日本臨床細胞学会雑誌
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49 巻 , 5 号
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原著
  • 岡山 香里, 大河戸 光章, 熊谷 朋子, 藪崎 宏美, 吉永 陽樹, 福井 正, 藤井 雅彦
    2010 年 49 巻 5 号 p. 321-329
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
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    目的 : 意義不明な異型扁平上皮細胞 (atypical squamous cells of undetermined significance : ASC-US) 症例におけるハイリスク型 HPV 感染細胞の特徴を明らかにし, HPV-DNA 検査に頼らずに軽度扁平上皮内病変 (low-grade sqaumous intraepithelial lesion : LSIL) 相当の指導方針を導き出すことができないか検討した.
    方法 : 対象は ASC-US と判定された 151 例の細胞浮遊液である. HPV の同定には L1-PCR 法, HPV 感染細胞の同定には in situ PCR 法を用いた.
    成績 : ASC-US 症例のハイリスク型 HPV の感染率は 86.8%であった. HPV 感染を疑う所見 7 項目とハイリスク型 HPV 検出の感度, 特異度を調べたところ, 感度 40%以上, かつ特異度 90%以上を示したのは二核細胞 (圧排+) と核肥大細胞 (クロマチン不均等分布) であった. in situ PCR 法でハイリスク型 HPV を検出した結果, 二核細胞 (圧排+) では 100%, 核肥大細胞 (クロマチン不均等分布) では 81.9%でハイリスク型 HPV が検出され, 両者ともにハイリスク型 HPV 感染と有意な関係が認められた (p<0.001).
    結論 : ASC-US の細胞所見を呈する標本において, 二核細胞 (圧排+) が出現していた際は, HPV-DNA 検査を実施せずに, LSIL と判定することが可能と考えられた.
  • 羽原 利幸, 園部 宏, 海原 恭子, 藤村 紀行, 宍戸 明美, 畠 榮, 森谷 卓也, 小池 秀爾, 亀井 敏昭, 吉野 正
    2010 年 49 巻 5 号 p. 330-336
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
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    目的 : 本研究の目的は, 循環障害, 肝硬変, 癌性腹膜炎, 腹膜透析の各疾患群において, 腹腔内に出現する反応性中皮の細胞学的および形態計測上の特徴を明らかにすることにある.
    方法 : 腹水 67 例 (循環障害 7 例, 肝硬変 25 例, 癌性腹膜炎 35 例) と腹膜透析液 9 例を用い, 各疾患群における反応性中皮の出現様式と形態計測結果について比較検討した.
    成績 : 反応性中皮の出現様式では, いずれの疾患群でも単個と細胞相接や窓形成を示す 2∼4 個までの小集塊が主体 (94.6∼98.6%) を占めた. 平均細胞面積は, 腹膜透析液中にみられる反応性中皮が 165.2μm2と最も大きく, 続いて癌性腹膜炎 145.8μm2, 肝硬変 123.9μm2, 循環障害 119.2μm2の順であった. 平均核面積は, いずれの疾患群でも 50μm2前後に集中しており, 標準偏差は細胞面積が核面積よりも有意に大きかった.
    結論 : 腹腔に出現する反応性中皮の基本的な細胞所見は, 細胞の大小不同にかかわらず, 核の大小不同が乏しく, 孤立性から小集塊状に出現する点が特徴と考えられる. このような反応性中皮の特徴を理解することは, 体腔液細胞診の診断精度の向上に寄与するものと考えられる.
  • 林 諭史, 横山 恵, 石川 文秋, 山崎 知文, 立野 正敏, 小林 博也
    2010 年 49 巻 5 号 p. 337-341
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
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    目的 : まれな乳腺管状癌の細胞学的特徴について明らかにする.
    方法 : 当科で経験した乳腺管状癌 15 例の臨床像, 組織像, 細胞像を検討した.
    成績 : 乳腺管状癌は臨床的に低悪性度で予後良好な組織型であった. 細胞診上の特徴は, 1) 細胞採取量が多い, 2) 筋上皮細胞の混在が少ない, 3) 核小体が不明瞭, 4) 管状構造, 弾性物質がみられる, であった. 以上の所見を認めた場合, 管状癌を推定する一材料となる可能性がある.
    結論 : 乳腺管状癌は予後良好であり, 治療方針を決定する際, 細胞診で組織型を推定することは有意義であると考える.
症例
  • 川島 麻里沙, 古田 則行, 星 利良, 神田 浩明, 平井 康夫
    2010 年 49 巻 5 号 p. 342-346
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
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    背景 : 骨外性粘液型軟骨肉腫 cellular variant は組織学的に特徴的な像を欠くため診断が困難なことがある. 今回われわれは術前穿刺材料の圧挫細胞診で推定しえた骨外性粘液型軟骨肉腫 cellular variant の 1 例を報告する.
    症例 : 69 歳, 男性. 左大腿部腫瘤を主訴に来院した. 術前穿刺材料の組織診は高悪性度多形肉腫であった. 圧挫細胞診では, 小型卵円形の核と短紡錘形の細胞質を有する腫瘍細胞が, 主に充実性の増殖を思わせる細胞集塊で出現していた. 一見, 未分化な肉腫様であったが, 腫瘍細胞の核にコーヒー豆様の深い核溝とわずかに粘液様ないし硝子様の間質様細胞間物質を軸とする腫瘍細胞の索状配列をみとめた. 以上より, 細胞診では骨外性粘液型軟骨肉腫 cellular variant を推定した. その後, 広範囲切除術が施行され, 組織診と遺伝子診断より診断が確定された.
    結論 : 穿刺材料では病理組織診断が困難であった骨外性粘液型軟骨肉腫 cellular variant を, 圧挫細胞診ではコーヒー豆様の深い核溝という細胞所見を手がかりに推定することが可能であった.
  • 山崎 加奈子, 河原 真弓子, 貞嶋 栄司, 木下 準子, 岸田 奈津, 有馬 文統, 大島 孝一, 入江 康司
    2010 年 49 巻 5 号 p. 347-351
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
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    背景 : 縦隔腫瘤を伴う患者の胸水細胞診にて顆粒球肉腫と診断した症例を経験したので報告する.
    症例 : 患者は 50 歳代, 女性. 呼吸困難および顔面浮腫を主訴に当院受診となった.
    初診時の血液および生化学検査に異常はなく, 画像検査にて胸壁肥厚, 縦隔腫瘤, リンパ節腫大および胸水貯留を指摘された. 悪性リンパ腫あるいは悪性中皮腫が疑われ, 胸水細胞診が施行された. 細胞診では, 小∼中型の異型細胞を孤立散在性に多数認め, 細胞質は狭く好塩基性, 一部に細胞質内小空胞を有し, 核は類円形で核縁不整を認めた.
    核クロマチンは微細で多発性の核小体を認め, 悪性リンパ腫を考える細胞所見であった. しかし, 免疫組織化学染色にて CD3・CD20・CD79αが陰性であったため, 胸水細胞診を再検討するとアズール顆粒やアウエル小体を有する細胞を認めた. peroxidase 染色にて多数の陽性細胞を認め, フローサイトメトリーや免疫組織化学染色を総合し顆粒球肉腫と診断した.
    結論 : 顆粒球肉腫はまれな疾患であり細胞診で経験する機会は少なく, 悪性リンパ腫と誤診されることが多い. 正確な診断による治療の選択が患者の予後を左右するため, 詳細な細胞観察に免疫組織化学染色を加え診断することが重要である.
  • 土田 秀, 小島 勝, 田端 里美, 神山 晴美, 中里 宜正, 飯島 美砂, 杉原 志朗, 正和 信英
    2010 年 49 巻 5 号 p. 352-355
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
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    背景 : 多発性骨髄腫 (骨髄腫) において腫瘍細胞が体腔液中に出現することはまれであるが, 多数の腫瘍細胞を胸水中に認めた骨髄腫の 2 例を経験したので報告する.
    症例 : 症例 1 : 54 歳, 男性. 両側上顎洞, 背部腫瘤にて発症した IgG 型骨髄腫. 胸水中に好塩基性の細胞質と核周明庭を認める, 類円形の成熟型の骨髄腫細胞が多数出現し, 形質芽球型の骨髄腫細胞が混在していた. 症例 2 : 53 歳, 男性. IgA 型骨髄腫の再発後に左胸水が認められた. 好塩基性の細胞質と核周明庭を認める, 類円形の骨髄腫細胞が多数出現していた. 明瞭な核小体を認め, 核の大小不同, 核型不整を認める細胞や, 2 核を含む多核細胞も混在していた.
    結論 : 骨髄腫の中で胸水中に腫瘍細胞が出現するのはまれであるが, Papanicolaou 染色標本で核クロマチンの性状や核小体の観察を行い, Giemsa 染色標本で好塩基性の細胞質や核周明庭など骨髄腫細胞としての特徴的な所見を確認することで, 診断精度の向上につながると考えた.
  • 羽原 利幸, 園部 宏, 海原 恭子, 藤村 紀行, 三浦 弘守, 畠 榮, 森谷 卓也, 亀井 敏昭
    2010 年 49 巻 5 号 p. 356-360
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
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    背景 : 腹水中の collagenous stroma (以下 CS) を有する細胞集塊の出現は, 悪性細胞を示唆する所見とされる. 今回, 腹水中に CS を有する多数の反応性中皮細胞集塊が出現した腹水細胞診の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 患者は 46 歳の女性で, 肝原発神経内分泌細胞癌の術後 4 ヵ月目に再発と腹膜播種をきたした. 化学療法と動注療法の効果はなく, 腹水が出現した. 腹水細胞診では, CS を取り囲む細胞集塊が多数認められた. 集塊を構成する細胞は, 類円形から立方形を呈し, 細胞質はライトグリーン好性, 核は類円形で, クロマチンの増量はなかった. 免疫染色では, 集塊を形成する細胞は WT-1, calretinin, podoplanin に陽性, EMA は細胞膜に陰性, 細胞質に弱陽性であり, 反応性中皮と診断された. 多数みられた CS は, いずれも周辺部が type-IV collagen に陽性を示した.
    結論 : 腹水細胞診では, 悪性病変のみならず, 反応性中皮にも CS を伴う細胞集塊が多数出現する場合があるため, 十分な認識が必要である.
  • 鈴木 裕, 植松 美由紀, 三好 寛明, 田村 元
    2010 年 49 巻 5 号 p. 361-363
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
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    背景 : 副甲状腺癌の多くは高分化腺癌で腺腫との鑑別が問題になることが多い. きわめてまれな未分化型化を伴う副甲状腺癌を経験したので, その細胞像を報告する.
    症例 : 70 歳, 男性. 検診で右肺の結節影を指摘され, CT で右肺の腫瘍と甲状腺右葉下極の背側に接する腫瘍が描出された. 生化学検査では血清 Ca, 血清 intact PTH が高値であった. 肺転移を伴う副甲状腺癌が疑われ, 腫瘍摘出術および甲状腺右葉切除術が施行された. 捺印細胞診で円形核を有する高分化型腺癌細胞と肉腫様で多形に富む未分化型細胞の 2 種類の細胞がみられ, 両者の移行像がみられた. 免疫染色では前者は PTH 陽性, p53 陰性, 後者は PTH 陰性, p53 陽性であった. 遺伝子解析の結果, 未分化型癌の部分にのみ p53 遺伝子の点突然変異が検出された. 術後, 血清 Ca, 血清 intact PTH ともに正常化した. 肺の結節影は術後著明に縮小した.
    結論 : 未分化型化を伴う副甲状腺癌の細胞像の特徴として, 高分化型腺癌細胞と未分化癌細胞の 2 種類の細胞がみられ, 両者の移行を示唆する像が認められることがあげられる. 未分化型化には p53 遺伝子の点突然変異が関与していると推測される.
  • Tomohito TANAKA, Yoshito TERAI, Masahide OHMICHI
    2010 年 49 巻 5 号 p. 364-368
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/17
    ジャーナル 認証あり
    背景 : 腹壁内子宮内膜症はまれな疾患であり, その診断は困難な場合が多い. 近年, 帝王切開既往のある女性の 0.03∼1%が帝王切開創部の腹壁内子宮内膜症を伴うと報告されている.
    症例 : 26 歳女性, 子宮内膜症を疑う既往はない. 2 年前に施行された帝王切開術の瘢痕部から腹直筋内を臍高まで伸展する 15×3×3 cm の硬い腫瘍を認めた. 腫瘍は月経時に強い疼痛を伴った. 偽閉経療法を 6 ヵ月間受けたが, 月経が再開すると疼痛は軽減せず, 腫瘍も増大傾向を示した. 穿刺吸引細胞診では楕円形で細胞質に乏しく均一な円形の核を有する細胞からなるシート状の上皮細胞と出血性の背景に散在する間質細胞が多数認められた. これらの所見は子宮内膜の存在と悪性腫瘍の除外診断に有用であった. 腹壁内子宮内膜症の診断のもと断端に病変が残らないように広汎に腫瘍を摘出した. 術後 18 ヵ月で再発は認めていない.
    結論 : 穿刺吸引細胞診は術前診断に有用であった. また本症例のような大きい腹壁内子宮内膜症では広汎な外科的切除が診断的, 治療的に有効であると考えられる.
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