日本がん看護学会誌
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16 巻, 2 号
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原著
  • 濱田 由香, 佐藤 禮子
    2002 年 16 巻 2 号 p. 15-25
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/02/27
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    要 旨

    本研究の目的は,終末期がん患者が抱く希望,および希望が変化する状況を明らかにし,終末期がん患者が生きる力となるような希望を抱くための看護介入のあり方を検討することである.7名の終末期がん患者を対象に,希望に関する内容について,参加観察法,面接法によって調査し,質的分析を行い,以下を明らかにした.

    終末期がん患者は,ほぼ全経過において複数の希望を表出しており,表出された希望は時間の推移と共に希望の内容や,成り行きに関わる認知や感情,行動が変化していた.終末期がん患者の抱く希望は最終的に,「思いのままに生きる」「家族とのつながりの中で生きる」「他者とつながっている」などの12の希望にまとめられた.さらに,得られた希望に含まれる意味内容から,1)自由で自立した自己,2)家族愛,3)社会的自己,4)生きざま,5)安寧,6)回復意欲,7)元の自分,8)自己の存在,9)他力志向,10)信仰心,11)生かされる自己,の11の希望の本質が抽出された.

    希望の本質は,終末期がん患者にとって生きる力となる希望の源であると考える.終末期がん患者が最期まで生きる力となるような希望を抱くための看護目標とは,患者が希望の本質を保持し希望を芽生えさせることができるような環境を整えること,希望のプロセスに関わり患者の希望を支え育むような働きかけをすることである.

  • 犬飼 昌子, 掛橋 千賀子, 安酸 史子, 高井 研一
    2002 年 16 巻 2 号 p. 26-34
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/02/27
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    要 旨

    本研究の目的は,告知を受けた27名のがん患者の療養上における自己決定行動の実態を明らかにすることである.半構成的面接から得られたデータを質的帰納的に分析した結果,自己決定行動には《医師・病院の選択》《医療者との良い関係づくり》《専門家に任せることを決定》《症状・検査・治療に関する疑問解決行動》《診断・予後に関する希求行動》《治療方針・治療処置への参加に関する自律的行動》《予防的保健行動》《病気に関連した自己管理行動》《自己防衛行動》《闘病生活のための環境調整》《リプレイミンク》《自分らしさの演出》という12カテゴリーの自己決定行動が抽出された.さらにそれは,【医療に関する行動】【セルフケアに関する行動】【ウェルネスに関する行動】の3コアカテゴリーに集約されていた.がん患者は療養を継続していく過程で医療や生活面でさまざまな自己決定行動をとっていること,またそれは自律と依存の2つの側面を併せ持っていることなどが判明した.

  • 真壁 玲子
    2002 年 16 巻 2 号 p. 35-45
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,日本人乳がん体験者のソーシャル・サポートと精神的・身体的状況について経時的に捉えた実態と変容を知ることである.乳がんと診断され手術療法を受ける日本人女性(N=60)を対象に手術前(Time Ⅰ),手術後2週(Time Ⅱ),手術後1ヵ月(Time Ⅲ),手術後6ヵ月(Time Ⅳ),手術後1年(Time Ⅴ)の5回にわたりデータを収集した.精神的状況を測定するため精神健康調査票を,ソーシャル・サポートのプラス側面であるサポートとマイナス側面であるコンフリクトを測定するためにインターパーソナル・リレーションシップ・インベントリーを使用した.記述統計と反復測定による分散分析により分析を行った.

    各変数の経時的な変容に関する分析結果は,身体的状況のみが有意差(F(4,236)=66.06,p<0.0001)を示した.Tukeyによる多重比較を行った結果,この有意差は手術前(M=0.42,SD=0.70)と手術後2週(M=3.08,SD=1.33)の間,手術前と手術後1ヵ月(M=3.33,SD=1.56)の間,手術前と手術後6ヵ月(M=3.03,SD=1.59)の間であった.また,精神的状況,サポート,コンフリクトに関する経時的な有意な変容を示さなかったが,各期におけるそれぞれの傾向を示した.

    以上の結果から,看護者はこのような日本人乳がん体験者の手術前後の一連の過程におけるソーシャル・サポート,精神的状況や身体的状況に関する経時的な変容を知り,ケア提供すべきであることを示唆した.

  • 国府 浩子, 井上 智子
    2002 年 16 巻 2 号 p. 46-55
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/02/27
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    要 旨

    本研究は,乳がん患者の術式選択に影響を及ぼす要因を明らかにし,乳がん患者のよりよい術式選択への看護支援を検討することを目的とした.乳がんのⅠまたはⅡ期と診断され,医師から術式選択を任された患者18名を対象として,半構成的面接調査と参加観察を実施し,得られたデータを分析した.

    その結果,乳房温存術に傾く要因は,入院前後を通して「温存可能な状況」「治療成績」「乳房に対する価値観」が多く,乳房切除術に傾く要因は,入院前後を通した「乳房温存術の欠点」「がんの不確かさ」,入院後にみられる「入院後の周囲の勧めや体験」が多かった.これらの要因は,『がんの不確かさ』『治療方法の変化と治療成績に関すること』『乳房温存術の適応に関すること』『術式の利点・欠点に関すること』『周囲の人の勧めや体験』『あいまいな情報』『個人特性』の7つにまとめられた.

    以上の結果より,乳がん患者の術式選択を促進するための看護支援として,①段階をおった情報提供により患者の理解を助ける,②術後の予期的悲嘆に対する情緒的支援,③乳房に対する価値観・人生観の明確化への支援が示唆された.

  • 飯野 京子, 小松 浩子
    2002 年 16 巻 2 号 p. 68-78
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/02/27
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    要 旨

    本研究は,化学療法を受ける患者のセルフケアを促進するための動機となる要素,実際の行動などについて探求することを目的とした.対象は患者10名と看護師9名であり,患者のセルフケア行動の動機となった要因,セルフケア行動,セルフケアの結果を内容分析した.看護師の調査は患者のデータの信頼性を高めるために行った.

    化学療法を受けるがん患者のセルフケア行動を促進する動機となる要素は,【有効な情報の獲得】【他者強化】【自己強化】【隠し事がされていない状況】【信頼できる対象がある】【家族と同じ方向を向いているという確かさ】【自分の状況を評価する】【自分で体験し自信がある】【苦痛が緩和・予防できると認識している】が抽出された.セルフケア行動は,【副作用の予防・対処】【生活の調整】【体力をつける】【気分転換】【感情の表出】【医療器具が取り扱える】【仕事の調整】【家族と相談】【必要な情報を探索する】【医療者に必要な情報を提供する】が抽出された.セルフケア行動の結果は,化学療法を受けたがん患者は【意思決定できる】【治療の継続】【コントロール感を得る】【不安の緩和】【苦痛の緩和】が抽出された.

    以上,セルフケア行動の動機となる要素は,情報の獲得とともに,強化したり,苦痛が緩和される等が抽出された.化学療法を受けるがん患者のセルフケア促進のためには,不安の緩和,闘病意欲向上などのがん告知され侵襲的な治療を受けている患者のニーズにあった関わりが求められる.

資料
  • 末次 典恵, 田村 真由美, 久冨 瑞穂, 野口 正典, 伊東 恭悟
    2002 年 16 巻 2 号 p. 79-88
    発行日: 2002年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,癌ペプチドワクチン療法という,新しい癌治療の第Ⅰ相臨床試験で得られた知見をまとめ,ワクチン療法を受ける再燃前立腺癌患者に対する看護と本臨床試験におけるリサーチナースの役割を明確にすることを目的とした.

    ワクチン投与によって起こりうる主な有害事象は,①投与部位の発赤・腫脹・掻痒感,②骨転移部の疼痛の出現,あるいは増強,③血尿,および④発熱で,身体面の看護のポイントが明らかになった.臨床試験開始時の患者の心理では,患者は臨床試験に対して新しい治療への期待と不安が交錯しており,試験中の臨床効果の有無が大きな関心であることがわかった.ワクチン投与による身体的苦痛をできる限り軽減し,患者の疑問に応じることが患者の不安の軽減につながるという見解が得られた.また,リサーチナースは臨床試験の実施において,その中心に存在し,患者の看護のみならず,臨床試験チームの調整役として重要な機能を果たしており,リサーチナースは臨床試験の質の向上に大きく関与していることが示唆された.

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