要 旨
本研究の目的は,日本人乳がん体験者のソーシャル・サポートと精神的・身体的状況について経時的に捉えた実態と変容を知ることである.乳がんと診断され手術療法を受ける日本人女性(N=60)を対象に手術前(Time Ⅰ),手術後2週(Time Ⅱ),手術後1ヵ月(Time Ⅲ),手術後6ヵ月(Time Ⅳ),手術後1年(Time Ⅴ)の5回にわたりデータを収集した.精神的状況を測定するため精神健康調査票を,ソーシャル・サポートのプラス側面であるサポートとマイナス側面であるコンフリクトを測定するためにインターパーソナル・リレーションシップ・インベントリーを使用した.記述統計と反復測定による分散分析により分析を行った.
各変数の経時的な変容に関する分析結果は,身体的状況のみが有意差(F(4,236)=66.06,p<0.0001)を示した.Tukeyによる多重比較を行った結果,この有意差は手術前(M=0.42,SD=0.70)と手術後2週(M=3.08,SD=1.33)の間,手術前と手術後1ヵ月(M=3.33,SD=1.56)の間,手術前と手術後6ヵ月(M=3.03,SD=1.59)の間であった.また,精神的状況,サポート,コンフリクトに関する経時的な有意な変容を示さなかったが,各期におけるそれぞれの傾向を示した.
以上の結果から,看護者はこのような日本人乳がん体験者の手術前後の一連の過程におけるソーシャル・サポート,精神的状況や身体的状況に関する経時的な変容を知り,ケア提供すべきであることを示唆した.
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