日本がん看護学会誌
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30 巻, 3 号
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原著
  • 島田 美鈴, 藤田 佐和
    2016 年 30 巻 3 号 p. 9-18
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

    要 旨

    研究目的は,初めてがんと診断され手術を受けたがんサバイバーのゆらぎを明らかにすることである.初めてがんと診断され,胃を切除したサバイバー20 名を対象に,半構成的面接法にて,がん診断以降の気持ちや体験について調査した.分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて,以下のような結果を得た.

    がんサバイバーのゆらぎは【がん罹患と治療で心が打ち拉がれる】という強く激しい揺れの状態から始まるが,その状態に留まるのではなく【がん治癒や回復を目指して最良を尽くす】力,【がん罹患を受け止める心の準備をする】力,【がん治癒への希望を見出す】力を順次動員させ揺れを収束しようとする.しかし,ゆらぎが生じる前の過去の記憶により【がん罹患前の自己への羨望】を生じさせる.〈健康であった過去の自己を羨む〉は,強く激しい揺れに逆戻りする危うさがある反面,〈手術前を目指した回復への願い〉は,揺れを収めようとする力の動員を促進させる.このようにゆらぎは,後戻りや新たなゆらぎが生じるなどスパイラル的な変化の過程である.また,ゆらぎは【命の存在する価値ある時間の意識化】を生じさせ,今を生きることを鮮明にさせ【がん罹患と治療で心が打ち拉がれる】の後に順次動員させる【がん治癒や回復を目指して最良を尽くす】【がん罹患を受け止める心の準備をする】【がん治癒への希望を見出す】【がん罹患前の自己への羨望】を鮮明に浮かび上がらせる.

  • 今井 芳枝, 雄西 智恵美, 板東 孝枝
    2016 年 30 巻 3 号 p. 19-28
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素を明らかにすることである.本研究では,納得とは「高齢がん患者が治療に対して,能動的に認知的かつ感情的に受容した状態」と定義する.研究方法は質的記述的研究デザインで、がんに対して治療を選択した現在治療過程にある65 歳以上の転移のある高齢がん患者20 名を対象に半構造化面接法を実施した.結果,転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素として,【自分を救おうとする強い意志】【生きるための治療であるとの確信】【治療の可能性への期待】【信じて任せられる最善の治療であるとの判断】【周りへ報いたいとの希求】【治療を含めて生ききる人生の受け容れ】の6 つのカテゴリーが抽出された.

    これらの転移のある高齢がん患者の治療に対する納得の要素の特徴として,1 つは患者自身の価値が治療状況に反映していることが示唆された.2 つ目として,自己の利害にとらわれずに周りの人達の気持ちを察し,それを自分の気持ちや意志として汲み取る特徴が推察できた.3 つ目として,治療だけでなく,自分の人生に対するあり方や生き方も含めた今の状況に対する受け容れでもある特徴が示唆された.それは,病期が進んだ状況でのライフサイクル最終段階にある高齢者のもつ特徴が表れていた.また,これらの要素は転移のある高齢がん患者が生きてきた中で培われたものでもあり,その人の生き様や今の状況に患者がコミットできるように支援することも納得に導いていく看護となることが示唆された.

  • 松井 美由紀, 秋元 典子
    2016 年 30 巻 3 号 p. 29-39
    発行日: 2016/12/25
    公開日: 2017/02/17
    ジャーナル フリー

    要 旨

    本研究の目的は,セカンドオピニオンを受けた女性乳がん患者の初期治療選択過程を明らかにし,看護実践への示唆を得ることである.セカンドオピニオンを受けて初期治療選択をした女性乳がん患者24 名を対象とし,半構造化面接にてデータ収集し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を用いて分析した.その結果,患者の初期治療選択過程は,『疑念が拡がる』および『疑念が晴れる』をコアカテゴリーとする過程であった.【乳がんに命をもっていかれる】との危機感を抱いた患者は,【命と女性であることの価値を量る】【これまでの生活を維持できる治療法を模索する】〈氾濫した情報にのみこまれ収拾がつかない〉過程を経る一方,【この医師には命を託せない】【何も聞けず・わからず・解決できず】との過程を経る場合もあった.いずれの場合も【治療法選択の決め手が見つからない】ため〈他に頼る手段がない〉〈身近な人に勧められる〉ことで,セカンドオピニオンを求めた.セカンドオピニオンを受けた後【先の見通しが立ち腹をくくる】ことができ,【命と女性であることの価値を量る】【何も聞けず・わからず・解決できず】に戻る場合があるものの【医療者の力で混迷から脱却する】【合点のいく治療法を見つける】ことで治療法選択に至っていた.

    これらから,セカンドオピニオンを受ける前に看護師による患者への面談を通して,セカンドオピニオンを求めた理由や過程の把握と,それに応じた支援,特に日常生活支援者として【これまでの生活を維持できる治療法を模索する】過程を支援する必要性が示唆された.

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