日本臨床細胞学会雑誌
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57 巻, 6 号
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原著
  • 岡本 奈美, 西村 理恵子, 佐藤 正和, 山本 珠美, 田中 慎一
    2018 年 57 巻 6 号 p. 281-287
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    目的 : 著者らは, 10%緩衝ホルマリン (ホルマリン) 固定セルブロック (CB) が, 乳癌細胞診検体を用いた受容体検査に適していることを報告している. 今回は, 液状化検体細胞診 (LBC) 法の残余検体で作製した CB を検査に用いることができるかどうかを検討した.

    方法 : 乳癌切除検体腫瘍部を穿刺して細胞を採取し, ホルマリン, BD サイトリッチレッドTM保存液 (BD 液) (10 件), PreservCyt 液 (5 件), TACAS Ruby (10 件), Cellprep FNA・体腔液用バイアル (10 件), 95%エタノール (10 件) の 6 種類の固定液で固定後 CB 化し, 組織検体と同様の染色条件でホルモン受容体と HER2 蛋白に対する免疫染色と, HER2 dual in situ hybridization (DISH) を行った. それぞれの染色性についてホルマリン固定 CB 標本の染色結果を対象に比較した.

    成績 : BD 液固定のみ, ホルモン受容体および HER2 検査についてホルマリン固定と同等の安定した結果が得られた.

    結論 : BD 液固定乳癌細胞診検体 CB は, ホルマリン固定標本と同じ染色条件で受容体検査を行うことができる.

症例
  • 寺澤 憲昭, 坂谷 貴司, 川名 展弘, 小坂 達朗, 小林 美保, 鈴木 純子
    2018 年 57 巻 6 号 p. 288-293
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    背景 : 混合型腺神経内分泌癌 (mixed adenoendocrine carcinoma ; MANEC) は, 胆道系神経内分泌腫瘍において, 最も多い組織型である. しかし術前に診断しえた報告はごくわずかである. 今回, 術前細胞診で神経内分泌癌 (neuroendocrine carcinoma ; NEC) および腺癌を推定し, 組織学的にも MANEC と確認できた 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 倦怠感, 黄疸を主訴に来院した 71 歳, 男性. 内視鏡下逆行性胆道膵管造影 (endoscopic retrograde-cholangiopancreatography ; ERCP) では, 下部胆管に狭窄を認めた. 擦過・胆汁細胞診では, 細顆粒状~粗顆粒状のクロマチン, N/C 比がきわめて高い NEC を考える細胞と, 腺癌を考える細胞を認めた. 細胞転写法では, NEC と考える細胞は synaptophysin 陽性を示した. 切除検体において腫瘍は, NEC と腺癌が混在する MANEC と診断した.

    結論 : 低分化な腺癌を疑わせる細胞が出現した際は, NEC の存在の可能性を考慮することで, MANEC の正診率向上へとつながると考える.

  • 久 毅, 西村 宙起, 的田 眞紀, 金尾 祐之, 小松 京子, 杉山 裕子, 河内 洋, 竹島 信宏
    2018 年 57 巻 6 号 p. 294-299
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    背景 : 骨髄性肉腫 (myeloid sarcoma 以下 MS) は未熟骨髄細胞からなるまれな腫瘤形成性病変である. 今回われわれは外陰部から発症, 同部生検組織から診断しえた MS の 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 30 歳代, 女性. 疼痛を伴う外陰腫瘍を認め当科に受診した. 外陰腫瘍は陰核から右小陰唇に及ぶ 3.0 cm 大の隆起性病変で, 表面平滑な腫瘍であった. 初診時外陰腫瘍表面からの擦過細胞診では異常を認めず, 腫瘍を切開し, 組織採取時に作製した捺印細胞診で小円形細胞型の悪性細胞を認め, 悪性リンパ腫, 悪性黒色腫, MS などを推定した. 組織診所見では, 微細なクロマチンを有する N/C 比の高い小型球形細胞が密に浸潤増殖していた. 免疫染色にて MPO, CD34, CD13, CD117 に陽性であったことから MS と診断した.

    結論 : 本例は non-leukemic MS の症例であり, 臨床的に MS を疑うことが困難であった. 捺印細胞診により MS を推定し免疫組織化学的検査を行い早期に診断, 治療を開始することができた.

  • 八木橋 祐弥, 中田 ゆかり, 長谷川 多紀子, 楠美 智巳
    2018 年 57 巻 6 号 p. 300-306
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    背景 : 十二指腸乳頭部の大細胞神経内分泌癌 (LCNEC : large cell neuroendocrine carcinoma) は予後不良なまれな腫瘍であり, 細胞学的診断が困難であることが多い. 液状化検体標本 (LBP : liquid based preparation) が術前診断に有用と考えられた 1 例を経験した.

    症例 : 70 歳, 男性. 黄疸を主訴に当院を受診した. 乳頭部癌が疑われ, 胆管擦過細胞診が施行された. 直接塗抹標本では粘液含有性の異型細胞と低分化腺癌を疑う N/C 比の高い小型異型細胞を認めた. 後者の細胞は円~類円形核に小型核小体を認め, 細顆粒状クロマチンは不規則に分布していた. ロゼット様構造や核分裂像が散見された. 切除標本では LCNEC と診断された. 術後施行した LBP での免疫染色では, 低分化腺癌を疑った細胞に神経内分泌マーカーが陽性を示した.

    結論 : 十二指腸乳頭部 LCNEC は肺 LCNEC と同様の細胞所見を示すことが示唆されたが, 低分化腺癌との鑑別が困難であった. 胆管擦過細胞診に LBP を併用することは, LCNEC の術前診断に有用であると考えられた.

  • 坪井 智子, 高橋 恵美子, 古畑 彩子, 水野 里美, 和田 栄里子, 佐藤 允則, 櫻井 包子, 都築 豊徳
    2018 年 57 巻 6 号 p. 307-311
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    背景 : グロムス腫瘍はグロムス細胞由来の腫瘍で, 通常, 四肢末梢の軟部組織や皮膚に発生し, 内臓発生はまれである. 今回, 超音波内視鏡下穿刺吸引術 (endoscopic ultrasound-guided fine-needle aspiration : EUS-FNA) 検体で診断可能であった胃のグロムス腫瘍を経験したので, 報告する.

    症例 : 44 歳, 女性. 胃に粘膜下腫瘍が認められ, EUS-FNA が施行された. 細胞診検体では, 結合性の強い細胞集塊がみられ, 集塊中には粘液様物質や血管間質を認めた. 細胞集塊は N/C 比が高く, 均一な小型類円形核を有する細胞で構成され, 核クロマチンはごま塩状を示し, 核小体は目立たなかった. 細胞所見からカルチノイド腫瘍との鑑別を要したが, カルチノイド腫瘍とは異なり, 細胞集塊の結合性が強固で粘液様物質や豊富な血管がみられる点が鑑別に有用であった. 免疫染色の結果, αSMA, synaptophysin が陽性, CD56, chromogranin A, c-kit が陰性であった. 以上より, グロムス腫瘍と診断した.

    結論 : 詳細な形態学的観察や免疫染色が, 診断に重要であった.

短報
  • 柴﨑 洋子, 秋田 英貴, 鄭 子文
    2018 年 57 巻 6 号 p. 312-313
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/01/11
    ジャーナル フリー

    A woman aged in her 50’s was incidentally diagnosed as having a carotid body tumor, which was then completely excised.

    The cytological findings showed tumor cells arranged singly and in small clusters, with abundant or granular cytoplasm. The nuclei were round, with granular chromatin and small nucleoli. Histopathological examination of the resected tumor specimen revealed the characteristic Zellballen pattern, and immunohistochemistry revealed a diffusely positive reaction in the cytoplasm for neuroendocrine markers. Based on the findings, we diagnosed the tumor as a paraganglioma arising from the carotid body.

    We report this relatively rare case here and consider that the diagnosis of this tumor could be confirmed or supported by the characteristic cytological findings.

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