日本臨床細胞学会雑誌
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54 巻, 3 号
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原著
  • 土田 秀, 神山 晴美, 中里 宜正, 布瀬川 卓也, 山崎 真美, 飯島 美砂, 鹿沼 達哉, 小島 勝
    2015 年 54 巻 3 号 p. 187-191
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/17
    ジャーナル フリー
    目的 : これまでに ALK 陽性肺癌の特徴的な組織所見が報告されているので, 細胞所見について検討を行った.
    方法 : 肺腺癌で ALK 融合遺伝子が検索され, 細胞診標本の検討が可能であった 46 例の 48 検体を用い, ALK 陽性群と ALK 陰性群で細胞所見などの比較を行った.
    成績 : ALK 陽性群は捺印標本では集塊で出現し, 細胞質に粘液を含む細胞や印環細胞が認められた. 核は全体的に小型で核形不整は軽度~中等度であったが, 少数の大型細胞が混在していた. また, 体腔液検体で作製した標本では ALK 陽性群は集塊を形成する細胞数が多く大型集塊であった.
    結論 : 細胞所見のみで ALK 融合遺伝子の有無を判定することは困難であるが, 捺印標本で粘液産生性細胞や印環細胞の出現に加え, 明瞭な核小体を有する小型異型細胞を主体に, 大型異型細胞が混在している場合や体腔液標本で大型の細胞集塊を認めた場合には, ALK 陽性肺癌の可能性を考慮する必要があると思われた.
  • 水野 圭子, 和田 有加里, 井上 香, 小原 昌彦, 黒田 直人
    2015 年 54 巻 3 号 p. 192-195
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/17
    ジャーナル フリー
    目的 : IMP3 は癌胎児性蛋白として知られ, 最近, 女性生殖器における漿液性腺癌の有用なマーカーとして知られているが, 細胞診での検討の報告はなく, 今回われわれは細胞診検体で検討した.
    方法 : 体腔液および子宮内膜の漿液性腺癌 5 例と類内膜腺癌の 4 例について ER, PgR, IMP3, P16 について免疫細胞化学的に検討を行った.
    成績 : IMP3 は漿液性腺癌で全例にびまん性に細胞質に陽性を示したが, 類内膜腺癌では全例陰性であった. また P16 は漿液性線癌で全例陽性であった. PgR は漿液性腺癌と類内膜腺癌の全例で核に陽性を示し, ER は漿液性腺癌の 1 例と類内膜腺癌の 4 例で核に陽性を示した.
    結論 : IMP3 では細胞診検体でも漿液性腺癌を推定するのに有用なマーカーといえ, IMP3/P16 の組み合わせが漿液性腺癌と類内膜腺癌を鑑別するのに有用なマーカーではないかと思われた.
  • 衣笠 万里, 辻本 直樹, 瀬井 歩, 湧谷 純
    2015 年 54 巻 3 号 p. 196-204
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/17
    ジャーナル フリー
    目的 : 異所性妊娠と流産との鑑別診断における子宮内容物の細胞診の有用性について検討した.
    方法 : 正常妊娠の可能性は否定されたが, 異所性妊娠と流産との鑑別が困難であった 28 例に対して, 子宮内容吸引除去術で得られた検体からの捺印細胞診 (24 例) または内膜擦過細胞診 (4 例) を実施した. 標本上に合胞体栄養膜細胞 (ST) が確認されれば陽性, すなわち流産と判定し, 陰性の場合には異所性妊娠あるいは完全流産と判定した.
    成績 : 最終的に流産と確定した 13 例のうち 10 例が細胞診検査で ST 陽性と判定され, その後ヒト絨毛性ゴナドトロピン値の急速な下降が確認された. そのうち 2 例は組織診で絨毛成分が確認されず, 細胞診が子宮内の妊娠を示唆する唯一の所見であった. ST 陰性であった 3 例は検査前から出血が多く, その後に完全流産と診断された. 異所性妊娠と診断された 15 例は手術またはメトトレキサート投与により治療された. そのうち 14 例は ST 陰性であり, 1 例は当初 ST 陽性と判定されたが, 再検鏡では陰性となった. 細胞診の正診率は 86%, 組織診との一致率は 88%であった.
    結論 : 子宮内容物の細胞診は異所性妊娠と流産との鑑別に有用である.
症例
  • 亀田 夕貴, 新森 栄一郎, 伊藤 栄作, 根木 真理子, 関根 正喜, 中嶋 裕, 明石 巧, 江石 義信
    2015 年 54 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/17
    ジャーナル フリー
    背景 : 類上皮血管内皮腫 (epithelioid hemangioendothelioma : EHE) は, 血管内皮由来への分化を示すまれな非上皮性 (低) 悪性腫瘍であり, 好発部位は骨軟部・肝臓である. 今回われわれは骨原発巣の手術後に胸膜転移・胸水貯留をきたし胸水穿刺細胞診で EHE と診断可能であった症例を経験した.
    症例 : 70 歳代, 女性. 右足立方骨部痛で発症. MRI にて骨腫瘍を認め, 針生検による組織診で EHE と診断され切除術を施行した. 術後 2 年で胸水貯留と胸膜肥厚を認め, 胸水穿刺細胞診, 胸膜生検を施行した. 細胞所見では腫瘍細胞の核は偏在性で, 著明な核異型を認めた. 胞体には空胞を認めた. 免疫細胞染色では CD31, CD34 が陽性であり, 既往歴と併せて EHE と診断した. 組織所見では大小不同の核と好酸性胞体をもつ腫瘍細胞がみられ, 胞体に空胞を有し印環細胞様にみえる細胞も存在した. 免疫組織染色では CD31, CD34 が陽性で EHE の胸膜内転移と確定診断された.
    結論 : 胸水中に出現する EHE 細胞は, 低分化腺癌や悪性中皮腫等と鑑別を要するが, 臨床所見および免疫染色による検討結果と併せることで組織型の推定が可能である.
  • 上島 千春, 杉口 俊, 寺畑 信太郎, 石倉 宗浩
    2015 年 54 巻 3 号 p. 210-215
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/17
    ジャーナル フリー
    背景 : 今回われわれは性交未経験の若年女性に発症した子宮頸部粘液性腺癌の 1 例を経験したので, その細胞診所見, 組織所見の特徴を含めて報告する.
    症例 : 16 歳, 性交経験なし. 過多月経と不正性器出血のため近医で加療されていたが, 大量の性器出血を認め当院に救急搬送となった. 腟鏡診で子宮腟部は腫瘍に置換されており, 骨盤 MRI では子宮頸部に最大径 6 cm の腫瘤を認めた. 子宮腟部擦過細胞診では乳頭状~篩状構造を示す異型細胞集塊を認め腺癌と判定し, 生検でも腺癌と診断した. 子宮頸部腺癌ⅠB2 期の術前診断で広汎子宮全摘術+両側付属器切除術+骨盤リンパ節郭清術を施行した. 組織学的には子宮頸部の腟側は主として乳頭状増殖を認め, 内頸部側では明調な胞体を有する管状構造を主体とした腺癌で, 両者は連続移行していた. 管状増殖部分は MUC6 陽性で胃型形質を発現していた. また骨盤リンパ節に転移を認めた. 術後化学療法を行ったが再発し, 手術から 1 年 4 ヵ月で永眠した.
    結論 : 胃型形質をもつ子宮頸部粘液性腺癌は HPV 非依存性で予後不良と報告されており, 性器出血が持続する場合は若年女性であっても病理学的検査が必要である.
  • 加藤 智美, 矢島 沙紀, 佐瀬 智子, 鎌倉 靖夫, 清水 道生, 今井 雄一, 安田 政実
    2015 年 54 巻 3 号 p. 216-220
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/17
    ジャーナル フリー
    背景 : 子宮内膜細胞診 (以下, 内膜細胞診) を介して経験される卵巣腫瘍のほとんどが上皮性悪性腫瘍である. 今回われわれは漿液性境界悪性腫瘍の 1 例を報告する.
    症例 : 31 歳, 1 経妊 1 経産. 出産後の月経発来不全で近医を受診し, 内膜細胞診異常および右卵巣腫瘍を指摘された. 内膜細胞診では, 砂粒小体を伴う N/C 比が高い異型細胞からなる小型集塊を, 正常な内膜細胞に混在して認めたため, 腺癌を疑った. 内膜組織生検も行われたが明らかな異常は認めなかった. 骨盤 MRI で右卵巣の腫大を認め, 上皮性悪性腫瘍の診断により患者の妊孕性温存希望を考慮して右付属器切除, および体網切除が施行された. 術中腹水は微量であったが細胞診は陽性であった. 右卵巣腫瘍は約 4.5 cm 大で, 被膜破綻や外向性発育はみられなかった. 囊胞内部に乳頭状・顆粒状の病変を認めた. 組織学的に, 大網に顕微鏡的非浸潤性インプラントを伴う漿液性境界悪性腫瘍, FIGO ⅢA と診断された.
    結論 : 日常的にはまれな, 内向性発育型で非浸潤性インプラントを伴った漿液性境界悪性腫瘍の内膜細胞診像および腹水細胞診像を経験した.
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