日本がん看護学会誌
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21 巻, 1 号
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原著
  • 神田 清子, 石田 順子, 石田 和子, 堀越 真奈美, 伊藤 民代, 狩野 太郎
    2007 年 21 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,外来化学療法を受けているがん患者の気がかりを簡便に測定することのできる尺度を作成し,その信頼性と妥当性を検討することである.気がかり評定尺度の質問票の原案は,面接調査と文献検討に基づいて作成し,化学療法を受けているがん患者の気がかりに関する30項目で構成した.その後,同意の得られたがん患者275名を対象に自己記述式による調査を施行した.有効回答率74.9%(206名)のデータを用いて項目分析を行った.その結果,『自己存在』,『病気の進行』『日常生活の再構成』『社会・経済の見通し』の4下位尺度,合計15項目から構成される化学療法を受けているがん患者気がかり評定尺度(CCRS)を作成した.尺度の信頼性の検討は,Cronbach’s α係数とSpearman―Brownの公式により信頼係数を算出した.それぞれの信頼係数は0.88,0.89であり,高い内的整合性と安定性が確認された.

    また,CCRSと状態不安尺度,ストレス反応尺度との間に有意な相関関係(p<0.0001)を認め,基準関連妥当性が支持された.さらに統計学的に因子妥当性も確認された.

    以上のことから,作成したCCRSは,高い信頼性,妥当性を有し,今後の臨床への応用が期待される測定用具であることが示唆された.

  • 小坂 美智代, 奥原 秀盛, 西村 ユミ, 佐藤 登美, 山田 峰子, 増田 澄恵
    2007 年 21 巻 1 号 p. 14-21
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,緩和ケア病棟に入院中の患者の家族を対象とするサポート・グループ(以下,SG)を開催し,そこでの家族の語りの様相と語ることの意味について検討することを目的とした.研究方法は,家族を対象としたSGを緩和ケア病棟内で開催し,研究参加への同意を得られた場合にのみSGでの語りを録音し,研究データとした.データは,意味内容に着目して質的に分析した.分析の結果,家族の語りからは,【緩和ケア病棟への入院に至るまでの歩みと苦悩】【目に見えて衰えていく患者の様子】【死を感じながらも生と向き合う患者の心情】【患者の変化とともに揺れ動く家族の心情】【困難な状況に何とか応じようとする家族の姿勢】【患者に付き添うことによって得る気づきと直面する問題】【SGへの参加から家族が得たこと】の7つのカテゴリーが導き出され,刻々と変わっていく患者とともに揺れ動く家族の思いや経験の様相が明らかになった.SGへの参加は,語ることをとおして自らの経験を意味づけるきっかけを得たり,共感や励ましを受ける機会にもなっていた.緩和ケア病棟におけるSG は,同じような境遇にある者同士が語る機会・語る場を提供することにおいて意義があると示唆された.

  • 芦沢 佳津美, 井上 智子
    2007 年 21 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    前立腺がんは,PSA(prostate specific antigen:前立腺特異抗原)スクリーニングによる早期発見が進められている一方,早期で悪性度が低い場合,無治療経過観察(watchful waiting:待機療法)という選択肢がある.本研究の目的は,無治療経過観察中の前立腺がんをもって生きる人々の体験を明らかにし,看護支援のあり方について示唆を得ることである.

    13名の対象者に,半構成的面接法を用いてその人にとっての無治療の前立腺がんとともに生きる意味についてデータ収集した.分析は,Colaizziの現象学的分析方法を参考に質的帰納的に行った.

    分析の結果,無治療の前立腺がんとともに生きることの本質的要素として,「診断の受けとめ」「現時点での治療選択に対する認識」「将来の不確かさとPSA値に翻弄される思い」「自分なりに病気に取り組む姿勢」「主治医への信頼と思い」「周囲を取り巻く人々への思い」の6つが導き出された.これらの本質的要素の関連性を図式化し,「無治療の前立腺がんとともに生きる人々の体験の構造図」とした.

    それぞれの本質的要素についての個人の認識を知ることで,個別性に基づいた支援の方向性がみえてくる.周囲に対し沈黙する男性たちを見守り,必要なときに必要な人からの支援を得られるよう調整する看護のあり方を考えることの重要性が示唆された.

  • 瀬山 留加, 神田 清子
    2007 年 21 巻 1 号 p. 31-39
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,化学療法を受けながら転移や増悪を体験した消化器がん患者の治療継続における情緒的反応を明らかにし,看護支援の検討を行うことである.

    参加観察法,および半構成的面接法により対象者10名からデータ収集を行い,質的帰納的手法を用いて分析を行った.

    その結果,情緒的反応の過程には,局面1【期待やためらいの狭間で化学療法を始める】,局面2【生と副作用のバランスを計りながら化学療法を継続する】,局面3【がんの悪化で心が乱れる】,局面4【がんと向き合う姿勢を整え直す】が存在し,一連の情緒的反応のタイプとしては,『感情貫き型』『感情統制型』『体験感情順応型』『ジレンマ型』の4つが明らかとなった.

    化学療法を受けながら転移や増悪を体験した消化器がん患者の情緒的反応過程では,すべての局面において治療継続という同一の意思決定を行っていても,「化学療法を継続すること」に対する意味づけには個々に相違がみられた.また,意思決定における患者の主体性は,個々の内省と外的環境などにより違いが現れると考察された.

    がんの進行に伴う治療についての患者の意思決定に関連した看護支援としては,未来への不確実性に苦しむ患者に対して時を得た介入が可能となるよう,医療チームにおける看護師の役割を確立し,初期治療が提示されるときから患者や家族に関わることが重要であると示唆された.

  • 平 典子
    2007 年 21 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究では,終末期がん患者を看取る家族が活用する折り合い方法を明らかにした.折り合いを「患者の避けられない死に直面した家族が,葛藤を解決するために活用する対処」と定義した.対象者は,緩和ケア病棟あるいは一般病棟で看病する家族19人であった.半構成的面接および参加観察法によってデータ収集し,Krippendorffの内容分析法でデータ分析を行った.結果,家族が活用する折り合い方法として,《納得のための吟味》《受け入れやすさへの転換》《面倒を避ける算段》《負担の分散》《不一致を埋める接近》《あきらめの作業》《添い方を変える》が明らかとなった.これらの方法は,看取りにおける葛藤を解決するために活用されており,状況や自分の行動を受け入れる,面倒や負担から自分を守る,可能な添い方を試みるという機能を発揮すると考えられた.

  • 山口 美智子, 上岡 澄子, 石倉 浩人
    2007 年 21 巻 1 号 p. 48-56
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は造血器腫瘍患者がたどる発症から造血幹細胞移植後の生活に至るまでの病みの体験を明らかにし,その体験に即した看護援助への示唆を得ることである.罹病期間5年以内の8名の造血器腫瘍患者を対象に半構成的面接を行い,ライフヒストリー法により分析した.

    対象者によって語られた発症から現在に至るまでの病みの体験として《症状を軽くみる時期》,《重大な病気を疑う時期》,《死ぬ病気にかかり衝撃・混乱ととともに死の不安が生じる時期》,《生きられるという希望が芽生え闘病意欲が生じる時期》,《繰り返される治療に身体的・精神的に弱くなるが生きるために治療を継続する時期》,《造血幹細胞移植に伴う身体的・精神的苦痛によって死の不安が再び強くなる時期》,《再発の不安の中で新たな生活を構築する時期》の7つの局面が導き出された.これにより,今まで部分的に取り上げられることの多かった発症から移植後の生活に至るまでの造血器腫瘍患者の心理過程を統合することができた.

    そして,造血器腫瘍患者が過去にどういう心理過程を経てきたのか,今後どのような心理過程をたどるのかを予測することができ,患者の時期を見据えた関わりが可能になると考える.

  • 矢ヶ崎 香, 小松 浩子
    2007 年 21 巻 1 号 p. 57-65
    発行日: 2007年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,外来で治療を続ける再発乳がん患者が安定した自分へ統合していく体験を記述,解釈し,その体験の意味を明らかにすることを目的とした.研究方法は研究協力者の主観的な体験の意味を明らかにするために,現象学的アプローチ法を基に質的記述的方法を用いた.データ収集は外来で治療を続ける再発乳がん患者4名に非構成的面接を行った.

    体験を記述,解釈し,意味づけた結果,安定した自分へ統合していく体験は,【現実を受け入れて,現在を生きていく】,【他者とのつながりを通して,自分らしく生きていく】にまとめられた.これらの意味は「時間性として,厳しい状況を自分の現実として受け入れ,自分のありようや新たな可能性を見いだし,それらを目指して現在に価値を置いて生きていくこと」や「信頼のおける他者との開かれた関係性の中で自分らしく在り続け,自由に生きていく」ことであり,さらに厳しい状況の中でも自分の可能性を伸び拡げ,よりよい将来をもたらす可能性があると考えられた.この体験は自ら,安定した自分へ統合していくものと示唆され,それには重要他者の存在や他者との語り合いが重要であった.

研究報告
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