日本臨床細胞学会雑誌
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51 巻, 6 号
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原著
  • 樋口 観世子, 廣川 満良, 延岡 由梨, 高木 希, 隈 晴二, 宮内 昭
    2012 年 51 巻 6 号 p. 395-401
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    目的 : 甲状腺ベセスダシステムに記載されている悪性の危険度や推奨される臨床的対応が本邦においても同じであるのかを検証する目的で, 今回われわれは, 「悪性の疑い」について分析・比較検討することにした.
    方法 : 2010 年に当院で行われた甲状腺穿刺吸引細胞診のうち, 悪性の疑いと報告された 183 結節を検討対象にした.
    成績 : 「悪性の疑い」は全細胞診症例の 1.7%で, 88.0%は乳頭癌が, 10.4%は悪性リンパ腫が疑われた. 外科的に切除が行われた結節は検討症例の 64.5%で, 非結節例の多くは微小癌であった. 切除例における陽性予想率は 95.8%であった. 切除後腺腫様結節と診断された誤陽性の 3 結節はいずれも乳頭状増殖が目立つ症例であった.
    結論 : 当院のデータからは, 「悪性の疑い」における推奨される臨床的対応は, 「転移や浸潤の兆候のない微小癌を除き, 外科的切除が推奨される」とすべきと考えられた.
症例
  • —細胞像・組織像の検討—
    西島 良美, 吉田 朋美, 佐野 孝昭, 平戸 純子, 小山 徹也, 福田 利夫
    2012 年 51 巻 6 号 p. 402-408
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 穿刺吸引細胞診 (fine needle aspiration cytology : FNAC) で推定しえた甲状腺びまん性硬化型乳頭癌 (diffuse sclerosing variant of papillary thyroid carcinoma : DSPC) の 1 例について捺印標本, thinlayer 標本と比較検討し, 組織像とともに報告する.
    症例 : 35 歳女性. 超音波検査で両葉に粗造で微細な高エコー部が確認された. FNAC では通常の乳頭癌の細胞所見に加え, リンパ球主体の背景に多数の砂粒小体を含むやや平面的な充実性および球状集塊がみられ, 臨床所見を加味し DSPC が推定され, 甲状腺全摘出および頸部リンパ節郭清術が施行された. 肉眼的には左葉全体∼右葉下部にかけてびまん性に不明瞭な白色領域と左葉に明瞭な 1 cm 大の結節が認められた. 組織学的には高度なリンパ管侵襲がみられ, 多くの腫瘍細胞が拡張したリンパ管内に多数認められ, 加えて間質の線維化と著明なリンパ球浸潤, 多数の砂粒小体, 扁平上皮化生集塊がみられた. 捺印標本では乳頭状集塊の内部および辺縁部に渦巻き状の扁平上皮化生細胞集塊がみられ, thinlayer 標本では線維結合織と一塊となった砂粒小体を伴う乳頭状集塊を認めた.
    結論 : FNAC では DSPC の特徴的な細胞像が認められ推定診断が可能であった. 捺印標本では扁平上皮化生細胞集塊が明瞭で観察容易であり, thinlayer 標本では結合織と一塊となり組織像を反映した集塊がみられた.
  • 蓑島 敦志, 加藤 隆, 吉岡 明日香, 平尾 智美, 市原 真, 後藤田 裕子, 村岡 俊二
    2012 年 51 巻 6 号 p. 409-414
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 浸潤性微小乳頭癌 (invasive micropapillary carcinoma, 以下 IMPC と略記) は全乳癌に対する発生頻度は約 3%で, 男性症例での報告はきわめて少ない. 男性乳腺に発生した IMPC を経験したので細胞学的および病理学的検討を加え報告する.
    症例 : 56 歳, 男性. 右乳房腫瘤を自覚し近医受診. 精査を勧められ当院乳腺外来を受診. 穿刺吸引細胞診所見では背景は清明で, 多数の乳管上皮細胞集塊が認められた. 細胞集塊は 2 種類みられ, 結合性の低下した集塊と乳頭状に増殖した結合性の良い集塊に分けられた. 後者の集塊は, 辺縁が平滑で細胞質により縁取られ, けばだち状の所見を有していた. 組織学的には IMPC の典型的な像のほか, 乳頭腺管癌や硬癌のような通常型の浸潤性乳管癌の部分もみられたが, 病変の約 2/3 が微小乳頭癌成分で占められていたため, 組織型は IMPC と診断された.
    結論 : 細胞診で辺縁部が細胞質によって縁取られ, けばだち状の所見がみられる集塊が少量でも認められた場合は, IMPC を鑑別に加えることができると考えられた. IMPC は悪性度の高い疾患であることから本組織型の存在を推定することは臨床上有用であると考えられた.
  • 山田 佑輔, 江村 巌, 薄田 浩幸, 高頭 秀吉, 池津 満, 加藤 法男, 田村 正史, 山田 隆志
    2012 年 51 巻 6 号 p. 415-418
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 乳腺原発 large cell neuroendocrine carcinoma (LCNEC) は, WHO 分類で乳腺 neuroendocrine tumor (NET) の 1 亜型に分類されているまれな腫瘍である. 今回われわれは乳腺原発 LCNEC の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 71 歳, 女性. 主訴は左乳房腫瘤. 穿刺吸引細胞診標本には中∼大型で多様な形態の腫瘍細胞が孤立散在性, 弱い結合性を示す大小の集塊として多数観察され, 索状やロゼット様の配列を示す小集団も認めた. 腫瘍細胞は chromogranin A 陽性であった. 組織標本では大型の腫瘍細胞が充実性に増生し, 索状や, ロゼット様の構造, 多数の核分裂像を認め, 免疫染色で chromogranin A 陽性を示すことから LCNEC と診断された.
    結論 : 乳腺原発 LCNEC の 1 例につき, その細胞像を報告した. LCNEC の診断には細胞診標本の注意深い検討と免疫細胞染色が有用と考えられた.
  • 畑中 一仁, 久岡 正典, 井上 正年, 二反田 隆夫, 舞木 公子, 西田 ゆかり, 竹下 かおり, 梅北 善久
    2012 年 51 巻 6 号 p. 419-424
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 皮膚線維腫 (dermatofibroma, 以下 DF) は線維性組織球性の腫瘍で, 良性の経過をたどることが多いが, 非常にまれながらリンパ節や肺に転移する. DF の頸部リンパ節転移を経験したので報告する.
    症例 : 30 代, 女性. 4 年前右後頸部隆起性病変を切除. 1 年後右頸部リンパ節腫脹を認め, その 3 年後転移疑いで右頸部郭清術施行. 捺印細胞診では泡沫細胞を伴った出血性背景に紡錘形, 類円形および多角形の線維芽細胞や組織球様細胞が束状に配列した集塊を認め, 核は紡錘形∼卵円形で, クロマチン増量や異型はなく, 泡沫細胞を伴っていた. 組織学的には線維芽細胞の渦巻き状増生からなり, 細胞密度は高く, 組織球様細胞増生, 血管腔様構造を伴っていた. 免疫染色では factor XIIIa 陽性, CD34 陰性で, 融合遺伝子 COL1A1-PDGFB は認められず, DF の転移と診断した. 4 年前の右後頸部病変を確認したところ同様の所見であり, 原発と考えられた.
    結論 : リンパ節や肺の転移疑いで線維芽細胞や組織球様細胞の集塊を認めた場合, まれながら DF も鑑別の対象になる可能性があり臨床情報の確認が重要である. なお, DF の細胞像の報告は少なく, 貴重な症例と考えられた.
  • 荻 真里子, 吉井 智子, 久嶋 則行, 長谷川 匡, 本告 匡
    2012 年 51 巻 6 号 p. 425-430
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 変性子宮筋腫の診断で腫瘍核出術が施行され, 術後急速に全身転移へと進展した未分化神経外胚葉性腫瘍 (primitive neuroectodermal tumor, 以下 PNET) の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 25 歳女性, 主訴は下腹部痛. 画像上子宮体部前壁に変性筋腫様の腫瘍が認められ, 腫瘍核出術が施行された. 腫瘍は子宮筋層内に存在し, 最大径は約 7 cm であった. 組織学的には不整地図状の壊死を伴う小円形細胞腫瘍の像を呈し, ロゼット様構造や流れ様の配列がみられた. 腫瘍捺印細胞診では, 壊死性背景に N/C 比の高い小型円形細胞が孤立散在性あるいは結合の緩い小集塊で認められた. 免疫染色では腫瘍細胞の細胞膜に CD99 が強陽性を呈し, FISH 法で EWSR1 遺伝子の再構成が確認され, 腫瘍は PNET と診断された. その後急速に腹腔内進展かつ全身転移をきたし, 腹水細胞診にて腫瘍捺印細胞診と同様の異型細胞が認められた. 初回手術後 7 ヵ月現在, 他施設にて化学療法中である.
    結論 : 子宮筋層内の異様な変性筋腫様あるいは肉腫様の病変においては, PNET を鑑別疾患に加え検討することが肝要である. 子宮 PNET は非常にまれな腫瘍で, まだ不明な点も多くさらなる症例の集積が望まれる.
  • 土田 秀, 鹿沼 達哉, 神山 晴美, 布瀬川 卓也, 飯島 美砂, 中里 宜正, 小島 勝, 杉原 志朗
    2012 年 51 巻 6 号 p. 431-434
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 子宮体部混合癌は子宮体癌の特殊型に分類されるまれな腫瘍で, 本邦において細胞像の詳細な報告は少ない. 今回, 細胞診標本中に異型細胞が認められたが, 組織型の推定が困難であった 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 66 歳, 女性. 子宮頸部と内膜より採取された細胞診標本で低分化型の子宮体部腺癌が推測されたが, 子宮内膜の生検組織検査では子宮体部明細胞腺癌と診断された. 単純子宮全摘出術が施行され, 摘出された子宮の組織検査では類内膜腺癌と明細胞腺癌の混合癌であった.
    結論 : 子宮体部明細胞腺癌を含む混合癌の発生頻度は低いが, 子宮内膜細胞診標本で類内膜腺癌を推測する異型細胞に加え, 明細胞腺癌が考えられる異型細胞や異型裸核細胞が認められた場合は本症を考慮する必要があると思われた.
  • 今村 紘子, 萩原 聖子, 兼城 英輔, 矢幡 秀昭, 小川 伸二, 小林 裕明, 加来 恒壽
    2012 年 51 巻 6 号 p. 435-440
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 卵管癌はまれな婦人科悪性腫瘍で, その組織型は大部分が漿液性腺癌であり類内膜腺癌の報告は少ない. また, 卵管癌が術前に診断されることはまれで, 術前に子宮頸部細胞診異常を認めることもあると報告されている.
    症例 : 64 歳, 女性. 1 経妊 1 経産. 数日前の不正性器出血を主訴に前医を受診した. 子宮頸部および内膜細胞診で腺系の異常を認め当科を初診した. 明らかな腫瘤性病変はなく, 当科で再検した細胞診は悪性所見を認めず, 精査のため子宮頸部円錐切除術を施行するも悪性所見を認めなかった. 外来で経過観察としたが, 初診後 1 年 2 ヵ月で骨盤内に嚢胞性腫瘤を認めその 7 ヵ月後にそれに連続して充実性腫瘤が出現した. 卵管癌を疑い開腹術を行ったところ, 腫大した右卵管を認めた. 術中迅速病理検査で adenocarcinoma の結果であり卵巣癌に準じた手術を行った. 術後病理検査により endometrioid adenocarcinoma と診断した.
    結論 : 細胞診で異常な腺系細胞の出現後約 2 年経過して診断しえた, まれな卵管類内膜腺癌の 1 例を経験したので報告した. 子宮に明らかな病変を認めない細胞診異常の症例においては, 卵管癌も鑑別の一つとして念頭に置く必要がある.
  • 谷本 博利, 岡本 淳子, 大下 孝史, 本田 裕, 阪本 聖, 田中 信利, 坂谷 暁夫, 金子 真弓
    2012 年 51 巻 6 号 p. 441-445
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 卵巣 Brenner 腫瘍は組織学的に移行上皮性胞巣と線維性間質より構成されるまれな腫瘍で, 腹水中の細胞所見についての報告は少ない. 今回, 多量の腹水貯留を契機に発見された卵巣悪性 Brenner 腫瘍の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 72 歳, 女性. 10 日前より続く腹部膨満感を主訴に当院内科を受診, 多量の腹水貯留を指摘され当科紹介となり手術を施行した. 開腹時, 黄色調の漿液性腹水 7600 ml を認め, 腹腔内には播種病巣が広範囲にみられた. 右卵巣に顆粒状の腫瘍病変が存在し術後病理検査で右卵巣原発悪性 Brenner 腫瘍と診断した. 腹水細胞診では, 楕円形核を有する中型異型細胞が一定方向に流れのある配列で出現し, 核異型はやや弱く明瞭な核小体を 1 個認めた. さらに, 大きさのさまざまな異型細胞が集塊状に多数出現しており, 核には大小不同, 核形不整を認めた. そのほかにも扁平上皮化生様細胞, 細胞質内粘液を有する細胞など腹水中には種々の異型度を示す多彩な細胞が混在していた.
    結論 : 悪性 Brenner 腫瘍の組織形態は多様であり, 腹水細胞診で多彩な細胞像が観察された場合には本腫瘍を鑑別疾患として念頭に置く必要がある.
  • —捺印ならびに腹水の細胞像—
    横道 憲幸, 戸澤 晃子, 大原 樹, 星川 咲子, 小池 淳樹, 高木 正之, 木口 一成, 鈴木 直
    2012 年 51 巻 6 号 p. 446-451
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 卵巣原発の移行上皮癌は卵巣癌のなかでも比較的まれであり, 捺印細胞診や腹水細胞診について報告はあるものの, 細胞像に関する一定の見解が得られていない. 今回卵巣原発移行上皮癌の 1 例を経験し, 卵巣腫瘍捺印細胞診や腹水細胞診の特徴等に関して考察したので報告する.
    症例 : 72 歳, 女性. 半年前からの腹部腫瘤感のため受診. 臍上まで及ぶ腹部腫瘤を触知し, 画像検査上, 両側卵巣に一部充実性部分の混在する嚢胞性病変を認め, 卵巣癌疑いで開腹手術を施行した. 迅速病理診断では悪性腫瘍と診断した. 卵巣捺印細胞診では腫瘍細胞はシート状∼乳頭状の細胞集塊や裸核状を呈し, 核異型が強く, 同様に腹水細胞診では腫瘍細胞は N/C 比が高く, 結合性の強い乳頭状集塊が多数認められた. 病理組織学的に間質の浸潤を伴う尿路上皮様の異型細胞の増殖を認め, ブレンナー成分を認めず, さらに免疫染色の結果から卵巣原発移行上皮癌と診断した.
    結論 : 今回, 卵巣腫瘍捺印細胞診では表層上皮性悪性腫瘍を考えたが, 組織型の推定は困難であった. 卵巣原発移行上皮癌の細胞所見の定義は一定しておらず, その特徴を明らかにするにはさらに症例の蓄積が必要である.
短報
  • 荒木 邦夫, 足立 洋心, 福田 智
    2012 年 51 巻 6 号 p. 452-453
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    Using an intraoperative cytological procedure, we improved the diagnosis of small lung tumors showing ground grass opacity. We punctured the center of the lesion in a resected lung using an injection needle, harvested cells in the syringe, and observed the obtained cells rapidly microscopically. This technique is useful for checking whether cancer cells were contained in the resected lung without having to cut the tumor during intraoperative evaluation, which would have made it difficult to evaluate pleural or stromal invasion in the postoperative assessment of tumor aggressiveness.
  • 田上 圭二, 中川 美弥, 松岡 拓也, 松本 直子, 神尾 多喜浩
    2012 年 51 巻 6 号 p. 454-455
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    Adenoid cystic carcinoma (ACC) in the male breast is vary rare, and 9 cases have been reported in the literature. We report on a case of ACC in the male breast from the point of the cytological findings. A 58-year-old male noticed a lump measuring 40 mm in the left breast. Cytologically, the myoepithelial and epithelial cells had proliferated and formed clusters with various sizes. In the large clusters, glandular structures and ball-like structures with mucous materials were seen. Histologically, tumor cells had proliferated in the cribriform structures composed of proliferating glands and psuedoglandular elements. ACC was diagnosed based on the immunostaining results.
  • 櫻井 博文, 上垣外 明子, 保坂 典子
    2012 年 51 巻 6 号 p. 456-457
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/16
    ジャーナル フリー
    We report on a case of chordoid meningioma which is a rare histological variant of meningioma. A male in his 70’s with a calvarial tumor was admitted to our hospital. The tumor mass as assessed on computed tomography and magnetic resonance imaging was 5.0×3.0×2.5 cm. The tumor was removed. The crushed cytology showed good combination clusters, weak clusters and epithelioid cells. The tumor cells had oval or irregular nuclei, which were similar to adenocarcinoma, and a foamy cytoplasm. There were mucinous matrices at the border of the cluster. Histologically, the tumor was composed of strands, nests and lobules, surrounded by a mucinous matrix which was dyed with alcian blue at PH2. Immunohistochemically, the tumor cells were at least focally positive for epithelial membrane antigen.
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