日本がん看護学会誌
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24 巻, 3 号
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原著
  • 林 亜希子, 安藤 詳子
    2010 年 24 巻 3 号 p. 2-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/01/13
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    要 旨

    本研究の目的は,外来で化学療法を受ける患者を支援するために,外来がん化学療法患者の自己効力感に関連する要因を明らかにすることである.地域がん診療連携拠点病院の外来で化学療法を受ける169名のがん患者に対し,患者背景・療養ニーズ・生活のしやすさに関する質問票(身体症状・つらさの寒暖計・全般的QOL)・進行がん患者のための自己効力感尺度で構成した質問紙調査を行った.分析の結果,以下の関連要因が明らかになった.患者背景のうち,40歳未満,非就労状態,1人暮らし,PS1以上,無趣味,相談相手がいない,医療者に相談しにくい,以上のいずれかの背景をもつ患者で,自己効力感得点が有意に低く,これらの背景に注目して重点的に介入していく必要性が示された.療養ニーズでは,副作用や症状悪化,外出や食事,相談についての援助を求める患者で自己効力感得点が有意に低く,これらのニーズを充足することが自己効力感の改善につながると推測された.身体症状のうち,不眠・食欲不振・呼吸困難・倦怠感の重篤度が自己効力感得点に影響を及ぼしており,自己効力感を高める具体的な看護支援として,これら,がん患者に高頻度で生じる症状の緩和やセルフケアの向上に対する支援の確立の必要性が改めて示された.さらに,自己効力感得点は,がん患者の気持ちのつらさや全般的QOLに影響を与えており,自己効力感を高める看護は,がん患者の包括的な支援になり得るものであり,外来で化学療法を受けるがん患者にとって必要不可欠であることが示唆された.

研究報告
  • 山田 恵子, 稲吉 光子
    2010 年 24 巻 3 号 p. 12-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,外来で分子標的治療を受けている患者にナラティブ・アプローチを試みることで,患者の語りに生じる変化から現実を構成していく過程を明らかにすることである.

    研究デザインは,看護実践と研究を結びつけた実践的看護研究で,質的帰納的なデザインとした.データ収集として,おのおのの対象者4名にナラティブ・アプローチによる面接を最低3回行い,語りを質的帰納的に分析した.

    その結果,時系列でつないだ文脈のある語り(サブタイトル)は全部で73個であり,主要なナラティブは自らががんであることをどのように受け止め,どのような信念に基づいて生きていくべきか,つまり患者自らが生きている信念から構成されていた.同時に,がんと診断される前と同じような日常性を維持することで,自らをコントロールしながらも,日々揺れ動く感情に気づくナラティブがあった.

    不確かで長い経過を辿ることを余儀なくされている外来で分子標的治療を受けているがん患者が確かな現実を歩むうえで,ナラティブ・アプローチは,さまざまな思いに直面しながら自ら見出した自己の生き方や信念を確信し,それらを引き受けるよう支援する働きがある.つまり外来看護をする際には,限られた時間であっても,その都度,患者の生き方や信念を支持していくという姿勢を保持することが重要であると示唆された.

  • 野戸 結花, 北島 麻衣子
    2010 年 24 巻 3 号 p. 23-32
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,がん患者のリンパ浮腫ケアに携わるセラピストが複合的理学療法実施の場面でどのような技術を用いているのかを明らかにすることである.データはリンパ浮腫患者に対し複合的理学療法を行う臨床施設に勤務する医療リンパドレナージセラピスト11名への半構成的面接により収集し,質的帰納的に分析した.結果,がん患者のリンパ浮腫ケアに携わるセラピストの技術として,リンパ浮腫を軽減する技術である【時間軸上のその人をとらえる】,【むくみという体験を全体でとらえる】,【最大の効果を得るための方策を探る】,【掌の下で起こっていることを見透かす】と,セルフケアを支える技術である【セルフケアに気持ちを開く】,【セルフケアの継続を支える】,【伴走者としての距離感をつかむ】が見出された.本研究の対象者となったセラピストは,リンパ浮腫患者の身体症状はもちろん,主観的体験に関心を寄せて患者を包括的にとらえ,経験を重ねることにより熟練した技術でケアを行っていた.さらに,患者の気持ちがセルフケアに向かって開かれるきっかけをつくり精神的に支え,セルフケアの効果的な継続と自立を促していた.リンパ浮腫はいったん発症すると慢性的な経過をたどることから,リンパ浮腫を適切にケアし症状緩和を図ると同時に,患者がリンパ浮腫であることを自分のこととして受け止め,必要なセルフケア行動を獲得し,継続していけるようにサポートする必要があることが示唆された.

  • 林 千春, 国府 浩子
    2010 年 24 巻 3 号 p. 33-44
    発行日: 2010年
    公開日: 2017/01/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,化学療法を受けるがん患者に対する看護の実践状況と看護実践に関連する要因を明らかにすることである.がん化学療法看護に携わる看護師205名を対象に,化学療法を受けるがん患者に対する看護の実践状況を問う自記式質問紙調査を行った.回収は160部で,そのうち記入漏れのあった21部を除いた139部を分析対象とした.分析は,記述統計量,Spearmanの相関係数,Mann-WhitneyのU検定およびKruskal Wallis検定を用いた.その結果,副作用症状の把握に関するケアや精神面,理解に対するケアの実践度が高い一方,セルフマネジメントや日常生活を見据えたケアの実践度が低かった.看護実践に影響する要因として,化学療法看護の経験年数,職位の有無,化学療法看護の講習の受講経験の有無,病院の種類,化学療法認定看護師の有無において有意差がみられ,化学療法看護に対する関心と実践度の関係においては正の相関がみられた.これらのことより,日常生活を見据えたケアと知識を個々の患者のケアに反映していく取り組みの必要性が示唆された.また,施設においても看護師が関心を持つような取り組みや教育体制の充実を図っていく必要性が示唆された.

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