日本臨床細胞学会雑誌
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54 巻, 5 号
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総説
  • —第 53 巻までの 3619 編について—
    清水 健
    2015 年 54 巻 5 号 p. 285-291
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    日本臨床細胞学会雑誌第 1 巻 (1962 年)~第 53 巻 (2014 年) に掲載された論文総数は, 3619 編である. 種別の内訳は, 原著 1371 編, 症例 1562 編, 短報 420 編, 特集 227 編, 総説 31 編, その他 8 編である. 領域別では産婦人科領域の論文数が 1130 編で, 全体の 3 割以上を占めている. 対象臓器の内訳は子宮頸部に関する論文が最も多く 450 編で, 子宮体部 341 編, 卵巣 108 編, 腟 80 編, 外陰部 34 編, 卵管 17 編と続く. 複数臓器にまたがる論文, 技術, 検診一般などに関する論文が 100 編ある. 子宮頸部・体部の論文数は近年減少が目立つ. 産婦人科以外の領域の論文数は 2489 編である. 各年の総論文数に占めるこの領域の論文比率が, 1974 年頃から直線的に増加している. 内訳は, 呼吸器 392 編, 乳腺 366 編, 消化器 343 編, 体腔液 290 編, 泌尿器・男性生殖器 222 編, 内分泌 186 編, 骨・軟部 160 編, 網内系 96 編, 中枢神経系 61 編, 頭頸部 59 編, 皮膚 44 編, 口腔 22 編, 全身感染症 14 編, 心・大血管 8 編である. その他の領域として, 細胞診断全般に関する技術や教育制度などに関する論文が 226 編ある.
原著
  • —判定に難渋する症例での検討—
    古旗 淳, 広岡 保明, 東井 靖子, 阿部 加奈子, 阿部 佳之, 権田 厚文
    2015 年 54 巻 5 号 p. 292-298
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    目的 : 細胞検査士を対象に, 貯留胆汁細胞診・細胞判定基準 (以下, 判定基準) を判定に難渋すると思わる症例に応用した.
    方法 : 後述する検討 1 で 39 名, 検討 2 で 116 名の合計 155 名の細胞検査士を, 経験年数別に A 群 (5 年未満), B 群 (5 年以上, 10 年未満), C 群 (10 年以上) に分けた. 判定に難渋すると思われる良性 2 例, 悪性 2 例について, Papanicolaou 染色標本中の細胞の写真を用い, 以下の手順で判定してもらった. 判定基準応用前として, 検討 1, 検討 2 ともにまず従来の各自の基準で判定してもらった. 次に応用後として, 検討 1 では用語説明後, 検討 2 では詳細な解説後に判定してもらい, それぞれの正診率を比較した.
    成績 : 正診率は検討 1 の応用前で 45%, 応用後では 52%, 検討 2 の応用前で 42%, 応用後では 59%であった.
    結論 : 判定基準は細胞検査士に対して, 判定に難渋すると思われる症例の正診率の向上に有用と思われた. 診断精度をさらに向上させるためには, 従来の胆汁細胞診に存在する各所見の評価の基準の曖昧さや個人差を解消させることができる, 客観的な異型度の基準の確立が必須と思われた.
  • —中心型肺扁平上皮癌との比較—
    田名部 朋子, 青野 佳美, 中村 繁子, 近 京子, 中嶋 隆太郎, 桜田 晃, 遠藤 千顕, 菅間 敬治, 齋藤 泰紀, 佐藤 博俊
    2015 年 54 巻 5 号 p. 299-306
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    目的 : 肺癌検診喀痰細胞診で発見された末梢型肺扁平上皮癌の細胞像を明らかにするために中心型肺扁平上皮癌との比較検討を行った.
    方法 : 2001~2010 年の 10 年間に肺癌検診喀痰細胞診で発見された肺扁平上皮癌で発生部位が判明した中心型 25 例, 末梢型 16 例を対象とした. 各症例より高度異型扁平上皮細胞以上の細胞をすべて抽出し, 出現する散在性異型細胞数, 異型細胞集塊の数を比較した. また抽出した細胞について画像ソフトウェアを使用し, 細胞・核それぞれの面積, 形状係数, 明度を測定し, さらに, 細胞質の染色性, 背景などの肉眼的所見を加え比較検討した.
    成績 : 末梢型扁平上皮癌の特徴は中心型扁平上皮癌と比較して, ライトグリーン好性の異型細胞の割合が多く, 集塊で出現する場合は小型集塊の割合が多い. 異型細胞は円に近い形状で N/C 比が小さく, 細胞質の光輝性は劣る. また異型細胞は炎症・壊死物質に絡むように出現することが多いことが明らかになった.
    結論 : 喀痰細胞診における肺扁平上皮癌の細胞像を発生部位で比較検討した結果, 末梢型扁平上皮癌には特徴があり, それを念頭に細胞を観察することで末梢型扁平上皮癌を推定することは可能であることが示唆された.
症例
  • 石原 冬馬, 赤澤 康弘, 山田 真人, 福田 淳, 江河 勇樹, 大月 寛郎, 清水 進一, 小林 寛
    2015 年 54 巻 5 号 p. 307-312
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    背景 : 膀胱尿路上皮癌のまれな亜型である浸潤性微小乳頭癌 (invasive micropapillary carcinoma, 以下 IMPC) の体腔液中の細胞所見についての報告は少ない. 本腫瘍由来の腫瘍細胞が胸水中に出現した 2 例を報告する.
    症例 : 症例 1 は 60 歳代, 男性. 膀胱癌の既往がある. 主訴は呼吸苦で, 右肺下葉の腫瘤, 右肺門部, 縦隔リンパ節腫大, 右胸水貯留を認めた. 症例 2 は 70 歳代, 男性. 膀胱癌の経過観察中に呼吸苦が出現し, 全身リンパ節腫大, 両側胸水貯留を認めた. 2 例とも中等度の核異型を示す腫瘍細胞からなる辺縁が平滑で, 結合性の強い球状および乳頭状集塊を胸水中に多数認めた. 集塊は症例 1 では平面的で, 症例 2 では軽度の核重積を示すが, いずれにも血管結合織性の芯は認められなかった. 背景は清明であった. 腺癌の可能性を考えたが, 胸水セルブロックの免疫染色では, 2 例とも腫瘍細胞は TTF1 陰性であった. 膀胱切除検体には, いずれにも通常の尿路上皮癌と IMPC 成分を認め, 胸水中の腫瘍細胞は形態的な類似性と免疫染色の結果から膀胱 IMPC の転移と考えた.
    結論 : 体腔液細胞診で血管結合織性の芯のない, 比較的大型の球状および乳頭状集塊での腫瘍細胞の出現や清明な背景は IMPC を示唆する所見と考える.
  • 渡邊 いづみ, 刑部 光正, 鈴木 裕, 阿部 光展, 植松 美由紀, 柳川 直樹, 緒形 真也, 田村 元
    2015 年 54 巻 5 号 p. 313-317
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    背景 : 乳腺の myofibroblastoma は, 乳腺間質の線維芽細胞や筋線維芽細胞に由来するまれな良性腫瘍で, その細胞像の報告は少ない.
    症例 : 症例は, 68 歳の女性で, 6 年前より左乳房下部の腫瘤を指摘されていた. 3 回の穿刺吸引細胞診が施行されたが, うち 1 回でごく少数のライトグリーン淡染性胞体をもつ紡錘形細胞からなる小型集塊が採取されたのみで, いずれも検体不適正の判定となり, 診断目的に切開摘出が行われた. 境界明瞭な腫瘤で, 厚い帯状の膠原線維束間に淡好酸性胞体をもつ紡錘形細胞が疎に増殖していた.
    結論 : Myofibroblastoma の穿刺吸引細胞像は, 本例のように膠原線維が多く細胞成分が少ない場合は細胞採取量が僅少となるなど, 細胞成分の多寡により細胞採取量に顕著な差が出る可能性がある. しかし, 採取細胞量が僅少であっても, 出現する細胞には非特異的な間質細胞と区別しうる myofibroblastoma 由来細胞と考えられる特徴がみられた. 本例のように細胞採取量が僅少となり, 検体不適正と判定されていることが, myofibroblastoma の報告が少ない理由の一つなのかもしれない.
  • 菊地 淳, 安田 政実, 加藤 智美, 鎌倉 靖夫, 佐瀬 智子, 菅野 恵士, 細沼 祐介, 矢島 沙紀
    2015 年 54 巻 5 号 p. 318-322
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    背景 : 子宮内膜細胞診 (以下, 内膜細胞診) での異常が契機となり発見された, 術前に病巣の特定が困難であった右卵巣高異型度漿液性腺癌の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 61 歳, 女性. 検診で施行された内膜細胞診で異常を指摘され当院を紹介受診した. 当院でも同様に内膜細胞診陽性であったため子宮内膜全面掻爬術が行われたが, 組織学的に腫瘍細胞は認められなかった. 血清腫瘍マーカーは陰性で, 画像的にも骨盤内に異常所見は指摘できなかったが, 再度の内膜細胞診も陽性であったため試験開腹が行われた. 右卵巣に 2 cm 大の囊胞性病変が認められたため, 右付属器が切除され術中迅速検体として提出された. 同検体の卵巣内に 5 mm 大の腺癌を偶発的に認めたため根治術が施行された. その後, 永久標本による組織診で, 卵管峡部および卵管采に上皮内癌を伴った右卵巣高異型度漿液性腺癌と診断した.
    結論 : 術前に病巣の特定が困難であった卵管上皮内腺癌合併・卵巣高異型度漿液性腺癌の症例で, 内膜細胞診での異常所見が早期発見の契機となった.
  • 金尾 祐之, 高橋 顕雅, 馬屋原 健司, 的田 眞紀, 尾松 公平, 杉山 裕子, 高澤 豊, 竹島 信宏
    2015 年 54 巻 5 号 p. 323-327
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    背景 : 子宮を原発とする悪性リンパ腫はきわめてまれな疾患であり, 診断に苦慮することも多い. 今回, われわれは, 経子宮頸管的針生検が有用であった子宮原発悪性リンパ腫の 1 例を経験したので報告する.
    症例 : 70 歳, 女性. 2 経妊 2 経産. 下腹部痛と下肢浮腫を主訴に近医を受診. 子宮腫瘍を指摘され, 当院紹介となった. MRI にて子宮体部を中心に子宮頸部に及ぶ腫瘍を認めるも, 子宮頸部細胞診, 子宮内膜細胞診ともに異常を認めなかった. このため, 子宮腫瘍に対して経子宮頸管的針生検を施行し, 捺印細胞診および組織診を施行した. 捺印細胞診では裸核様の中型異型リンパ球を散在性に認め, 非ホジキンリンパ腫と推定された. 組織診でも子宮筋層内に中型異型細胞がびまん性に浸潤しており, 核小体の明瞭な大型細胞も散見された. CD5-, CD10-, CD20+, BCL2-, BCL6+, MUM1-, MIB1 index~90%であり, びまん性大型 B 細胞性リンパ腫と診断した. その後, Ann Arbor 分類 IVBE 期と診断され, 化学療法後, 寛解を維持している.
    結論 : 非典型的な子宮腫瘍を診断するための経子宮頸管的針生検は有用であると考えられた.
  • 小島 淳美, 佐藤 正和, 田母神 佐智子, 大亀 真一, 白山 裕子, 竹原 和宏, 野河 孝充, 寺本 典弘
    2015 年 54 巻 5 号 p. 328-334
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    背景 : 子宮頸部胃型腺癌は内子宮口付近で内向性に発育する傾向があり, 早期病変は生検組織診による診断確定が難しく, 円錐切除術が施行されることも多い.
    症例 : 40 歳代後半, 4 経妊 2 経産. 不正性器出血を主訴に前医を受診し, 子宮頸部細胞診で腺異形成を疑われたために紹介された. 経腟超音波断層法では頸管内に小囊胞の集簇が認められた. 当院外来における細胞診では異型腺細胞, 生検組織診では腺異形成と診断され, 円錐切除術では異型を伴わない分葉状頸管腺過形成と診断された. このため経過観察とされていたが, 円錐切除後 8 ヵ月の細胞診で腺癌を疑う細胞が認められた. 引き続き行われた生検では診断が確定されず, さらに 3 ヵ月後の再検査で上皮内癌と診断された. 子宮全摘術が施行され, 組織学的検索の結果約 2 cm の範囲で浸潤する胃型腺癌が確認された. 病変の主座は内子宮口に存在しており, 円錐切除後の瘢痕部付近では浸潤癌は認められなかった. 術後 6 年間再発を認めていない.
    結論 : 早期の胃型腺癌は円錐切除では主病変が含まれず, 診断確定が困難なことがあるため, 結果が陰性であっても精査の継続あるいは慎重な経過観察が必要である.
  • 小畠 勝己, 竹下 盛重, 榊 保彦, 松本 慎二, 大石 朋子, 原川 政彦, 相知 優子, 鍋島 一樹
    2015 年 54 巻 5 号 p. 335-340
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/11/10
    ジャーナル フリー
    背景 : 節性濾胞辺縁帯リンパ腫 (nodal marginal zone lymphoma, 以下 NMZL) はまれな腫瘍で, 年齢中間値は 60 歳で中~高年齢層に発生する. 今回, 30 歳以下の NMZL を 2 例経験したので報告する.
    症例 : 症例 1, 19 歳, 男性, 頸部リンパ節腫大があり, 穿刺吸引細胞診にて陰性, 組織球性壊死性リンパ節炎を疑うも頸部リンパ節の摘出術が行われた. 組織学的には反応性傍濾胞過形成の診断であったが, 再検し NMZL と診断した. 症例 2, 27 歳, 男性, 頤下腫瘤を認め腫瘤摘出術が行われた. 捺印細胞診にて疑陽性, 病理組織診断は NMZL であった. 細胞像では, 症例 1, 2 ともに中・大型の異型リンパ球と多くの小リンパ球の混在が認められた. 強拡大での観察で核型不整や核の切れ込みやクロマチンの不均等分布があり, ギムザ染色で単球様の明るい細胞質を認めた.
    結論 : 2 例とも 30 歳以下に発症したきわめてまれな B 細胞性腫瘍であり, 細胞学的に反応性リンパ節炎との鑑別を要し, 対物 100 倍 (油浸) 強拡大での詳細な観察が大切であった.
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