日本臨床細胞学会雑誌
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54 巻 , 2 号
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原著
  • 鈴木 奈緒子, 坂本 穆彦, 小松 京子, 藤山 淳三, 古田 則行, 戸田 和寿, 元井 紀子, 杉山 裕子
    2015 年 54 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
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    目的 : 「甲状腺癌取扱い規約」では「適正」と判断される囊胞が, ベセスダシステムでは「不適正」とされる. 本研究では甲状腺細胞診の自験例から囊胞成分を認める例を抽出し, 検討した. 囊胞を「適正」とすべきか「不適正」とすべきかの議論の一助としたい.
    方法 : 2010~2012 年に, 当院にて施行された甲状腺穿刺吸引細胞診および他院借用標本再鏡検例を対象とした.
    成績 : 対象 1457 例中 231 例 (15.9%) に囊胞所見がみられた. このうち 53 例 (23.0%) はベセスダシステムでは「不適正」と判定された. 「取扱い規約」において囊胞所見を伴った正常または良性とされた例の 12.0%は手術され, 良性が 64.7%, 悪性が 35.3%であった.
    結論 : 判定基準を「取扱い規約」からベセスダシステムに移行することで生じる違いは, 以下の 3 点と考えられた. ①囊胞性病変の分だけ「不適正」症例の占める率が上がる. ②囊胞成分のみで「不適正」と判定された例も画像所見を加味して判断するので, 臨床的意義のない再検が増えるおそれはない. ③囊胞成分のみの例を「良性」としないことで, 囊胞性乳頭癌が偽陰性に判定される危険性は減る.
  • 小穴 良保, 前田 一郎, 福島 美由紀, 津川 浩一郎, 高木 正之
    2015 年 54 巻 2 号 p. 107-113
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 穿刺吸引細胞診 (FNAC) で, 重積を伴う細胞集塊をみる疾患として良性では乳管内乳頭腫 (IDP), 悪性では非浸潤性乳管癌 (DCIS) があり, 両者は鑑別が困難なことが知られている. 本研究の目的は, FNAC で「鑑別困難」と判定され, 最終病理診断が IDP と DCIS とされた FNAC 標本を用いて, 抗 CK14 抗体と抗 p63 抗体のカクテル抗体 (以下 CK14/p63) の免疫細胞化学を施行し, IDP の重積を伴う細胞集塊の染色性を確認し, CK14/p63 が IDP と DCIS の鑑別に有用かを検討することである.
    方法 : FNAC で「鑑別困難」と判定され, 組織検体で IDP, DCIS と診断した各 10 例を対象とした. 20 例に対し CK14/p63 の免疫組織化学を施行し, 抗 CK14 抗体モザイク状陽性の有無, 抗 p63 抗体陽性細胞数の量の比較検討を行った.
    成績 : 抗 CK14 抗体で, IDP 全症例および DCIS 1 例で重積を伴う上皮細胞集塊にモザイク状陽性が確認された. また, IDP, 5 例では抗 p63 抗体陽性の筋上皮細胞が中等度~多数確認できた.
    結論 : IDP と DCIS の鑑別に対して, CK14/p63 抗体の二重染色は有効な検査法である.
  • 近藤 英司, 高橋 顕雅, 宇佐美 知香, 山本 阿紀子, 野村 秀高, 的田 眞紀, 岡本 三四郎, 尾松 公平, 杉山 裕子, 竹島 信 ...
    2015 年 54 巻 2 号 p. 114-118
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル 認証あり
    目的 : 子宮頸部上皮内腺癌 (AIS) と診断確定した症例の術前細胞診の診断精度を後方視的に検討した.
    方法 : 2005~2012 年, 円錐切除術または子宮全摘出術で AIS と病理組織で確定診断した 65 例を対象とした. 13 例は従来法に加え液状化検体細胞診でも判定した.
    成績 : 術前細胞診の結果は, NILM 3 例, ASC-US 2 例, LSIL 1 例, ASC-H 1 例, AGC 5 例, HSIL 7 例, HSIL (CIS) 8 例, AIS 16 例, SCC 1 例, ADC 21 例. 術前細胞診上 AIS と診断されたのは 16 例であり 24.6%にすぎず, 特に 7 例 (10.7%) が HSIL (moderate) 以下と判定され, 過小評価であった. LBC 法でも AIS の正診率は従来法と変わらなかった. 術前組織診にて, 高度異形成以上または AIS 以上と診断なく, 円錐切除術を施行した症例は 11 例 (16.9%) あり, このうち 7 例で AGC が 1~2 年持続していた.
    結論 : AIS の細胞診の診断は困難で慎重な対応が必要である. AGC が持続する場合, HPV タイピング検査と診断確定のために円錐切除術を考慮すべきと考えられた.
調査報告
  • 須賀 恵美子, 生沼 利倫, 吉川 徹
    2015 年 54 巻 2 号 p. 119-127
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
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    目的 : 細胞診従事者のメンタルヘルスに着眼し, 職業性ストレスの特徴とその対策を検討する.
    方法 : 2012 年 1~4 月までの期間中, 細胞診関係者 503 名に対して, 職業性ストレス簡易調査票とコーピング特性簡易尺度, および自由記述からなるアンケート調査を実施した.
    成績 : 細胞検査士は「仕事の量」, 病理技師は「仕事の質」, 医師は「家族・友人サポート」, 事務職は「仕事コントロール度」などのストレス要因に有意差を認めた. その対処・克服方法として, 細胞検査士は「気分転換」, 病理技師は「相談」, 医師は「視点の転換」, 事務職はすべての方法を満遍なく利用するという特徴がみられた. また「強度のストレス経験」は, 職種間に有意差を認めなかった.
    結論 : 職種により異なる種類のストレスや対処・克服方法をもつことがわかった. 結果の活用は業務の発展に有益と考え, 継続的研究の必要性が示唆された.
  • 中田 聡子, 湊 宏, 寺内 利恵, 三輪 有香子, 黒瀬 望, 中野 万里子, 野島 孝之
    2015 年 54 巻 2 号 p. 128-134
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
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    目的 : 北陸地方での液状化細胞診 (LBC) の普及状況を調査し, 現状と利点・問題点を明らかにした.
    方法 : 北陸地方の 63 施設を対象に, 郵送によるアンケート調査を行った.
    成績 : 回収率は 83%で, 北陸全体の LBC 導入率は 51% (23/45 施設) であった. 県別では富山 25%, 石川 65%, 福井 67%, 施設種別では検査センター67%, 大学病院 50%, 一般病院 47%であった. 導入動機は細胞検査士の要望が最多であった. 方法は, SurePath が 17, ThinPrep が 5, LBC Prep が 2, TACAS が 2 で, 用手法が 17, 自動機は 10 であった. LBC 標本作製時間は, 平均で 2.4 倍長く, 従来法より短い 3 施設では自動機が導入されていた. スクリーニング時間は, 平均で従来法の 50%に短縮されていた. LBC 導入前の鏡検トレーニングは 78%で行われた. 導入後に感じた利点はスクリーニングの負担軽減, 診断精度向上, 問題点はコスト, 標本作製の手間, 細胞形態の評価が多かった.
    結論 : LBC は北陸でも少しずつ浸透してきているが, その普及には経済的な支援や学術面での判定基準の標準化が主な問題となっていると考えられた.
症例
  • 鈴木 郁美, 國井 徹, 狩野 正昭, 刑部 光正, 前田 邦彦
    2015 年 54 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
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    背景 : 悪性リンパ腫の細胞像は, 細胞接着性に乏しく均一な細胞が出現するとされているが, まれに, 細胞接着性を示すことがあり, 癌腫との鑑別が問題となることがある. 今回われわれは, 免疫化学的検討を用いて診断しえた細胞接着性を示す diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) を経験した.
    症例 : 89 歳, 女性. 右腋窩部腫瘤を自覚し, 乳癌のリンパ節転移が疑われたが, 乳房内には病変を認めなかった. 腫瘤の穿刺吸引細胞診が行われ, 大型の異型細胞が多数みられた. これらは比較的高い細胞接着性を示したが, 組織型の断定にはいたらず, 切除生検が行われた. 組織診では大型の異型細胞がびまん性増殖を示した. 免疫細胞・組織化学的検討にて, 異型細胞には AE1/AE3, HMB45 の発現は認めず, 一方, CD5, CD20, CD79a の発現を認めたことから CD5-postive, DLBCL と診断された.
    結論 : 細胞接着性を示すことは, 悪性リンパ腫を完全に否定する根拠とはならず, 異型細胞が比較的高い細胞接着性を示した場合でも, 悪性リンパ腫も鑑別の一つとしてあげ, 必要に応じて免疫化学的検討を行うべきと思われた.
  • 大塲 加央里, 清水 進一, 山田 真人, 赤澤 康弘, 土戸 景子, 石原 冬馬, 大月 寛郎, 小林 寛
    2015 年 54 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
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    背景 : 唾液腺基底細胞腺癌は低悪性度腫瘍であり, 遠隔転移は比較的まれと考えられている. 今回肝転移および腹膜播種をきたし, 腹水中に腫瘍細胞が出現した本腫瘍の 1 例を経験したので, その細胞像を報告する.
    症例 : 60 歳代, 男性. 画像的に多発肝転移, 腹膜播種による腹水貯留や腸閉塞, 水腎症を認めたが, 原発巣は不明であった. 腹水細胞診および肝生検, 小腸切除が施行された. 腹水細胞診では中~大型の結合性の強い細胞集塊が多数みられ, 一部腺腔様構造や集塊辺縁に柵状配列を認めた. 個々の腫瘍細胞は比較的均一で, 核小体も不明瞭であるが, 細胞は中等大, N/C 比が高く, 核分裂像は集塊部で数視野に 1 個程度認めた. 腺癌を考えたが, 原発巣は特定できなかった. 肝生検, 小腸部分切除検体の組織学的検索では唾液腺基底細胞腺癌あるいは食道や肺などの類基底細胞癌の転移の可能性が示唆され, その後の検索で左顎下腺に原発性病変が確認された.
    結論 : 本例では腹水細胞診で組織型, 原発巣の推定は困難であったが, 臨床所見や本腫瘍に特徴的な細胞所見に注意を払い, 本腫瘍が腹腔内に転移する可能性があることを認識することが, 正確な細胞診断を行ううえで重要である.
  • 山口 直則, 益澤 尚子, 今村 好章, 松居 由香, 岸本 光夫
    2015 年 54 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
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    背景 : 淡明細胞型肝内胆管癌は淡明な細胞からなる肝内胆管癌の特殊型で極めてまれである. 今回, その 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 63 歳, 女性. 腹痛を主訴に来院し, 造影 CT にて肝右葉に早期相で不均一に濃染する約 6 cm 大の多結節状腫瘤を指摘され, 肝右葉切除術が施行された. 捺印細胞診では偏在した不整形核と腫大した核小体をもつ腫瘍細胞がみられた. 核溝や核内細胞質封入体がみられ, 細胞質は明調な微小空胞状であった. 免疫細胞化学で CD56 と adipophilin が陽性であった. 組織像では淡明な胞体をもつ異型細胞が主に乳頭管状構造を呈して増生していた. 免疫組織化学では CK7, CK19, EMA, CD56, adipophilin が陽性であった. 電顕では細胞質内に脂肪滴とグリゴーゲン顆粒が多数観察された. 術後 1 年で, 両肺と肝に多発転移巣が確認された.
    結論 : 細胞像の報告はみられないが, 明調な微小空胞状の細胞質と核小体の目立つ偏在核という特徴的所見を認識できれば細胞診断は可能である. さらに adipophilin や CD56 を含む免疫細胞化学の結果が他の淡明細胞型の腫瘍との鑑別において重要な手がかりとなると考えた.
  • 成富 真理, 畠 榮, 物部 泰昌, 高須賀 博久, 日野 寛子
    2015 年 54 巻 2 号 p. 153-157
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
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    背景 : 甲状腺穿刺吸引細胞診で, 大型細胞, 核形不整, 核内細胞質封入体がみられ, 乳頭癌との鑑別に苦慮した腺腫様結節の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 60 歳代, 男性. 検診で左甲状腺腫瘤を指摘され当院受診. 超音波で左葉上極に分葉状腫瘤を認め, 乳頭癌あるいは腺腫様甲状腺腫を疑い, 穿刺吸引細胞診が施行された. 組織球を背景に, 濾胞上皮細胞が大~小集塊でシート状に出現していた. 一部の集塊では, 大型細胞や核の大小不同, 核形不整が認められた. また, 核内細胞質封入体や核溝もみられ, 乳頭癌の疑いとした. 後日, 左甲状腺切除術が施行された. 腫瘤は甲状腺左葉上極に認め, 割面は線維性被膜に覆われた境界明瞭な淡褐色調で, 7×5 mm 大の小結節病変であった. 結節は大小の濾胞の密な増殖よりなり, 大部分は異型に乏しく, ところどころで大型核や核内細胞質封入体, 核溝を有する異型な濾胞上皮が存在した. 異型を有する腺腫様結節と診断した.
    結論 : 腺腫様結節でも, 本例のように大型細胞や核形不整, 核内細胞質封入体などの異型がみられ, 乳頭癌と鑑別に苦慮する症例がある. まれではあるが, 腺腫様結節と乳頭癌が合併することもあり, 慎重な細胞診断が必要と考えられた.
  • 赤股 宜子, 山崎 龍王, 黒須 博之, 矢野 亮, 小林 織恵, 大田 昌治, 小林 弥生子, 梅澤 聡
    2015 年 54 巻 2 号 p. 158-163
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル 認証あり
    背景 : 妊婦に浸潤性子宮頸癌が合併する頻度は 0.06~0.41%と報告されている. 今回, 妊娠初期には LSIL であったにもかかわらず, 妊娠中期の不正出血の精査にて進行子宮頸癌と判明した症例を経験したので報告する.
    症例 : 32 歳, 0 経妊 0 経産. 自然妊娠. 妊娠 10 週での子宮頸部細胞診では LSIL, 妊娠 22 週の細胞診では HSIL であった. 妊娠 29 週に性器出血のため当科紹介となった際の細胞診は SCC, 狙い組織診でも浸潤性扁平上皮癌と判明し, 子宮頸癌 FIGOIIA 期の診断にて, 妊娠 31 週にて帝王切開と広汎子宮全摘出術を施行した.
    結論 : 進行子宮頸癌を合併した妊婦の頻度は 0.41%と報告されている. 妊娠中の細胞診は, 妊婦に特徴的な頸管粘液の増加や炎症および採取器具などによる出血などのため, 判定できる細胞数が少なくなり, 推定病変が under diagnosis になる傾向がある. 妊娠中でも, 浸潤癌を否定するために, 子宮腟部の確実な擦過を心がけ, 異常症例ではコルポスコピーを施行すべきである. 症例に応じて組織生検など, 精査および厳重な管理が必要である.
  • Masayuki SHINTAKU, Kyosuke WADA, Tomoko WAKASA, Yuka MISE
    2015 年 54 巻 2 号 p. 164-169
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/05/22
    ジャーナル 認証あり
    背景 : 高カルシウム血症を伴う卵巣小細胞癌は, 若年女性にまれに発生する細胞起源不明の高悪性度腫瘍であるが, その細胞像についての報告は少ない.
    症例 : 39 歳, 女性. 腹部腫瘤を自覚して受診. 左卵巣に径約 18 cm の腫瘍を認め, 子宮ならびに両側付属器摘出術を施行したが, 術後 24 日肺塞栓症のため死亡された. 術前の血清カルシウム値は 10.8 mg/dl. 術中の腹水細胞診, 摘出腫瘍割面の捺印細胞診では, 結合性の乏しい小型類円形~多角形細胞がシート状に増殖. 核細胞質比は高いが, 核クロマチンは淡明. 核膜の不規則な肥厚を散見し, 小型核小体を認めた. 細胞質はレース状でライトグリーンに淡染し, 核に接して硝子様封入体を認める細胞もあった. 組織学的には小型細胞の密なびまん性増殖よりなる腫瘍で, 濾胞状構造, 大型異型細胞の増殖巣も混在していた. 免疫組織化学的に腫瘍細胞は vimentin, cytokeratin 陽性であった.
    結論 : 高カルシウム血症型卵巣小細胞癌の細胞像は特異的所見に乏しく, dysgerminoma, 悪性リンパ腫などとの鑑別は細胞像のみからでは困難であり, 臨床像, 免疫組織化学所見などを総合して判定を下す必要がある.
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