日本臨床細胞学会雑誌
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55 巻, 1 号
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原著
  • 土田 秀, 小保方 亜光, 樋口 由美子, 鶴田 誠司, 尾身 麻理恵, 今泉 智博, 綱川 祥子, 三浦 宏弥, 飯島 美砂, 鹿沼 達哉
    2016 年 55 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    目的 : ベセスダシステム 2001 では検診における精度管理項目の基準値が設定されている. 今回, この値が診療施設の基準値としてあてはまるのか検討を行った.
    方法 : 病院 9 施設と検診専門施設 1 施設の子宮頸部細胞診の報告数を集計し, 精度管理項目を検診と診療などに分けて比較した.
    成績 : 婦人科全報告中の ASC の割合は, 検診に比し診療で有意に高かったが, ASC 中の ASC-H の割合 (ASC-H/ASC) と ASC/SIL 比に有意差はみられなかった. しかしながら, 診療の ASC-H/ASC は基準値よりも有意に高かった. SIL が全体に占める割合から SIL 率を算出し, 診療施設を SIL 率の高い施設と低い施設に二分して比較したが, 両者に有意差は認められなかった.
    結論 : 診療施設の子宮頸部細胞診には, 検診で用いる精度管理項目の基準値と異なる値を設定する必要があると思われた.
  • 三宅 まどか, 河原 明彦, 河原 真弓子, 貞嶋 栄司, 木下 準子, 山口 知彦, 安倍 秀幸, 多比良 朋希, 鹿毛 政義, 徳永 藏
    2016 年 55 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    目的 : ワルチン腫瘍の穿刺吸引細胞診において, 従来法に加えて液状化検体細胞診 (LBC 法) を併用する有用性について検討を行った.
    方法 : 耳下腺穿刺吸引細胞診で従来法と LBC 法を併用しワルチン腫瘍と診断された 28 検体を対象とした. これらの検体を用いて, 1) 好酸性細胞の出現検体数と形態の比較, 2) 好酸性細胞出現検体数と集塊数の比較, 3) 背景物質の比較に関して従来法と LBC 法で検討を行った.
    成績 : 従来法と LBC 法ともに好酸性細胞がみられたのは 20 検体 (71.4%) で, LBC 法のみにみられたのでは 6 検体 (21.4%) であった. LBC 法における好酸性細胞の細胞像は, 顆粒状細胞質を観察することはできたが, 核の濃染化や核小体の明瞭化が多く観察された. 高円柱状を呈する好酸性細胞や好酸性細胞集塊の出現数は, LBC 法のほうが従来法に比べ有意に多く出現していた (p<0.05). LBC 法では出血のような背景物質は減少したが, 一方, リンパ球の変性が多く認められた.
    結論 : ワルチン腫瘍の診断に LBC 法を併用することで, 好酸性細胞の出現数を明らかに確保することができ, 囊胞性変化を伴う唾液腺腫瘍の診断に有用と考えられた.
症例
  • 佐藤 明, 宮西 智恵, 横山 智子, 安毛 直美, 兼近 典子
    2016 年 55 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 乳管腺腫は異型アポクリン化生細胞が多量に採取されるため過剰診断しないよう警告されてきたが, 多量の粘液分泌がみられることは非常にまれである.
    症例 : 患者は 60 歳代, 女性. 検診のマンモグラフィーで右 B 領域にカテゴリー 3 の腫瘤が発見された. 穿刺吸引細胞診では稀薄ないし濃厚な多量の粘液, 泡沫細胞, 壊死物質を背景に, 充実重積状, 腺房状あるいはシート状パターンの細胞集塊と孤在性の腫瘍細胞が多数, 採取された. 少数の篩状や乳頭状パターンの細胞集塊もみられた. 腫瘍細胞は比較的 N/C 比の低い均一な卵円形核と, 淡橙色の細胞内粘液を有するものが多く, 核が偏在する杯細胞も出現していた. 粘液癌が疑われた. 手術材料の組織診断では腫瘍細胞内粘液と粘液を貯留する囊胞状腺管がみられる, 粘液化生を伴った乳管腺腫であった.
    結論 : 本例は穿刺吸引細胞診で多量の粘液が採取され, 粘液化生を伴った乳管腺腫であった. 細胞診では粘液癌や Mucocele-like tumor との鑑別が問題となった.
  • 佐竹 宣法, 繁木 麻里, 山田 順子, 工藤 英治
    2016 年 55 巻 1 号 p. 20-25
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    背景 : Benign multicystic mesothelioma (以下, BMM) は, 骨盤内, 腹腔内等に発生する中皮細胞由来の多房性囊胞性病変である. 現在まで 130 を超える症例が報告されているが, 細胞所見, 細胞学的特徴に関する報告は少ない. 今回われわれは骨盤内腹膜に発生した BMM を経験したので報告する.
    症例 : 30 歳代前半女性. 左下腹部痛があり近医を受診後, 当院産婦人科に紹介された. 経腟超音波検査, 胸腹部 CT, 骨盤 MRI 検査にて骨盤部に限局する多房性囊胞性病変を指摘され, 腹腔鏡下生検が施行された. 囊胞内容液穿刺吸引細胞診ではシート状の中皮細胞集塊とともに, 球状, 乳頭状中皮細胞集塊が多数出現していた. 術中迅速捺印細胞診, 囊胞内容液穿刺吸引細胞診とも併せて, 病理組織学的に BMM と診断された.
    結論 : 捺印細胞診, 囊胞内容液穿刺吸引細胞診が BMM の病理組織診断に有用であった.
  • —採取検体による出現腫瘍細胞の形態差異と組織像の関連について—
    町田 知久, 伊藤 仁, 加戸 伸明, 渡具知 克, 藤田 大貴, 杉山 朋子, 中村 直哉, 田尻 琢磨
    2016 年 55 巻 1 号 p. 26-31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 腺内分泌細胞癌 (mixed adenoneuroendocrine carcinoma : 以下 MANEC) は上皮粘膜内に局在する腺癌成分と粘膜下以深に分布する神経内分泌細胞癌が混在する特徴的な形態を呈する. 今回, 採取法により細胞形態の差異を認めた胆管原発 MANEC の 1 例を報告する.
    症例 : 60 歳代, 男性. 主訴は黄疸. ERCP にて胆管に腫瘤が確認された. 胆汁・胆管擦過細胞診で腺癌が疑われ, 胆囊・胆管切除術が施行された. 胆汁細胞診では, 腺管状・柵状配列を呈する腺癌細胞が観察された. 胆管擦過細胞診では, 腺癌細胞に加え, 比較的 N/C 比が高い類円形の異型細胞が観察されたが, 腺癌の低分化成分と考えた. 術中の腹腔洗浄液細胞診では, 粗顆粒状核と高 N/C 比を有する類円形細胞が出現し神経内分泌細胞癌を疑った. 組織診では, 粘膜には高分化な腺癌, 粘膜下では CD56 が陽性を示す高 N/C 比の小型類円形細胞の集簇が観察され, MANEC と診断された.
    結論 : 採取法による細胞像の違いは特徴的な組織像を反映する. 腺癌と神経内分泌癌の中間系細胞を認識することで, 正診率と予後の向上に貢献できる.
  • 井関 文, 畠 榮, 加藤 克幸, 小林 晴美, 原 稔晶, 下山 芳江, 中村 栄男
    2016 年 55 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 印環細胞型乳癌は予後不良とされる. われわれは印環細胞型浸潤性小葉癌の 1 例を経験し, 細胞学的特徴と含有粘液に関して報告する.
    症例 : 50 歳代, 女性. 検診で腫瘤を指摘され当院受診. 乳腺穿刺吸引細胞診で桃色の豊富な粘液をもつ細胞や橙黄色の粘液を有する印環状の腫瘍細胞を認めた. 組織学的には, 腫瘍細胞が間質へ線状, 索状に浸潤し, targetoid pattern を認めた. 約 20% に PAS 反応で強陽性を示す印環型の細胞を認めた. Alcianblue 染色では一部のみ陽性となった. E-cadherin は陰性, p120 は細胞質にびまん性に陽性で, 印環細胞型浸潤性小葉癌と診断した. 古典型小葉癌部では MUC1 が細胞膜に一致して全周に陽性, 印環細胞型小葉癌部では細胞膜および細胞質内粘液にも強陽性を示した. GCDFP-15 は古典型小葉癌部では陰性, 印環細胞型小葉癌部は約 8 割が細胞質内粘液に一致して陽性となった. MUC2, MUC5AC, MUC6 は両細胞とも陰性であった.
    結論 : 印環細胞型浸潤性小葉癌は, 特徴的な細胞形態をとり, 粘液が MUC1, GCDFP-15 で陽性を示すが, MUC2, MUC5AC, MUC6 では陰性となる.
  • 永田 郁子, 上國 愛, 岡本 淳子, 井町 海太, 䑓丸 裕, 中西 慶喜, 大下 孝史, 藤本 英夫
    2016 年 55 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 腹腔内原発二相型滑膜肉腫の腹腔内洗浄水と腫瘍捺印の細胞像を報告する.
    症例 : 50 歳代, 女性. 約 15 cm 大の腹腔内腫瘍に対し, 腹腔内洗浄細胞診と腫瘍捺印細胞診が行われた. 腹腔内洗浄水では, 孤立性の紡錘形異型細胞が少数と小集団の上皮様異型細胞が, 腫瘍捺印では, 細胞密度の高い紡錘形異型細胞集塊と小集団や孤立性の上皮様異型細胞が認められた. 紡錘形異型細胞は, 葉巻状核や核のくびれ, 核内細胞質封入体が, 上皮様異型細胞は類円形で, N/C 比大, 核圧排像, 相互封入像がみられた. 病理組織学的には, 束状配列の紡錘形細胞成分と, 胞巣状の上皮様細胞成分が認められ, EMA, AE1/AE3, CK7, vimentin, calretinin に陽性であった. また, RT-PCR で SYT-SSX1 transcript が証明され, 腹腔内原発二相型滑膜肉腫と診断された.
    結論 : 二相型滑膜肉腫の細胞診断には, 紡錘形異型細胞と上皮様異型細胞の腫瘍細胞の出現が手掛かりになると思われ, また, 診断には融合遺伝子の証明が有用である.
  • 竹渕 友弥, 伊古田 勇人, 後藤 優典, 栗原 康哲, 平戸 純子, 小山 徹也
    2016 年 55 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 卵巣癌肉腫と卵巣神経内分泌癌はどちらもまれな腫瘍で, 両者を合併した症例報告はほとんどみられない. 今回われわれは術中腹水細胞診で神経内分泌腫瘍と診断し, 手術検体で神経内分泌癌を伴った卵巣癌肉腫と診断された症例を経験したので報告する.
    症例 : 69 歳, 女性. 右下腹部痛にて近医を受診し, 卵巣腫瘍が疑われたため当院紹介受診となった. CT で右卵巣に 98×87×87 mm 大の内部不均一, 辺縁やや不整な腫瘤を認めた. 子宮頸部液状細胞診, 子宮内膜細胞診は陰性で, 術中腹水細胞診では木目込み細工様配列や索状配列をもつ N/C 比の高い小型の異型細胞が集塊でみられ, 免疫染色では CD56, synaptophysin が陽性, chromogranin A が一部陽性で神経内分泌腫瘍が疑われた. 術後組織検体では右卵巣は癌肉腫が主体で, 腫瘍比率は肉腫成分が 90% で癌腫成分が 10% であった. 右卵管, 左卵巣, 大網結節は神経内分泌癌が主体で, 腫瘍比率は神経内分泌癌成分が 80% で肉腫成分が 20% であった. 以上の所見より神経内分泌癌を伴った癌肉腫と診断された.
    結論 : 卵巣神経内分泌癌は予後不良の症例が多い. 早期の適切な治療選択のためにも, 腹水細胞診での神経内分泌癌の診断推定は意義のあるものと思われる.
  • 宮本 雄一郎, 岡田 智志, 石川 光也, 池田 俊一, 加藤 友康, 隅蔵 智子, 吉田 正行, 笠松 高弘
    2016 年 55 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    背景 : 卵巣癌の早期発見・治療は難しく, 約半数がⅢ・Ⅳ期の進行癌で発見され, なかには急速に進行するものもある. 子宮内膜細胞診のみ陽性で, 術前画像検査で病変は指摘できなかったが, 開腹手術時には広範囲な腹腔内播種をきたしていた卵巣漿液性腺癌症例を経験したので報告する.
    症例 : 49 歳, 女性. 不正出血を主訴に近医受診し, 子宮内膜細胞診疑陽性のため当院へ紹介となった. 細胞診再検や, 画像検査で悪性所見なく, 定期的に経過観察していた. 1 年 6 ヵ月後, 症状はないものの, 子宮内膜細胞診が再度陽性となり当院を再診した. 子宮内膜細胞診では, 腫瘍性背景を欠き孤立散在性に腺癌細胞を認め, 漿液性腺癌が疑われた. 子宮頸部・内膜組織診で悪性所見なく, 画像検査では明らかな原発病変は指摘できなかった. 小さな子宮体癌を第一に考え手術の方針とし, 再診より 1 ヵ月後に開腹手術を施行した. 開腹時, 20 mm を超える腹腔内播種が多発した卵巣癌Ⅲc 期の状態であり, primary debulking surgery を行った. 切除標本では子宮内膜には病変を認めず, 卵巣実質内に浸潤する漿液性腺癌を認め, 右卵管には微小浸潤を伴う TIC (tubal intraepithelial carcinoma) を認めた.
    結論 : 子宮内膜細胞診にて, 腫瘍性背景を欠き孤立散在性の腺癌細胞を認めた場合には, 子宮内膜由来でない腺癌細胞の可能性もあり, 腹腔内進展した進行卵巣癌も考慮した画像検査・手術準備をすべきである.
短報
  • —圧挫標本の細胞像について—
    西田 ゆかり, 畑中 一仁, 竹下 かおり, 舞木 公子, 田中 和彦
    2016 年 55 巻 1 号 p. 58-59
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/02/16
    ジャーナル フリー
    We report a case of secretory meningioma diagnosed in a 40-year-old woman. MRI revealed a 2.5-cm mass with the dural tail sign, and evidence of cerebral edema adjacent to the mass in the right frontal convexity. Crush cytology of the resected specimen showed tumor cell clusters arranged in sheets. The tumor cells had round nuclei, finely granular chromatin, and some cells showed PAS-positive intracytoplasmic inclusions (diastase resistant). Histologically and immunohistochemically, the tumor was confirmed to show the features of secretory meningioma. Besides clinical information, the characteristic cytologic features of secretory meningioma presented in this case may be helpful for the diagnosis.
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