日本がん看護学会誌
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13 巻, 1 号
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総説
原著
  • 片岡 純, 佐藤 禮子
    1999 年 13 巻 1 号 p. 14-24
    発行日: 1999年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,終末期がん患者にとってケア提供者のどのような関わりがケアリングとなるかを明らかにすることである.8名を対象に,主な調査内容として対象者が支援,援助されたと感じ,安心や安寧が得られた関わりを,参加観察法,面接法によって調査した.質的分析を行い,以下を明らかにした.

    ケア提供者の関わりには,〈気遣う〉〈意志を尊重する〉〈存在の価値を認める〉〈自立を助ける〉など16のケアリングとなった関わりがあった.さらに患者にとって関わりがケアリングとなった意味において,16の関わりは,1)ケア提供者への信頼が深められるケアリング,2)サポートされていることに気づくことができるケアリング,3)希望が支えられるケアリング,4)自己の限界を受容しながら苦難に立ち向かえるケアリング,5)自己の安定が保たれるケアリングの5つに分類された.ケア提供者には専門職者と非専門職者が含まれた.

    ケアリングは,終末期がん患者に,自己の限界や苦悩をあるがままのものとして認めさせ,自分らしく生きることを可能にした.このことは,ケアリングが,終末期がん患者の自己実現を助けるものであると考える.看護者は終末期がん患者の自己実現を助けるために,ケアリングとなる関わりを意図的に行うとともに,家族がケアリングの提供者となりうるよう援助することが必要である.

  • 伊藤 直美, 宮下 光令, 小島 通代
    1999 年 13 巻 1 号 p. 25-34
    発行日: 1999年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    要 旨

    退院後の大腸ストーマ造設患者(61名)を対象に,セルフケアの状況,退院後に受けた医療・社会的支援の経験とニーズの側面から,退院後に必要な具体的支援内容を検討した.データ収集は質問紙と診療録より行い,50名より有効回答を得た.セルフケアの状況については,ストーマとその周囲の変化の観察を実施しているという回答が少なかった.さらに,ストーマとその周囲の観察の実施は,医療従事者からそれに関する支援を受けた経験と関連していた.また,退院後に受けた支援とニーズについては,日常生活や退院後長期にわたるケアに関する支援内容において,回答割合に大きな差がみられた.また,退院後の支援内容により,患者が望む支援者の対象に違いがみられた.以上の結果から,退院後,ストーマとその周囲の変化の観察に関する内容,日常生活や退院後長期にわたるケアに関する内容とともに,より具体的な内容の支援の必要性が示唆された.

  • 高見沢 恵美子, 佐藤 禮子
    1999 年 13 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 1999年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    要 旨

    人工肛門造設患者の生活の主観的評価に関連する認識の変化を予測し援助を行うために,人工肛門造設患者と直腸癌で手術を受け人工肛門を造設しなかった患者を比較し,縦断的変化を明らかにした.

    人工肛門造設患者に特徴的な認識の変化は,生活の主観的評価が退院前に低下し,退院後徐々に回復することであった.人工肛門造設患者の生活の主観的評価の低下をできるだけ少なくするためには,術後起こる認識の変化と対処について術前教育を行うことが必要であると考えられた.

    直腸癌で手術を受けた患者に共通する認識の変化は,積極的生活姿勢,健康的生活,排便の負担感,および食事の満足の変化であった.退院後積極的生活姿勢,および排便の負担感は増加し,健康的生活は退院前に低下し退院後も回復せず,食事の満足は人院中に低下し退院後に回復していた.直腸癌で手術を受けた患者は,術後積極的生活を心がけているが,健康的生活を感じられるようになるには,ある程度期間が必要であると考えられた.排便の負担感については,退院後も継続した援助が必要であると考える.また,食事に関しては,入院中食事の満足感が得られるよう改善していく必要があると考える.

  • ―手術前状況に関する記述的研究―
    真壁 玲子
    1999 年 13 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 1999年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    要 旨

    乳がん体験者の手術前状況におけるソーシャル・サポートの意味を知ることを目的とし,面接による記述的研究を行った.対象者は,「乳がん」と診断され手術を受けるために入院している日本人女性16名である.半構成式質問を含むインタビューガイドを用いて面接を行い,その内容を分析した.主な分析結果は,サポートを意味する表現として「気づかい」,「心配」,「心の支え」などが用いられた.また,サポートのプラスとマイナスの両側面を示し,プラス側面については他者から対象者へ,対象者から他者へという2方向が示された.サポートの欠如を例とするマイナス側面も示された.ネットワークとしては,家族や友人,親族,職場の人であったが,対象者の背景により特徴を示し,既婚者では夫が,未婚者では両親が主なネットワークであった.西欧諸国で行われた乳がん体験者のソーシャル・サポートの研究結果と比較し,医療者は乳がん体験者のみならず,ネットワークをも含めたケア提供が必要であることを考察した.

  • 今泉 郷子, 遠藤 恵美子
    1999 年 13 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 1999年
    公開日: 2017/03/28
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,入退院を繰り返しながら化学療法を受ける胃がん患者が,遭遇する問題を乗り越えて治療を継続していく体験としてのプロセスを明らかにすることを目的に,クラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて行った.A大学病院で入退院を繰り返しながら化学療法を受けている胃がん患者の遭遇する問題を乗り越える体験としてのプロセスには,次の3つの局面が見いだされた.局面1:今までと全く違う体験を重ね,コントロール感覚を失い辛く哀しい気持ちに陥っていく,局面2:とらわれていた自分に気づき気持ちを切り換えていく,局面3:新しいコントロール感覚をつかみ楽になっていく.局面1で胃がん患者を追い込んでいくものは,食に関する束縛感と周囲の人々との関係から生まれる束縛感であった.局面2は入退院を繰り返しながら化学療法を継続していくための患者にとって重要なターニングポイントとなっていた.そして局面2を転換期として局面3に向かわせるかどうかの要因としては,自分ががんであることを知っているか,自己の限界を悟るような体験があるか,家族や周囲の人々の働きかけを支えと感じられるかという点が考えられた.

    本研究結果から対象者たちが遭遇する問題を乗り越え治療を継続する体験としてのプロセスには,窮地の状況に自分を追い込まないために,がん自体や治療に伴う苦痛を取り除くだけではなく,とらわれから自分を解放するという重要な点が見いだされた.その転換を遂げるためには,とらわれていた自分に気づき,辛く苦しい状況を自分の経験として受け止めていくことが必要であり,看護職者はこの点での援助の必要性が示唆された.

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