日本がん看護学会誌
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35 巻
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原著
  • 浅海 くるみ, 村上 好恵
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_1_asaumi
    発行日: 2021/01/07
    公開日: 2021/01/07
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,外来薬物療法中に複数の症状を抱えた転移・再発乳がん患者の予後を見据えた外来看護の実践と困難を明らかにすることである.

    方法:都内の2施設の乳腺外科外来あるいは外来化学療法室に勤務する看護師6名に半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した.

    結果:薬物療法中に複数の症状を抱えた転移・再発乳がん患者の予後を見据えた外来看護の実践は,【身体的苦痛の塊から核となる症状を明確にする】【自宅療養の継続に向けて優先すべきケアを整理する】【再発告知から死を意識する時期に至る患者・家族に伴走する】であった.薬物療法中に複数の症状を抱えた転移・再発乳がん患者の予後を見据えた外来看護の困難は【悪い知らせを受けた患者との対峙に戸惑う】【心身ともに脆弱化した患者の急変を予測しにくい】【死が迫った患者と家族の動揺に巻き込まれる】であった.

    考察および結論:外来看護師は,診察までの待ち時間という限られた時間で患者の複数症状の整理とケア方略の見極めを円環的に実践していることが推察された.一方,外来看護師の実践上の困難から,緩和ケア主体の医療への転換期の患者に対する外来での「終末期の話し合い」の効果的な実施,患者の自宅療養継続に向けた外来と在宅の看護連携に課題があると考えられた.今後は,本研究の知見を基に,薬物療法中の転移・再発乳がん患者の予後を見据えた外来看護支援の体系化が必要である.

  • 小林 成光, 長坂 育代, 増島 麻里子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_10_kobayashi
    発行日: 2021/01/08
    公開日: 2021/01/08
    ジャーナル フリー

    研究の目的は,がん罹患後に離職した就労世代のがん患者のがん罹患後から離職に至るまでの体験の過程を明らかにし,就労世代のがん患者への看護支援を検討することである.がん罹患後に離職した患者8名を対象に,記録調査,非参与観察,面接調査よりデータ収集を行い,Sandelowski M による質的記述的分析の手法を参考に分析した.

    その結果,就労世代のがん患者の体験は,【がん治療によるつらい身体症状をかかえながらでも働き続けたい】【がん治療による身体の変化に直面し,対処できずに苦悩する】【仕事について相談したいが相談できる相手を見出せない】【離職後も治療を続けながら生活していけるか不安に思う】【がん罹患や身体症状が仕事に支障をきたし,辞めざるをえない状況に立たされる】【周囲の人の発言から仕事の進退について決断する】など10のカテゴリーに集約された.また,カテゴリー間の関係性を時系列で示すと,がん罹患から離職に至るまでには,〔がん治療と仕事の両立を願い葛藤する時期〕〔がん治療と仕事の両立が困難な現実に直面する時期〕〔離職を決断する時期〕という3つの体験の過程をたどることが明らかとなった.

    就労世代のがん患者への看護支援は,就労に関する意思決定を支えること,就業継続に向けて苦痛症状を緩和すること,患者の置かれた状況に合わせた情報提供,経済的問題に関する専門家との連携が必要であると考えた.

  • 川村 三希子, 小島 悦子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_20_kawamura
    発行日: 2021/02/19
    公開日: 2021/02/25
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,在宅療養中の高齢がん患者のがん疼痛の体験と方略を明らかにすることである.

    方法:症状マネジメントモデル(Dodd, 2001)を概念枠組みとし,がん疼痛のある高齢がん患者を対象に,半構造的面接によりデータを収集し内容分析の手法を用い分析した.

    結果:対象は高齢がん患者9名であった. がん疼痛の体験には,【がんがある限り痛みとは縁が切れない】【常に痛みを意識し 暮らしの自立が妨げられる】【日々,暮らす中で,痛みの緩急のパターンが分かる】【失敗する体験から「無理できない範囲」を体得する】【指導されたとおりに鎮痛薬を使えていない】【暮らすうちに徐々に 鎮痛薬の効果を体得する】の 6 カテゴリが抽出された.また,方略には,【体の感覚を頼りに痛みによいと思う方法 を探り,試し続ける】【自分でできないと思ったことは,助けを求める】 【これまでのとらえ方ややり方を変え, 楽しみを見つけて過ごす】【体の感覚を指標に 養生し,痛くならないよう備える】【医師に痛みが伝わるよう努める】【自分が感じたままに痛みを医師に伝えられない】【医師に任せる】の 7 カテゴリが抽出された.

    考察:うまくいかなかった体験から無理できない範囲を体得し,よいと思う方法を試し続けるという方略は,在宅療養の場において,高齢がん患者が自立した生活を維持するために編み出した積極的方略ととらえ,支援することが必要である.

  • 杉本 美希, 小松 浩子, 林田 哲
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_29_sugimoto
    発行日: 2021/02/26
    公開日: 2021/02/26
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,タキサン系薬剤を用いた乳がん患者の化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)と,身体活動および生活の質(HRQOL)の関連を明らかにすることである.タキサン系薬剤を用いた乳がん患者43名に対し,基本情報,疾患・治療関連情報,CIPN(Ntx subscale),HRQOL(FACT-G),身体活動(IPAQ-SF),抑うつ・不安(K6)について自記式質問紙および診療録で調査した.分析の結果,CIPNはHRQOL(r=0.55, p < 0.001),HRQOLの身体面(r=0.72, p < 0.001),精神面(r=0.41, p < 0.01),機能面(r=0.47, p < 0.01)と有意な正の相関がみられた.CIPNと身体活動,身体活動とHRQOLの相関は有意ではなかった.CIPNの症状が強い19名において,身体活動は7名(36.8%)がinactive,12名(63.2%)がactiveであった.CIPNは乳がん患者の生活に影響する症状であり,症状があっても自己管理を行い,症状に耐えて個々の役割や環境に応じて身体活動を行っている者がいることが考えられた.看護師は,CIPNによる日常生活と身体活動への影響について具体的に確認し,活動する背景について受け止めを聞き,支援することが重要である.そして,CIPNをかかえて安全に身体活動を行う方法を個別に検討することが必要である.

  • 渡邉 直美, 鎌倉 やよい, 深田 順子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_45_watanabe
    発行日: 2021/03/23
    公開日: 2021/03/23
    ジャーナル フリー

    【目的】喉頭全摘術および下咽頭喉頭頸部食道切除術に共通する喉頭の摘出によって生じる形態・機能の変化から生活上の問題を導き出し,失声以外の生活上の問題を確定すること,それらの問題の術後経過年数による問題の程度,術後経過年数による変化および個別に工夫された対処法を明らかにする.

    【方法】喉頭摘出者の患者会に所属する喉頭摘出者1,602名に質問紙調査を実施した.799名から返送され(回収率49.9%),統計解析,内容分析を行った.

    【結果】生活上の問題は,第Ⅰ因子[永久気管孔・呼吸]:②重いものが持てない,⑧入浴・シャワー時に気管孔に水が入りやすい,⑪気管孔から異物が入りやすい,⑫気道が乾燥しやすい,⑬気管孔から出血しやすい,⑭痰が頻繁に出やすい,⑮気管孔周囲の皮膚がただれやすい,第Ⅱ因子[食事・排泄]:③排泄時にいきみにくい,④熱い食べ物をフーフーと息を吹いて冷ませない,⑤麺類や汁物をすすれない,⑥げっぷやおならがよく出る,⑦固形物が喉に詰まりやすい,⑩匂いが分かりにくい,第Ⅲ因子[運動]:①全力で走ることが難しい,⑨水泳など運動に制限が生じる,の3因子15項目が確定された.③④⑤⑧⑭は,術後経過年数により問題の程度が減少した.失声・永久気管孔・痰・食事・便秘・生活全般に関わる対処法が示された.

    【考察】①⑨⑩は対処法が示されず,術後経過年数に関係なく問題が継続するため,指導方法の確立が必要である.

  • 田代 真理, 藤田 佐和
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_70_tashiro
    発行日: 2021/04/02
    公開日: 2021/04/02
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,がん患者のACPにおける看護支援の構成要素とその影響要因を明らかにすることである.ACPの概念分析と面接調査の結果をもとに,個人属性9項目,ACPの看護支援55項目,ACPの認識11項目からなる自記式質問紙を作成した.無作為抽出した全国の病院,訪問看護事業所147施設で,経験年数5年以上の看護師に質問紙を配布し,回収は対象者からの個別投函とした.2018年6月1日から9月30日に質問紙1,354部を配付し,798部の回答が得られ(回収率58.9%),780部を有効回答とした(有効回答率97.7%).データは因子分析と重回帰分析を行った.

    看護支援の構成要素として【対話に基づく確かな情報共有】【患者の今後の希望の探求】【終末期に備えた取り決め】【患者の意向の擁護】【患者の生き方の理解】【ケアへの患者の価値観の反映】【継続的な取り組み】が抽出された.また,ACPの看護支援の影響要因として,今後の治療や意向について患者に繰り返し確認するのは当然であるという認識やACP研修受講回数,訪問看護事業所,ACPの体制整備などが正の影響を及ぼし,外来やACPの知識不足・コミュニケーション能力不足などが負の影響を及ぼしていることが示された.本研究で抽出された7つの構成要素は,がん患者のACPへの看護実践における有用な指標になると考えられる.

  • 和田 知世, 鈴木 志津枝
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_80_wada
    発行日: 2021/04/06
    公開日: 2021/04/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,低位前方切除術を受けた初発直腸がん患者の社会生活におけるResilienceの要素を明らかにすることである.低位前方切除術を受けた外来通院中の初発直腸がん患者12名を対象に半構造化面接を行い,質的記述的に分析した.その結果,低位前方切除術を受けた初発直腸がん患者のResilienceを構成する要素として,4コアカテゴリーと18カテゴリーが抽出された.

    社会生活において自分らしさの回復をもたらすプロセスとしてのResilienceは,術後排便機能障害とがんを患うことから【低位前方切除術後に変わってしまった受け入れがたい現実を注視する】という自己喪失の直面化を起点に,これが問題の熟考や他者の援助を引き出すものとなり【前向きな意味へと自らに備わった力を発動する】ことで自己の再統合が促進され,【変化した自分と調和のとれた健やかな暮らしが拡がる】結果が得られ,このプロセスを通して【新しく獲得された自己成長を認める】と新たな自己の獲得を含んだ心理的な動的プロセスを呈していた.

    これらから,看護者による患者の退院早期の面談を通して,患者が知覚する問題を共有する支持的な治療関係を築き,消耗する心身機能の抵抗性を高めるための日常生活支援の必要性や,Resilienceの力は他者との関係性のなかで拡がるため,患者の内省・客観的自己理解による自己の力の気づきや他者からの知識・スキルを得て新たな力を生み出す,Resilienceを理解する看護者による心理的介入の重要性が示唆された.

  • 浦 綾子, 牧 香里, 石橋 曜子, 岩永 和代, 小田 真由美, 内田 京華, 井上 雅史, 宮林 郁子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_91_ura
    発行日: 2021/04/09
    公開日: 2021/04/09
    ジャーナル フリー

    【目的】がん化学療法を受ける患者の睡眠の特徴と影響要因を明らかにした.

    【方法】化学療法中のがん患者を対象にPSQI-Jを用いて自己記述調査を行った.影響要因はPSQI総得点による睡眠不良の有無と各変数を比較し,有意差を認めた5項目と年齢,性別を独立変数にし,変数増加法で重回帰分析を行った.

    【結果】対象者は64名,平均年齢56.4±7.2歳,消化器がんが81.3%,StageⅣが64.1%を占めた.鎮痛薬内服が31.3%,ステロイド薬内服が37.5%,睡眠薬内服が12.5%であった.PSQI総得点は平均5.2(±2.9)点で,睡眠不良が37.5%を占めた.睡眠不良の人は,入眠の所要時間が34.4±24.7分,実睡眠時間は5.9±1.2時間,睡眠の効率は84.5±12.6%で有意差を認めた.身体症状は末梢神経障害が42.2%,食欲低下が37.5%,倦怠感が35.9%,痛みが17.2%に出現した.痛み,味覚障害のある患者は,実睡眠時間が有意に短く睡眠不良であった.ステロイド薬と睡眠薬の内服,痛みや味覚障害はPSQI総得点の影響要因として抽出された(調整済みR2=0.432)

    【考察】がん化学療法はステロイド薬内服,痛みや味覚障害により睡眠が障害されやすく,睡眠薬は入眠を促す効果が不十分で,睡眠不良の患者には痛みの症状緩和を図る必要性が示唆された.

  • 安田 弘子, 二渡 玉江, 堀越 政孝
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_102_yasuda
    発行日: 2021/04/12
    公開日: 2021/04/12
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,術後膵臓がん患者が苦悩をかかえながら生きるプロセスを明らかにすることである.17名の患者に半構成面接を行い,得られたデータを修正版グラウンデッド・セオリー・アプロ―チに基づき分析した.

    その結果,対象者は膵臓がん告知後に,〈もう人生終わりなのか,手遅れなのか〉と動揺したが,『手術に命を懸けるしかない』と手術を受けた.術後『これからも生きられる』と実感した一方で,手術と術後補助化学療法によって〈からだも辛いし,見た目もいやだ〉と苦しんだ.〈よくなるために,自分ができることをとにかく試し〉たが効果が得られず,〈このまま死んでしまうのか〉と死に脅えた.この時,感情が生と死の狭間で行き来し,〈生きられるのか,それともやっぱり死んでしまうのか〉と悩み苦しんだ.このプロセスが【生と死の不確実性に翻弄される】を示す.時間の経過とともに〈食べられるようになってきた〉実感をすると〈死にたくない,まだやりたいことがある〉と,『自分の力で苦しみから逃れる方法を探し』た.〈普通に生活できている〉ことと,『生きることを支えてくれる人が身近にいる』ことを実感し,〈大丈夫,まだ生きられそうだ〉と感じた.このように【自己コントロール感覚を取り戻す】ことで〈生と死が不確実な時間を精一杯生きる〉と決意していた.

    看護支援では,身体的精神的苦痛を緩和し,“食べられるようになってきた”実感を促進することが重要である.

  • 八田 理恵, 稲垣 美智子, 多崎 恵子, 堀口 智美
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_112_hatta
    発行日: 2021/04/22
    公開日: 2021/04/22
    ジャーナル フリー

    研究目的は,患者が舌がんと診断されて手術を受け,その後現在に至るまでのことをどのような体験として意味づけているのかを明らかにし,患者理解を深め,今後の看護の示唆を得ることである.研究デザインは,現象学を基盤とする質的記述的研究であり,データ収集は7名の参加者に非構造化面接法を用いて行った.分析は現象学的方法にもとづいて行った.

    分析の結果,10個の意味単位から【診断まではがん患者にしてもらえることに苦労し,手術後はもう患者なのに自分でがんから守ると決意しなければならない】【舌がん患者であることを,ことさらに気づかされる場面が日常にある】【“舌足らず”の発語が,人との関係を窮屈にさせている】【医師が治そうとしてくれた身体と命の期待に,今は自分も応えようとしている】の4つのテーマが導き出された.それは,舌の痛みを自覚した時から始まる舌がん患者になるための思いや行動,舌を喪失したことによる戸惑い,そしてそれでもなお,社会に適応していこうとする現在も含んだ舌がん患者としての生活のいとなみであった.

    看護師は患者の置かれている状況を理解し,がんサバイバーとして認め生きることへの支援,新たな食事方法を獲得するための支援,人との関係をはじめとする社会生活への支援を行っていくことの重要性が示唆された.

  • 和田 美保, 本田 彰子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_132_wada
    発行日: 2021/04/27
    公開日: 2021/04/27
    ジャーナル フリー

    がん患者の遺族は,死別後看取りの体験を振り返った時に後悔の念を抱き,その後悔は死別の悲しみに影響すると考えられる.そこで本研究では,がん患者の遺族が抱く後悔の内容と悲嘆プロセスにおける後悔への向き合い方を明らかにすることを目的とした.患者の身近で療養生活の世話をしていた遺族11名に半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.その結果,後悔の内容は,それらの類似性により〈生き方に関連した後悔〉〈死に方に関連した後悔〉〈関わりに関連した後悔〉の3つに分類できた.悲嘆プロセスにおいて,〈生き方に関連した後悔〉では,【故人がつないでくれた周りの人の支えに気づく】,〈死に方に関連した後悔〉では,【最期の生き方に意味を見出す】,〈関わりに関連した後悔〉では,【思いや役割を引き継げる存在であることに気づく】という振り返りをしていた.これにより,後悔の思いをとらえなおし,喪失の適応に向かう様相が示された.遺族が抱く後悔は,死別,すなわち現実的なつながりが切れたことにより生じるが,振り返りを促す思いであり,とらえなおしにより故人とのつながりを見直すプロセスの重要な一部であった.また,見出された3つの後悔の内容から,とくに医療者が関わるべき重要な後悔は 〈死に方に関連した後悔〉であり,看取り期に後悔にも目を向けたケアの充実の必要性が示唆された.

  • 飯島 美穂, 小松 浩子, 仲村 勝
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_142_iijima
    発行日: 2021/04/30
    公開日: 2021/04/30
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は子宮頸がん患者の就労実態と就労者の特徴を明らかにすることである.

    方法:治療開始から6カ月~6年未満の患者を対象に横断的観察研究を行った.自記式質問紙および診療録から,がん診断時と調査時の就労の有無,就業の変化,対象背景,自尊心,自己効力感,機能障害を調査した.調査時の就労の有無よる群間比較を行った.

    結果:対象者127名のがん診断時の就労者は91.3%(116/127)であった.治療開始から平均3.2(±1.5)年経過した調査時の就労者は82.7%(105/127)であった.調査時の就労に婚姻の有無(p=0.002)や子どもの有無(p<0.001) が関連していた.がん診断時と調査時に就労していた者の66.3%は,がん治療後に転職や就労時間の調整などの就業の変化があった.就業の変化があった者は有意に非正規雇用者が多く(p=0.010),復職時期が遅かった(p=0.013).

    結論:子宮頸がん患者にとって就労は経済的な安定や社会との交流となる.就労の意義を尊重し,就労環境の調整や機能障害へのセルフケアなどを含めた就労支援が必要である.

  • 原田 智子, 木村 安貴
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_158_harada
    発行日: 2021/05/18
    公開日: 2021/05/18
    ジャーナル フリー

    【目的】進行がん患者の意思決定支援を行ううえで,終末期の話し合い(End-of-Life discussion:EOLD)の有効性が確認されているが,看護師がEOLDに同席することが困難な現状にある.そこで本研究は,進行がん患者のEOLDへの看護師の同席を阻害している要因を明らかにする.

    【方法】A県の3つのがん診療拠点病院に勤務し,がん看護を実践している8名の病棟看護師を対象にEOLDへの同席を阻害している要因について半構造化インタビューを実施し,Krippendorff の内容分析法を用いて質的帰納的分析を行った.

    【結果】対象者は男性3名,女性5名であり,臨床経験年数は,5~24年であった.インタビューから 155コードが抽出され,14サブカテゴリー,5カテゴリーに集約された.EOLDへの病棟看護師の同席を阻害している要因は【話し合いへの同席の必要性の認識不足】【医療者間の連携不足】【同席するためのシステムの不足】【話し合いにおける役割認識やコミュニケーションスキルの不足】【患者と家族の特性に応じた関わりの難しさ】であった.

    【考察】進行がん患者のEOLDへの看護師の同席を促進するためには,EOLDに看護師が同席する必要性の認識を統一することが重要である.さらに,看護師のEOLDについての知識やコミュニケーションスキルの教育をすること,感情的な患者への対応や倫理的葛藤が生じる事例においては他職種との連携を図ることが重要である.

  • 山下 慈, 小澤 尚子, 菊池 和子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_175_yamashita
    発行日: 2021/06/18
    公開日: 2021/06/18
    ジャーナル フリー

    【目的】病棟看護師による終末期がん患者の在宅に向けた退院支援と緩和ケアの知識・実践・困難感,今後を予測した看護実践との関連を明らかにする.

    【方法】東北地方の2県に限定したがん診療拠点病院等7施設の看護師を対象に,基本属性,今後を予測した看護実践,緩和ケアに関する医療者の知識・実践・困難感評価尺度,在宅の視点のある病棟看護の実践に対する自己評価尺度の質問紙調査を行った.分析は,記述統計,因子分析,各変数間の相関を求め,緩和ケアの知識・実践・困難感,今後を予測した看護実践が在宅の視点のある病棟看護実践に影響を与えるモデルを設定しパス解析を行った.

    【結果】対象338名に調査用紙を配布,有効回答は116名である.在宅の視点のある病棟看護実践は,緩和ケアの「せん妄」「患者・家族中心のケア」「疼痛」「コミュニケーション」と「予測される事態を地域医療者と共有」の5観測変数によって適合度指標が高い十分に受容できるモデルが構築された.そのなかで,緩和ケアの実践「せん妄」と「患者・家族中心のケア」「予測される事態を地域医療者と共有」の3観測変数は,在宅の視点のある病棟看護実践の58.3%を説明した.

    【考察】在宅の視点のある病棟看護実践に直接関連した緩和ケアの実践の「せん妄」と「患者・家族中心のケア」は,「患者・家族」と「生活」に視点をおいたケアが求められ,これら2つが終末期がん患者の在宅に向けた退院支援において重要と考える.

  • 林 さえ子, 大石 ふみ子, 安藤 詳子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_187_hayashi
    発行日: 2021/06/25
    公開日: 2021/06/25
    ジャーナル フリー

    本研究は,前立腺がん治療に伴う性機能障害への看護支援の実情を明らかにすることを目的とし,前立腺がんに関わる部署で 3 年以上勤務経験をもつ看護師10名に,性機能障害への関わりとその背景について半構成的面接を実施し得たデータを質的帰納的に分析した.

    看護師の関わりは〖性機能障害を抱えた患者を受け容れ問題解決に向かう〗態度と〖前立腺がん患者の性機能障害の支援に踏み込まない〗態度に大別された.{性機能障害を抱えた患者を受け容れ問題解決に向かわせるもの}には【看護師自身の志向や都合にかかわらず患者の性機能障害に向き合う姿勢】【関わりの辛さを傾聴・共感する看護師同士の支え合い】が示されていた.一方{前立腺がん患者の性機能障害の支援に踏み込みにくくさせるもの}には【性機能障害に対する看護師の思い込みや無関心】などの〖看護師の背景〗,【性機能障害を医療者に発信することへの不安と恐れ】などの〖考えられる患者の背景〗,【性機能障害に関わるための基礎・卒後教育の未整備】などの〖性機能障害に関わるシステムの未整備〗が示されていた.

    支援の促進に向け,性機能障害に関わる専門家の育成とチーム医療体制の構築,性の看護に対する看護師個々の感情に理解を示す職場風土の形成,前立腺がん患者の性機能障害に対応できる教育システムの構築,性機能障害に着目したマニュアル・ツールの作成,性に関わる倫理・行動規範の明示と遵守が必要である.

  • 岩田 尚子, 諏訪 さゆり
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_206_iwata
    発行日: 2021/08/11
    公開日: 2021/08/11
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,外来看護師と訪問看護師が訪問看護導入を必要と判断する外来化学療法を受ける高齢がん患者の特徴を明らかにすることである.

    外来看護師13名,訪問看護師10名へ,個別の半構造化面接法を実施し,得られた逐語録の質的内容分析を行った.その結果,訪問看護導入が必要と判断される外来化学療法を受ける高齢がん患者の特徴として,「治療決定から外来化学療法を開始するまでの時期」では【自己管理の困難が予測される要因の存在】【家族介護力の危うさ】,「外来化学療法を継続する時期」では【自己管理の困難】【治療方針の再検討の必要性】【治療継続に影響を及ぼすほどの家族介護力の低下】,「外来化学療法の継続が困難になる時期」では【最期の過ごし方に関する決断の不可避】【家族介護の限界】に着眼されていることが導き出された.

    外来看護師と訪問看護師は,高齢がん患者の自己管理と家族の負担を見極め,訪問看護導入の必要な対象を判断していることが明らかになった.また,治療を継続する時期から高齢がん患者に今後の生活や人生を考えてもらい,治療や療養の方向性を高齢がん患者が自身で選択できることに主眼を置きながら,訪問看護の導入が必要な対象を判断していることが示された.

  • 塚越 徳子, 二渡 玉江, 京田 亜由美, 瀬沼 麻衣子, 近藤 由香
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_237_tsukagoshi
    発行日: 2021/09/10
    公開日: 2021/09/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,がん関連領域の専門・認定看護師が捉える認知症がん患者や家族に対する看護上の課題を明らかにすることである.A県内の8施設11名を対象に半構造化面接を行った.面接内容は,質的記述的研究手法を参考に分析した.

    結果,【認知症がん患者を尊重した治療選択支援の難しさ】【認知症がん患者の安全とQOLを保証したがん治療支援の難しさ】【認知症がん患者に適した生活環境調整の難しさ】【がんと認知症看護を統合した看護職への教育不足】【がんと認知症の専門性を活かした連携不足】【認知症とがんの合併による負担感を軽減するための家族支援の難しさ】の6課題が明らかとなった.

    これらの結果から,専門看護師・認定看護師は,認知症による記銘力・判断能力低下によって患者の意思や意向を十分に理解できず,認知症がん患者に対するがん治療効果やQOLへの影響に関するエビデンスが乏しいことで看護支援に対する確信をもてないと考えられた.安全対策を重視するあまり,認知症がん患者のQOL低下を引き起こしていることに倫理的ジレンマがあった.患者の治療・療養の場移行にともなう病院施設内外の看護師に対する認知症がん看護の質向上の重要性が示唆された.

  • 木全 明子, 落合 亮太, 松岡 志帆, 眞茅 みゆき
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_261_kimata
    発行日: 2021/09/23
    公開日: 2021/09/23
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,婦人科がんサバイバーの就労継続上の困難,離職に影響を及ぼす要因,就労継続に影響を及ぼす要因を明らかにし,就労支援への示唆を得ることである.対象者は婦人科がん診断時に就労しており,調査時も就労している者20名,診断時に就労していたが,調査時に離職していた者6名を対象に半構造化面接を行い,Krippendorffの内容分析法を用いた.

    分析の結果,婦人科がんサバイバーの就労継続上の困難として,【治療の有害事象・後遺症による就労への支障】【セルフマネジメントに対する困難感】【見通しがつかないことへの不安】【自己イメージ・女性性の変化にともなう辛さ】【医療者・医療機関による就労支援の欠如】などが抽出された.離職に影響を及ぼす要因は,【職場における就労支援体制の欠如】【再発への懸念】【精神疾患の発症】などであった.一方,就労継続に影響を及ぼす要因は,【治療の有害事象・後遺症に関する情報探求】【治療の有害事象・後遺症に対するセルフマネジメント】【職場での病名・治療計画開示】などの対処に加え,【病状に対する理解・配慮が得られる就労環境】【高い就労意欲】【医療者による就労支援】などの支えであった.婦人科がんサバイバーの就労継続には,診断時から生活と治療の場で継続的に関わることができる看護師が主体となり,多職種連携による包括的な就労支援の重要性が示唆された.

  • 久保田 好美, 廣瀬 規代美, 横山 京子, 石井 美希
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_273_kubota
    発行日: 2021/09/28
    公開日: 2021/09/28
    ジャーナル フリー

    目的:初発乳がん患者がとらえる学童期の子どもへの告知にともなう体験を明らかにし,母親の子どもへの告知に関する看護実践の示唆を得る.

    方法:初期治療中の母親13名に半構造化面接を行いKrippendorffの内容分析を用いて分析した.

    結果:がんの母親の子どもへの告知にともなう体験は【母親として告知と向き合い続ける苦悩】【告知における子どもの理解力と精神的負担の熟慮】【告知を通した子どもの精神的成長と母子関係発展の実感】など,7大カテゴリ となった.

    考察:母親は確定診断時に限らず,自身のがんと子どもへの告知に対する二重の苦悩を繰り返すとともに,学童期のことばの概念を視点にがんに対する理解度を判断し伝達方法・内容を熟慮していた.告知後,母親は子どもとの相互行為を通し,精神的動揺の一方,心身ともに母親を支えようとする子どもの反応をとらえていた.告知は,子どもの精神的成長とともに母子の信頼関係に影響をもたらすものと考える.

    このように,告知を通し母子ともにがん治療を歩むなかで,療養の支えとなる子どもの精神的成長とともに母子関係の発展を実感し,母親の闘病を支える原動力となることが示唆された.がんの母親の子どもへの告知における看護実践には,初回受診時より母子の存在を意識し,母子相互行為のなかで繰り返される告知への苦悩を具体的にとらえた継続的支援が必要である.また子どもへの告知に向けて,ことばの概念化を視点に,伝え方の情報提供と相談支援が重要である.

  • 小林 幹紘, 小島 ひで子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_291_kobayashi
    発行日: 2021/10/06
    公開日: 2021/10/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,思春期青年期世代がん患者に対する看護実践の内容と看護師がとらえた難しさについて明らかにすることである.日本がん看護学会の小児・AYA世代がん看護SIGに所属する看護師8名を対象に,半構造化面接を行い,Krippendorffの内容分析法を用いて分析した.

    分析の結果,4つの大カテゴリーが生成された.思春期青年期世代の看護の専門性が高い看護師の根幹には【思春期青年期のがんと発達過程の理解】があり,患者の権利擁護に努めながら【主体性を尊重しながらニーズを探る姿勢】で看護をしていることが明らかになった.一方で,看護師は,発達過程にある【患者の核心に迫り切れないことへの苦慮】があり,これに対して,多職種間の情報共有や自律を促す年齢相応の環境整備,患者と両親の気持ちのずれを埋めるための仲介をしながら,治療終了後に【がんとともに生きる患者の自律を支えるケア】をしているという看護実践の内容とその難しさが明らかになった.

    思春期青年期世代がん患者の看護には,この時期に治療を受ける患者の心情の理解が求められており,そのために成人看護の観点に加えて,小児看護の観点を併せ持った看護が必要であると考える.また,思春期青年期世代がん患者が,がんとともに生きる患者の自律を支えるケアは,この世代のがん患者の看護に重要な観点である.

  • 日浅 友裕, 片岡 純
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_300_hiasa
    発行日: 2021/10/09
    公開日: 2021/10/09
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,外照射を受けるがん患者に対する放射線療法看護の実践状況を明らかにすることである.

    放射線療法看護に携わる看護師1,400 名にがん放射線療法看護の質評価指標を用いて放射線療法看護の実践状況を問う自記式質問紙調査を実施した.回収数は394名で,すべての項目に記入があった349名を分析対象とした.がん放射線療法看護の質評価指標の信頼性と構成概念妥当性を確認した後,放射線療法看護の構成因子,職位,所属,施設の分類,がん放射線療法看護認定看護師資格の有無による実践状況を分析した.

    結果,安全に照射を受けるケア,納得した治療を意思決定するケア,セルフマネジメントを促進するケアは実践できていたが,がんサバイバーとして生きぬくケアは十分な実践ができていなかった.安全に照射を受けるケア,セルフマネジメントを促進するケアは,病棟に比べ放射線治療部門が有意に高かった(p<0.01).すべての因子において,一般看護師に比べがん放射線療法看護認定看護師の実践が有意に高かった(p<0.01).

    今後,さらに放射線療法看護の質を高めるためには,がんサバイバーとして生きぬくケアを重点的に教育する必要性が示唆された.また,認定看護師は実践の場で役割モデルを示し,看護師への指導・相談の役割を果たすことで,放射線療法看護の質向上が期待される.

  • 上田 佳奈, 植田 喜久子, 中信 利恵子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_312_ueda
    発行日: 2021/10/29
    公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,医師からのコンサルテーションの依頼内容に対するがん看護専門看護師(以下,CNSとする)の思考,行動,その成果を明らかにすることである.

    地域がん診療連携拠点病院に勤務する,医師からのコンサルテーションを実施しているCNS4名に半構成的面接法を用いてデータ収集を行い,質的・帰納的に分析を行った.

    CNSが行う医師からのコンサルテーションの取り組みは,18のカテゴリーから構成された.CNSは【医師は患者中心の事例についてのコンサルテーションを依頼する】と考えていた.CNSは【医師や看護師の面目を保つため関わりに配慮する】【医師の立場を理解しながら,医師と問題解決を図る】【多職種と問題解決のために協働する体制を構築する】ことを行っていた.成果として【医師は繰返しコンサルテーションを依頼する】など,コンサルティ,クライアント,コンサルタント,組織の変化が生じていた.

    CNSは医師からのコンサルテーションの依頼内容をアセスメントし,CNS1人で問題を解決せず,多職種の力を最大限活かせるよう裏方となり活動をしていた.また,CNSは多職種の面目保持を行い,コンサルテーションの成果を可視化することで多職種や組織の理解を得ており,CNSの活用が促進されていた.CNSは多職種と実施したコンサルテーションの評価を行うことで,コンサルテーション能力を高めようとしていた.

  • 坂井 みさき, 吉岡 さおり, 杉田 智子
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_330_sakai
    発行日: 2021/11/16
    公開日: 2021/11/16
    ジャーナル フリー

    【目的】緩和ケア病棟看護師の専門的緩和ケア実践能力の実態と,その関連要因をクリティカルシンキングとレジリエンスの側面から検討する.

    【方法】緩和ケア病棟看護師を対象に質問紙調査を実施した.質問紙は,専門的緩和ケア実践能力は,専門的緩和ケアを担う看護師に求められるコアコンピテンシーで測定し,臨床看護師のクリティカルシンキング測定尺度,精神的回復力尺度,属性から構成した.専門的緩和ケア実践能力を従属変数とする重回帰分析を実施した.

    【結果】1,392の有効回答が得られた(有効回答率71%).専門的緩和ケア実践能力の実態として,「がん患者・家族のありのままを理解し尊重する」「がん患者・家族のスピリチュアルな苦悩に向き合い支える」は得点が高く,「意欲的に専門的緩和ケアを担う看護師としての役割・責任を果たす」は得点が低かった.実践能力の関連要因においては,「創造的思考」「論理的思考」「直観」「感情調整」「緩和ケア病棟経験年数」「緩和ケアの学習経験」の6要因の関連が示唆された(調整済R²=0.37).

    【考察】実践能力の実態として,患者・家族の価値観の尊重やスピリチュアルケアへの意識は高く,質の向上への意欲的な取り組みには課題があることが示唆された.関連要因の特徴から,現象の本質や変化を見抜き個別的なケアを創造できる思考力,内省し感情調整できる力,実践や学習の積み重ねの重要性が示唆された.

  • 高山 良子, 藤田 佐和
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_342_takayama
    発行日: 2021/12/07
    公開日: 2021/12/07
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,がんサバイバーと家族員におけるパートナーシップとはどのようなものかを明らかにし,新たながんサバイバーと家族員の理解や両者を対象とした一体的な看護介入の示唆を得ることである.

    そこで,初回がん治療を終了したがんサバイバーと家族員のペア2名1組を研究参加者とし,半構成的面接法を用いてジョイント・インタビューを実施し,質的記述研究を行った.倫理的配慮として,所属施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.結果として,がんサバイバーと家族員のペア9組18名が研究に参加し,がんサバイバーと家族員のパートナーシップとして,2つの局面と7つのカテゴリーが導き出された.相互理解を深め対等な関係を再形成する局面では,【個人にしか分からない辛さを分かり合う】【気遣いすぎない】の2つのカテゴリー,がんと生きていくために協働する局面では,【迷っている時は背中を押す】【“大丈夫”という安心感で支え合う】【お互いに歩み寄りながら決める】【力を合わせて治療を乗り越える】【がんと付き合う力を醸成する】の5つのカテゴリーが明らかとなった.

    がんサバイバーと家族員は,個人にしか分からない辛さがあることをお互いが実感し,相手に対して自分がどう行為するかを試行錯誤しながら,気遣いすぎないという関係を基盤とし,がんと付き合う力を醸成するという新たな家族像の示唆を得ることができた.また,がんサバイバーと家族員のパートナーシップを促進するためには,2者間への介入を基盤にした看護援助が重要である.

  • 兵庫 哲平, 今井 芳枝, 板東 孝枝, 高橋 亜希
    原稿種別: 原著
    2021 年 35 巻 論文ID: 35_360_hyogo
    発行日: 2021/12/28
    公開日: 2021/12/28
    ジャーナル フリー

    本研究はBest Supportive Care(BSC)となった終末期肺がん患者の家族の願いを明らかにすることである.対象者はBSCとなった肺がん患者の家族10名とし,インタビューガイドを用いた半構造的面接法を行った.データ分析方法は内容分析を用いた.

    結果,急性期病棟でBSCとなった肺がん患者の家族の願いは【やめざるをえないが本当は治療させたかった】【最期くらいは苦しい思いを感じさせずに穏やかな生活を過ごさせてあげたい】【患者が自分の思うように最期を生ききる姿を見届けたい】【今までよく頑張ってきてくれたことへ,ありがとうを伝えたい】の4つのカテゴリーが抽出された.家族は生き続けるための治療ができなかった無念さを抱えつつも,穏やかに過ごしてほしいと願っていることが示されていた.

    この根底には,患者を苦痛から解放してあげたいという“患者の安楽を第一に”したい家族の願いが推察できた.根治は手術でしか成しえないことを説明したうえで治療を重ねて弱っていく患者を見続ける療養の日々は,少しずつ患者の死を享受する予期的悲嘆プロセスにもなっていたことが推察された.そして,患者の死を避けることができない現実として捉え,患者が自分らしく最期まで生ききれることを支えるという“残された家族の務め”としての願いが示されていた.家族の務めという願いは,患者の死にとらわれずに,残された時間という先行きに視点を向けさせていたと推察できた.

総説
資料
実践報告
委員会報告
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