日本臨床細胞学会雑誌
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50 巻, 1 号
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原著
  • 白山 岳史, 清野 重男, 小林 則子, 阪埜 浩司, 藤井 多久磨, 青木 大輔
    2011 年 50 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 東京都世田谷区の子宮頸がん検診に, ベセスダシステム 2001 : The Bethesda System 2001 (TBS) 導入時の課題や問題点を把握するため細胞診判定と標本の適否を検討した.
    方法 : (1)2007 年 12 月から 1 年間 TBS を使用した. 意義不明な異型扁平上皮細胞 (ASC-US) 以上を要精密検査とし精検結果を追跡した.
    (2)2008 年 12 月分 1273 件を再鏡検し, 各施設の取り扱い数や不適正標本の割合を調査した.
    成績 : (1)検診受診者数 14468 人中, 要精検率は 1.31%, 内訳は ASC-US 0.39%, HSIL を除外できない異型扁平上皮細胞 (ASC-H) 0.08%, 異型腺細胞 (AGC) 0.04%, 軽度扁平上皮内病変 (LSIL) 0.44%, 高度扁平上皮内病変 (HSIL) 0.34%, 扁平上皮癌 (SCC) 0.02%, であった. 子宮頸部上皮内腫瘍 (CIN1) 以上の検出率は LSIL, HSIL, ASC-US, ASC-H それぞれ 76.7%, 79.4%, 65.6%, 75%であった. (2)TBS に基づく不適正標本の割合は全 46 施設の平均 6.8%であった.
    結論 : 今回 ASC-US または ASC-H より 67.5%の CIN1 以上の病変が認められたことなどから, 今後は ASC について細胞診判定の妥当性を検討する必要があると考えられる. TBS 導入により不適正標本の把握と, 標本作製工程の管理が可能となり, これらの取り扱いと是正が課題となる.
  • 松浦 祐介, 永塩 英治, 卜部 理恵, 川越 俊典, 土岐 尚之, 蜂須賀 徹, 柏村 正道
    2011 年 50 巻 1 号 p. 6-10
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    目的 : 企業における子宮頸がん検診の現状を明らかにし, その役割と課題について検証する.
    方法 : 278 事業所 (社) の産業医に子宮頸がん検診についてのアンケートを依頼した. 125 社から回答が得られ, がん検診を実施している企業は 53 社 (42%) であり, うち 37 社からさらに詳細な回答が得られ, その内容について検討した.
    成績 : 子宮頸がん検診を必須項目としている企業は 3 社 (8%) のみでほかは希望者を対象としていた. 28 社 (76%) が検診間隔を 1 年としていたが, 対象年齢を 20 歳まで引き下げている企業は 13 社 (35%) のみであった. がん検診受診者数が把握できた 30 社の女性従業員数は 3 万 1744 名であり, うち検診受診者数は 7226 人で受診率は 23%であった. 検診の結果が確認できた 27 社における細胞診陽性率は 1.6%であり, 精検受診率は 74%であった.
    結論 : 健康増進法で受診できない女性労働者の子宮頸がん検診を企業健診でカバーする必要があるが, 受診率は 23%にとどまっており, 対象年齢の拡大が必要である. 要精検者に対しては, 産業医や産業保健スタッフの個別指導を中心とした積極的関与が必要である.
  • —空胞を有する細胞とは—
    岡山 香里, 大河戸 光章, 熊谷 朋子, 藪崎 宏美, 吉永 陽樹, 福井 正, 藤井 雅彦
    2011 年 50 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    目的 : koilocyte と判定できない空胞を有する細胞に対して HPV 感染の有無を調べ, 特徴的な空胞所見により HPV 感染を推定することが可能か検討した.
    方法 : 対象は ASC-US (atypical squamous cells of undetermined significance) 151 例, LSIL (low grade-squamous intraepithelial lesion) 11 例, NILM (negative for intraepithelial lesion or malignancy) 140 例の細胞浮遊液である. HPV 同定には L1-PCR 法, HPV 感染細胞の同定には in situ PCR 法を用いた. なお空胞細胞は核に対する空胞の局在性で A∼D に分類して検討した.
    成績 : ASC-US の 90.7%, LSIL の 100%, NILM の 21.4%で HPV 感染が認められた. in situ PCR 法で HPV を検出した結果, HPV 陽性率は空胞細胞 A : 86.1%, B : 7.8%, C : 44.4%, D : 9.3%であり, 空胞細胞 A と HPV 感染に有意な関係が認められ, 相対危険度は 29.4 であった. また NILM, ASC-US 例において空胞細胞 A は HPV の検出特異度が 90%以上であった.
    結論 : 氷河的空胞細胞 (glacial vacuole cell, GV) と名づけた空胞細胞 A の存在は HPV 感染を強く疑う新たな所見であり, 細胞診検査で GV を検出することによって, HPV の検出感度向上に貢献できると考えられた.
症例
  • 齋藤 研祐, 松浦 祐介, 川越 俊典, 土岐 尚之, 蜂須賀 徹, 安田 浩
    2011 年 50 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : 外陰 Paget 病は表皮内黒色腫とともに非扁平上皮性上皮内癌に分類され, 下床癌を伴わなければ局所再発は認めるものの, 比較的予後良好な疾患である. 今回, 再発を繰り返し初回治療から 4 年 7 ヵ月目に広範な腺扁平上皮癌を呈した外陰 Paget 病の症例を経験したので報告する.
    症例 : 75 歳, 女性. 2 経妊 2 経産. 難治性の外陰部掻痒感のため近医より当院皮膚科へ紹介受診となった. 生検の結果, 外陰 Paget 病と診断され, 外陰部局所切除術を施行された. 切除断端は陰性となったが, 外陰 Paget 病の再発を繰り返し, そのたびに局所切除術を施行した. 初回治療から 4 年 7 ヵ月目の 4 回目の再発時の病理診断で, 腺扁平上皮癌と診断された. 腟断端が陽性であったため当科紹介となり, 手術療法を施行した. しかし, 術後に骨盤腔内に再発をきたし, 放射線治療にも抵抗性で, 術後 8 ヵ月目に亡くなった. 腫瘍擦過細胞診では, 腫瘍細胞は腺癌様の明瞭な核小体を認め, また核は中心性で扁平上皮癌にも類似している所見であった.
    結論 : 本症例のように外陰 Paget 病がほかの癌に変化した報告例は過去にないが, 局所再発をしばしば認めるため, 長期にわたる経過観察が必要である.
  • 大森 真紀子, 端 晶彦, 須波 玲, 中澤 久美子, 石井 喜雄, 弓納持 勉, 近藤 哲夫, 加藤 良平
    2011 年 50 巻 1 号 p. 24-29
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : 卵巣の悪性腫瘍では, 腹水細胞診は病期や治療法を決定するうえでたいへん重要である. 今回われわれは腹膜インプラントを伴った漿液性境界悪性腫瘍の症例を経験したので報告する.
    症例 : 16 歳, 女性. 主訴は下腹部膨満感で, 両側卵巣に充実性部分を伴う嚢胞性腫瘍が認められた. 術中の腹水は淡黄色で, 細胞所見は比較的きれいな背景に集合性あるいは散在性に異型細胞が多数認められた. 前者は不規則重積を示し細胞質内に大小さまざまな空胞がみられ悪性と判断されたが, 後者は反応性中皮細胞との鑑別が問題となった. しかし, 両者の細胞像には移行を示す所見や, 核に類似性が認められた. また, 散在性の細胞はギムザ染色で細胞質が淡明であり, さらにカルレチニンが陰性であったことから, どちらも腫瘍細胞であり, 漿液性腺癌を考えた. 組織学的には, 中等度の異型を示す腫瘍細胞が乳頭状に増殖し, 間質浸潤が認められなかったことから, 漿液性境界悪性腫瘍と診断された. 腹膜には線維形成性インプラントが認められた.
    結論 : 卵巣腫瘍の腹水細胞診では腫瘍細胞と反応性中皮との鑑別が問題となることがあるが, さまざまな手法を用いて腫瘍細胞を見逃さないことが重要である.
  • 後藤 利明, 松井 成明, 北村 隆司, 高橋 雅之, 佐々木 久幸, 高橋 さつき, 齊藤 昌宏
    2011 年 50 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : 乳腺腺筋上皮腫, 紡錘細胞型 (adenomyoepithelioma, 以下 AME, spindle cell type) の 1 例を経験したので, その細胞学的特徴と文献的考察を加え報告する.
    症例 : 患者は 52 歳, 女性. 右乳房の血性乳頭分泌物を自覚し, 当院外科を受診した. 触診上, 右乳頭直下に約 2.0 cm の腫瘤を触知した. 超音波検査では, 約 2.5×2.0 cm 大, 境界明瞭な嚢胞内に充実性部分を認めた. 腫瘍の捺印細胞診では, 乳管上皮細胞とアポクリン化生細胞からなる上皮性細胞集塊に加え, 紡錘形細胞の集塊が出現していた. 紡錘形細胞の核は長楕円形∼紡錘形を示し, 多数の核内細胞質封入体様構造が観察された.
    結論 : 本腫瘍は, 多彩な組織像を呈するがゆえに細胞診標本のみでの組織型推定は困難とされているが, 上皮系細胞と紡錘形細胞のいわゆる two cell pattern を示し, 紡錘形細胞に核内細胞質封入体様構造が観察された場合, 本腫瘍を第一に考慮するべきと考えられた.
  • 原田 律子, 榎本 利香, 糸山 雅子, 岡村 義弘, 織田 みほ, 鳥居 良貴, 山本 格士, 廣田 誠一
    2011 年 50 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : 胞巣状軟部肉腫 2 例の捺印細胞像について報告する.
    症例 : 10 歳代女性 (症例 1) と 50 歳代女性 (症例 2) の 2 例の胞巣状軟部肉腫の術中捺印細胞診標本を対象とした. 細胞像は 2 例ともに, 細胞質がライトグリーン好性で泡沫状, 核縁は薄く, 核クロマチンは細顆粒状であったが, 核小体の形態や数, 核の大小不同に違いが認められた. PAS 染色, Giemsa 染色で明瞭な針状結晶を認めた. 組織像は症例 1, 2 ともに, 好酸性顆粒状, もしくは淡明で豊富な細胞質を有する腫瘍細胞が胞巣形成性に増殖し, 明瞭な核小体と PAS 染色陽性の針状結晶を認めた.
    結論 : 胞巣状軟部肉腫の細胞診において, Giemsa 染色を併用して針状結晶を容易に可視化できるようにすることは本腫瘍を推定するうえで有用と考えられた.
  • 森田 あやこ, 菅ヶ谷 容子, 深代 やす子, 稲垣 圭子, 稲垣 秀行, 小林 義男, 大野 順弘, 小島 勝
    2011 年 50 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : 結節性リンパ球優位 Hodgkin リンパ腫 (以下 NLPHL) の 1 例を報告する.
    症例 : 61 歳, 男性. 胃癌と右腋窩リンパ節腫大. 同リンパ節切除施行. 捺印細胞診では多数の成熟リンパ球 (以下 Ly) と少数の大型異型細胞を認めた. 組織学的には反応性二次濾胞を背景に, 大型で輪郭不明瞭な結節性病変をみ, 結節内に認めた lymphocytic and/or histiocytic cell (以下 L & H 細胞) は CD20 陽性, CD30 陰性, EMA 陰性. EBER-in situ hybridization は Ly には陽性, L & H 細胞は陰性. CD57 陽性 T 細胞性リンパ球のロゼット構造 (以下 T-roSe) もみ, NLPHL と診断.
    結論 : L & H 細胞の核小体は目立たず, 反応性濾胞/large follicle centroblasts や濾胞性リンパ腫/non-cleaved cells との鑑別は困難. 多数 Ly に対し L & H 細胞は少数ゆえに Popcorn 状核形や 2.5 以上の核長径比 (L & H 細胞/近傍の Ly), T-roSe 等が L & H 細胞を細胞形態学的に認識するうえで要求され, 核長径比を含む 4 項目を提案した.
  • 橘 真由美, 志田 しげの, 田中 幸, 播谷 規子, 田保 徹, 寺村 一裕
    2011 年 50 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背景 : 破骨様多核巨細胞 (osteoclast-like giant cells : OCGC) が出現する乳癌はまれで, 既報告のほとんどは浸潤癌である. 今回われわれは OCGC が出現した非浸潤性乳管癌を 2 例経験したので, その細胞像を中心に報告する.
    症例 : 症例 1 は 45 歳女性, 左乳腺腫瘤を主訴に来院した. 症例 2 は 45 歳女性, 右乳腺腫瘤を主訴に来院した. マンモグラフィと超音波検査にて症例 1 は悪性を疑われ, 症例 2 は悪性と判定された. 2 例とも穿刺吸引細胞診にて OCGC を伴った乳癌と診断され, 乳腺区域切除術およびセンチネルリンパ節生検が施行された. いずれも肉眼的に出血を伴わない白色腫瘤で, 組織学的に OCGC を伴った非浸潤癌であった. OCGC は CD68 陽性で組織球由来が示唆され, 腫瘍細胞は血管内皮細胞増殖因子 (vascular endothelial growth factor : VEGF) 陽性を示した.
    結論 : 穿刺吸引細胞診にて乳癌に OCGC が出現し, 血性背景を欠く場合は非浸潤癌も念頭において観察すべきである.
短報
  • 池田 俊彦, 黒川 聡, 向所 賢一, 九嶋 亮治
    2011 年 50 巻 1 号 p. 53-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    We report a case of pulmonary coccidioidomycosis. A 24-year-old American man living in Arizona was found in X-ray imaging and computed tomography (CT) to have an about 20 mm coin-sized right-lung lesion, although specifics were not provided in bronchoscopy. Pulmonary resection yielded a rapid perioperative cytological diagnosis and a frozen tissue specimen. An orange-stained spherule was noted in the cytological specimen.
    Fluorescent staining readily detected the spherule, including an endospore. Note that communication with the clinician is required in such rare cases to obtain important clinical information beforehand.
  • 岩永 彩, 豊岡 辰明, 古川 克郎, 田場 充, 内藤 愼二
    2011 年 50 巻 1 号 p. 55-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    We report a rare case of primary mammary malignant fibrous histiocytoma (MFH). A 57-year-old woman was found in aspiration cytology to have a cluster of markedly pleomorphic tumor cells, consisting of atypical fibroblastic and histiocytic cells, in a right breast mass, together with giant cells with bizarre nuclei and inflammatory cells. Histopathologically, tumor cells showed storiform pattern and were immunohistochemically positive for vimentin, KP-1, and α1-antitrypsin, yielding an MFH diagnosis. Cytological findings were thus found useful in diagnosing primary mammary MFH.
  • 吉田 桂子, 石田 光明, 宮平 良満, 岩井 宗男, 岡部 英俊
    2011 年 50 巻 1 号 p. 57-58
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    We report a case of thymic well-differentiated neuroendocrine carcinoma (atypical carcinoid) in a 68-year-old woman. Intraoperative tumor touch smear results showed loose aggregates of epithelial cells with rich cytoplasm. These cells had variably-sized round to oval nuclei accompanying “salt and pepper” chromatin. Although no necrosis was found, a few mitotic figures were observed. We diagnosed the lesion cytologically as thymic well-differentiated neuroendocrine carcinoma (atypical carcinoid). Immunocytochemical results showed tumor cells to be positive for synaptophysin. This report highlights the need for carefully observing mitotic figures when diagnosing thymic carcinoid.
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