日本がん看護学会誌
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29 巻, 3 号
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原著
  • 渡邉 美奈, 藤田 佐和
    2015 年 29 巻 3 号 p. 7-17
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    要 旨 本研究は,造血器腫瘍患者のギアチェンジを支える看護師の構えを明らかにし,看護の示唆を得ることを目的とした.がん看護領域で5 年以上,造血器腫瘍患者のケアに携わった3 年以上の臨床経験のある看護師9 名を対象に半構成的面接を行い,データを質的帰納的に分析した.その結果,造血器腫瘍患者のギアチェンジを支える看護師の構えにおける認識として,【患者・家族が生死と向き合う有り様】【患者・家族の悲愴な思いの存在】【患者を混迷させる緩和治療】【家族の存在意義】【患者・看護師関係の重要性】【望ましい最期の実現に向けた決意】【ギアチェンジを支えられないもどかしさ】,行動として,【人生の岐路に関わる覚悟を固める】【生き方の決断過程にタイミングよく働きかける】【ギアチェンジに向き合う力を引き出す】【その人らしい生き方を支える】【その人らしく生きる策を医療者で探索する】【パートナーシップを築く】【ギアチェンジを支える準備性を高める】のそれぞれ7 の大カテゴリーが抽出された.看護師は,ギアチェンジ期の造血器腫瘍患者の状況を掴み,その状況を踏まえて生じた看護師の肯定的な考えと否定的な感情を原動力として,患者の人生の岐路に関わる覚悟を固め,患者自身が生き方を決断できるように,患者の力の発揮を促したり患者の力を発揮しやすい環境を整えたりして,ギアチェンジを支えると考えられた.
  • 板東 孝枝, 雄西 智恵美, 今井 芳枝
    2015 年 29 巻 3 号 p. 18-28
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    要 旨 本研究の目的は,肺がん手術後の身体的不快症状の実態とそれらが生活に及ぼす影響について,退院時から術後6 カ月までの経時的推移を明らかにすることである.術後肺がん患者41 名(平均年齢67.0 歳)を対象とし,自記記入式質問紙法と診療録からデータ収集を行った.分析の結果,肺がん手術後6 カ月を経過しても約6 割の患者が2 つ以上の不快症状を抱えていた.創部に関連する不快症状は,退院時は創部表面の訴えが最も多く,術後1 カ月以降は創部内部の訴えへと変化した.創部以外の不快症状は,術後1 カ月以降では半数以上の患者に術後の息苦しさが出現しており,経時的変化はみられなかったが,術式や喫煙経験により日常生活への影響の程度に関連がみられた.また術後1 カ月が経過しても,術後術側急性肩部不快症状が約17%の患者に存在し,術後6 カ月が経過しても約半数の患者に咳嗽が出現していた.以上より,患者へ術後出現する可能性のある不快症状の回復過程やその機序に関する情報提供を行い,患者自身に不快症状に対するセルフモニタリングの実施を促し,自らの症状に対する認識を深めることで,セルフケア支援へと繋げる必要がある.今後は,患者の不快症状体験を加味した周手術期肺がん看護プログラム開発の必要性が示唆された.
  • 梅田 尚子, 岩田 浩子
    2015 年 29 巻 3 号 p. 29-39
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    要 旨 本研究の目的は,初回治療段階にある中年期の悪性神経膠腫患者の体験のゆらぎの様相を明らかにすることである.悪性神経膠腫で初回治療中である40 ~50 歳代の患者5 名を対象に半構成的面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づき分析を行った.その結果,対象者は【脳腫瘍は驚怖】と感じながらも,【治療に賭ける】強い決意を持ち治療に臨んでいたが,終ついには【脳腫瘍による崩壊】という生きること自体の危機を体験していた.さらに,家族や周囲の人々との相互作用による【存在価値の迷い】は,いく度も繰り返す【変化した外見への動揺】と【同病者との相互作用の光と影】の《同病者との同一視による辛さ》の影響を受けゆさぶられ,アイデンティティはゆらぎ,不確かなものになっていた.一方,【同病者との相互作用の光と影】の《同病者は一筋の光で救い》により勇気づけられ,価値の転換といえる【今後の生き方を模索する】自分を認識していた.この体験は,脳腫瘍による生きること自体の危機という,非常に強大でゆらぎがないネガティブな体験が根底に存在するからこそ,アイデンティティの均衡を保持するようにゆらぐことで,いっそう複雑で混沌とした様相を呈していたと考えられる.中年期のアイデンティティの危機にゆらぎながらも懸命に自分らしく生きることを模索する患者と家族をともに支え,思いに沿った看護支援の必要性が示唆された.
研究報告
  • 玉井 なおみ, 神里 みどり
    2015 年 29 巻 3 号 p. 40-50
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    要 旨 本研究の目的は,乳がん体験者が運動を生活の中に取り入れていくプロセスを明らかにすることである.外来通院中で運動をしていない乳がん体験者24 名に対し,6 カ月間の運動支援と運動の実施状況や運動を継続する認識について,半構成的面接を平均11.4 回実施した.主たる支援は,乳がんの再発や副作用に対する運動の予防効果の情報提供,電話支援1回/週/2 カ月,歩数計の配布,運動日記を用いた振り返りである.さらに,調査開始時に運動を継続している乳がん体験者15 名には,運動の影響要素や運動継続の認識について半構成的面接を行った.面接内容は,逐語録を作成して質的帰納的に分析した.結果,乳がん体験者が運動を生活に取り入れていく意識と行動の変化には,「知識獲得後移行型」「自信獲得後移行型」「非移行型」の3 つの運動行動パターンがあった.まず1 つ目に,乳がんの再発や副作用に対する運動の予防効果の情報提供だけで運動を生活に取り入れ継続するという信念(以下,運動信念)に移行できる「知識獲得後移行型」,2 つ目は徐々に自信を獲得し運動信念に移行できる「自信獲得後移行型」,3 つ目は運動の予防効果を知っても再発の不安などで運動に思考が向かず,運動信念へ移行できない「非移行型」である.運動を継続するには乳がん体験者が生活の中で歩く方法を自ら見出し,運動を継続するという信念をもつことが重要であった.運動支援として,乳がん体験者が生活に取り入れる運動行動パターンに応じた個別的な支援をすることが重要である.
  • 稲垣 千文, 青木 萩子, 鈴木 力
    2015 年 29 巻 3 号 p. 51-60
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2016/03/31
    ジャーナル フリー
    要 旨 研究の目的は,前立腺全摘除術を受けた既婚男性の治療に伴う気持ちの変化を明らかにすることである.Modified Grounded Theory Approach(MGTA)に沿い,研究対象者8 名よりデータ収集し分析した.結果,彼らは診断より【どうすればいいか分からない】と衝撃を受けるが,病気の特徴を知ることなどにより,【自分の病気はたいしたことない】安堵の気持ちに至り,【じっくり治療法を選びたい】【前立腺全摘除術を受けたい】へ変化した.治療選択では,【男ゆえに尿漏れは避けたい】と【性機能は諦めたくない】の気持ちが影響し【他の治療法を考えたい】に至った.【性機能は諦めたくない】は【性機能障害は仕方がない】へ変化し,【自分だけじゃない】気持ちとともに,【前立腺全摘除術を受けたい】へ気持ちが変化する際に影響を与えた.そして,術前の【男ゆえに尿漏れは避けたい】は,術後には【尿漏れをなんとかしたい】から,【尿漏れは苦にならない】へ変化し,妻に援助を求める気持ちも含まれていた.対照的に,妻と話し合うことを避けたいとする【性機能障害はあえて触れない】気持ちは持続した.また,術前に【性機能は諦めたくない】【性機能障害は仕方がない】【性機能障害はこだわらない】の気持ちをもち,術前の【性機能は諦めたくない】と【性機能障害は仕方がない】は術後【失った性機能は惜しい】へ変化した.明らかになった気持ちの変化より,彼らへの病気の特徴の理解を促進する援助と尿漏れを理解し対策がたてられる援助が,看護への示唆となった.
資料
委員会報告
研修報告
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