目的 : ベセスダ方式では, 境界領域ともいえる意義不明の異型扁平上皮 (atypical squamous cells undetermined significance, ASC-US), (ASC cannot ruled out high grade squamous intraepithelial lesion, ASC-H) という範疇が存在する. また, ヒトパピローマウイルス (human papillomavirus, HPV) 検査は, 細胞診を補完すべく併用される例が増加している. 子宮がん検診で ASC 例に HPV 検査を併用することで効率的な経過観察が可能か検討した.
方法 : 2009 年 4 月∼2010 年 3 月に福島県の子宮頸がん集団検診での ASC-US 143 例, ASC-H37 例と判断され, 初回精検のコルポスコープ生検時に HPV 検査にも同意し, 併用し組織診やその後の経過, 転帰を調査し HPV 検査との関連を検討した.
成績 : 細胞診 ASC-US で HPV 陰性群 39 例中≧CIN3 の病変が検出されたのは 1 例 (2.6%) で, 経過観察の全例は異型細胞が消失した. HPV 陽性群 104 例で 12 例 (11.5%) に≧CIN3 の病変が検出された. 経過観察の 80.0%の異型細胞が消失した.
ASC-H 例では, HPV 陰性群 12 例で≧CIN3 の病変が 4 例 (33.3%) 検出された. 経過観察群では全例異型細胞が消失した. HPV 陽性 25 例では 9 例 (36.0%) の≧CIN3 が検出され, 経過観察群では 63.6%で異型細胞が消失した.
結論 : ASC-US で HPV 陰性例は, 異型細胞の消失率も高く, 経過追跡を省略することが可能である. HPV 陽性例ではコルポ下生検や経過観察が重要である. ASC-H では, HPV 検査結果にかかわらず, 高度病変の可能性がありコルポスコープ下生検が必須である.
抄録全体を表示