日本臨床細胞学会雑誌
Online ISSN : 1882-7233
Print ISSN : 0387-1193
ISSN-L : 0387-1193
54 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 井上 香, 和田 有加里, 小原 昌彦, 水野 圭子, 黒田 直人
    2015 年 54 巻 4 号 p. 233-237
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/14
    ジャーナル フリー
    目的 : 新 WHO 分類では粘液癌は純粋型として A 型と B 型に分類されているが, 混合型も日常診断で遭遇する. 細胞診断において新 WHO 分類に基づいた検討や純粋型と混合型とを比較した検討は少ない.
    方法 : 今回われわれは乳腺原発の粘液癌 11 例を, 新 WHO 分類に基づいて細胞学的に検討した.
    成績 : 純粋型は 5 例, 混合型は 6 例であり, 純粋型は A 型が 1 例, B 型が 4 例であり, 混合型の粘液癌成分は全例 B 型であり, うち 1 例では粘液癌成分に神経内分泌癌や微小乳頭状癌成分も含有していた. 細胞学的には純粋型の A 型と B 型の鑑別は細胞質と核の性状より可能のように思われたが, 純粋型ないしは混合型の B 型成分と神経内分泌癌の成分との細胞学的類似性から鑑別は困難であった. しかし, 浸潤癌非特定型を有する 2 例では細胞診標本でも細胞質内小腺腔の存在で, その成分を推定することが可能で, 微小乳頭状癌成分も腫瘍胞巣が小型均一な集団で, EMA の免疫染色を加えることにより推定可能であった.
    結論 : 純粋型の A 型と B 型の細胞学的鑑別は可能である. 純粋型と混合型との細胞学的鑑別は背景粘液量, 核異型, 細胞質内小腺腔に注目することにより, 混合型の神経内分泌癌以外の成分を同定することが重要である.
  • 堀口 絢奈, 梅澤 敬, 梅森 宮加, 土屋 幸子, 石橋 智美, 副島 友莉恵, 沢辺 元司, 清川 貴子, 池上 雅博, 鷹橋 浩幸
    2015 年 54 巻 4 号 p. 238-243
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/14
    ジャーナル フリー
    目的 : BD シュアパスTM法を用いた内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP) 下ブラシによる細胞診の診断精度と標本適否について試みた.
    方法 : 2013 年 4 月~2014 年 12 月で, ERCP 下ブラシ細胞診が施行された 31 例を対象とした. 細胞を採取したブラシ先端を切断して BD サイトリッチTMレッド保存液が入ったバイアルに回収し, BD シュアパスTM標本を 1 枚作製した. 細胞診は, negative, suspicious, positive, unsatisfactory に分類し, 組織診断と比較した.
    成績 : 31 例の内訳は negative : 9 例, suspicious : 8 例, positive : 14 例, unsatisfactory : 0 例であった. Positiveとした 14 例のうち, 組織診が行われ, adenocarcinoma と診断されたのは 7 例であった. BD シュアパスTM標本の塗抹範囲は 13 mm 円内に限られ, 直接塗抹法でみられるアーチファクトはみられず, 細胞は良好に保存されていた.
    結論 : BD シュアパスTM法は, 不適正要因を排除したクオリティーの高い塗抹標本を作製することが可能であり, 診断精度の向上に寄与する.
症例
  • 宮川 祥治, 吉田 澄子, 山下 展弘, 勝山 栄治
    2015 年 54 巻 4 号 p. 244-249
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/14
    ジャーナル フリー
    背景 : 肺原発の悪性黒色腫は肺腫瘍全体の約 0.01% と非常にまれである.
    症例 : 46 歳, 女性. 胸部 X 線像で異常陰影を指摘され, 胸部 CT にて左肺下葉に 3 cm 大の結節を認めた. 気管支鏡検査にて左 B8 に隆起性病変を認め, 同部の擦過, 洗浄細胞診および組織生検を施行した.
    細胞診では比較的結合性に乏しい異型細胞が集塊状または散在性にみられ, 背景の一部に茶褐色の顆粒を認めた. 核は偏在性で, 核クロマチンは顆粒状~粗顆粒状に増加しており, 核の切れ込みや核腫大を示していた. 核分裂像や核小体が目立つ細胞もみられ, 一部に核内封入体様の所見を認めた. 胞体は豊富なものが多く, ライトグリーンに淡染し, 一部には茶褐色で輝度のない細顆粒を認めた.
    組織生検では好酸性の胞体を有する類円形~紡錘形の異型細胞の密な増生を認め, 一部には黒色色素をみた. 異型細胞の性状および黒色顆粒の存在より悪性黒色腫を疑った.
    免疫染色では HMB-45, Melan-A, S-100 が陽性, TTF-1 が陰性であり悪性黒色腫と診断した.
    結論 : 肺原発の悪性黒色腫はまれな疾患であるが, 細胞診にて茶褐色の顆粒を認めた際には鑑別の一つとして挙げる必要があると考える.
  • 町田 浩美, 圓谷 勝, 永井 多美子, 佐々木 英夫, 加藤 輝, 中里 宜正, 小島 勝, 正和 信英
    2015 年 54 巻 4 号 p. 250-257
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/14
    ジャーナル フリー
    背景 : アスベスト曝露歴がなく, 原因不明の胸水貯留で経過観察中に胸水細胞診で核内封入体や好酸性の細胞質内封入体を認めた悪性胸膜中皮腫の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 38 歳, 女性. 検診で左胸水貯留を指摘され入院. CT にて軽度胸膜肥厚がみられるのみで, 胸水細胞診, 胸膜生検するも確定診断にはいたらなかった. 外来で胸水細胞診検査にて経過観察中, 悪性中皮腫の可能性が疑われ, 胸水細胞診での免疫学的検索および, 左壁側胸膜摘出術標本により悪性胸膜中皮腫と診断が確定した. 胸水細胞診標本には核内封入体や好酸性の細胞質内封入体が認められた. 胸水細胞検体を用いた電子顕微鏡 (電顕) 的検索の結果, 核内封入体は 1 層の膜に囲まれた膠質状の構造物として認められ, 好酸性の細胞質内封入体は拡張した粗面小胞体および管状を示す構造物が大小の渦巻状構造物として認められた.
    結論 : 悪性中皮腫における核内封入体の報告例は少ないが, 反応性中皮細胞との鑑別に有用であるとの報告がある. 悪性中皮腫の診断における核内封入体および, 本症例で認められたような細胞質内封入体の形態学的性状や出現率などを細胞学的, 電顕的に詳細な検索を行い, その出現の診断的意義を検討していく必要があると思われた.
  • 志賀 有紗, 有馬 信之, 河野 公成, 松本 律男, 山田 智子, 溝上 美江, 内田 衣里子, 豊住 康夫
    2015 年 54 巻 4 号 p. 258-263
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/14
    ジャーナル フリー
    背景 : Mammary analogue secretory carcinoma of the salivary gland (MASC) は Skalova らにより最初に紹介された乳腺分泌癌と同一の遺伝子転座を示す唾液腺腫瘍である. 今回, 私どもは副耳下腺に発生した MASC の 1 例を経験し, 腺房細胞癌との細胞学的鑑別点について検討したので報告する.
    症例 : 患者は 24 歳男性. 右頬部の腫脹と疼痛にて来院し, 腫瘍切除術を施行. 当初は副耳下腺原発の腺房細胞癌と診断していたが, 乳腺分泌癌との形態学的類似性から, RT-PCR 法にて ETV6-NTRK3 キメラ融合遺伝子を証明し, MASC と最終診断した. 細胞所見を再検討するに, ヘモジデリン貪食組織球が目立つ背景, シート状・濾胞状・乳頭状の細胞集塊, 軽度の細胞異型, 乏しい zymogen 顆粒は MASC も考慮すべき所見であったが, 背景に粘液が乏しく, 腺房細胞癌との細胞学的鑑別は必ずしも容易でなかった.
    結論 : MASC の診断には乳腺分泌癌に類似した形態所見の拾い上げや S-100 蛋白や mammaglobin の免疫染色が有用であるが, 確定診断には融合遺伝子の証明が避けられないと思われた.
  • 成富 真理, 畠 榮, 物部 泰昌, 河原 明彦, 安倍 秀幸, 高須賀 博久, 日野 寛子
    2015 年 54 巻 4 号 p. 264-269
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/14
    ジャーナル フリー
    背景 : 扁平上皮癌への分化を伴う充実腺管癌と分泌癌が併存した症例を経験したので報告する.
    症例 : 80 歳代女性. 右乳房のしこりを主訴に来院. 超音波で “ひょうたん型” の腫瘤がみられ, 針生検が施行された. 針生検捺印標本ならびに LBC 標本を作製した. 捺印標本では粘液を背景に, 重積集塊で出現し, 細胞は境界不明瞭, 核は楕円形の異型細胞を多数認めた. 悪性と判定し, 組織型は粘液癌を疑った. 針生検では, 浸潤性乳管癌と診断した. 後日, 右乳房切除術が施行された. 腫瘤は C 領域に位置し, 約 60% は充実腺管癌, 約 40% は分泌癌の成分が占め, 前者では扁平上皮癌への分化がみられた. 扁平上皮癌への分化を伴う充実腺管癌と分泌癌と診断された. 捺印標本を見直したところ, 複数個の異型細胞が粘液を取り囲む, 粘液小球状構造や印環型細胞, 腺系と扁平上皮系細胞の混在した集塊が認められた. LBC 標本では, 壊死物質とともに, 細胞質がオレンジ G 好染, 核の濃縮した扁平上皮系の異型細胞がみられた.
    結論 : 異なる成分からなる乳癌もあるので, 従来法, LBC 法をあわせ慎重に細胞診断することが肝要と思われた.
  • 築地 秀典, 馬渡 聖子, 堤 陽子, 中村 朱, 平野 敬之, 橋本 教経, 明石 道昭, 森 大輔
    2015 年 54 巻 4 号 p. 270-274
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/14
    ジャーナル フリー
    背景 : 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫 (chronic lymphocytic leukemia/small lymphocytic lymphoma : CLL/SLL) 経過中に Hodgkin/Reed-Sternberg (HRS) 様細胞が出現し, Hodgkin リンパ腫と鑑別を要する 1 例を経験した.
    症例 : 79 歳, 男性. 14 年前より CLL/SLL で経過観察中. 3 度目の再発で, 左頸部リンパ節の急速な増大を認め, 診断目的のため生検および捺印細胞診を施行した. 細胞像は, 単一な中型リンパ球を背景に, 多核や鏡面像を呈する HRS 様細胞, 好酸球の介在を認めた. 病理組織では, 偽濾胞構造を呈し, リンパ球は小型~中型が主体で, その中に大型核小体を有する HRS 様細胞を認めた.
    結論 : CLL/SLL の経過観察中にはびまん性大細胞型 B 細胞性リンパ腫のみならず HRS 様細胞の出現にも注意し鏡検する必要がある.
短報
  • 日野 寛子, 畠 榮, 高須賀 博久, 成富 真理, 物部 泰昌
    2015 年 54 巻 4 号 p. 275-276
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/09/14
    ジャーナル フリー
    We report herein on the case of a woman in her late 80 s with mammary squamous cell carcinoma. The ultrasonography showed multiple cystic lesions. Cytology in LBC specimens showed atypical cells with circular-spindle or bizarre morphology, with cell clusters consisting of round cells also being observed. A mix of adenocarcinoma and squamous cell carcinoma was initially suggested from immunostaining with p40. Histologically, the tumor was a mixed type squamous cell carcinoma with solid lesion and three cystic lesions.
    It was considered that immunostaining of LBC specimens with p40 is a useful method in the cytological diagnosis of the subtype of squamous cell carcinoma.
feedback
Top