日本臨床細胞学会雑誌
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49 巻 , 6 号
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原著
  • 田路 英作, 植田 政嗣, 國藤 憲子, 山本 倫子, 西山 ひろみ, 中川 智美, 布引 治, 鳥居 貴代, 岡本 吉明, 野田 定
    2010 年 49 巻 6 号 p. 387-392
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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    目的 : ベセスダシステム導入後における大阪府における子宮頸がん検診の実態と運用上の問題点を検討する.
    方法 : 大阪府下 18 市町村に, ベセスダシステムと HPV に関するアンケート調査を行った. また, 2007 年 4 月∼2009 年 8 月に当センターを受診した頸部精検患者のべ 1176 例を対象に, 細胞診, HPV-DNA 検査, コルポ下生検組織診を施行し, high-risk HPV 感染の有無, 子宮頸部上皮内病変 (CIN) 検出率, 転帰を検討した.
    成績 : 市町村子宮がん検診担当者は, ベセスダシステムと HPV についての知識はおおむねあると判断できた. また, 不良標本が出た場合の再検査費用は実施医療機関が負担すべきと考えていること, 意義不明異型扁平上皮細胞 (ASC-US) 判定に対して HPV 検査を実施できる近隣施設を把握していないこと, 高度扁平上皮内病変 (HSIL) が中等度異形成から上皮内癌までを含むことに対してよい判定区分とは考えていないことが判明した. 当センターにおける全症例での HPV 陽性率は 38%で, ASC-US かつ HPV 陽性例の 83% (11/15) に CIN-1 以上の病変が検出された. ASC-US 42 例中 CIN が検出された 24 例の長期追跡では, HPV 陽性例の 73%で病変が存続・進行, HPV 陰性の 77%で病変は消退した.
    結論 : ベセスダシステムの概念や ASC-US の取扱いについて一層の周知徹底が必要であること, ASC-US 例に対する生検の要否や追跡管理に high-risk HPV 検査が有用であることが示唆された.
  • 岡山 香里, 大河戸 光章, 熊谷 朋子, 藪崎 宏美, 吉永 陽樹, 福井 正, 藤井 雅彦
    2010 年 49 巻 6 号 p. 393-399
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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    目的 : シングルコピーの HPV-DNA を簡易的に可視化すべく, 従来の in situ PCR 法を改良し, catalyzed signal amplification in situ hybridization (CSA-ISH) 法との比較検討を行った.
    方法 : 対象は HeLa, SiHa, HL60 培養細胞と軽度扁平上皮内病変 (low grade squamous intraepithelial lesion, LSIL) と判定された 5 例の細胞浮遊液である. in situ PCR 法は前処理, PCR 条件を再検討して改良した. また固定時間の違いによる in situ PCR 法と CSA-ISH 法の染色性の比較を行った.
    成績 : in situ PCR 法による HPV 18 型の検出において, 前処理は 0.01%トリプシンで 2 分 0∼50 秒, PCR 条件は熱変性 90°C, 30 秒, アニール 59°C, 30 秒, 伸張反応 72°C, 30 秒の 25 サイクルが最適であり, この条件の下で HeLa の核にびまん性の陽性像を認めた. 固定条件の違いにおける両染色法の比較では, in situ PCR 法の染色性は固定時間の影響を受けにくいことがわかった. また改良した両染色法で SiHa の核に特異的な陽性像が観察された.
    結論 : エタノール固定した塗抹標本上の細胞を用いて, 改良 in situ PCR 法でシングルコピーの HPV-DNA を可視化することに成功した.
  • 松井 成明, 涌井 架奈子, 伊藤 仁, 北村 隆司, 梶原 博, 村上 優, 佐藤 慎吉, 光谷 俊幸, 安田 政実, 長村 義之
    2010 年 49 巻 6 号 p. 400-405
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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    目的 : 子宮体部原発類内膜腺癌の腹腔内における細胞像および病理学的背景について検討した.
    方法 : 2000∼2006 年まで組織学的に子宮体部原発類内膜腺癌と診断され腹水および腹腔洗浄液中 (以下, 腹腔細胞診) に腫瘍細胞が出現していた 33 例を対象とした. これらをもとに細胞, 組織学的所見および病理学的背景 (1, Grade による比較 ; 2, 組織学的深達度 ; 3, 腫瘍局在 ; 4, 腫瘍径) について検討した.
    成績 : 腹腔細胞診に出現する類内膜腺癌を Grade 別にみると G1, 51.5% ; G2, 39.4% ; G3, 9.1%. 腺癌細胞は, G1, 2 ではおおむね大小の細胞集団として出現し, G3 は小型細胞集団および散在性に出現していた. また, 腺癌細胞の出現に加え, 扁平上皮化生様の変化を示す異型細胞 (squamous metaplastic-like cells ; 以下, SMC) が散在性あるいは腺癌細胞と混在して出現していた (54.4%). Grade 別の頻度は G1, 61.1% ; G2, 33.4% ; G3, 5.5%. 出現率は 1+, 33.3% ; 2+, 55.6% ; 3+, 11.1%を示していた. また, 腹腔内への腫瘍細胞の出現は, 組織学的深達度, 腫瘍径とは関係なく, びまん性増殖を示すものが高い傾向を示していた.
    結論 : 術前診断において類内膜腺癌が推定される際には, 腹腔内に SMC が出現することを念頭におき, これらの細胞像に十分留意することが重要と考えられた.
症例
  • 川西 なみ紀, 園部 宏, 則松 良明, 亀井 敏昭, 羽原 利幸, 川野 亮, 米原 修治, 井内 康輝
    2010 年 49 巻 6 号 p. 406-411
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : Solid neuroendocrine carcinoma は, 乳腺原発の神経内分泌腫瘍ではまれな 1 型である. 今回, われわれは乳腺に発生した solid neuroendorine carcinoma の 1 例における細胞学的および免疫細胞化学的所見について報告する.
    症例 : 67 歳, 女性. 超音波検査で右乳腺 CD 領域に腫瘤性病変を指摘された. 本例の病変は, 針生検組織と摘出組織の組織学的および免疫組織化学的検査結果から, solid neuroendocrine carcinoma と診断され, 電顕的観察により神経内分泌顆粒が証明された. 穿刺吸引細胞診では, 小型で均一な比較的異型に乏しく, 偏在性の類円形核をもつ形質細胞様の特徴的な腫瘍細胞が多数認められた. 細胞転写法により得られた腫瘍細胞に対して免疫細胞化学的に検討したところ, ほとんどの腫瘍細胞は chromogranin A, synaptophysin, CD56, neuron-specific enolase に陽性を示し, 神経内分泌への分化が証明された.
    結論 : 本例の solid neuroendocrine carcinoma では, 細胞転写法によって得られた腫瘍細胞に対する免疫細胞化学的検討が, その的確な細胞診断をする上できわめて有用であった.
  • 野澤 明美, 上田 寛人, 金井 麻子, 下江 郁一, 井川 義英, 小松 良一
    2010 年 49 巻 6 号 p. 412-418
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 卵巣外原発性腹膜癌 (extraovarian primary peritoneal carcinoma : EOPPC) は, 腹膜に多発性の腫瘍を認めるが卵巣には全く悪性の病変を認めないか, あっても微少な病巣のみを認めるまれな疾患であり, その組織像は卵巣の漿液性乳頭状腺癌に類似している. 今回われわれは子宮内膜細胞診陽性がきっかけとなり発見された EOPPC の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 56 歳, 女性. 症状はなし. 人間ドックにて子宮頸部擦過細胞診で疑陽性となり, 精査目的に当科紹介となった. 子宮内膜細胞診で陽性, 内膜生検にて異型細胞塊を認め子宮体癌を疑い腹式子宮全摘, 両側付属器摘出, 骨盤内リンパ節郭清術を施行した. 病理組織標本では子宮内膜に悪性細胞は認められず左卵巣間膜に乳頭状に発育する腫瘍を認めた. 両側卵巣表層と子宮漿膜にも転移と思われる腫瘍細胞の小塊を認めた. 免疫学的染色より EOPPC と診断した.
    結論 : 子宮頸部擦過細胞診および内膜細胞診に異常を認めた場合には EOPPC の可能性も念頭において診療に当たることが肝要と思われた.
  • 吉本 尚子, 今井 律子, 田中 伸幸, 佐竹 立成, 溝口 良順, 岩淵 英人
    2010 年 49 巻 6 号 p. 419-424
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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    背景 : 骨・軟骨化生を伴う乳癌の穿刺吸引細胞診標本で, 腺癌との鑑別を必要としたいわゆる移行組織由来の細胞を観察する機会を得たので, 報告する.
    症例 : 74 歳, 女性. 左乳房腫瘍に気づき近医受診後, 当院を紹介受診した. マンモグラフィー, 超音波, CT にて左乳房乳輪下に径 4 cm 大の腫瘤が認められた. 穿刺吸引細胞診で悪性と判定され, 腫瘍摘出術が施行された. 穿刺細胞診標本には, 血性背景を伴って, 多数の異型の強い細胞が認められた. そのほとんどが孤立散在性に認められたが, 結合性の弱い軽度の重積性を示す大きな細胞集塊が少数認められた. この集塊を構成する細胞はサイトケラチン 7 陰性, ビメンチン陽性であった. 組織所見では, 腺癌腫成分と骨・軟骨化生部とともに両者への移行像が認められ, その細胞は上記細胞集塊と同様な免疫染色結果を示した.
    結論 : 乳房穿刺細胞診で腫瘍細胞の集団を認めた場合, 腺癌と診断しがちであるが, 背景に孤在性の異型細胞が観察されたり, 集団を構成する異型細胞に重積性や結合性が弱い場合は, 骨・軟骨化生を伴う乳癌の移行像に由来する細胞の可能性も考慮することが必要と考える.
特集 <検体採取・塗抹法の精度管理 (検体採取・塗抹法の工夫と効果)>
  • 清水 恵子, 廣川 満良
    2010 年 49 巻 6 号 p. 425
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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  • 木佐貫 篤, 関屋 順子, 佐野 亜由美
    2010 年 49 巻 6 号 p. 426-430
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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    目的 : 気管支細胞診は確定診断的な意味合いをもつ重要な検査である. われわれは自施設での検体採取における問題を改善し品質向上への試みを行った.
    方法 : 2008 年 1∼9 月に行われた気管支鏡検査において, 臨床医との検査開始前打ち合わせ, 細胞検査士による現場での検体処理, 擦過に利用したブラシの後処理による細胞採取, 気管支洗浄液処理への LBC (liquid based cytology) 法導入, インシデント防止対策について取り組んだ.
    成績 : 臨床医の意図を理解した細胞検査士による現場での処理により, 検体枚数の適正化や処理までの時間短縮, 検体の適切な仕分けが行えるようになった. ブラシ後処理や気管支洗浄液の LBC 法導入よりも採取現場での細胞検査士による適切な塗抹手技がより重要であると考えられた.
    結論 : 正確な細胞診のためには, 臨床側とのコミュニケーションをとりつつ, 積極的に検体採取現場に出向いて適切な検体処理をする, という基本的な作業が重要であることが再認識できた.
  • 柳瀬 友佳里, 廣川 満良, 前川 観世子, 隈 晴二, 網野 信行, 中村 靖司, 宮内 昭
    2010 年 49 巻 6 号 p. 431-436
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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    甲状腺癌取扱い規約第 6 版では, 検体不適正標本は細胞診総数の 10%以下が望ましく, 10%を超える場合には採取方法, 標本作製方法についての検討が必要と明記されている. 本稿はこれらの精度管理について述べたものである. 穿刺は必ず超音波ガイド下にて行い, 診断に最適な部位から採取すべきである. 穿刺した材料は注意深く観察し, 適切な塗抹法を選択しなければならない. われわれの経験では, 穿刺結果を穿刺医へフィードバックすることにより検体不適正率の顕著な改善がみられた. 細胞診検体の品質を向上させるためには, 穿刺医, 細胞検査士, 診断医が一丸となって精度管理に積極的に取り組む姿勢が大切である.
  • 蒲 貞行, 所 嘉朗, 鈴木 緑, 小林 雅子, 尾関 順子, 土田 秀, 小島 勝, 越川 卓, 谷田部 恭
    2010 年 49 巻 6 号 p. 437-442
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
    ジャーナル 認証あり
    目的 : リンパ節穿刺細胞診における精度管理, 特に検体不適正率の改善について考察した.
    対象と方法 : 対象は主に 2002∼2007 年 (6 年間) に愛知県がんセンター中央病院で施行された 1691 件と 2005∼2007 年での群馬県立がんセンターでの 159 件である. 愛知県がんセンター中央病院での検体採取法は, (1)穿刺セット (Diff-Quik : D-Q 染色, 顕微鏡など) 搭載カートを用意し細胞診専門医および細胞検査士 (ときに臨床検査技師) が臨床現場に出向いた. (2)超音波下に 24 G 針のみで穿刺し, 回転・非吸引式穿刺法で行った. 穿刺後, 針をシリンジに装着し検体を吹き出した. (3)スライドガラスとカバーガラスでなす内角部分の検体を薄く進展させて塗抹した. (4)採取現場で D-Q 染色を行い, 採取状態を確認した. (5)通常 D-Q 染色とパパニコロウ染色を併用した. 一方, 群馬県立がんセンターでは, 超音波ガイド下で, 22 G 針を付けた注射器 (20 ml) を装着したピストル式器具で吸引細胞診が行われている. ガラスに吹き出された採取検体はすり合わせ法で塗抹, 95%エタノール固定され, 検査室にていずれもパパニコロウ染色がされるが, これら穿刺∼塗抹∼固定まですべて臨床医によりなされている.
    成績 : 愛知県がんセンター中央病院では, 2002∼2004 年の平均検体不適正率は 9.6%であったが, 2005∼2007 年では年平均 3.8%, 各年 5%以内であった. 群馬県立がんセンターでの検体不適正率は年平均 3.1%であった.
    結論 : 両施設とも, リンパ節穿刺細胞診の年平均検体不適正率が 5%以内に維持されている. 検体適正率の向上のためには, 超音波ガイド下で確実に病変に針を的中させることが肝要であり, そのためには採取者の十分なトレーニングが必要とされる. 施設の事情にもよるが, 採取者と検体処理を担当する細胞検査士とのチームワークによる体制づくりが, 穿刺現場での作業の効率性の面から, また安定した検体適正率の維持を図るうえからも望ましいと考えられた.
  • 古旗 淳, 広岡 保明
    2010 年 49 巻 6 号 p. 443-448
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/28
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    胆汁処理法の標準化のために, 胆嚢結石症切除例の胆嚢壁を擦過して得た新鮮剥離細胞を用いて以下の検討を行った ; 1) 胆汁に曝された直後からの経時的形態変化の観察 ; 2) 各種保存液による形態保持の効果 ; 3) 各種保存液による集細胞率向上効果. さらにこれらの保存液の臨床材料への応用の有用性も検討した.
    無添加胆汁による擦過細胞の経時的変化は, (1)直後から強い核の縮小・濃染→(2)4 時間後に高度→(3)染色性低下, 細胞膨化→(4)24 時間後に核内構造不明瞭化→(5)48 時間後に細胞消滅, の過程を示した. 保存液のうち CytoRich®液や YM®液で 24 時間後も核内構造を微細に保持できた. 集細胞数は無添加胆汁に比しウシ血清アルブミン, RPMI 1640 培地, 50%エタノール, CytoRich, YM およびポストサンプラー®の各液で有意に高値を示した. 臨床材料に YM 液を応用した場合, 48 時間後も核内構造の明瞭な細胞が多数みられ, 判定が容易になった.
    形態保持と集細胞効果の高い保存液の使用は, 診断しやすい胆汁標本の作製に有用であった.
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