日本臨床細胞学会雑誌
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59 巻, 4 号
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原著
  • 浜島 裕理, 松田 陽子, 江坂 四季音, 鈴木 明美, 今泉 雅之, 白幡 浩人, 木曽 有里, 児島 宏哉, 木村 勇里, 野中 敬介, ...
    2020 年 59 巻 4 号 p. 165-173
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/10
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    目的 : EUS-FNA は侵襲があるため, 十分な検体量を採取する方法を決定することは重要である. 本研究では, 穿刺時の陰圧の有無や順番, 穿刺回数による細胞像の違いを検討した.

    方法 : 2015~2016 年に当施設で EUS-FNA の 4 回穿刺を施行し, 組織学的に膵癌と診断された 37 例を対象とした. 1, 2 回目はシリンジによる 10 ml 陰圧, 3, 4 回目は自然陰圧で穿刺する群を “陰圧先群”, 1, 2 回目を自然陰圧, 3, 4 回目を 10 ml 陰圧の群を “陰圧後群” の 2 群に分け, 4 回それぞれの細胞診標本を作製した. 異型細胞量, 非結合性, 壊死量, 血液量, 正常細胞量をスコア化, 統計解析した.

    成績 : 陰圧後群では穿刺 2 回目の異型細胞が最も多く, 3, 4 回目に少なくなった. 陰圧先群では 4 回目で異型細胞が最も多かった. 陰圧先群に比べ, 陰圧後群のほうが 1, 2 回目と 3, 4 回目ともに異型細胞を多く認めた. また, 結合性の強さと異型細胞量は正の相関を示した.

    結論 : 膵癌症例の EUS-FNA では, 最初に陰圧をかけないほうが異型細胞を多く採取できる可能性が示唆された. 結合性の弱い膵癌では異型細胞が少なくなるため, 少数の異型細胞を見落とさないことが重要である.

  • 森 正樹, 木戸 尚治, 津森 太亮, 平野 靖, 稲井 邦博, 樋口 翔平, 今村 好章
    2020 年 59 巻 4 号 p. 174-180
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/10
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    目的 : 婦人科頸部細胞診検体を対象に, deep learning による人工知能 (artificial intelligence : AI) 構築に必要となる, デジタル画像取得時の条件について検討を行った.

    方法 : 学習・検証用画像には 20 倍, 40 倍の倍率で撮影した 451 枚 (20 倍 : 187 枚, 40 倍 : 264 枚) の細胞診画像に含まれる 996 個の細胞画像を用いた. ベセスダシステムに基づき分類した NILM, ASC-US, LSIL, ASC-H, HSIL, SCC の各細胞にラベル付け (アノテーション) を行った. また NILM は NILM 群, ASC-US・LSIL は low-risk 群, ASC-H・HSIL・SCC は high-risk 群と 3 群のカテゴリに再分類した. AI は物体検出モデル Faster R-CNN で構築し, 画像を入れ替えて検出と分類を 5 回行い, 平均適合率と平均再現率を求めた.

    成績 : いずれの群においても 40 倍画像を用いた AI が, 平均適合率, 平均再現率ともに, 良好な結果を示した.

    結論 : 細胞診においても AI 活用の可能性が示唆される一方, 微細な細胞構築の認識が重要な細胞診における AI 構築には, 高倍率で取得した高精細画像の活用が不可欠と考えられた.

症例
  • 黒須 博之, 山崎 龍王, 小林 織恵, 小林 弥生子, 櫻井 うらら, 梅澤 聡
    2020 年 59 巻 4 号 p. 181-185
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/10
    ジャーナル フリー

    背景 : 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌は早期診断・治療が難しく, 約半数が Stage Ⅲ, Ⅳ期で発見される. 子宮内膜細胞診のみ陽性で, 画像検査では病変を指摘できず, 術中に腹膜漿液性癌と診断した 1 例を報告する.

    症例 : 54 歳, 未閉経, 5 妊 4 産. 検診で子宮内膜細胞診疑陽性となり近医を受診し, 再検で子宮内膜細胞診陽性となり当院紹介となった. 子宮内膜組織診を繰り返し施行したが, 異常所見は認めなかった. 1 年後に不正性器出血を認め当院再診となり, 子宮内膜細胞診で再度陽性となった. 子宮内膜組織診では癌細胞を認めず, MRI, PET-CT, 子宮鏡検査では明らかな病巣を指摘できなかった. 4 ヵ月後の子宮内膜細胞診再検でも陽性となり, 明らかな原発病変は指摘できなかったが, 子宮体部漿液性癌の可能性を考え, 手術療法を施行した. 開腹時, 両側卵巣表面に砂粒状の病変を認め, 組織診にて high-grade serous carcinoma の診断となった.

    結論 : 子宮内膜細胞診異常が, 卵巣癌・卵管癌・腹膜癌の発見の契機となる場合がある. 画像検査で病巣の特定が困難な場合では, 診断的な手術療法も含めた治療方針の検討が必要であると考えられた.

  • 荒川 文子, 田島 秀昭, 若林 僚, 小川 勝, 當銘 良也, 石田 剛
    2020 年 59 巻 4 号 p. 186-191
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/10
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    背景 : 腎ラブドイド腫瘍 (rhabdoid tumor of the kidney : RTK) は乳児期に好発するきわめて予後不良でまれな悪性腫瘍で, ラブドイド細胞の出現を特徴とし, 免疫染色では Cytokeratin と Vimentin に陽性で INI1 は陰性である. RTK の成人症例を経験したので報告する.

    症例 : 33 歳, 女性. CT で左腎に径 14 cm の腫瘤がみられ, 腎腫瘍摘除術施行. 摘出腫瘍の割面捺印標本で, 多数の中等大から大型の異型細胞が散在性に認められ, 腫瘍細胞の結合性は弱かった. 核は偏在傾向であり, 類円形から軽度不整形の核を有し, 核小体は腫大し明瞭であった. 細胞質内の封入体様構造は, パパニコロウ染色やギムザ染色では不明瞭であったが, HE 染色ではエオジンに濃染し認識しやすかった. 腎発生の腫瘍で, 組織学的にはラブドイド細胞を含む異型細胞が出血と壊死を伴いびまん性に増殖していた. 免疫染色で腫瘍細胞は Cytokeratin, Vimentin, EMA, Neurofilament に陽性, INI1, Desmin, Myogenin は陰性であった. 以上より RTK と診断した.

    結論 : ラブドイド細胞にみられる硝子様好酸性細胞質内封入体様構造は HE 染色標本で, 認識しやすい. 非常にまれな腫瘍だが, きわめて予後不良で迅速な診断が求められることから, 推定診断には, 発生部位, 詳細な細胞所見と免疫染色に加え, HE 染色の併用が望ましいと考える.

  • 久和 美咲, 楠木 麻子, 柴﨑 洋子, 小池 昇, 秋田 英貴, 鄭 子文, 元井 亨
    2020 年 59 巻 4 号 p. 192-196
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/10
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    背景 : 脊索腫 (chordoma) は胎児期脊索に由来する比較的まれな悪性骨腫瘍である. 今回われわれは左胸壁に発生した脊索腫の 1 例を経験したので報告する.

    症例 : 80 歳代, 男性. 左胸壁に皮下腫瘤を指摘され, 組織生検で脊索腫と診断された. 経過観察していたが, 腫瘤に増大傾向を認めたため, 腫瘍摘出術を施行した. 摘出された腫瘍の割面はモザイク状に乳白色調の領域と灰白色調の領域が混在する充実性病変で境界はおおむね明瞭であった. 捺印細胞診では粘液基質様の背景に上皮様結合を有する多稜形の腫瘍細胞が大小の細胞集塊を形成して出現し, 類円形様の核内封入体をもつ細胞を多数認めた. 細胞質はライトグリーンに淡染し, 坦空胞細胞も認められた. 組織標本では上皮様細胞や坦空胞細胞がシート状および索状に配列し, 周囲には粘液状基質を伴っていた. 偏在性に核内封入体を多数含む腫瘍細胞もみられた. これらの腫瘍細胞の核は免疫化学染色で brachyury に陽性を示した. 以上の所見より脊索腫と診断した.

    結論 : 中心骨外発生の脊索腫 (extra-axial chordoma) はまれであり, その診断は困難であるが, 本例は, 組織像・細胞像のいずれも脊索腫に特徴的な所見を示しており, 免疫組織化学的にも brachyury が陽性を示し, 診断しえた.

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