日本がん看護学会誌
Online ISSN : 2189-7565
Print ISSN : 0914-6423
ISSN-L : 0914-6423
最新号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
原著
  • 森田 公美子, 遠藤 貴子
    原稿種別: 原著
    2024 年 38 巻 論文ID: 38_7_morita
    発行日: 2024/02/19
    公開日: 2024/02/19
    ジャーナル フリー

    目的:乳がん看護認定看護師の,臨床看護実践から形成されるプロフェッショナリズムを明らかにする.

    方法:日本看護協会の資格認定制度において資格認定された乳がん看護認定看護師を研究対象者とし,半構造化面接法によりデータ収集を行い,帰納的内容分析を行った.

    結果:対象者は17名であった.乳がん看護認定看護師のプロフェッショナリズムは,【乳がん看護の本質の認識】【秀抜な乳がん看護の実践】【乳がん看護の涵養への寄与】【組織発展への貢献】【専門看護職にふさわしい態度の保持】【向上する努力と自己研鑽】【乳がん看護の価値の承認】に集約された.

    考察:乳がん看護認定看護師のプロフェッショナリズムは,看護職全体のプロフェッショナリズムを基盤として,乳がん看護のプロフェッショナルとしての経験を積み重ねることにより形成し,醸成,改新されていく.乳がん医療の発展にともない,この看護師がプロフェッショナリズムを形成し,プロフェッショナルであり続けるためには,本人の努力と相まって職場環境や看護管理者の支援が寄与する.この看護師のプロフェッショナリズムを医療者や看護の対象となる人への認識を深めるには,社会に向けてこの看護師の意義や有用性を可視化して発信することが重要である.

  • 関根 みぎわ, 粟生田 友子
    原稿種別: 原著
    2024 年 38 巻 論文ID: 38_17_sekine
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/02/28
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,喉頭全摘出後の夫と共に暮らす妻の失声への構えを明らかにすることである.

    研究は,質的記述的研究デザインを用い,喉頭全摘出後3カ月を経過している夫の配偶者(妻)5名を対象に,半構成面接法を行い,失声への構えについて分析し,分類した.

    結果,喉頭全摘出後の夫と共に暮らす妻の失声への構えには,《失声に対する理解と認識》《手術に向かう準備》を経て,現実を受け止めようと努力する深い心情である《揺るぎのない受け止め》《揺らぐ自身の受け止め》という相反する揺らぎの状態が共存し,両方の思いをかかえて失声への構えが移り行く過程が描かれた.これらは,喉頭摘出術を受ける夫と共に暮らす妻には,夫の失声に対して,これまでの夫婦としての絆や関わりが映し出され,夫を思うがゆえに自分自身の揺らぎに耐えていこうとする構えがあることがわかった.

    構えとして抽出された9カテゴリーから,その夫婦としてのつながりに目を向け,夫婦の状況を察すること,先を見据えられるように支援することが重要であることが示唆された.

  • 杉山 潤, 酒井 禎子, 石田 和子
    原稿種別: 原著
    2024 年 38 巻 論文ID: 38_34_sugiyama
    発行日: 2024/03/08
    公開日: 2024/03/08
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,終末期がん患者の「食べること」の意味づけを明らかにすることである.

    研究方法:A県内の緩和ケア病棟に入院している終末期がん患者を対象に半構造化面接を行い,Krippendorffの内容分析の手法を用いて分析した.

    結果:対象者は,40歳代から80歳代までの10名であった.パフォーマンス・ステータスは,PS1からPS3で,対象者全員が食に影響する症状を抱えていた.「食べること」の意味づけとして,『食べることは人間にとって自然な営みである』,『食べることは幸福である』,『食べることは家族の絆を深める』,『思うままに美味しいものを食べたい』,『生きるために食べ続けたい』,『食べられない自分がつらい』,『命の限界を知り食べられない自分を甘受する』の7つのコアカテゴリが形成された.

    考察:終末期がん患者は,「食べること」を人間や生活者という立場から自然な営みであると改めて解釈し直し,“生きる”や“楽しむ”といった「食べること」の意義と食べられなくなっていく現状に葛藤しながらも,食べられない自分を甘受し,死を覚悟することに繋がると考えられた.

    結論:「食べること」の意味づけに応じて,食べることを支援していくことが,患者のスピリチュアルケアに繋がる可能性があることが示唆された.

  • 武田 洋子, 佐藤 和佳子
    原稿種別: 原著
    2024 年 38 巻 論文ID: 38_51_takeda
    発行日: 2024/03/19
    公開日: 2024/03/19
    ジャーナル フリー

    目的:膵がん患者の66〜84%は中等度以上の体重減少を呈する.そのため,患者は食に対する悩みをかかえ,QOLに影響を及ぼすことが推察される.本研究の目的は,膵がん化学療法中の患者の健康関連QOLの特徴を明らかにし,栄養指標・食の苦悩との関連を検討することである.

    方法:化学療法中の膵がん患者のうち,同意の得られた33名を対象に自記式質問紙および診療録による調査を行った.項目は基本属性,診療関連情報,Functional Assessment of Cancer Therapy-Hepatobiliary(FACT-Hep),栄養指標,食の苦悩とした.分析はFACT-Hepの平均値を基準に高群と低群に分類し,ほかの変数との関連を統計的に比較した.

    結果:FACT-Hepの平均は117.1±23.7であり,対象者の72.7〜78.9%が軽度以上の栄養障害を有していた.FACT-Hepの高低群の比較では,栄養指標に有意差はみられず,食の苦悩では「食べないといけないとわかっているが食べられない」(p=0.033),「食事を用意してくれた家族の思いに応えられない」(p=0.009)の割合がFACT-Hep低群で有意に高いことが示された.

    結論:膵がん患者のQOL向上にはFACT-Hep評価による症状マネジメント,食の苦悩を緩和する取り組みの必要性が示唆された.

  • 武田 浩子, 松原 康美
    原稿種別: 原著
    2024 年 38 巻 論文ID: 38_85_takeda
    発行日: 2024/06/28
    公開日: 2024/06/28
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,術後補助化学療法を受けながら就労する胃がん患者の就労継続における阻害要因と促進要因を明らかにすることである.術後化学療法を受けながら就労する胃がん患者8名に半構造化面接を行い,質的帰納的に分析を行った.就労継続の阻害要因として,【胃切除による生活の変化】,【術後補助化学療法の副作用による苦痛】,【治療による社会生活への適応の難しさ】,【治療による就労継続への懸念】【就労継続に必要な情報不足】の5カテゴリが抽出された.就労継続の促進要因として,【治療と就労の両立を目指すセルフケア行動】,【治療と就労が両立できる制度や体制】,【就労意欲を支える周囲の協力】,【仕事への原動力】の4カテゴリが抽出された.

    就労継続の阻害要因として,胃切除や術後補助化学療法による副作用は日常の食事や排泄に直接的に影響を及ぼし,体力低下や不安を招いていた.いつ改善するのかわからない食欲不振など,予測や自己コントロールが難しい症状により,就労意欲は低下しQWLに影響していた可能性がある.就労継続の促進要因として,術後補助化学療法は初めての体験でも,自分なりの対処や調整の積み重ねを通して,調整力や対処能力が養われていた.同僚の理解や協力,職場環境の充実は就労意欲を高めることにつながっていた.

  • 奥村 真央, 林 ゑり子, 増田 菜穂子, 菅野 雄介, 赤瀬 智子, 玉井 奈緒
    原稿種別: 原著
    2024 年 38 巻 論文ID: 38_107_okumura
    発行日: 2024/08/01
    公開日: 2024/08/01
    ジャーナル フリー

    目的:緊急手術とともに初めてがんと診断される成人患者に対するがん看護専門看護師による入院中からの支援の実際を明らかにすることである.

    方法:がん看護専門看護師7名を対象に半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.

    結果:【置き去りになった患者・家族の心情を汲み取る】【病状から今後の展開を予測し,支援のスピード感をつかむ】【患者・家族,医療者間のこじれた状況を紐解きチームの力を見極める】【過酷な境遇を乗り越えるための患者・家族の良き理解者となる】【突然変化した身体とがん治療が加わる新たな日常への手助けをする】【患者・家族から足が遠のく病棟看護師・医師を後押しする】【専門性を生かして協働し,複雑な状況にあるがん患者のケアに参入する】【急性期医療に埋もれたがん患者と繋がるために,がん看護専門看護師の存在を組織に浸透させていく】の8カテゴリが抽出された.

    考察:がん看護専門看護師は,術後の回復過程,がんの予後という2つの時間軸を意識しながら,急性期医療の体制,そこに従事する医療者のなかで置き去りになる患者・家族を多角的・俯瞰的視点でとらえ,情報提供の専門性によりがん告知にともなう衝撃の軽減と受容の促進を意図し,意思決定を支援していた.

    結論:がん看護専門看護師は,患者が新たな日常を取り戻す支援を行いながら,急性期医療に埋もれやすい,緊急手術とともにがんと診断される患者と繋がる方法を模索していた.

  • 今西 優子, 秋元 典子
    原稿種別: 原著
    2024 年 38 巻 論文ID: 38_117_imanishi
    発行日: 2024/08/19
    公開日: 2024/08/19
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,進行がん患者が病気の情報を未成年の子どもに伝えることに関する意思決定過程を明らかにし,必要な看護実践への示唆を得ることである.進行がん診断時に6歳~18歳未満の子どもをもち,面接までの年数が15年以内にあり,医師より根治的治療の対象とはならないと伝えられ,延命や症状緩和目的の治療中あるいは経過観察中の患者20名に半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチの手法を用いて分析した.その結果,進行がん患者が病気の情報を未成年の子どもに伝えることに関する意思決定過程は,①『自己の価値観に基づき,「伝える」「伝えない」を選択する』,②『伝える時・人・方法を熟考したうえで伝える』,および③『死について伝えるべきか答えが出ない』の3つをコアカテゴリとする過程であり,【自身の決断を信頼できる人に確認する】が②の進行を支えている.意思決定支援として,看護師は,患者から伝える・伝えないの選択に至った思いを引き出し,進行がん患者が辿ると予測される3つのコアカテゴリから成る意思決定過程を支える継続的支援,伝えるタイミングの尊重・支持,死を伝えることの困難さに関する患者の語りと看護師の傾聴により,患者が自分の意識を再構成し,死を伝えるべきかどうするか自らが答えを出していける支援が示唆された.

委員会報告
資料
実践報告
研修報告
feedback
Top