日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
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33 巻
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原著
  • 髙野 将宏, 田中 京子, 林田 裕美
    原稿種別: 原著
    2019 年 33 巻 論文ID: 33_takano_20190211
    発行日: 2019/02/11
    公開日: 2019/02/11
    ジャーナル フリー

    目的:食道切除再建術後がん患者が受けた退院後の食の再獲得を支える他者からの援助を明らかにする.

    方法:研究参加者:食道切除再建術を受け,退院後2カ月から1年程度の術後補助療法を受けていない外来通院がん患者7名.調査方法:半構成的質問紙による面接法と記録調査法.分析方法:逐語録から退院後の食の再獲得を支える他者からの援助について語られている部分を抽出し,意味内容の類似したものを集めてカテゴリー化した.

    結果:食道切除再建術後がん患者が受けた退院後の食の再獲得を支える他者からの援助は,《食べる気持ちを整える援助》《楽しく食事ができる援助》《自分に合わせて自由に食事ができるよう配慮してくれる援助》《食に伴う苦痛症状への対処を支える援助》《効率的な食事摂取を促す援助》《食習慣の変更を促す援助》《新たな気づきを与える援助》の7つの上位カテゴリーが抽出された.

    考察:食道切除再建術後がん患者が受けた退院後の食の再獲得を支える他者からの援助は,食への気持ちを向上させる援助,食の楽しみや自律性を保つ援助,食に伴う苦痛を軽減する援助,新たな食習慣を得る援助,自己認識の拡大を促す援助であった.食道切除再建術後がん患者の新たな食の確立のためには,食べる前の患者の気持ちに配慮した情緒的支援,患者の対処に対する他者への教育的支援,患者自身が客観的に自己を捉えることを促す援助などの必要性が示唆された.

  • 松野 史, 鈴木 志津枝
    原稿種別: 原著
    2019 年 33 巻 論文ID: 33_matsuno_20190215
    発行日: 2019/02/15
    公開日: 2019/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,終末期がん患者がどのように穏やかさを捉え,穏やかさがどのような時にもたらされ,どのように穏やかさを維持しているかを明らかにし,終末期がん患者が認知する穏やかさを構成する要素を見出すことである.在宅緩和ケアを受けながら在宅療養,または緩和ケア病棟に入院中の終末期がん患者10名を研究参加者とし,半構造化面接法を用いて質的記述的研究を実施した.

    分析の結果,終末期がん患者の穏やかさを構成する要素として,『穏やかさを求める患者の状況』『穏やかさの基盤となる環境』『穏やかさと認知する体験』『穏やかさによる認知の変化』『穏やかさを揺さぶる状況』『穏やかさを保つ対処』の6つのカテゴリーが抽出された.

    終末期がん患者が穏やかさを認知する過程には,まず『穏やかさを求める患者の状況』があり,『穏やかさの基盤となる環境』の中で療養生活を送り,『穏やかさと認知する体験』をすることで,患者は穏やかさを認知していた.終末期がん患者は,日々のささやかな体験や緩和ケアを受け続けられる環境の中でニードが満たされることで穏やかさを認知できていたと考える.終末期に穏やかさを認知できる意義は,癒しになるだけでなく,『穏やかさによる認知の変化』によって,患者が自分の人生を肯定的に捉え直すことができ,苦痛を抱えながらも最期までその人らしい人生を生ききる可能性を高めることといえる.

  • 田上 知江美, 藤田 佐和
    原稿種別: 原著
    2019 年 33 巻 論文ID: 33_tagami_20190813
    発行日: 2019/08/13
    公開日: 2019/08/13
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,緩和ケア病棟入院中の終末期にあるがん患者と家族員の連帯感はどのようなものであるかを明らかにすることである.

    2県内の緩和ケア病棟に入院中の終末期がん患者をおもに介護する家族員10名に半構成的面接法を用いて,データ収集を行い,質的・帰納的に分析を行った.結果より,緩和ケア病棟入院中の終末期がん患者と家族員の連帯感の要素として,【揺るぎない信頼】【内からこみ上げる志気】【拭い去れない自責の念】【ふたりで抱く最期の希望】の4つが明らかとなった.

    家族員が認識する終末期がん患者と家族員の連帯感は,互いをかけがえのない大切な存在として想い合うふたりの間にある【揺るぎない信頼】を基盤として,家族員が介護を行う中で抱く【拭い去れない自責の念】を【内からこみ上げる志気】に向けることによって,自身を鼓舞し,【ふたりで抱く最期の希望】に向かってまとまろうとすることで高まる情緒的な結びつきの感情であると考えられた.連帯感に働きかける支援として,ふたりで過ごす時間や場を提供することやふたりが語り合う機会をつくること,ふたりが互いのために行っている援助行動を継続できるように支援し,それに対して肯定的なフィードバックをすること,家族員の自責の念を強めないようにすること,そして,ふたりの希望の実現を助けることの重要性が示唆された.

  • 田代 真理, 藤田 佐和
    原稿種別: 原著
    2019 年 33 巻 論文ID: 33_tashiro_20190930
    発行日: 2019/09/30
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,がん患者に関わっている看護師が,最期まで患者が自分らしい人生を歩むことができるようにアドバンスケアプランニング(以下:ACP)としてどのような看護支援を行っているのかを明らかにすることである.看護師12名に,半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した.

    分析の結果,がん患者への看護師のACPとして,『患者の価値観の尊重』『意思決定支援のアプローチ』『終末期のことに関する取り決め』『継続的な取り組み』の4局面が抽出された.

    看護師は,日頃のコミュニケーションの中で患者の価値観を理解しながら,患者の今後の気がかりへ関わり,多職種連携によるチームアプローチ,社会資源の調整,家族ケアなどの意思決定支援のアプローチを行っていた.そして終末期の医療やケア,療養場所,代理意思決定者の取り決めを支援していた.また,ACPは1度で完結することなく,プロセスの中で繰り返し行われており,継続的に関わることの大切さが示唆された.

  • 井上 佳代, 荒尾 晴惠
    原稿種別: 原著
    2019 年 33 巻 論文ID: 33_inoue_20191018
    発行日: 2019/10/18
    公開日: 2019/10/18
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,18歳以下の子どもを持つ乳がん患者が,術後外来化学療法を受ける際の母親としての困難とその対処を明らかにすることである.子どもを持つ乳がん患者で外来化学療法を受けた14名に,半構造化面接にて母親としての困難とその対処についてデータを収集し、質的帰納的に分析を行った.

    その結果,母親としての困難は【子どもの発達段階に応じた成長発達への関わり】をもつことや,【外出が制限されることによる子どもの成長の見守り】【形成してきた母親像の維持】で,子どもに関しては【子どもとの相互作用による信頼関係の維持】【子どもの生活のサポート】の5カテゴリーが得られた.母親としての困難への対処として,化学療法による副作用が出現する状況で【子どもの生活に影響を与えないための副作用症状に合わせたセルフマネジメント】【子どもの生活に影響を与えないために代替可能なことへのサポート調整】を行い,子どもに対しては母親として【子どもの思いを察して関わる】こと,また【代替不可能なことは無理してでも行う】ことなどであった.子どもを持つ母親の困難は,副作用症状によって生活のサポート・発達段階に応じた関わりや見守りが困難になり,セルフマネジメントとサポート調整を駆使した対処をしていた.また,代替不可能なことは無理をして対処しており,少しでも無理をすることがないように看護支援を検討してくことが重要である.

  • 川端 愛
    原稿種別: 原著
    2019 年 33 巻 論文ID: 33_kawabata_20191204
    発行日: 2019/12/04
    公開日: 2019/12/04
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では,がん患者が再発がんを生きる経験について,経験者の視点から探求することを目的とした.

    方法:現象学的アプローチを用いた質的記述的研究である.一般病院の外科で加療中の,再発がんを患う患者に,非構造化面接法を実施し,村上の方法を参考に分析を行った.また,分析を進める視点のとり方として,人間存在の在り方を基礎づけたHeideggerの理論を基盤においた.

    結果:死は〈もしも〉と仮定されるが,まったくの仮想ではなく,具体として現れた.しかし,参加者は,時間を〈少しずつ〉進め,生きる手ごたえを確かなものにしていた.そして,自分自身をがん患者としてひと括りにするのではなく,個を重みづけする〈それぞれ〉性を問いながら,他者のために役立つ〈この手〉が届く距離に在ることが励みになっていた.

    結論:再発がんを患う患者は,死を仮定しながら,少しずつ時間を進め,自己を活そうとする経験をしており,個別の物語を紡ぎ始めていた.

  • 玉井 なおみ, 木村 安貴, 神里 みどり
    原稿種別: 原著
    2019 年 33 巻 論文ID: 33_tamai_20191115
    発行日: 2019/11/08
    公開日: 2019/11/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,看護師によるがんサバイバーへの運動支援の現状とその関連要因を明らかにすることを目的とする.一般病院5施設の看護師を対象に無記名による自記式質問紙調査を実施し,463名から有効回答を得た(有効回答率71.2%).質問項目は看護師の特性,看護師の運動効果の知識,看護師が捉える運動支援の阻害要因,看護師の運動支援のニーズである.運動支援との関連要因は2項ロジスティック回帰分析を行った.がんサバイバーへ運動支援を実施している者は193名(41.7%)であった.運動効果の知識が高い項目は,「QOL向上」329名(71.1%),「睡眠改善」310名(66.9%)であり,「倦怠感緩和」125名(27.0%)や「再発リスク軽減」129名(27.8%)は低かった.運動支援の関連要因は,看護師の特性である「性別」「がん患者のケアの割合」「運動習慣」,看護師の知識項目である「倦怠感緩和」「不安の軽減」,運動支援の阻害要因である「適応患者が分からない」「安全性が分からない」「継続期間が分からない」「患者の知識不足」「家族のニーズ」の10要因が抽出された.以上の結果より,看護師によるがんサバイバーへの運動支援は低く,運動支援には看護師の知識不足だけでなく,患者の知識不足や家族のニーズも関連していた.がんサバイバーへの運動支援を促進するためには,看護師と患者・家族への運動の予防効果の啓発が重要である.

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