要 旨
本研究の目的は,外来で化学療法を受ける乳がんの女性への看護実践を通して,乳がんの女性が不確かさと折り合いをつけることを支える有用な看護介入を明らかにすることである.病気の不確かさ理論,思考の制御困難性モデル,mastery理論などに基づいて作成した理論的枠組みを用いて乳がんの女性が不確かさと折り合いをつけるプロセスを捉えるとともに,不確かさに伴う不安や心配などの感情的苦痛に対する看護を実践した.
その結果,4名の対象者に11の不確かさと折り合いをつけるプロセスを認めた.これは不確かさがもつ性質から《常に可能性としてあり続け取り除くことができない不確かさ》《状況の変化や時間の経過とともに過ぎ去っていく不確かさ》《これまでの役割や自分らしさが揺らぐことで生じる不確かさ》《新たな日常性を獲得する過程で生じる不確かさ》の4つに分類された.また,不確かさと折り合いをつけるプロセスを支えることにつながった看護介入は,その不確かさがもつ性質ごとに特徴がみられた.
本理論的枠組みは,乳がんの女性が抱えている不安や心配などの感情的苦痛を不確かさの観点から捉えることを可能にする.本研究で明らかとなった有用な看護介入は,不確かさに対する看護を行ううえでのアセスメントの視点や実践の方向性を示すものであり,外来で化学療法を受ける乳がんの女性の心理的適応に向けた看護に新たな示唆をもたらすと考える.
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