要 旨
本研究の目的は,終末期がん患者にとってケア提供者のどのような関わりがケアリングとなるかを明らかにすることである.8名を対象に,主な調査内容として対象者が支援,援助されたと感じ,安心や安寧が得られた関わりを,参加観察法,面接法によって調査した.質的分析を行い,以下を明らかにした.
ケア提供者の関わりには,〈気遣う〉〈意志を尊重する〉〈存在の価値を認める〉〈自立を助ける〉など16のケアリングとなった関わりがあった.さらに患者にとって関わりがケアリングとなった意味において,16の関わりは,1)ケア提供者への信頼が深められるケアリング,2)サポートされていることに気づくことができるケアリング,3)希望が支えられるケアリング,4)自己の限界を受容しながら苦難に立ち向かえるケアリング,5)自己の安定が保たれるケアリングの5つに分類された.ケア提供者には専門職者と非専門職者が含まれた.
ケアリングは,終末期がん患者に,自己の限界や苦悩をあるがままのものとして認めさせ,自分らしく生きることを可能にした.このことは,ケアリングが,終末期がん患者の自己実現を助けるものであると考える.看護者は終末期がん患者の自己実現を助けるために,ケアリングとなる関わりを意図的に行うとともに,家族がケアリングの提供者となりうるよう援助することが必要である.
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