日本臨床細胞学会雑誌
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58 巻, 4 号
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原著
  • 羽場 詩穂美, 青野 佳美, 近 京子, 櫻田 晃, 遠藤 千顕, 齋藤 泰紀
    2019 年 58 巻 4 号 p. 149-154
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/02
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    目的 : 気管支肺胞洗浄液 (以下 BAL 液) の細胞診においては, 喀痰に比較して反応性 II 型肺胞上皮の細胞所見が明瞭に観察されるため, 細胞像の検討を行った.

    方法 : 2011 年 4 月から 2016 年 7 月に当施設に依頼された BAL 液検体のうち反応性 II 型肺胞上皮が出現した 12 例の細胞像を観察した.

    成績 : 症例間の細胞異型の程度や出現数の差はあるが, 反応性 II 型肺胞上皮細胞に共通する細胞像が観察された. 十数個までの小乳頭状の細胞集団が出現し, 腫大する核, 著明な核小体がみられた. 孤立性細胞もみられ, ときとして大型のものがみられることもあった. 細胞質は泡沫状のもの・大小の多数の空胞を有するもの・厚みのある均質な細胞質を有するものと 3 種類の所見が各症例にみられた. Collagen globule・Mallory body も時に出現していた.

    結論 : BAL 液細胞診における反応性 II 型肺胞上皮細胞の共通する細胞像を把握し, 出現する背景病変を理解することにより, 各種呼吸器細胞診において異型腺系細胞がみられた場合は安易に腺癌とせず, 少しでも疑った場合には, 必ず臨床情報について時間的な推移を含めて問い合わせることが重要である.

  • 髙橋 宏太朗, 加勢 宏明, 横田 有紀, 古俣 大, 五十嵐 俊彦
    2019 年 58 巻 4 号 p. 155-161
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    目的 : 妊娠中に CIN3 と診断された症例の転帰を検討した.

    方法 : 2010 年 1 月〜 2016 年 12 月の分娩 7408 件のうち, 妊娠初期に CIN3 と診断された 23 例 (0.31%) を対象とした. 妊娠中は保存的管理とし, 分娩後に再評価した. 臨床病理学的経過を後方視的に検討した.

    成績 : 妊娠初期の CIN3 に対する頸部細胞診の感度は 43.5%であった. AIS 合併例と中期中絶例を除外した全 21 例中, 分娩後に浸潤癌に進展した症例は認めず, 分娩後も CIN3 を認めた群 (持続群) が 8 例 (38.1%), 分娩後に病変が退縮した群 (退縮群) が 13 例 (61.9%) であった. 持続群と退縮群で喫煙率, 頸部細胞診異常の既往, 妊娠初期コルポスコピーの病変占拠率, 組織診生検数, 分娩様式, 出生児体重, 分娩時間に有意差は認めなかった. 妊娠後半期に施行した頸部細胞診が HSIL (CIN3 疑い) の症例が持続群で有意に多かった (p=0.02). 退縮群で分娩後 24 ヵ月以上経過観察された 11 例中 4 例 (36.4%) が再度 CIN3 の診断にいたった.

    結論 : 妊娠中に CIN3 が退縮する可能性が示唆された. 退縮した場合も長期的な経過観察が重要である.

  • —病理組織診断および転帰に関する検討—
    今福 仁美, 蝦名 康彦
    2019 年 58 巻 4 号 p. 162-166
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    目的 : 子宮頸部細胞診 atypical squamous cells, cannot excluded high-grade squamous intraepithelial lesion (ASC-H) 判定例の臨床的取り扱いにおける留意点を明らかにする.

    方法 : 2010 年 1 月から 2016 年 12 月までの期間に, ASC-H と判定して子宮頸部組織診を施行した 80 人を対象とした. 初回組織診検査結果, 経過観察例における臨床的転帰について検討した.

    成績 : 初回の組織診結果は, cervical intraepithelial neoplasia (CIN) 3 が 30 人 (37.5%) と最も多く, 次いで CIN1 10 人 (12.5%), CIN2 9 人 (11.3%), 子宮頸癌 IA 1 期 4 人 (5.0%), 子宮体部癌肉腫 1 人 (1.2%) であった. CIN2 以上の診断となったものは, 44 人 (55.0%) であった. 初回の組織診結果が良性で経過観察を行った 22 例のうち, 6 例 (27.3%) が中央値 16 ヵ月 (範囲 10〜32 ヵ月) で, CIN2〜3 の組織診断となった.

    結論 : ASC-H 判定例においては, CIN2 以上の組織診断となる頻度が高く, すみやかなコルポスコピー下生検が必須である. また, 初回の組織診結果が良性であっても, 経過観察中に high-grade CIN と診断される頻度が高く, 厳重なフォローアップが必要である.

症例
  • 西村 宙起, 宇津木 久仁子, 杉原 武, 久 毅, 岡本 三四郎, 杉山 裕子, 高澤 豊, 竹島 信宏
    2019 年 58 巻 4 号 p. 167-171
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/02
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    背景 : 他臓器癌の女性内性器への転移は大部分が卵巣転移であり, 子宮転移はまれである. 今回, 胆管癌既往のある患者における転移性子宮体癌を経験した.

    症例 : 77 歳, 女性. 3 妊 3 産. 75 歳時に肝門部胆管癌 stage ⅣA の既往がある. CT で子宮内膜肥厚を指摘され当科紹介となった. 子宮内膜細胞診陽性, 組織診にて類内膜腺癌 Grade 1 と診断された. 子宮体癌 ⅠA 期相当と考え手術を施行した. 子宮体部左側と S 状結腸間に高度な癒着を認めたため, 単純子宮全摘術, 両側付属器切除術, および直腸低位前方切除術を施行した. 術後病理組織診にて胆管癌の子宮・S 状結腸転移と診断され, 消化器内科にて化学療法の方針となった.

    結論 : 過去の報告において, 他臓器癌の子宮への転移は卵巣転移に比べてまれであり, 特に胆管癌の転移はきわめてまれである. 本例は術後の検討により, 胆管癌腹膜播種からの子宮・S 状結腸浸潤の可能性が考えられた. 本例においては胆管癌の細胞像および組織像が原発性子宮体癌と類似した形態であったこと, 術前細胞診, 組織診提出時に既往歴が伝わっていなかったことが正しく術前診断ができなかった理由と考える. 他臓器癌の既往のある場合には転移性子宮癌も鑑別診断に加える必要があることが再認識された.

  • 成富 真理, 畠 榮, 高須賀 博久, 日野 寛子, 物部 泰昌
    2019 年 58 巻 4 号 p. 172-177
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

    背景 : 胸水細胞診標本で好酸性細胞質封入体を認めた尿路上皮癌の 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 60 歳代, 男性. 脳梗塞で経過観察中, 尿潜血が持続していた. 腹部 CT 検査で, 右腎盂尿管移行部から上部尿管に造影効果を示す壁肥厚を認めた. 尿細胞診で尿路上皮癌と診断, 右腎尿管全摘術が施行され, 浸潤性尿路上皮癌と診断した. 1 年 3 ヵ月後, 右胸水貯留し細胞診を行った. 右胸水 LBC 標本では, 異型細胞が散在性あるいは集合性に多数出現していた. 異型細胞の細胞質は淡明, 核は類円〜楕円形, 核小体は明瞭であった. 異型細胞の 28%で, 細胞質内にライトグリーン濃染性の好酸性細胞質封入体を認めた. また, 同様の物質が細胞外にもみられた. 好酸性細胞質封入体は Giemsa 染色で異染性, アルシアンブルー染色および PAS 反応で陽性を示し, 胸水セルブロック標本の免疫組織化学で CK7, CD10, CD138, MUC1, E-cadhelin, laminin に陽性であった.

    結論 : まれな尿路上皮癌の胸腔播種例で, 細胞質および細胞外に好酸性細胞質封入体がみられた. 今後, 症例を増やし, 好酸性細胞質封入体の有用性について検討する必要がある.

短報
  • 岡田 壮士, 加藤 哲子, 大鹿 周佐, 鎌滝 章央, 黒瀬 顕
    2019 年 58 巻 4 号 p. 178-179
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/02
    ジャーナル フリー

     We report herein on a juxtacortical Ewing sarcoma of the humerus in an 8-year-old girl. Radiological findings revealed a periosteal mass with periosteal reaction, suggestive of a periosteal osteosarcoma, chondrosarcoma or chondroma. Imprint cytology on site, however, showed uniform small round cells with round nuclei containing fine chromatin and scanty cytoplasm. Subsequent genetic analysis using the fresh specimen showed EWSR1-FLI1 fusion gene transcripts. The pathological findings revealed that the tumor was composed of small round cells that were immunoreactive with CD99 and NKX2.2. In this case, imprint cytology played a pivotal role in guiding the genetic analysis and confirming the diagnosis of a juxtacortical Ewing sarcoma.

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