日本臨床細胞学会雑誌
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56 巻 , 6 号
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総説
  • 内野 眞也
    2017 年 56 巻 6 号 p. 265-270
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/18
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    多発性内分泌腫瘍症 2 型は, 遺伝的に甲状腺髄様癌・褐色細胞腫・原発性副甲状腺機能亢進症を発症する常染色体優性遺伝性疾患であり, 原因遺伝子はRET遺伝子である. わが国ではRET遺伝学的検査はすでに保険適用である. 乳頭癌や濾胞癌を発生する症候性の遺伝性疾患には, Cowden 症候群, 家族性大腸腺腫症, Carney 複合, Werner 症候群などが知られており, これらは原因遺伝子がすでに明らかとなっており, 遺伝学的検査は研究レベルで実施されている. 一方, 非症候性の家族性乳頭癌は全乳頭癌の約 5%にみられるが, 原因遺伝子はまだ不明である.

    多発性内分泌腫瘍症 1 型は, 原発性副甲状腺機能亢進症・膵消化管神経内分泌腫瘍・下垂体腫瘍を主徴とする常染色体優性遺伝性疾患であり, 原因遺伝子は MEN1 遺伝子である. 現在本遺伝学的検査は一部の施設で先進医療として実施されている. 副甲状腺機能亢進症顎腫瘍症候群は副甲状腺腫あるいは副甲状腺癌と顎腫瘍, 腎腫瘍, 子宮病変を主徴とする常染色体優性遺伝性疾患であり, 原因遺伝子は CDC73 遺伝子であり, 研究レベルで実施されている.

原著
  • 梅森 宮加, 梅澤 敬, 堀口 絢奈, 土屋 幸子, 春間 節子, 副島 友里恵, 沢辺 元司, 鷹橋 浩幸
    2017 年 56 巻 6 号 p. 271-275
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/18
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    目的 : High-grade urothelial carcinoma (HGUC) の診断精度を向上させるため, 標本作製法の改良を試みた.

    方法 : 自然尿 491 検体を対象とし, 遠心管ウイングタイプと従来遠心管を使用し BD サイトリッチTM法で標本作製を行った. 2 種類の遠心管における, 正常の上皮細胞数と異型細胞の検出率を算出し, 疑陽性例を再評価し組織診断と比較した.

    成績 : 上皮細胞数の中央値は, 遠心管ウイングタイプが 37.5 個, 従来遠心管が 14.0 個, 異型細胞の検出率はそれぞれ 13.6%, 2.7%であり, 遠心管ウイングタイプで共に向上した (p<0.001). 疑陽性例の再評価では, 陰性 6 例, 異型細胞 53 例, 悪性疑い 74 例, 悪性 2 例であった. 異型細胞 15 例中 9 例 (60%) と悪性疑いの 35 例中 24 例 (69%) が組織診で HGUC と診断された.

    結論 : 標本作製に遠心管ウイングタイプと BD サイトリッチTM法を用いることで, 細胞回収量と異型細胞の検出率向上に寄与する.

  • 梅澤 敬, 落合 和彦, 山田 恭輔, 落合 和徳, 岡本 愛光, 磯西 成治, 九十九 葉子, 沢辺 元司, 池上 雅博
    2017 年 56 巻 6 号 p. 276-282
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/18
    ジャーナル 認証あり

    目的 : 子宮頸部擦過細胞診における HR-HPV 検出率と遺伝子型を検討し, 子宮頸癌検診における HR-HPV 検出および HR-HPV タイピング検査の意義を検証することを目的とした.

    方法 : SIL の経過観察者および 2 次検診者いずれも 20 歳以上を対象とした. BD シュアパスTM法で ASC-US 以上に対し, 余剰検体で HR-HPV 遺伝子検査および生検を行い分析した.

    成績 : 134 例中 108 例 (80.6%) が HR-HPV 陽性で, 型が判明した 86 例中, 16, 52 および 58 型でおのおの 10%以上と高く, これら 3 つで 48.8% (42/86) を占めていた. CIN2 以上において, 16, 52 および 58 型いずれかを含む割合は 82.6% (38/46) で, これに 18, 31 および 33 型を加えると 95.7% (44/46) であった. CIN2 以上および CIN2 未満における HR-HPV の陽性率は, おのおの 92.3% (48/52) および 68.0% (34/50) であった.

    結論 : CIN2 以上の HR-HPV 型は 16, 52, 58, 18, 31 および 33 型が多く, ASC-US 以上でこれら 6 つの型が検出された場合には, 他の HR-HPV 型よりも慎重な管理が必要であることが示唆された.

  • 永尾 聡子, 前田 ゆかり, 皆倉 愛美, 北園 暢子, 畑中 一仁, 梅北 善久, 大井 恭代
    2017 年 56 巻 6 号 p. 283-288
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/18
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    目的 : 標準化された標本作製法である液状化検体細胞診 (liquid based cytology ; LBC) 法を用いた乳腺粘液癌の細胞診断を確立する.

    方法 : 2013 年 9 月から 2015 年 12 月までの間に穿刺吸引細胞診が実施され, 当院にて粘液癌純型と組織学的に確定診断された 10 例のうち, LBC 標本上に十分な上皮細胞集塊が観察された 7 例を対象とした. LBC 標本は直接塗抹後に BD サイトリッチTMレッド保存液にて針内洗浄し作製した. 検討項目は粘液・上皮細胞集塊・血管それぞれの出現様式と腫瘍細胞像である.

    成績 : 組織学的に全例 type B であった. 粘液はすべての症例でさまざまな大きさに断片化してみられた. 粘液は透明感があり, ときにスジ状であった. 上皮細胞は全例小型から中型の集塊で出現し, 筋上皮細胞はみられず, 構築は充実性や孤立散在性が多かった. 全例核異型は軽度であり, 細顆粒状細胞質を有する症例が 4 例 (57.1%) に, 枝分かれする細い血管が 4 例 (57.1%) に観察された.

    結論 : LBC 法で粘液癌を推定するには断片的な粘液を拾い上げることが重要であり, 細顆粒状細胞質や枝分かれする繊細な血管は診断の手助けになると考えられた.

調査報告
  • Akane ISHIDA, Makoto SAITO, Taihei NAGASE, Hideo ARAI, Hayato IKOTA, T ...
    2017 年 56 巻 6 号 p. 289-296
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/18
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    目的 : 悪性中皮腫, 肺腺癌との鑑別が困難であった乳癌再発症例を経験した. 診断における形態学的, 免疫組織化学的なピットフォールについての検討とあわせて報告する.

    方法 : 28 年前に乳癌の手術歴のある, 右側悪性胸水をきたした 62 歳の女性症例を報告する. さらに 16 例の乳腺浸潤性小葉癌および 24 例の浸潤性乳管癌について免疫組織化学的検討を追加した.

    成績 : 胸水穿刺細胞診では形態学的に悪性中皮腫が疑われた. Cell block 作製後の免疫染色で腫瘍細胞は, cytokeratin 7, EMA, calretinin, CEA, estrogen receptor 陽性, cytokeratin 20, MOC-31, cytokeratin 5, D2-40, WT-1, CD146, progesterone receptor, HER2, GCDFP-15, TTF-1, napsin A 陰性であった. これらの結果からは確定診断にはいたらず, 最終的に転院先で施行された胸腔生検により, 腫瘍は 28 年前に切除された右側浸潤性小葉癌の再発と診断された.

    追加で行った検討では, 乳癌のうちおのおの浸潤性小葉癌 16 例中 3 例 (19%), 浸潤性乳管癌 24 例中 12 例 (50%) が MOC-31 陽性, おのおの 3 例 (19%), 2 例 (8%) が calretinin 陽性であった.

    結論 : 悪性胸水における悪性中皮腫, 原発性肺腺癌, 乳癌再発の鑑別診断には形態学的, 免疫組織化学的にピットフォールが存在する. 診断に際してはこれらを念頭にいれ, 既往歴と併せて慎重に鑑別することが重要である.

症例
  • 有安 早苗, 柳井 広之, 福田 由美子, 中桐 智香子, 佐藤 正和, 園部 宏
    2017 年 56 巻 6 号 p. 297-302
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/18
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    背景 : 穿刺吸引細胞診にて淡明細胞型腎細胞癌との鑑別が問題となった血管肉腫を経験し, その診断に Giemsa 染色が有用であったので報告する.

    症例 : 患者は 50 歳代, 男性. 体調不良の精査時に CT にて後腹膜腫瘍および多発転移を認めた. 転移リンパ節より穿刺吸引細胞診および組織生検が行われた. 細胞診パパニコロウ染色標本では, N/C 比が低く, 細胞質がレース状で, 核小体の目立つ明るい核を有する細胞が, 上皮様結合を示す集塊で認められた. 腎明細胞癌との鑑別が問題となったが, Giemsa 染色標本では明瞭な赤血球内包像を認め, 血管肉腫を疑った. 生検組織は大型円形~楕円形核をもつ細胞が密に増殖する像であった. 免疫染色で腫瘍細胞は CD31, D2-40 陽性を示し, 血管肉腫と診断された.

    結論 : 血管肉腫はまれな腫瘍である. なかでも後腹膜血管肉腫は, 画像診断が難しく, 予後不良な腫瘍である. よって, 穿刺吸引細胞診断は重要な位置づけにあり, 精度の高い診断が望まれる. その細胞診断においては Giemsa 染色での赤血球内包像が有用であった.

  • 橋本 哲也, 金室 俊子, 野並 裕司, 藍原 康雄, 川俣 貴一, 山本 智子, 澤田 達男, 長嶋 洋治
    2017 年 56 巻 6 号 p. 303-307
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/18
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    背景 : Atypical teratoid/rhabdoid tumor (AT/RT) は小児に好発するまれな高悪性度中枢神経系胎児性脳腫瘍で, WHO 分類では grade Ⅳに分類される. 今回, われわれは術後再発し, 腰髄に転移した AT/RT を経験したので, 髄液細胞診を中心に報告する.

    症例 : 7 歳男児, 脳幹部に発生した AT/RT の既往があり, 術後に放射線治療と化学療法が行われ, 経過観察されていた. 手術から 3 年後に急性水頭症となり, 画像検査上, 腰髄 (L4-5) に転移が示唆された. 髄液細胞診では好酸性細胞質封入体をもつラブドイド細胞を含む異型細胞が観察された. 細胞診断は陽性で, 免疫細胞化学では INI-1 陰性が確認され, AT/RT の転移と推定診断された.

    結論 : 術後 3 年で腰髄転移をきたし, 髄液細胞診を行った AT/RT の 1 例を経験した. 乳幼児または小児の髄液中に類円形異型細胞の増生が観察され, 特にラブドイド細胞を認めた場合, INI-1 の発現の有無を確認するための免疫染色が有用と考える.

  • 齊藤 真, 松永 竜也, 最上 多恵, ルイズ横田 奈朋, 日比谷 孝志, 古屋 充子, 佐藤 美紀子, 宮城 悦子
    2017 年 56 巻 6 号 p. 308-313
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/01/18
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    背景 : 子宮外原発悪性腫瘍の子宮転移はまれで, 特に胆囊癌の子宮転移の報告は少ない. われわれは子宮内膜細胞診で胆囊癌の子宮転移を疑いえた 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 55 歳, 4 経妊 3 経産. 胆囊癌の初回治療終了 2 年後に不正性器出血を伴う下腹痛を認め当科を受診した. 画像所見で子宮体部後壁筋層内に 30 mm の不整形で内部が不均一な腫瘤が検出された. 子宮内膜細胞診では, 比較的綺麗な背景に, 長楕円形の核を有する高円柱形の異型細胞集塊が一部重積性を伴ってシート状に出現していた. 子宮内膜組織診では, 異型腺組織が既存の内膜腺と筋層内に飛び地状に浸潤する像がみられた. いずれも典型的な類内膜癌と異なる所見で, 既往の胆囊癌の転移が疑われた. 出血の治療と確定診断目的に開腹術を施行した. 骨盤内では, ダグラス窩が子宮と直腸とに癒着した腫瘤で占拠され, 子宮の完全摘出は困難だった.

    結論 : 摘出検体の組織診では腫瘍細胞が内膜間質および筋層内に飛び地状に浸潤する既往の胆囊癌と同様の像がみられた. 免疫染色でも既往の胆囊癌検体と一致した所見であり, 最終的に胆囊癌の子宮転移と診断した.

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