日本臨床細胞学会雑誌
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49 巻 , 2 号
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原著
  • 高橋 久美子, 中村 泰行, 八重樫 弘, 佐熊 勉
    2010 年 49 巻 2 号 p. 99-107
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/28
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    目的 : われわれは, 胆汁細胞診の習得, 表面型腫瘍性病変の発見を目指し, 摘出胆嚢から粘膜擦過および胆汁細胞診を試みている. そのなかで, 胆汁中に剥離した細胞は, 組織像・粘膜擦過標本に比べ, 小型で, N/C 比も増加する印象を受けた. そこで, 実際, どの程度変化するのかを検証した.
    方法 : 粘膜擦過・胆汁標本上に十分量の細胞が得られた 5 例 (胃全摘術に伴う摘出胆嚢 1 例, 胆嚢結石症 1 例, 高分化型腺癌 3 例) を対象とした. 点計測 (point counting 法) で, 個々の細胞の核の大きさ, 細胞質の広さを推測し, N/C 比も算出した. すなわち, 組織像と細胞像 (擦過・胆汁) を計測領域として無作為に画像化し, 多数の格子点を重ね, 計測可能な細胞で点計測を行った. そして, 「組織 : 擦過」「組織 : 胆汁」「擦過 : 胆汁」のすべての対で, 核の大きさ・細胞質の広さ・N/C 比の平均値の差につき Tukey-Kramer test を用いて有意差検定を行った.
    成績 : 胆汁中の剥離細胞では, 核・細胞質ともに小型化するが, N/C 比は増大する. 核は, 組織・擦過標本に比しすべての症例で有意に小さく, 組織標本に比べての比率の平均は 0.71 程度であった. また, 細胞質もすべての症例で有意に狭まり, 組織との比率の平均は 0.53 で, 実にほぼ半分の広さとなった. 逆に, N/C 比は全例で組織を大きく上回り, 組織との比率の平均は 1.37. そして, 症例 2 を除く 4 例では最大値を示し, 組織・擦過標本との間に有意差が確認できた.
    結論 : 胆汁中に剥離した細胞は, 腫瘍性・非腫瘍性にかかわらず, 組織・擦過標本に比べ, 核の大きさ・細胞質の広さともに減少する一方, N/C 比は増大する. 日常の胆汁細胞診では, 以上の結果を念頭に置き, 判定に臨むことが重要と思われた.
  • 前田 智治, 古谷 敬三, 平田 真紀子, 林 理恵, 高石 裕子, 兵頭 直樹, 大泉 えり子, 井上 信行, 木下 幸正, 高石 修
    2010 年 49 巻 2 号 p. 108-111
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/28
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    目的 : 当院では, 甲状腺穿刺細胞診において従来法では検鏡に時間がかかり不適検体も多いことから, 液状処理細胞診 (以下 LBC) に移行したいと考えた. 併用期間を経て従来法から LBC に移行したので, その診断成績の推移について述べる. また, 外科切除甲状腺を使い, LBC と従来法の細胞像の比較検討を行ったので, 併せて報告する.
    方法 : 従来法単独 634 例, 従来法・LBC 併用 93 例, LBC 単独 94 例の標本枚数, 不適検体率, 陽性率などを検討した. 外科切除された甲状腺 35 病変について, LBC と従来法の Pap 標本を作製し, 細胞像を比較検討した. LBC 標本は SurePath 用手法で作製した.
    成績 : 従来法単独 634 例の標本枚数は 2∼10 枚 (平均 3.85 枚), 不適材料 79 例 (12.5%) で, LBC 単独 94 例の標本枚数は 1∼4 枚 (平均 1.3 枚), 不適材料 5 例 (5.3%) で, 標本枚数は約 3 分の 1 となり, 不適材料が半減した. 外科切除された甲状腺 35 病変の内訳は乳頭癌 14 例, 腺腫様甲状腺腫 8 例, バセドウ病 5 例, 濾胞腺腫 4 例, 濾胞癌 2 例, 橋本病 2 例で, LBC と従来法を比較して, 細胞像に大きな差異は認められなかった.
    結論 : 従来法から LBC に移行することにより不適材料が減少し, 検鏡時間が大幅に短縮された. 外科材料の検討で, LBC と従来法の細胞像に大きな差はなかった. 甲状腺穿刺細胞診は従来法から LBC に変更することを推奨する.
症例
  • 岸田 奈津, 河原 真弓子, 貞嶋 栄司, 木下 準子, 山崎 加奈子, 入江 康司
    2010 年 49 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/28
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    背景 : 甲状腺未分化癌は, 比較的まれな甲状腺悪性腫瘍で, 高度な侵襲性を示し, きわめて予後不良である. 今回われわれは, 破骨細胞様多核巨細胞を伴う甲状腺未分化癌の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 80 歳代, 男性. 頸部腫瘤で近医を受診するも, 急激に腫瘤が増大したため, 当院紹介受診. 画像検査により甲状腺右葉下極に石灰化を伴った 5 cm 大の充実性腫瘤を指摘された. 穿刺吸引細胞診では, 出血・壊死性背景に散在性から集簇して多辺形∼紡錘形の異型細胞と多核巨細胞を認め, 甲状腺未分化癌と診断し, 甲状腺右葉摘出術が施行された. 摘出腫瘤は 8×6.5 cm の充実性腫瘤で, 一部に石灰化を認めた. 病理組織学的に大部分は破骨細胞様の多核巨細胞と単核の間質細胞からなる, 骨巨細胞腫様の像を呈し, 石灰化近傍では乳頭癌成分がみられた. 病理診断は anaplastic carcinoma with osteoclast-like giant cells であった. 患者は術後 5 ヵ月で両肺野への多発性転移を来し永眠された.
    結論 : 本例の経験から, 破骨細胞様多核巨細胞を伴う未分化癌は, 細胞所見や臨床情報等から, 組織型の推定は可能であると考えられた.
  • 田上 圭二, 中川 美弥, 松岡 拓也, 溝上 美江, 神尾 多喜浩
    2010 年 49 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/28
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    背景 : 肺に発生する髄膜腫はきわめてまれである. 今回われわれは, 肺に発生した髄膜腫を経験したので, 細胞像を中心に報告する.
    症例 : 54 歳, 男性. 突然の腹痛で他院を受診し, 虚血性腸炎の診断で保存的に治療された. 入院中の胸部 CT で右肺下葉に 1 cm 大の充実性腫瘤陰影を指摘された. 肺腫瘍の診断で当院に紹介され, 肺楔状切除術が行われた. 捺印細胞診では, 細長い紡錘形細胞が流れるように配列し, 時に渦巻状配列を認めた. 核は類円形または紡錘形で, 軽度の大小不同がみられ, 一部に核溝や核内偽性封入体を認めた. 組織学的に, 紡錘形腫瘍細胞が束状に錯走しながら増殖し, しばしば同心円状の渦巻状構造が散見され, 部分的に砂粒体や石灰沈着を認めた. 免疫組織化学的に腫瘍細胞はビメンチン強陽性, EMA, S-100 蛋白陽性, ケラチン一部陽性であり, 肺原発の移行性髄膜腫と診断された.
    結論 : 肺腫瘍の細胞診標本において, 紡錘形細胞の増生や渦巻状配列を認めた場合, 髄膜腫も含めて検討する必要があると思われた.
特集 <乳腺画像診断の進歩が細胞診に与えるインパクト>
  • 市原 周, 小林 忠男
    2010 年 49 巻 2 号 p. 123
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/28
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  • Franco FULCINITI, Antonella PETRILLO, Gerardo BOTTI, Maurizio Di BONIT ...
    2010 年 49 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/28
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    核磁気共鳴画像 (MRI) はマンモグラフィーや超音波など従来の臨床画像で描出できない乳腺病変を可視化できる. この報告では従来の臨床画像では描出できず, 1.5 テスラ MRI (Aurora Paramed Medical SystemTM www.auroramri.com) で描出できた非触知乳腺病変 40 例における MRI ガイド下穿刺吸引細胞診について報告する.
  • 山城 典恵, 戸崎 光宏, 星 和栄
    2010 年 49 巻 2 号 p. 129-133
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/28
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    目的 : 本邦での MRI ガイド下生検の必要性や病理学的特徴を解説する.
    対象および方法 : 2007 年 5 月∼2008 年 5 月に MRI ガイド下吸引式生検 (MRI-guided VAB) を施行した 40 例. 病変はいずれもマンモグラフィおよび超音波では描出不可能であった. 薬事承認されている生検用デバイスおよび 11 G 穿刺針 (マンモトーム® ; ジョンソン&ジョンソン) を用い, 1.5T MRI にて MRI-guided VAB を施行した. 当院での倫理委員会の承認を得ており, 全例で書面にて患者からのインフォームドコンセントを得た.
    成績 : 乳癌の頻度は 33% (13/40) であり, そのうち 85% (11/13) が非浸潤癌であった. 生検時に異型乳管過形成であった 1 例は, 外科的生検にて非浸潤性乳管癌と診断された. 非浸潤癌から浸潤癌への upgrade は認めなかった. 最終病理組織診断は, 非浸潤性乳管癌が 10 例, 非浸潤性小葉癌と非浸潤性乳管癌の混合型が 1 例, 浸潤性乳管癌が 2 例であった.
    結論 : MRI-guided VAB は本邦でも有用性の高い手技と考えられ, その病理学的特徴を認識することは, MRI-guided VAB の病理診断時に重要と考えられた.
  • 越川 卓, 所 嘉朗, 鈴木 緑, 小林 雅子, 佐々木 英一, 細田 和貴, 北村 淳子, 谷田部 恭, 岩田 広治, 市原 周
    2010 年 49 巻 2 号 p. 134-141
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/28
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    目的 : 乳腺細胞診を合理的かつ安全に遂行するためには, 乳腺細胞診の判定の目安となる評価基準を具体化することが重要であるが, 今のところ乳腺細胞診における細胞判定区分の具体的な評価基準は設けられていない. われわれは, そのような評価基準の一つとして, 細胞異型 (A ; Atypia), 細胞二相性の喪失 (B ; Bipolarity loss), 細胞量 (C ; Cellularity), 細胞結合性の低下 (D ; Discohesion) の 4 項目を用いる乳腺細胞診の ABCD スコアリングシステムについて検討した.
    方法 : 乳腺穿刺細胞診が施行された 2192 例中, 生検や外科手術などにより病理診断が確定した細胞検体適正症例 942 例 (良性 ; 210 例, 悪性 ; 732 例)を対象として ABCD スコアリングシステムの成績を検討した.
    成績 : ABCD4 項目すべて (+) で ABCD スコアが 4 (+) の症例は 942 例中 319 例で 319 例全例 (100%) が悪性, 3 (+) の症例は 201 例で 198 例 (99%) が悪性, 2 (+) の症例は 96 例で 86 例 (90%) が悪性, 1 (+) の症例は 102 例で 55 例 (54%) が悪性, (+) の所見がない 0 (+) の症例は 224 例で 74 例 (33%) が悪性であった. また, (+) を 2 点, (±) を 1 点, (−) を 0 点としてポイント換算する評価方法による成績では, ABCD ポイント 8 点の症例は 942 例中 319 例で 319 例全例 (100%) が悪性, 7 点の症例は 195 例で 191 例 (98%) が悪性, 6 点の症例は 86 例で 79 例 (92%) が悪性, 5 点の症例は 77 例で 57 例 (74%) が悪性, 4 点の症例は 49 例で 24 例 (49%) が悪性, 3 点の症例は 43 例で 18 例 (42%) が悪性, 2 点の症例は 39 例で 11 例 (28%) が悪性, 1 点の症例は 63 例で 13 例 (21%) が悪性, 0 点の症例は 71 例で 20 例 (28%) が悪性であった.
    結論 : 以上の結果より, 乳腺細胞診の ABCD スコアリングシステムにおいて ABCD スコア 4 (+) あるいは ABCD ポイント 8 点の症例は全例悪性であり, ABCD スコアリングシステムと悪性腫瘍の頻度との間に一定の相関を認めることが明らかにされた. したがって, 確実な乳腺細胞診の診断を実践するうえで ABCD スコアリングシステムが非常に有用な指標であると考えられる.
  • 大岩 幹直, 吉川 和明, 佐藤 康幸, 林 孝子, 市原 周, 森谷 鈴子, 長谷川 正規, 小柏 均, 山下 美奈, 遠藤 登喜子
    2010 年 49 巻 2 号 p. 142-151
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/06/28
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    目的 : 画像診断の進歩に伴って触知困難な乳癌に遭遇する機会が増えている. 吸引式針生検の出現により多くの乳腺病変が画像ガイド下の組織診で診断されるようになり, 乳腺細胞診の実施は減少傾向にある. 乳腺病変の診断における細胞診の役割を見直すため, 当院での検査成績を基に超音波ガイド下穿刺吸引細胞診 (FNA) の意義を検討した.
    方法 : 2007 年度に乳房超音波検査 (US) を行った 2358 件を対象に US, FNA の診断精度を検討することにより癌の組織学的特徴からみた FNA と組織診の適応を考察した.
    成績 : US でカテゴリー 1 あるいは 2 (US-C1, US-C2) と評価され後に癌が発見された検査は 3844 件中 1 件 (0.03%) であった. 一方, US-C5 で癌でなかったものは 105 件中 1 件 (1.0%) であった. FNA で C1 とされた 91 件中 7 件が癌であったが, C2 の 57 件はすべて良性, C5 の 56 件はすべて癌であった. 腫瘍サイズ別では 1 cm 以下に C1 はなく, 病変が小さいことが FNA 検体不良の要因ではなかった. 組織型別では C1 の癌 7 件中 6 件が硬癌, 小葉癌であった. すなわち線維性結合組織が多く, 上皮細胞が少ないタイプの乳癌であった. また非浸潤癌のうち核異型が軽い場合は十分な細胞量の採取でも確定診断にいたらない割合が多く, C3, C4 が 58.8%を占めた.
    結論 : スクリーニングという観点から乳腺 FNA は依然有用な低侵襲性診断手技であるが, 次のステップとして針生検が必要な症例があることを念頭に置く必要がある. US 所見から推定される組織学的特徴は, 細胞診と針生検の適正な使い分けに有用な情報である.
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