日本臨床細胞学会雑誌
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57 巻, 1 号
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原著
  • 森村 豊, 寅磐 亮子, 野口 真貴, 佐藤 奈美, 佐藤 美賀子, 神尾 淳子, 野村 真司, 添田 周, 渡辺 尚文, 藤森 敬也
    2018 年 57 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 子宮頸がん集団検診における精度向上のための, 陰性判定例の再検鏡に関する状況を明らかにし, 有効性や意義を検討する.

    方法 : 7 年間の検診で, 初回スクリーニングで NILM と判定された症例 533848 例中 20987 例にダブルチェックを行った. 再検鏡での up grade の頻度や, 組織診の結果を調査し, 初回スクリーニングの感度やダブルチェックによる偽陰性例の状況を明らかにした.

    成績 : NILM 判定 528402 例から 20987 例を再検鏡し, 再検鏡率は 3.97%であった. ASC-US 以上に up grade された症例は 44 例であった. ASC-US 16 例, ASC-H 9 例, LSIL 17 例, HSIL1 例, AGC1 例であった. 初回スクリーニングの感度は 99.8%, 偽陰性率は 0.21%と算出された. 偽陰性例から CIN1 が 12 例 (29.3%), CIN2 が 8 例 (19.5%) 検出され, CIN3 が 4 例 (9.8%) 検出された.

    結論 : 陰性標本の一部のダブルチェックで, 初回スクリーニングの感度が明らかとなった. 偽陰性例の発見率は低いものの, CIN 病変の検出も皆無ではなかった. 子宮頸がん検診の精度向上のために, ダブルチェックの重要性が明らかとなった.

  • 石岡 伸一, 金 美善, 郷久 晴朗, 寺本 瑞絵, 田中 綾一, 岩崎 雅宏, 杉田 真太朗, 長谷川 匡, 齋藤 豪
    2018 年 57 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    目的 : 妊婦子宮頸部細胞診における細胞採取は, 通常ブラシの使用は禁忌とされ綿棒が用いられることが多いが, 綿棒はブラシに比較して細胞採取量が少なく, false negative の原因ともなる. 今回同意の下, 妊婦子宮頸部細胞診を Cervex ブラシ®を用いて行い, その安全性, 有用性につき検討した.

    方法 : 179 人の妊婦に Cervex ブラシ®を用いた子宮頸部細胞診を施行, ブラシ使用に伴う出血や産科合併症の有無につき検討した. また, 妊娠前細胞診異常を認めた 5 例にブラシと綿棒擦過細胞採取を同時に行い, 細胞診結果の違いにつき検討した.

    成績 : ブラシ使用に伴う出血は 75%で全く認めず, 2 日以上続いたのは 2 例のみであった. 施行時期, 細胞診結果と出血の間に関連は認めなかった. またブラシ使用が原因と考えられた産科的合併症は 1 例も認めなかった. 綿棒擦過とブラシ擦過の同時施行例では, 5 検体中 4 検体で綿棒で細胞数不足から正確な評価ができなかった.

    結論 : 妊婦への子宮頸部細胞診は, Cervex ブラシ®使用で安全に施行可能であり, 正確な細胞診結果を得るためにも有用であった.

  • 梅澤 敬, 梅森 宮加, 堀口 絢奈, 土屋 幸子, 春間 節子, 鷹橋 浩幸, 落合 和徳, 岡本 愛光, 沢辺 元司, 池上 雅博
    2018 年 57 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    目的 : BD シュアパスTM法の HSIL で認められる, 3-D 状の hyperchromatic crowded cell groups (HCG) の出現頻度と細胞像, 生検組織診との一致率について検討した.

    方法 : サーベックスブラシ®を用いて採取し, ブラシ先端を専用バイアルに回収し, BD シュアパスTM法の手順に従い標本を作製した. 本研究は慈恵医大倫理委員会より承認を受けた [22-189 (6366)].

    成績 : BD シュアパスTM法で HSIL と評価した 250 例の平均年齢は 38.0 歳であった. 生検は 250 例中 206 例 (82.4%) で実施され, 良性 (10 例), CIN1 (43 例), CIN2 (99 例), CIN3 (47 例) および微小浸潤扁平上皮癌 (7 例), であった. HSIL での HCG の出現頻度は 69.3%であった. 生検との一致率は, 組織診が CIN2 以上で 74.3%, CIN1 以上で 95.1%であった.

    結論 : BD シュアパスTM法の HSIL では, 核分裂像や apoptotic body を含む 3-D 状の HCG が高頻度であった. その HCG は HSIL 発見の手掛かりとして重要な細胞所見であると考えられた.

班研究報告
  • 杉山 裕子, 佐々木 寛, 小松 京子, 藤山 淳三, 薮下 竜司, 上野 喜三郎, 小田 瑞恵, 矢納 研二, 植田 政嗣, 田路 英作, ...
    2018 年 57 巻 1 号 p. 19-34
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    子宮頸部細胞診による子宮頸がん検診は, 老人保健法により 1983 年より全国で開始され, 2002 年より現在の健康増進法に引き継がれている. 2012 年に策定されたがん対策推進基本計画では, 「5 年以内に受診率 50%以上」 の目標値が揚げられているが, 子宮頸がん検診の受診率は, 2013 年が 32.7%で, 欧米諸国の受診率 80%以上と比較すると極端に低いのが問題である. 検診受診率 50%以上の目標達成を考えると, 今後子宮頸部細胞診検体数が増加することは確実で, 細胞診断に携る細胞検査士や細胞診専門医の大幅な負担増加が予想される. その結果, 偽陰性すなわち, 見落とし例の増加が懸念される.

    日本臨床細胞学会では, 偽陰性を少なくするため, 細胞診断に関する精度管理の内容を定め, 細胞検査士により陰性と判定された標本の 10%以上について, 細胞診専門医もしくは細胞検査士によるダブルチェックによる再検査を推奨している. したがって現状では, 細胞検査士により陰性と判定された標本の約 90%が再検査されることなく, 陰性と報告されている. わが国が用いているこの 10%ランダム再検査に比較して自動スクリーニング支援システムを使用したほうがより効率的に偽陰性を発見できるという事実から, 米国では自動スクリーニング支援システムを精度管理目的に使用することが 1996 年 FDA で承認され, 広く用いられている.

    すでにわれわれは, 多施設共同研究として, 「子宮頸部細胞診精度管理における自動スクリーニング支援システムの有用性に関する検討」 を施行し, 細胞検査士により陰性と判定された標本を本システムで再検査した. その結果, 偽陰性すなわち, 見落とし例が 117 例 (1.19%) 検出でき, その内高度扁平上皮内病変以上と判定されたものが, 40 例 (34.2%) も検出でき, 精度管理上本システムが有用であることを報告した.

    今後子宮頸部細胞診検体数が増加する現状を考えた場合, 偽陰性を減少させる効率的なシステム作りが精度管理上喫緊の課題である. 本報告では, 自動スクリーニング支援システムの子宮頸部細胞診精度管理における有用性について概説し, 多施設共同研究の追加研究結果と合わせて報告する.

症例
  • 八木橋 祐弥, 長谷川 多紀子, 中田 ゆかり, 楠美 智巳
    2018 年 57 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    背景 : 関節液細胞診が術前診断に有用と考えられた膝関節滑膜軟骨腫症の 1 例を経験した.

    症例 : 34 歳, 女性. 1 年前に左膝を打撲後, 疼痛, 腫脹が改善せず当院を受診した. MRI 等の画像検査では関節液の増量を認めるのみで, 疾患の特定にはいたらなかった. 関節液細胞診では軟骨細胞の結節状集塊を認めた. 核は大小不同性を示し, 核密度は高く, 少数の 2 核細胞を混在していた. 細胞間には軟骨基質とみられるヘマトキシリン好染性の粘液様物質が介在していた. 関節鏡では滑膜組織塊を認め, 組織学的には既存の滑膜組織と軟骨組織により構成される遊離体であり, 軟骨細胞は細胞診同様に軽度の異型性を示した. 核や同心円状発育の像は観察されなかった. 骨化, 石灰化は明らかでなく, 原発性滑膜軟骨腫症と診断された.

    結論 : 画像検査で原因が特定できない場合, 関節液細胞診は術前診断の一助となると考えられた.

  • 上田 香織, 星 暢夫, 中野 公子, 小倉 祐紀子, 小林 美穂, 星 サユリ, 平林 かおる
    2018 年 57 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    背景 : 唾液腺導管癌 (salivary duct carcinoma : SDC) は耳下腺好発の比較的まれな高悪性度腫瘍である. われわれは肉腫様成分が多発転移した耳下腺原発の唾液腺導管癌を経験したので報告する.

    症例 : 70 歳代, 女性. 左耳下腺腫瘍に対しての術前の穿刺吸引細胞診では, 腫瘍細胞が重積性集塊でみられ, 悪性の判定であったが組織型の推定にはいたらなかった. 手術で摘出された腫瘍部捺印細胞診では, SDC に矛盾しない細胞像が観察された. 顎下腺およびリンパ節摘出検体の組織診においては, 腺癌成分とともに肉腫様成分が認められ, 2 つの成分に移行像がみられた. 初回治療の 9 ヵ月後には, 肺・副腎に転移をきたし, 気管支擦過細胞診では, 肉腫様細胞が観察された.

    結論 : SDC の細胞診断では, 典型的な細胞像だけでなく, 亜型の存在や転移による細胞像の変化を念頭において総合的に判定する必要がある.

  • 成富 真理, 畠 榮, 高須賀 博久, 日野 寛子, 物部 泰昌
    2018 年 57 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    背景 : 髄液で診断しえた中枢性神経細胞腫の 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 30 歳代, 女性. 会社で転倒, 前額部を打撲したため当院受診. 意識消失なく, 頭痛や嘔吐等の症状はみられなかった. 画像検査で右側脳室に 43 mm 大の分葉状腫瘤を認めた. 内視鏡下脳室内腫瘍生検施行時, 髄液が採取され, 液状化検体細胞診を行った. 比較的均一な異型細胞が大~小集塊あるいは散在性に多数認められた. 異型細胞は, 細胞質がライトグリーンに淡染, 核は類円形, 核クロマチンはごま塩状, 核小体は不明瞭であった. 一部にロゼット様配列や線維状構造物がみられた. 免疫細胞学的に synaptophysin が陽性であった. 組織学的には, 細胞境界明瞭な小型類円形細胞が繊細な小血管を伴いながらシート状に増殖し, ところどころで Homer Wright 型ロゼットを形成していた. 免疫組織学的には synaptophysin 陽性で, MIB-1 index は 3%であった. 中枢性神経細胞腫, WHO grade Ⅱと診断した.

    結論 : 髄液検体でも積極的に LBC 法を活用し, 免疫染色を併せることで, 的確な診断が可能であった.

  • 吹谷 美佳, 丸川 活司, 清水 知浩, 宮越 里絵, 安孫子 光春, 畑中 佳奈子, 三橋 智子, 松野 吉宏
    2018 年 57 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    背景 : IgG4 関連疾患は全身諸臓器に多彩な病態を呈するが, 体腔液中の細胞所見に関する報告は少ない. 今回, 臨床像等から IgG4 関連疾患と考えられた 1 例の胸水中に IgG4 陽性形質細胞浸潤を証明できたので報告する.

    症例 : 70 歳代, 女性. CT にて両側胸水, 心囊液貯留, 胸膜の軽度肥厚を認めた. 血中 IgG および IgG4 とも高値であった. 悪性疾患除外目的に胸水穿刺された. 胸水細胞像では小リンパ球主体の背景に, 異型の乏しい形質細胞が多数みられた. 明らかな悪性細胞は確認できず, 臨床所見から IgG4 関連疾患が疑われたが, 組織生検標本や細胞診標本での IgG4 陽性形質細胞の証明や形質細胞腫瘍の否定が困難であった. 胸水セルブロック切片の細胞所見も同様であったが, 免疫組織化学染色にて IgG 陽性形質細胞の約 50%強が IgG4 陽性を示した. Ig 軽鎖制限は認めず, 臨床所見など総合的に考慮し IgG4 関連疾患に伴う形質細胞浸潤と判断した.

    結論 : 本例では, セルブロックを併用したことにより IgG4 陽性形質細胞の証明や腫瘍性疾患の除外が可能となった. IgG4 関連疾患の診断のためには体腔液細胞診とセルブロック作製も有用な情報を提供すると思われる.

  • 齋藤 知央, 渡邊 弥生, 西尾 淳, 加藤 浩, 伊藤 修, 立山 尚
    2018 年 57 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    背景 : 子宮頸部小細胞癌はまれな腫瘍で早期から遠隔転移をきたし, 予後が不良である. 今回われわれは子宮頸部原発の小細胞癌の 3 例を経験したので報告する.

    症例 : 症例 1. 80 歳代, 水様性帯下と不正性器出血を主訴に来院. 症例 2. 50 歳代, 下腹部痛と不正性器出血を主訴に来院. 症例 3. 70 歳代, 不正性器出血を主訴に来院. いずれの症例も子宮頸部に腫瘤を認め, 細胞診と生検が施行された. 細胞診では壊死性の背景に裸核状の腫瘍細胞を散在性, 集塊状に多数認め, 一部に異型扁平上皮と異型円柱上皮を少数認めた. 組織学的にはクロマチンの増加した核を有する胞体の乏しい細胞が密に増殖し, 一部に扁平上皮癌と腺癌の成分がみられた. 免疫染色で CD56, synaptophysin, NSE が陽性となり, 子宮頸部小細胞癌と診断された. p16 がびまん性に陽性となり, HPV との関連が示唆された. また, 2 例で c-kit が局所的に陽性となった.

    結論 : 小細胞癌はまれではあるが予後不良であり, 扁平上皮癌や腺癌の成分を伴うことがあることから, 正確な診断が重要である. 2 例で c-kit が陽性となり, 分子標的治療等を含めた今後の検討が期待される.

短報
  • 蛭子 佑翼, 石田 光明, 岡本 久, 植村 芳子, 蔦 幸治
    2018 年 57 巻 1 号 p. 62-63
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー

    A case of prostatic ductal adenocarcinoma demonstrated in the bladder washing fluid specimen prompted us to write a case report.

    An 80-year-old man presented with gross hematuria. Cytological examination of bladder wash specimens revealed tight aggregates of tall columnar cells showing a papillary structure, peripheral nuclear palisading, and glandular formation. The neoplastic cells had large round-to-oval nuclei containing conspicuous nucleoli and vesicular chromatin. Immunocytochemically, the tumor cells showed positive staining for PSA.

    Prostatic ductal adenocarcinoma must be included in the differential diagnosis when atypical tall columnar cells are detected in urine/bladder wash specimens. The combination of the cytological features and positive immunocytochemical staining for PSA helps in the differential diagnosis.

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