日本臨床細胞学会雑誌
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52 巻 , 3 号
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原著
  • 久山 佳代, 松本 敬, 孫 燕, 森川 美雪, 加藤 拓, 山本 浩嗣
    2013 年 52 巻 3 号 p. 181-185
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    目的 : 口腔白板症の病理組織学的および細胞学的特徴を解析し, 興味ある知見が得られたので報告する.
    方法 : 臨床診断名が口腔白板症で, 擦過細胞診断および病理組織学的確定診断が行われた 137 例について, 病理組織学的および細胞学的に検討を加えた.
    成績 : 口腔白板症の病理組織学的内訳は, 過角化症が 75 例 (54.7%), 異形成が 44 例 (32.1%), 扁平上皮癌が 18 例 (13.1%) であった. 細胞学的に異形成は疑陽性が 45.5% (20 例/44 例), 扁平上皮癌は陽性が 16.7% (3 例/18 例) だったが疑陽性を併せると 77.8% (14 例/18 例) であった. 扁平上皮癌と確定診断された 18 例は, 病理組織学的に萎縮上皮型が 61.1% (11 例/18 例), 過角化上皮型が 16.7% (3 例/18 例), 疣贅性癌と孔道上皮癌がいずれも 11.1% (2 例/18 例) であった. 細胞学的にすべての症例に共通して細胞採取量が少なく, 角化型扁平上皮細胞の散見がみられた. 異形成や扁平上皮癌では, 弱拡大で細胞質の光輝性の亢進を伴う細胞を強拡大で確認すると, 核形不整やクロマチンの粗造化などの核異型が観察された.
    結論 : 口腔白板症の細胞診の精度の向上のために, 多彩な病態と組織学的所見を理解し, 同時に採取技術の向上の努力が求められる.
  • 内藤 嘉紀, 河原 明彦, 多比良 朋希, 山口 知彦, 安倍 秀幸, 吉富 宗宏, 岡部 義信, 安元 真希子, 鹿毛 政義, 矢野 博久
    2013 年 52 巻 3 号 p. 186-192
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 良性胆道疾患術後, 長期間 PTCD チューブを留置 (長期留置症例) した患者から採取された胆汁細胞像を検討した.
    方法 : 長期留置 5 例の胆管洗浄液細胞診 12 検体を用いて, 「貯留胆汁細胞診の細胞判定基準」を参考に細胞評価を行った. PTCD チューブ留置直後ないしは留置後 6 時間以内に採取された胆管炎 5 例 (短期留置症例) と胆管癌 5 例からの細胞を対照として用いた.
    成績 : 長期留置症例の胆管上皮の平均核面積は 24.8μm2であった. 核の大小不同は 4 検体 (33.3%) でみられ, 平均核面積は 29.8μm2であった. 一方, 核の大小不同が少ない 8 検体の平均核面積は 22.3μm2であり有意差を認めた (p<0.01). 長期留置症例は粘液背景に不規則な集塊が出現していた. 核の大小不同を伴った検体は不規則な集塊の出現に加え核形不整や核小体腫大を認めたが, 平均核面積は胆管癌例に比べ有意に小型で (p<0.01), また, 短期留置症例に比べ有意に大型であった (p<0.01).
    結論 : 長期間 PTCD チューブ留置検体は, 「貯留胆汁細胞診の細胞判定基準」を参考に, 核配列, 核形や核小体などの状態を総合的に観察することで良性と判断することが可能である.
  • 龍 あゆみ, 竹中 明美, 長田 盛典, 稲治 英生, 冨田 裕彦
    2013 年 52 巻 3 号 p. 193-199
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    目的 : 小型核を主体とする低異型度の乳管癌に対し, 良性病変との鑑別に有用な細胞所見を検討する.
    方法 : 悪性の疑いまたは鑑別困難と判定していた症例のうち, 小型核を主体とする乳管癌 37 例, および筋上皮細胞が不明瞭な細胞集塊が出現していた良性病変 13 例の計 50 例に対し, (1)双極裸核, (2)細胞集塊の重積性, (3)細胞間結合性, (4)核小体, (5)クロマチンパターン, (6)核溝の 6 項目の細胞所見についてスコア化を行い, それぞれの出現頻度を比較した. さらに統計学的有意差がみられた細胞所見に対して点数加算を行い, 乳管癌と良性病変の鑑別を試みた.
    成績 : 6 項目の細胞所見のうち, 双極裸核 (p=0.007), 核溝 (p=0.02) に統計学的有意差がみられた. 双極裸核は対物レンズ 40 倍で 1 視野あたり平均 20 個を超えるものを score 1, 6∼20 個であるものを score 2, 5 個以下であるものを score 3, 核溝は明らかでないものを score 1, 核溝がみられるものを score 2 とし, それらのスコアの合計が 4 点以上であるものを乳管癌とすると, 感度 76%, 特異度 77%, 陽性的中率 90%, 陰性的中率 53%であった.
    結論 : 低異型度乳管癌と良性病変の鑑別に, 双極裸核の数および核溝に着目し, スコア化を行うことは鑑別困難症例の減少につながると考えられた.
  • 池田 藍, 森 菊夫, 山崎 一樹, 小野 早苗, 高橋 勝美, 蛭田 道子, 吉田 京子, 浅野 重之
    2013 年 52 巻 3 号 p. 200-205
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    目的 : リンパ節ホジキンリンパ腫 (HL) を細胞学的に検討し, 組織学的亜型推定の可能性を検討した.
    方法 : 頸部リンパ節ホジキンリンパ腫 (1995 年 1 月∼2010 年 1 月 : 9 例) を対象とした. 年齢は 19∼83 歳 (男性 6 人, 女性 3 人). 穿刺吸引細胞診 7 検体, 捺印細胞診 3 検体を用いた.
    成績 : 陰性 ; 1 例, 疑陽性 ; 2 例, 陽性 ; 6 例であった. 陰性とした症例 1 は, 成熟リンパ球を背景に Hodgkin/Reed-Sternberg (HRS) 細胞がごく少数しか認められなかった. 疑陽性とした症例 2 では大型異型細胞はみられたが, 典型的な HRS 細胞が少数であった. また, 症例 3 では, 既往に腎細胞癌があり, その転移の有無に主眼をおいたため, HL の診断にはいたらなかった. 陽性とした 6 例の組織学的亜型の内訳は, 結節硬化型 (3 例), 混合細胞型 (2 例), リンパ球豊富型 (1 例) であった. なお, 各亜型に出現した細胞に有意差はみられなかったが, リンパ球の大きさや HRS 細胞の核数では亜型間に有意差が認められた.
    結論 : 細胞診では十分な数のリンパ球と明確な HRS 細胞が出現していないと, 組織学的亜型推定は困難であるが, 背景のリンパ球の大きさや HRS 細胞の核数では亜型間に有意差がみられた.
  • 勘野(石本) 真紀, 野村 英司, 杉山 範子, 堀井 恒哉, 石川 麻美, 府中 基伸, 小山内 翔祐
    2013 年 52 巻 3 号 p. 206-211
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    目的 : 術前に卵巣悪性腫瘍を疑った症例において, 腫瘍割面の捺印細胞診が術中での術式決定に応用可能かどうかを後方視的に検討した.
    方法 : 対象は卵巣悪性腫瘍を疑い当科で初回手術を施行した 49 例で, 腫瘍割面の壊死のない充実部分を数ヵ所選び捺印細胞診を採取しパパニコロウ染色を行った. 後日, 当院細胞検査士 3 名と産婦人科細胞診専門医 1 名の計 4 名でこれらの標本を後方視的に鏡検し判定した.
    成績 : 49 例のうち悪性症例は転移性卵巣腫瘍, 卵巣以外の悪性腫瘍を含め 36 例 (73.5%) で, 境界悪性腫瘍が 7 例 (14.3%), 良性腫瘍が 6 例 (12.2%) だった. 境界悪性腫瘍と悪性腫瘍 41 例中の FIGO 進行期の内訳は, I期 18 例, II期 5 例, III期 13 例, IV期 5 例であり, そのうち腹水細胞診陽性は 19 例 (46.3%) であった.
    捺印細胞診による悪性腫瘍 36 例の正診率は 100%, 良性と境界悪性腫瘍の正診率はそれぞれ 66.7%, 71.4%であった. 全症例における組織型の一致率は 65.3%であった.
    結論 : 捺印細胞診は, 腫瘍の良悪性の鑑別に有用であった. 臨床所見や腫瘍性状から総合判断することでより診断が確実になると考えられ, 今後術中の術式決定に応用可能であると思われた.
  • 鈴木 裕之, 安田 政実, 目黒 史織, 加藤 智美, 鎌倉 靖夫, 佐瀬 智子, 中村 勝, 永田 耕治, 清水 道生
    2013 年 52 巻 3 号 p. 212-217
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    目的 : われわれは卵管癌の診断における内膜細胞診の有用性について検討した.
    方法 : 外科的に切除された卵管癌 17 例を対象とし, 細胞像 (頸部, 内膜, 腹水の各細胞診), 組織像について, 種々の臨床的な因子との相関につき検討した.
    成績 : FIGO 進行期分類はIC 期 3 例, IIB 期 2 例, IIC 期 2 例, IIIC 期 8 例, IV期 2 例であった. 内膜細胞診で癌がとらえられた 5 例はいずれもIII期またはIV期症例 (うち 3 例は頸部細胞診でも陽性) であった. 腹水貯留がみられた 5 例中, 4 例は腹水細胞診陽性であった. 一方, 腹水貯留がみられなかった 9 例中, 内膜細胞診陽性は 1 例のみであった. 腫瘍径が 35 mm 以下の 6 例のうち 5 例では内膜細胞診陽性となったのに対し, 35 mm を超えた 8 例において内膜細胞診陽性例はみられなかった.
    結論 : 内膜細胞診陽性の原発性卵管癌は 35.7% (5/14) であった. 内膜細胞診陽性と関連のある因子としては, 腫瘍径, 腹水貯留, 進行期があげられた.
  • 小関 久恵, 西川 武, 竹内 真央, 田邊 雅世, 田中 京子, 山口 弘美, 武田 麻衣子, 榎本 泰典, 小林 浩, 笠井 孝彦
    2013 年 52 巻 3 号 p. 218-223
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    目的 : 婦人科子宮腟部・頸部 (以下, 移行帯), 子宮切除断端 (以下, 断端) 細胞診においての直接塗抹法 (以下, 従来法) と BD SurePathTM法との比較検討を行い, 移行帯細胞診とともに, 断端細胞診においての BD SurePathTM法の有用性を明らかにする.
    方法 : 1 ヵ月間において当院婦人科外来にて, 移行帯, 断端細胞診を施行した 433 例 (移行帯 318 例, 断端 115 例) を対象とした. 標本作製にはスプリットサンプル法を採用し, マッチドペア・盲検試験法により細胞判定を行い, 標本の適否, 背景所見の影響, 判定結果について検討を行った.
    成績 : 標本の適否については, 不適正率が移行帯, 断端ともに有意に減少した. 背景所見は, 従来法に比べ BD SurePathTM法において, 赤血球, 好中球ともに有意に減少した. 判定結果は, LSIL の判定率が移行帯, 断端ともに判定率があがった.
    結論 : 移行帯細胞診に加え, 断端細胞診においても, 従来法に比べ, BD SurePathTM法は標本の不適正率を有意に減少させ, 診断精度の向上が期待された.
  • 岡山 香里, 大河戸 光章, 熊谷 朋子, 藪崎 宏美, 吉永 陽樹, 福井 正, 藤井 雅彦
    2013 年 52 巻 3 号 p. 224-230
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    目的 : ASC-US 症例に出現していた HPV 感染を疑う細胞に注目し, 実際に HPV-DNA が存在するか否かを調べた.
    方法 : 対象は ASC-US と判定された 181 例の細胞浮遊液である. HPV の同定には PCR 法, HPV 感染細胞の同定には in situ PCR 法を用いた.
    成績 : ASC-US 症例の HPV 感染率は 91.2%であった. また HPV 感染を疑う細胞の中で, 感度, 特異度がともに高値を占めたのは非定型 koilocyte であった. in situ PCR 法で HPV-DNA を直接的に検出した結果, 非定型的 koilocyte は 88.2%, 多核細胞は 100%に HPV-DNA が認められ, 両者とも HPV 感染と有意な関係が認められた.
    結論 : 非定型的 koilocyte や多核細胞を認めた場合には, 上皮内病変の現存を留意してスクリーニングを行う必要があると考える.
症例
  • 梶山 明日香, 石井 恵理, 中川 美紀, 原 仁, 本田 智美, 池上 淳, 寺本 勝寛, 小山 敏雄
    2013 年 52 巻 3 号 p. 231-236
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    背景 : micropapillary carcinoma は乳腺, 膀胱, 卵巣, 肺, 消化管等の臓器で続々と症例が報告されている癌組織型である. 今回われわれは, micropapillary pattern を有する子宮頸部腺癌の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 87 歳, 女性. 不正性器出血を主訴に前医を受診し子宮頸部細胞診で adenocarcinoma と診断した. 子宮頸部組織診を行うと, 間質に囲まれた空間に癌胞巣が浮遊するような構造がみられ, 免疫組織化学染色からは上皮の極性の逆転を確認し, micropapillary pattern と判定しえた. 画像からは, 好発部位である肺癌や膀胱癌, 卵巣癌からの転移の可能性は乏しく子宮頸癌由来であると考えられた. 細胞診を再鏡検したところ, 少数の細胞が集塊をなし散在する所見が観察された. CT 検査では多発リンパ節転移を認め, 内診所見と画像検査から子宮頸癌 cT3bN1M1, Stage IVb と診断し, 放射線治療を施行するも, 呼吸状態の悪化により死亡した.
    結論 : 子宮頸癌では, 細胞像の観察や組織診断時に予後不良な腺癌組織の特徴として micropapillary pattern を念頭におくことが必要と考えられた.
  • 山口 直則, 今村 好章, 河田 尚子, 太田 諒, 岸本 光夫
    2013 年 52 巻 3 号 p. 237-241
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    背景 : 悪性腎類上皮血管筋脂肪腫の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 48 歳, 女性. 肉眼的血尿を主訴に来院し, 腹部 MRI にて右腎上極に辺縁平滑な造影効果の乏しい約 4.5 cm 大の腫瘤を指摘され, 腹腔鏡下右腎摘除術が施行された. 結節性硬化症の合併や悪性黒色腫の既往はない. 腫瘍捺印細胞診標本では多形性に富む異型類上皮細胞が認められた. 大型の核小体や核内封入体に加え, 異常核分裂像も観察された. 細胞質は比較的豊富で, 顆粒状を呈していた. 免疫細胞化学的に腫瘍細胞は melanosome と Melan-A に陽性を示した. 組織学的には好酸性の豊富な細胞質をもつ大型多稜形類上皮細胞が髄様に増生していた. 硝子化した血管成分が混在し, 凝固壊死や静脈侵襲が確認された. 免疫組織化学的にはメラノサイトや筋原性のマーカーが陽性で, S-100 蛋白および上皮性マーカーは陰性であった. 術後, 多発性肺転移が確認され, 悪性腎類上皮血管筋脂肪腫と考えられた.
    結論 : 本例の捺印細胞診では腎細胞癌亜型や悪性黒色腫などとの鑑別が問題となるが, 顆粒状細胞質を有する類上皮細胞が主体で, 細胞の多形性が目立つ場合は腎類上皮血管筋脂肪腫を念頭におき, 免疫細胞化学的検索を積極的に実施することが, 早期診断への糸口となると考えられた.
  • 目黒 史織, 安田 政実, 細沼 佑介, 加藤 智美, 中村 勝, 鎌倉 靖夫, 永田 耕治, 清水 道生
    2013 年 52 巻 3 号 p. 242-247
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    背景 : 顆粒膜細胞腫は卵巣の性索間質性腫瘍の代表的な組織型で, ホルモン産生腫瘍として知られている. 日常診断において顆粒膜細胞腫に遭遇する頻度は少なくはないものの, 腹水に出現した顆粒膜細胞腫の細胞像をみる機会はまれと考えられる. われわれは腹水細胞診陽性であった成人型顆粒膜細胞腫を 3 例経験し, その細胞像を比較検討した.
    症例 1 : 46 歳, 女性. 両側卵巣上皮性悪性腫瘍疑い. 術中迅速腹水細胞診では類円形の核を有する N/C 比の高い異型細胞のシート状集塊が認められた. 腫瘍細胞と考えられたが組織型の推定は困難であった.
    症例 2 : 70 歳, 女性. 右卵巣上皮性悪性腫瘍疑い. 腹水細胞診では異型細胞のマリモ状集塊が認められ腺癌と診断された.
    症例 3 : 36 歳, 女性. 右卵巣子宮内膜症性嚢胞疑い. 腹水細胞診では少量の異型細胞が認められたが診断は困難であった.
    結論 : 腹水中の成人型顆粒膜細胞腫の腫瘍細胞には, 類円形の核, 微細∼粗顆粒状のクロマチン, 高い N/C 比, 多彩な構築といった細胞像が見出された. 腺癌や内分泌腫瘍との鑑別には, 細胞の大きさや形が均一で, クロマチン増量は目立たず, 単調に出現している点がポイントになると考えられた.
  • 片渕 達也, 徳永 英博, 田上 さやか, 石原 光浩, 下田 環, 本田 由美, 猪山 賢一
    2013 年 52 巻 3 号 p. 248-252
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    背景 : エクリン汗孔癌はまれな皮膚悪性腫瘍であり, われわれが調べえたかぎりでは胸腔内播種を伴った症例の報告はない. 今回われわれは, 胸水中に腫瘍細胞の出現を認めたエクリン汗孔癌を経験したので, その細胞像について報告する.
    症例 : 80 歳, 女性. 6 ヵ月前に下腹部皮膚のエクリン汗孔癌を切除された. 3 ヵ月前より発熱と呼吸苦および胸水貯留が出現したため胸水細胞診が施行された. 胸水中の異型細胞は炎症細胞を背景として形態学的に明らかに中皮細胞や肺腺癌細胞と異なる大型の腫瘍細胞の集塊を認め, 確定診断のためにセルブロックを作製して免疫染色を施行した. 臨床経過および皮膚原発腫瘍との免疫染色結果を比較検討し, エクリン汗孔癌の胸腔播種と診断した. 胸水中の癌細胞の一部は核が偏在性で, Cytokeratin 7 (CK7) および CK19 が陽性の細胞質内封入体様構造物を認めた.
    結論 : きわめてまれな皮膚エクリン汗孔癌の胸腔内播種を経験した. 胸水中の癌細胞には特徴的な封入体様構造物を認めた. 確定診断にはセルブロックによる免疫染色が有用であった.
  • 古村 祐紀, 内田 好明, 阿部 香織, 新発田 雅晴, 安田 真大, 斉藤 仁昭, 飯嶋 達生, 井村 穣二
    2013 年 52 巻 3 号 p. 253-258
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
    ジャーナル 認証あり
    背景 : 神経内分泌腫瘍の一つである小細胞癌は全身各臓器に発生することが知られているが, 尿路系での発生は比較的まれである. 今回, 尿中に腫瘍細胞が出現した尿路原発の小細胞癌の 2 例を経験したので報告する.
    症例 : 症例 1 は 70 歳代, 女性. 右背部痛を主訴に来院, 自然尿中に孤立散在性から一部に木目込み細工様配列を示す小集塊で出現する裸核状, 微細顆粒状のクロマチンを有する異型細胞を認めた. 症例 2 は 80 歳代, 男性. 無症候性肉眼的血尿にて来院し, 尿細胞診にて, 壊死性背景の中に小型で N/C 比が高く, 核形不整, クロマチン増量と光輝性核小体を有する異型細胞を認めた. 両症例とも組織学的には狭小な細胞質を有し, 濃染性の核を有する小型の腫瘍細胞が密在し, 小細胞癌と診断した.
    結論 : 尿路系での小細胞癌の発生はまれであり, それらの報告もきわめて少ない. 要因として, 腫瘍細胞の特徴像に乏しいこともあげられる. しかし小細胞癌は予後の悪い腫瘍であり, 早期の発見, 治療が重要な症例である. 尿細胞診などでより早い段階で鑑別することができれば, 非常に有用なものとなる. 小細胞癌の正確な細胞像を理解し, 的確な診断をすることが肝要である.
  • 木原 淳, 荒井 政和, 牛島 友則, 郡司 真理子, 村田 建一郎, 福島 純一, 堀内 啓
    2013 年 52 巻 3 号 p. 259-264
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    背景 : 軟骨芽細胞腫は若年者の長管骨骨端部に好発する良性骨腫瘍である. 側頭骨発生の軟骨芽細胞腫はまれで, 細胞像の報告例は限られている.
    症例 : 症例 1 は 50 歳男性. 1.5 cm 大の左側頭骨腫瘤に対して穿刺吸引細胞診および生検術が行われるも診断にいたらなかった. 部分切除術が行われ病理学的に軟骨芽細胞腫と診断された. 残存腫瘍の増大に対し再摘出術が行われ捺印細胞診を施行した. 穿刺吸引細胞診と捺印細胞診のいずれにも清明な背景に多数の類円形単核細胞と破骨細胞型多核巨細胞が出現していた. 単核細胞の核は類円形または楕円形で, 括れや核溝を有する核も認められた. 細胞質はライトグリーン好性で境界明瞭だった. 症例 2 は 58 歳男性. 2 cm 大の右側頭骨腫瘤の摘出術の際に捺印細胞診を行った. 症例 1 と同様の単核細胞と破骨細胞型多核巨細胞の出現のほかに, Giemsa 染色でメタクロマジーを示す細胞外基質も認められた.
    結論 : 単核細胞と破骨細胞型多核巨細胞からなる側頭骨病変には軟骨芽細胞腫を含め多くの鑑別疾患があがる. 臨床所見や画像検査に加え, 特徴的な軟骨芽細胞やメタクロマジーを示す細胞外基質などの細胞診所見が鑑別に有用である.
短報
  • 相原 久美子, 前川原 貴美子, 松木 由法, 藤井 晶子, 森 正也
    2013 年 52 巻 3 号 p. 265-266
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
    ジャーナル 認証あり
    Making a cytologic diagnosis of basal cell adenocarcinoma (BCAC) of the salivary gland is difficult due to the similarity of its morphologic features to other benign and malignant tumors of the salivary glands. Morphometric analysis revealed that the average minimum diameter of the nuclei of BCAC was significantly wider than that of basal cell adenoma (BCA). BCAC was associated with a higher nuclear circularity compared with BCA. Our case report shows that roundness of the nuclei, formation of a palisading pattern, and presence of a basement membrane-like material in fine-needle aspiration specimens could lead to a specific diagnosis of BCAC.
  • 長田 憲和
    2013 年 52 巻 3 号 p. 267-268
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
    ジャーナル 認証あり
    We report herein on a case of cutaneous apocrine carcinoma, a rare malignant tumor of the skin, arising in the axilla of a 72-year-old female. Aspiration cytology showed tumor cells with abundant cytoplasm and decapitation secretion, arranged in papillary, tubular and solid patterns. Although cytological atypia was weak, the lack of myoepithelial cells and the presence of pair cells suggested malignancy. In this case, it was difficult to determine the presence or absence of malignancy, since the tumor was a well differentiated type (low grade) as shown by the histopathological findings.
  • 木下 真由美, 浜島 裕理, 平石 美奈, 沢辺 元司, 新井 冨生
    2013 年 52 巻 3 号 p. 269-270
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
    ジャーナル 認証あり
    We report herein on a case of spontaneous perforation of the esophagus (Boerhaave’s syndrome) in a 61-year-old man. The pleural effusion specimen was a dirty dark brown liquid and the cytological findings showed scattered orangeophilic superficial or intermediate squamous epithelial cells without atypia as well as bacteria and food in the inflamed pleural effusion. These findings indicated the possibility of an esophageal perforation. Quick diagnosis may improve the survival rate of this disease. Both pathologists and cytologists should pay close attention to dirty black pleural effusion which contains superficial or intermediate squamous cells without atypia.
  • 大竹 賢太郎, 齊尾 征直, 黒島 義克, 安里 良子, 吉見 直己
    2013 年 52 巻 3 号 p. 271-272
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
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    We examined how to improve the cell recovery for cell block preparations using cervical liquid-based cytology (LBC) samples. Forty cases of both NILM and LSIL, respectively, were split into three groups and three different cell block preparation methods were applied such as nylon mesh, OCT compound and cotton. The total cell number (isolated cells and cells in cell clusters) and the incidence of cases with large clusters (≥50 cells) in specimens were counted. We found that the cotton method, by which clusters were significantly recovered, was better than the others. The cotton method is a useful tool for cell recovery in block preparations from LBC samples.
  • 政岡 秀彦, 佐々木 惇, 村田 晋一, 安田 政実, 清水 道生
    2013 年 52 巻 3 号 p. 273-274
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/29
    ジャーナル 認証あり
    We report herein on a case of prostatic duct adenocarcinoma in a 74-year-old man, who presented with urinary retention. A cytology specimen obtained by catheterization showed loose clusters or aggregates composed of small round to oval cells. These cells revealed fine chromatin with prominent nucleoli. A TUR-P specimen revealed adenocarcinoma with a papillary pattern. The immunohistochemical analysis revealed that these tumor cells were positive for PSA and PAP. Although it is rare, prostatic duct adenocarcinoma cells can be observed in urine specimens, therefore it should be kept in mind as a differential diagnosis. In addition, immunohistochemistry may be useful for such differential diagnoses.
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