日本がん看護学会誌
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27 巻, 2 号
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原著
  • 今津 陽子
    2013 年 27 巻 2 号 p. 4-15
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/12/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    口腔がん手術患者に対する栄養管理の取り組みと,それに伴う患者の体験を含む栄養管理の実態を明らかにし,それを踏まえた口腔がん手術患者の食機能維持に向けた看護栄養支援プログラムを作成することを目的とした.

    首都圏の大学病院の口腔外科で口腔がんとの診断で腫瘍切除術を受けた過去3年間の全患者207名の入院診療録を対象に診療録調査を行い,また同病院で口腔がんとの診断で腫瘍切除術を受ける患者20名を対象とし,半構造化面接を行った.そして,双方の調査結果を並行的入れ子混合研究法デザインで統合し,栄養管理の実態を構造化した.さらに,その結果から看護栄養支援プログラムを作成した.分析の結果,口腔がん手術患者の受ける栄養管理の実態は,手術侵襲に伴う栄養状態の著しい低下だけでなく,継続的な栄養状態低下に陥っていた.その中で食に伴う苦痛や満足感の低下が生じ,食事が進まない体験をしていた.それに対し,周囲のサポートや食事摂取量増加への自身の取り組みが行われ,退院が近づくと退院後の食事に対して不安を抱えていた.

    看護栄養支援プログラムにより,治療法が多岐にわたる口腔がん手術患者に対し,介入時期や要件,その内容が明確となった.今後の導入により,看護師中心の医療チームによる栄養支援につながることが期待される.

研究報告
  • 飯岡 由紀子, 梅田 恵
    2013 年 27 巻 2 号 p. 16-26
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/12/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    目的:本研究の目的は,ホルモン治療中の乳がん女性の苦痛と対処を明らかにし,その看護を考察することである.

    方法:外来通院にてホルモン治療中の50歳未満の乳がん女性7名を対象に,グラウンデッドセオリーアプローチを参考に質的帰納的研究を行った.半構成的面接の逐語録をデータとし,質的研究者のスーパーバイズのもと分析した.

    結果:苦痛は7つの大カテゴリー[生活に支障をきたすつらい症状][コントロールできない気分の不安定さ][自分に対する自信の低下][今までとの違いによる混乱][治療継続に対する葛藤][周囲からの孤立感][自分で対応することへの不安]を抽出した.乳がん女性は治療の副作用や混乱,孤立感などを感じており,コアカテゴリーは『つらい症状とコントロール感低下に伴う混乱』とした.対処は6つの大カテゴリー[体と向き合い生活を再構築する][軌道修正しつつ状況に対応する][周囲のサポートを実感する][信じて気持ちを保つ][あがかないようにしてエネルギーを保つ][見通しをもって事前に備える]を抽出した.心の支えを得ながら苦痛に臨機応変に対応しており,コアカテゴリーは『心の支えをもち軌道修正しつつ状況に対応する』とした.

    結論:ホルモン治療中の乳がん女性は,治療の副作用とともにサバイバーとして自分の生活や社会環境に適応する過程で生じる混乱や孤立感などに苦痛を抱いていた.それらの苦痛に対して,心の支えを得ながら臨機応変に対応していた.

  • 西尾 亜理砂, 藤井 徹也
    2013 年 27 巻 2 号 p. 27-36
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/12/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,がん患者の治療法の意思決定に対する看護師のかかわりの程度と看護の実践状況を明らかにすることを目的とした.看護師930名を対象に自記式質問紙調査を実施し,767名から回答が得られた.そのうち有効回答数は666部であった.分析は記述統計後,看護師のかかわりの程度と背景との関連について多重ロジスティック回帰分析を行った.意思決定支援に関する看護実践は,一元配置の分散分析を用いて病院種別による差を分析した.すべての分析はSPSS ver15.0を用いて行い,有意水準を5%とした.

    調査の結果,がん患者の治療法の意思決定にかかわることができると回答した看護師は,全体の40.5%であった.そして,意思決定支援に関する自主的な学習をしていることや,先輩看護師による勤務病棟の状況に即した実践的な指導があることが,意思決定支援に対する看護師の意欲の向上や自信につながる可能性が示唆された.看護の実践状況については,患者─看護師間や看護師─看護師間における行動はある程度実施されていたが,医師─看護師間における行動の実施度が低いことが明らかになった.また,都道府県がん診療連携拠点病院は,地域がん診療連携拠点病院や一般病院に比べてほぼすべての項目で看護実践の平均値が有意に高かった.このことから,意思決定支援に対する看護実践の向上には,都道府県がん診療連携拠点病院によるがん医療や看護に関する情報提供や指導,支援が必要であることが示唆された.

  • 和田 さくら, 稲吉 光子
    2013 年 27 巻 2 号 p. 37-46
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/12/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究は,外来化学療法を受ける男性消化器がんサバイバーの就労継続の様相を明らかにすることを目的とする.外来化学療法を受けながら仕事を継続している消化器がんと診断された男性5名を対象に,半構成的面接を行い,質的帰納的方法で分析した.外来化学療法を受ける男性消化器がんサバイバーの就労継続の様相は,21のサブカテゴリーより8つのカテゴリー,【職場の理解と配慮】【融通のきく仕事の形態】【治療の場・治療内容】【病状安定の自覚】【経済的負担感】【家族の支え】【医療者の支え】【仕事への向き合い方】が導かれた.就労継続していくうえで,経営者や上司,同僚からの理解が就労意欲にも影響を与え,仕事の時間や内容を調整できる職種であること,外来で行える治療であることが日常生活と治療との両立を可能としていた.また,がんサバイバーは,自身にとっての仕事の意味を通して自身の存在を再確認して仕事に取り組んでいた.その中で,治療に伴う有害事象や疾患による症状を自覚しながら,自分なりの対処法をつくり上げ,体調に合わせられる仕事に切り替えるという新たな生活の再構築を行っていた.男性がんサバイバーの就労継続は,日本において男性のアイデンティティとしての仕事への価値観に影響されていることも示唆された.

  • 梅田 恵
    2013 年 27 巻 2 号 p. 47-55
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/12/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    がん看護専門看護師にとってコンサルテーションは高度実践の導入となり,質の高いがん看護の普及や均てん化において不可欠な機能である.しかし,看護界におけるコンサルテーションの用語活用は,明確になっていない.そこで,コンサルテーションの活用や評価,教育が促進されるよう,「がん看護専門看護師のコンサルテーション」について,Walker & Avant(2005)の方法に基づき概念分析を行った.結果,【がん看護CNS】【一般看護師】【コンサルテーションの課題】【関係性のプロセス】【患者と一般看護師の成果】が属性として,【がん患者家族の療養の複雑化】【組織体制】が先行要件として,【組織の発展】が帰結として抽出された.この概念を使用する看護師間での認識のギャップや,これらの属性間の関係性について探求していくことの必要性が示唆された.

  • 堀 理江
    2013 年 27 巻 2 号 p. 56-64
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/12/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,がん患者にライフレビューを用いた面接を行い,ライフレビューに見出される希望と,ライフレビューを用いた介入が患者に与える影響を明らかにすることである.がん患者4名に対し,ライフレビューを用いた4回の面接を行い,参加者が語ったストーリーを,希望に焦点を当てて分析した.患者の歩んできた人生の中で希望は形づくられてはいるが,ライフレビューによって人生を時系列に沿って振り返り,他者に言語化して語ることで未来を意識し,未来について考えることができる,すなわちライフレビューによって,希望がより具現化されることが明らかになった.また,がん患者の希望は未来を志向しているが,どのくらい遠い未来を志向できるかは身体症状が影響していることが明らかになった.ライフレビューにより,他者に語るという行為は,物事に違った意味を見出す,新たな気づきを生むという意味があった.また,がん患者は自分自身の死を意識しながらも,子孫や自分自身が創造したものに未来を託すことで,希望が維持できる可能性が示唆された.

  • 西村 歌織, 川村 三希子, 竹生 礼子, 木村 公美
    2013 年 27 巻 2 号 p. 65-73
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/12/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,早期食道がんにより食道全摘・胸壁後経路再建術を受けた患者が,どのように生活への影響を受け,どのような対処を行っているのかを患者自身の視点から明らかにすることである.

    データ収集は術後外来通院中の患者に対する半構造的面接により行い,質的帰納的に分析した.研究にあたり所属機関などの倫理委員会の承認を得た.

    対象者は50~70歳代の男性6名であった.病期は0期が1名,1期が5名であり,術後からの期間は7~14カ月であった.インタビューは1人につき1回,時間は平均41.5分であった.分析の結果,生活への影響と対処は「予期に反して普通にできていたことができず動揺する」,「手さぐりと失敗,揺らぎの繰り返しにより食べ方をつかむ努力をする」,「普通の暮らしを継続するための努力と調整をする」,「回復による日常生活の安定感,安心感が得られず閉じこもる」,「体重と体力の変化から回復力を実感する」,「にわかに回復しなくとも命拾いした体と折り合いをつけ自分なりに生きる」の6つのカテゴリーにより構成されていた.

    対象者は予期に反して重大な食事摂取困難や体力低下を体験し,社会的生活にまで影響を受けていた.術後の障害は他者に理解されにくく心理的に閉じこもりながらも,手さぐりと失敗の繰り返しの中で自分なりの対処法を獲得している現状や,少しずつ回復力を感じることで困難と折り合いをつけていくことが明らかとなった.

  • 川原 風砂子, 田中 京子
    2013 年 27 巻 2 号 p. 74-82
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/12/13
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,広汎子宮全摘術を受けた患者のがん罹患前の自己概念と手術後に患者が変化したと捉えた自己概念を明らかにすることである.広汎子宮全摘術を受け外来通院中の女性患者7名を対象に,半構成的面接により得られたデータを質的内容分析した.がん罹患前の自己概念は『健康な自分』,『生きたいように生きる自分』,『女性として生きる自分』,『自分の役割を全うする自分』の4つの上位カテゴリーに,手術後に変化したと捉えた自己概念は{自分を苦しく思う自分},{新たな生き方を得た自分},{女性性を意識する自分},{人とのかかわりの中で生きる自分}の4つの上位カテゴリーに分類された.広汎子宮全摘術を受けた患者が変化したと捉えた自己概念が意味するものは,がん罹患前の自分の喪失,新たな自分の獲得,女性性に対する意識の変化と考えられた.

    がん罹患前の自分の喪失には身体コントロール感の障害による体に対する信頼感の低下,新たな自分の獲得には苦しい体験の中で自己認識が拡大することが関係していたと考えられた.女性性に対する意識の変化には周囲からの評価が影響していたと考えられた.以上から広汎子宮全摘術を受けた患者が自己を肯定的に捉えられるためには,身体コントロール感の再獲得や自己認識の拡大,患者が自分を女性と実感できるかかわりへの援助が必要と考えられる.

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