応性中皮細胞群 118 例 (2.7%) に認められたが, 悪性中皮腫群では認められなかった. この集塊は, 術中洗浄細胞診標本では 10.9%に出現しており, 穿刺細胞診検体 (0.03%) に比して有意に高頻度に出現していた (p<0.001). 悪性中皮腫群ではII型細胞集塊が 23 例 (63.9%) に, III型細胞集塊が 7 例 (19.4%) に認められ, いずれも反応性中皮細胞群 (6 例, 0.14%) に比し有意に高頻度に出現していた (p<0.001). CS はいずれも PAS 陽性, ジアスターゼ抵抗性で, Giemsa では異染性を呈した. 免疫組織学的には, II型集塊における CS の一部に lamimin または 4 型コラーゲンが陽性を示した. IおよびII型集塊を示す反応性中皮集塊の CS には, 内部に vimentin 陽性細胞を認めるものがあった. さらに, 反応性中皮細胞群にみられたI型細胞集塊およびII型細胞集塊の CS の主な構成成分は電子顕微鏡的に 640 Åの周期を有する線維状の膠原線維であった.
    結論 : I型細胞集塊は反応性中皮に特異的で, 術中洗浄細胞診で特に高頻度に出現した. II型およびIII型集塊は悪性中皮腫群で有意に高頻度に出現し. II型 CS の一部は基底膜物質を含んでいた. 以上から, CS および周囲の細胞集塊の形状を観察することは, 中皮細胞の由来や良悪性の鑑別を行ううえで診断の参考になることが示唆された.
  • 三浦 弘守, 安達 友津, 安田 奈津子, 渡辺 みか, 石田 和之, 苅谷 嘉之, 笹野 公伸, 森谷 卓也
    2009 年 48 巻 5 号 p. 319-326
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 東北大学病院病理部における上皮型と二相型悪性中皮腫 (malignant mesothelioma, 以下 MM) 16 例の, 体腔液細胞診の正診率は 7/16 (43.8%) であった. 今回, MM の診断率の向上を目的とし, MM の診断に至らなかった 9 例の要因について細胞学的に検討を行った.
    方法 : MM と診断した 7 例, MM の診断に至らなかった 9 例 (陰性 4 例, 疑陽性 4 例, 腺癌 1 例) の体腔液細胞診と, 65 例の良性体腔液中の反応性中皮細胞 (reactive mesothelial cell, 以下 RM) を対象とした. 各症例について, 細胞の出現形式, 細胞集塊の形状, 細胞と核の性状および面積, 多核細胞の割合について比較検討した.
    成績 : 陰性とした 4 例中 3 例の MM 細胞は少なく, ほとんどは孤立性に出現していた. また, 細胞面積は RM (243.6μm2) に比し同程度から小さかった. 疑陽性および腺癌と判定した症例では, 多数の MM 細胞が孤立性や重積性集塊で出現していたが, 細胞面積は 5 例中 4 例が RM より小さかった.
    結論 : MM では出現細胞量が少なく, 腫瘍細胞が小型な症例では, 陰性または疑陽性判定の要因となることが示唆された. MM の診断および RM との鑑別には, 重積性集塊, 重厚な細胞質, 腫大した好酸性の核小体, 多核細胞の割合 (10%以上) が重要な細胞所見と考えられた.
  • 河原 邦光, 永野 輝明, 大山 重勝, 浅井 浩次, 野邊 八重子, 細野 芳美
    2009 年 48 巻 5 号 p. 327-335
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    上皮型悪性中皮腫 (EMM) は胸水剥離細胞診にて反応性中皮 (RM) との鑑別に難渋することが多い. 今回両者の細胞像を比較検討し鑑別に有効な細胞所見を報告する.
    対象は EMM の胸水細胞診標本 15 例と多数の RM を含む細胞診陰性の胸・腹水標本 17 例. 細胞配列, 胞体の厚み, 核の大小不同, 核の大きさ, 核数, 核形, 核縁, クロマチン, 核小体数, 細胞診断, 推定病理診断, 核分裂像, 細胞相接像, 胞体内空胞を比較検討した.
    細胞配列は, EMM は集塊が, RM は孤立が優位であった. 核の大小不同は, EMM は 2 倍以上 4 倍未満, RM は 2 倍未満が最も多かった. 核の大きさはいずれもリンパ球核の 2∼4 倍が最多だが EMM は 5∼6 倍の細胞が存在した. 核数は, 2 核以上の細胞が EMM の 2 割, RM の 1 割を占めた. 核小体数はいずれも 1∼2 個が最も多く RM では 0 個が 2 割を占めた. 核分裂像は EMM 症例の 27%, RM 症例の 6%に存在した. 胞体内空胞は EMM 症例の 67%, RM 症例の 12%において 20%以上の細胞に認められた.
    両者の鑑別には, 細胞配列, 胞体内空胞が有用で, 核の大小不同, 核の大きさ, 核数, 核小体数, 核分裂像を併用することが望ましい.
  • 木村 伯子, 土田 貴美子, 荒谷 義和, 高島 且統, 阿部 和子, 池田 健, 池田 仁, 工藤 和洋, 下山 則彦, 石舘 卓三
    2009 年 48 巻 5 号 p. 336-341
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 私達は中皮腫の細胞診に特徴的な所見をスコア化し, 中皮腫診断におけるその有用性を検討した.
    方法 : 病理組織診断により中皮腫であることが確認された 19 例の体腔液を検討した. 腫瘍の発生部位は胸膜 17 例, 腹膜 2 例で, 上皮型 11 例, 二相型 3 例, 肉腫型 5 例だった. 性別は男性 17 例, 女性 2 例だった. 対照として, 任意に選択した癌性胸・腹膜炎 30 例, ClassIIIと診断された反応性中皮 13 例を検討した. 中皮腫に特徴的と考えられている項目に配点をしてその合計点数を数えた. スコアリングの項目と配点は以下のとおりである. 細胞の大小不同性 1 点, 全周性絨毛, ウィンドウ, ブレブを 1 点, 核異型 1 点, 大型好酸性核小体 2 点, 8 核以上の多核細胞 2 点, 相互封入像 1 点, 細胞密度が高いシート状細胞集塊 1 点, ミラーボール様の細胞集塊 1 点で合計点数を 10 点とした.
    成績 : 中皮腫では 10 点が 4 例, 9 点が 6 例, 8 点が 3 例, 7 点が 3 例, 6 点が 1 例, 5 点が 2 例で 4 点以下はなかった. 一方, 反応性中皮細胞は腹膜由来乳頭状癌の 1 例が 7 点と OK432 を用いた胸膜炎の 1 例が 4 点であるのを除くと, 全例 3 点以下だった.
    結論 : 本スコアリングは中皮腫の診断に有用だった.
短報
  • 寺谷 由紀, 岡田 雄平, 大朏 祐治
    2009 年 48 巻 5 号 p. 342-343
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    We report a rare case of fibroadenoma associated with mucocele-like tumor (MLT)-like changes in a 50-year-old woman whose cytological specimen contained both fibroblastic spindle cells containing mesenchymal and acellular epithelial mucin. Histopathologically, the fibroadenoma contained abundant mesenchymal mucin, and stroma compressing the small surrounding ducts, whose epithelium showed mucinous metaplasia, rupturing the mucus cyst. The definitive diagnosis was fibroadenoma associated with MLT-like changes. Both epithelial components and mucin features should thus be considered in fine-needle aspiration cytology for precisely differentiating diagnosis of the breast.
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