日本臨床細胞学会雑誌
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50 巻 , 6 号
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原著
  • 池澤 剛, 川村 智子, 大貫 史明, 森下 由紀雄
    2011 年 50 巻 6 号 p. 313-319
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    目的 : ERCP (endoscopic retrograde cholangiopancreatography) 施行時に採取された細胞診標本が不良になる原因としての造影剤の影響とブラシ洗浄標本の有効性を検討した.
    方法 : 胆嚢23 例を用い, 胆嚢粘膜ブラシ擦過直接塗抹標本, 造影剤原液および希釈液浸漬後ブラシ擦過直接塗抹標本, 生理食塩水洗浄標本, 造影剤原液と造影剤希釈液の各溶液でブラシを洗浄した洗浄液標本を作製し, 細胞形態を比較した.
    成績 : 造影剤原液および 2 倍, 8 倍希釈造影剤浸漬後ブラシ擦過直接塗抹標本と造影剤原液および 2 倍, 8 倍希釈造影剤を用いた洗浄標本では, 核や細胞質の濃縮, 濃染などアーチファクトが強く細胞構造が不明瞭となり, 診断には不適正な標本となった. 16 倍, 32 倍希釈造影剤浸漬後ブラシ擦過直接塗抹標本と造影剤 32 倍希釈液洗浄液標本では生食洗浄液標本と同様の所見であった.
    結論 : 造影剤は固定作用を妨害していることが示唆された. ERCP 施行時の細胞診標本は造影剤原液の付着したブラシ直接塗抹標本より, 造影剤の希釈されるブラシ洗浄液標本が有効であると考えられた.
  • 木下 勇一, 鷹巣 晃昌, 足立 靖, 圦 貴司, 松永 志保, 高畠 希, 市邊 和男, 南雲 サチ子, 四方 伸明
    2011 年 50 巻 6 号 p. 320-324
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    目的 : 硝子体および眼内かん流液細胞診について臨床細胞学的に検討し, 眼内かん流液の有用性について考察した.
    方法 : 1991∼2009 年までに施行された硝子体および眼内かん流液細胞診 64 例を対象に年齢, 性別, 臨床症状, 疑われる疾患, 細胞判定, 最終診断について検討した.
    成績 : 平均年齢は 60.8 歳で高齢に多く, 男女差はほとんどみられなかった. 眼所見では大部分の症例で硝子体混濁がみられ, 臨床的にはブドウ膜炎および眼内炎が疑われた. 細胞診では陰性 50 例, 陽性・疑陽性が 14 例で, 3 例の感染症, 7 例のサルコイドーシス, 14 例の悪性リンパ腫の診断がみられた.
    結論 : 近年, 分子生物学的手法を含めた新しい検査法が検討されているが, 硝子体液は採取量が少量であり, 検索には限界がある. 眼内かん流液細胞診の結果を踏まえた検査法の選択が眼内病変に対する診断精度の向上に寄与するものと考えられる.
  • 林 諭史, 横山 恵, 石川 文秋, 山崎 知文, 立野 正敏, 小林 博也
    2011 年 50 巻 6 号 p. 325-331
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    目的 : 乳腺微小乳頭癌 (invasive micropapillary carcinoma : IMPC)の臨床病理細胞学的特徴を明らかにする.
    方法 : IMPC 10 例と特殊型以外の浸潤性乳管癌 (invasive ductal carcinoma : IDC) 500 例を比較検討した. 細胞像は乳頭腺管癌 (papillotubular carcinoma : PTC) を対照とした.
    成績 : 年齢, 閉経状況, 主訴, 乳癌家族歴に差はなく, MMG category 4,5 は IMPC の 100%, IDC の 81.6%に認めた. Pure IMPC では Mixed IMPC や PTC に比べ高頻度に Dual pattern が観察され, 組織型を推定できた. IMPC は小径 (IMPC 10.0 mm, IDC 14.8 mm) で, 脈管侵襲を高率に認めた. ホルモンレセプター (HR) 陽性率, HER2 発現率に差は認めなかった. 腋窩リンパ節転移は IMPC の 20.0%, IDC の 25.8%に認めた. IMPC で 1 例再発したが, 現在のところ腫瘍死にいたった症例はなかった.
    結論 : 細胞診で Pure IMPC を推定可能であった. 当科症例は早期かつ HR 陽性率が高く, 比較的予後良好であった.
  • 加藤 智美, 安田 政実, 矢島 沙紀, 堀 慎一, 清水 道生, 大石 理恵, 藤原 恵一
    2011 年 50 巻 6 号 p. 332-340
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    目的 : 子宮頸部扁平上皮癌 (以下頸癌) を対象とした放射線治療 (以下放治)/化学療法 (以下化療) の治療効果判定における細胞診の日常診断を分析し, 精度向上を計るための報告のあり方について検討した.
    方法 : 頸癌と診断され初期治療として放治/化療が行われた 53 例 (放治単独 13・放治/化療同時 40) の細胞診標本 207 件, 組織診 102 件を用いた. 細胞診断の実状を分析し, 陽性・陰性・判定困難に分けて再評価を行った. 組織診断の再評価, 画像診断とも対比検討し, さらに Ki-67 の発現, Human papilloma virus (以下 HPV) の感染動態についても解析を行った.
    成績 : 30 Gy 時の陽性率は 69%, 再評価でも 69%と同様であった. 40-60 Gy 時では陽性率は平均 32%でほぼ横這いを示したが, 再評価では 40 Gy : 44%, 50 Gy : 30%, 60 Gy : 13%と漸減を示した. 細胞診標本で陽性と判断された場合の Ki-67 指数は 30%, 陰性 0.6%, 判定困難 6%で, 組織標本でもほぼ同値を示した. 治療前に, 組織標本上 in situ hybridization で HPV 感染が証明されたのは 64%で, これらは治療中も感染が持続していた. 画像診断との対比では細胞診評価と 73%が一致した.
    結論 : 頸癌の治療効果判定には臨床情報を基本に総合的な判定を行い, 患者個々の所見を時系列的に捉えていくことで細胞診の精度向上が期待できる. ベセスダシステムには十分に整備されていない領域として, 独自に「記述主体の報告 (陽性・陰性・判定困難) 」を推奨したい.
症例
  • 沼崎 令子, 大城 久, 宮城 悦子, 稲山 嘉明, 北村 和久, 平原 史樹
    2011 年 50 巻 6 号 p. 341-345
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    背景 : 子宮頸部に発生するリンパ上皮腫様癌 (Lymphoepithelioma-like carcinoma : LELC) は鼻咽頭に発生する Lymphoepithelioma に類似した組織像を示す癌で, 子宮頸部の悪性腫瘍の 0.7∼5.5%を占める非常にまれな腫瘍である. 他の子宮頸癌症例に比較しリンパ節転移が少なく予後良好であるとされている.
    症例 : 66 歳, 女性. 子宮頸癌IIb 期の診断にて広汎子宮全摘術, 両側付属器摘出術を施行した. 細胞診では多数のリンパ球および多核巨細胞の浸潤を伴う背景のなかに, 腫瘍細胞が孤立性に出現していた. 免疫組織学的検査ではサイトケラチン (AE1/AE3) 陽性, CD3, CD8 は腫瘍細胞以外の多数のリンパ球において陽性であり, また Epstein-Barr virus-encoded small RNA は陰性, 9 種類のハイリスクタイプの Human papilloma virus も陰性であった.
    結論 : 大型で未分化な腫瘍性上皮細胞と間質の著明なリンパ球浸潤, 多核巨細胞を認めた場合, 本疾患も念頭におく必要がある.
  • 木下 準子, 河原 真弓子, 貞嶋 栄司, 山崎 加奈子, 貞嶋 奈津, 田中 喜久, 入江 康司
    2011 年 50 巻 6 号 p. 346-350
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    背景 : 血性乳頭分泌を主訴とし, 細胞診が診断に有用であった非腫瘤形成性の神経内分泌非浸潤性乳管癌 (neuroendocrine ductal carcinoma in situ : NE-DCIS) を 2 例経験したので報告する.
    症例 : 症例 1 は 70 歳代, 女性. 右乳房の血性乳頭分泌物を主訴に来院. 細胞診で, 重積性乳頭状集塊や散在傾向を示す比較的均一な小型類円形∼多辺形の腫瘍細胞を多数認めた. 核は類円形偏在性で, 好酸性顆粒状の豊富な細胞質を有していた. 症例 2 は 60 歳代, 女性. 両側乳房の血性乳頭分泌を認め来院. シート状∼軽度重積性集塊や結合性の低下した集塊を認めた. 腫瘍細胞は小型類円形∼多辺形で, やや広い弱好酸性の細胞質を有していた. 左右とも免疫細胞化学染色にて synaptophysin 陽性であった.
    結論 : 乳汁細胞診にて NE-DCIS と診断しえた 2 例を報告した. NE-DCIS は病理学的に乳頭腫などの良性病変との鑑別が困難な場合があるが, 細胞形態の詳細な観察と神経内分泌系マーカーの免疫細胞・組織化学的検索の併用により, 本組織型を疑うことが可能である.
  • 長山 利奈, 藤田 拓司, 太崎 友紀子, 北出 尚子, 山口 真一郎, 藤井 毅, 中村 淑美, 山本 一郎
    2011 年 50 巻 6 号 p. 351-354
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    背景 : 病理組織診断は主たる病巣により診断され, 特記すべき事項があればコメントとして併記されるが, 従たる病巣に関しては診断に反映されないことがある. 今回, 術後早期に脳転移をきたした子宮頸癌の 1 例を経験し, 初診時の子宮頸部細胞像に特徴的な所見を認めたので報告する.
    症例 : 36 歳, 女性, 不正性器出血を主訴に当院を紹介受診した. 子宮頸部 5 時方向に 2 cm 大の易出血性腫瘍を認め, 子宮頸部細胞診では扁平上皮傍基底型悪性細胞のほか N/C 比の高いクロマチンの豊富な小型の悪性細胞が小集塊状に出現していた. 組織診でも同様の形態をした悪性細胞の間質内浸潤を確認し小細胞癌疑いと診断した. 子宮頸癌 Ib1 期の診断で広汎子宮全摘出術を施行した. 最終病理組織診断は非角化型扁平上皮癌でリンパ節転移陽性であり化学療法を追加した. 初回治療から 5 ヵ月後, 見当識障害, 悪心, 嘔吐, ふらつきを主訴に受診, 左前頭葉に径 5.5 cm 大の腫瘍を認め, 腫瘍摘出術を施行した. 摘出腫瘍の組織像は原発巣に類似し, 子宮頸癌脳転移と診断した. 術後 PET-CT 検査で異常集積がないため, 放射線全脳照射 (50 Gy) を施行した.
    結論 : 子宮頸癌の細胞像中に, 小型細胞から構成されるインディアンファイル状配列を示す細胞集団を認めた場合は, 血行性転移にも留意し, 脳転移も念頭におく必要がある.
  • 牛島 倫世, 山川 義寛, 高越 祐子, 前田 睦子, 桶谷 香織, 加藤 潔, 岡田 英吉
    2011 年 50 巻 6 号 p. 355-359
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    背景 : 子宮体部漿液性腺癌は比較的まれな腫瘍であり, 予後は不良である. 今回, 筋腫分娩をきたした粘膜下筋腫の表層萎縮内膜から発生したと考えられる, 漿液性腺癌の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 70 歳, 2 回経妊 1 回経産, 52 歳閉経. 主訴は不正性器出血. 腟鏡診にて筋腫分娩様の易出血性腫瘤を認めた. 腫瘤の擦過細胞診は ClassV, 腺癌であり, 生検で低分化腺癌と診断された. MRI では子宮口より腟内に連続する径 4 cm 大の腫瘤を認めたが, 発生部位の判別はできなかった. 子宮体癌II期や子宮頸癌も疑われたため広汎子宮全摘術+両側付属器摘出術+骨盤リンパ節郭清術を施行した. 摘出物肉眼所見では, 子宮底部から茎をもって懸垂する結節状腫瘤を認めた. 組織学的に腫瘤は有茎性粘膜下筋腫であり, これを覆う子宮内膜および筋腫内に漿液性腺癌を認めた. 両側付属器や骨盤リンパ節に転移は認めなかった. 免疫染色では ER (estrogen recepter), PR (progesterone recepter), p53 ともに一部陽性であり, 混合型の子宮体部漿液性腺癌と診断された.
    結論 : 筋腫分娩をきたした有茎性粘膜下筋腫のみに認められた, 比較的まれな漿液性腺癌を経験した. 閉経後認められる筋腫分娩においても悪性変化を念頭におき, 精査する必要性があると思われた.
  • 萩原 聖子, 奥薗 学, 中野 龍治, 加来 恒壽, 松隈 敬太
    2011 年 50 巻 6 号 p. 360-365
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    背景 : 女性生殖器に原発する悪性リンパ腫は節外性リンパ腫の約 1%とされ, さらに腟原発はきわめてまれである. 本腫瘍は粘膜下に発生するため, 擦過細胞診や狙い生検は腫瘍細胞を採取することが困難な場合が多い. 今回, 穿刺細胞診が診断に有用であった腟原発びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫 (Diffuse large B-cell lymphoma, DLBCL) の 1 例を経験した.
    症例 : 66 歳, 女性. 子宮がん検診目的で前医を受診し径 9 cm の腟腫瘍を指摘された. 腫瘍擦過細胞診, 狙い生検で腫瘍細胞は同定できなかったが, 穿刺細胞診で悪性リンパ腫が推定された. 細胞所見は出血性背景に大小不同が著明な異型リンパ球が孤立散在性に多数出現していた. 腫瘍細胞の N/C 比は高く, 核は類円形, 分葉状など多彩で, 一部に切れ込みを認めた. クロマチンは細網状で, 核小体は 1∼3 個みられた. 切除生検の病理組織検査は DLBCL で, 悪性リンパ腫IEA 期と診断した. Modified R-CHOP 療法 2 クール後に放射線療法を施行し寛解を得た.
    結論 : 表面平滑な腟腫瘍を認めた場合は, 悪性リンパ腫の存在を念頭におくことが重要である. 穿刺細胞診は簡便で正確な手技として有用で, 細胞診は早期診断の一助となる可能性が示唆された.
短報
  • 木原 淳, 牛島 友則, 竹田 桂子, 福島 純一, 堀内 啓
    2011 年 50 巻 6 号 p. 366-367
    発行日: 2011年
    公開日: 2012/02/09
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    We report a case of fetal adenocarcinoma of the lung in a 70-year-old woman whose bronchial washing cytology showed many large overlapping palisaded tumor cell clusters. Cells had round or oval nuclei with fine granular chromatin and indistinct nucleoli. Cytology also showed two other small cluster types-one with nuclear molding and the other with clear cytoplasm and round nuclei with hypochromasia. The differential diagnosis included low-grade lung adenocarcinoma, metastatic adenocarcinoma, pulmonary blastoma, and carcinoid tumor. This case suggests that fetal adenocarcinoma shows a variety of clusters in bronchial washing cytology.
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