日本がん看護学会誌
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原著
  • 塚越 徳子, 瀬沼 麻衣子, 京田 亜由美, 近藤 由香, 牛久保 美津子
    原稿種別: 原著
    2025 年39 巻 論文ID: 39_1_tsukagoshi
    発行日: 2025/02/05
    公開日: 2025/02/05
    ジャーナル フリー

    目的:がんと認知症を併せ持つ高齢患者への老人看護専門看護師による看護実践を明らかにする.

    方法:老人看護専門看護師7名を対象に半構造化面接を実施し,質的記述的研究手法を参考に分析した.

    結果:対象者は急性期病院,特別養護老人ホーム,訪問看護などでのがんと認知症を併せ持つ高齢患者への看護実践を語った.66コード,11サブカテゴリ,3カテゴリ【がんと認知症によって引き起こされる複雑な身体・心理的苦痛の緩和】【がんと認知症の併存を有利にとらえた援助】【がん診断・治療が認知症の人にもたらす意味の検討】が明らかとなった.

    結論:老人看護専門看護師は,がんと認知症による影響を複合的にとらえ,患者の認知症に配慮しながらがんによって生じる身体的・心理的苦痛を緩和していた.また,がんと認知症の併存によって医療・福祉サービスがより多く受けられる,病状の予測がより可能になるなど,認知症とがんの併存を有利にとらえ,支援に活かしていた.認知症によって患者の意向が表面化しづらいため,患者にとってのがん診断・治療の意味を家族・支援者とともに検討していた.

  • 西岡 英菜, 川崎 優子
    原稿種別: 原著
    2025 年39 巻 論文ID: 39_10_nishioka
    発行日: 2025/02/20
    公開日: 2025/02/20
    ジャーナル フリー

    目的:同種造血幹細胞移植を施行し,退院後外来フォローとなる若年成人がんサバイバーの移行プロセスを明らかにすることとした.

    方法:同種造血幹細胞移植を20歳代に施行し,退院後長期的にフォローアップをしている20~40歳未満の5名を対象とした.半構成的面接を行い,transitions theoryの概念枠組みに基づき質的帰納的に分析した.

    結果:同種造血幹細胞移植施行後の若年成人がんサバイバーの移行プロセスのタイプは,健康/疾病であり,移植が変化を引き金とし複数の移行が順次起こり,反応パターンに至るまで相互に関連していた.移植を施行した若年成人がんサバイバーの移行プロセスの特徴は,【新たなライフイベントに取り組む】なかで【思い描いていた人生どおりに歩めない葛藤】をいだきながらも【自分の目標に向かって進む】ものであった.心理的側面では,【ポジティブな移植経験の受け止め】と【ネガティブな移植経験の受け止め】の相反する《意味》があり,心理面のコントロールに苦悩していることが明らかとなった.

    考察:移植を施行した若年成人がんサバイバーの移行プロセスは,自らの力で《エンゲイジメント》しようと苦戦し《熟達》に向かうものであり,移行のプロセス全体を支援する必要がある.

  • 芦名 葵, 大野 和美, 小坂 美智代
    原稿種別: 原著
    2025 年39 巻 論文ID: 39_29_ashina
    発行日: 2025/04/07
    公開日: 2025/04/07
    ジャーナル フリー

    目的:就労可能年齢にある進行大腸がん患者の診断時から初回治療開始前における就労に関する体験を明らかにし,がん患者の就労に関する看護支援への示唆を得る.

    方法:がんの診断時に就労している20~60歳までの進行大腸がん患者10名を研究対象者とし,診断時に就労について感じたこと,行動したことなどを,インタビューガイドを用いて半構造化面接を行い質的記述的に分析した.

    結果:就労可能年齢にある進行大腸がん患者の診断時から初回治療開始前の就労に関する体験は,【がんと診断されたことによって困惑する】【現実を認識しながら大腸がんに向き合っていく】【予定されている目の前の治療に向かっていく】【仕事と収入への影響について思い巡らせる】【状況をよく考え,仕事上必要な人に報告と相談の機会をもつ】【がんと診断されても就労の継続を志す】【診断から治療を迎えるまでを通して家族からサポートがあると実感する】などの9つのカテゴリーに集約された.

    考察:就労可能年齢にある進行大腸がん患者は,がんの診断時から自身の仕事について思い巡らせて見通しを立て,仕事上必要な人に報告し,診断されても就労の継続を志していた.就労継続の意思を支えるうえで,看護師からも就労に影響を及ぼす可能性のある治療内容の情報提供や患者の認識の確認を診断時から積極的に行う必要があると示唆された.

  • 平松 貴子, 森本 美智子
    原稿種別: 原著
    2025 年39 巻 論文ID: 39_46_hiramatsu
    発行日: 2025/05/09
    公開日: 2025/05/09
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,初回がん薬物療法を受ける進行期非小細胞肺がん患者のQOLについて縦断的に調査し,QOLの推移や変化を明らかにすることであった.また,治療を継続できた患者と治療途中で死亡に至った患者のベースラインのQOLを比較した.分析対象者はA病院で2021年6月~2023年3月の間に診断を受けた22名で,初回治療の3カ月間,治療開始前を含む4時点でQOLを測定した.QOLには自記式質問紙European Organization for Research and Treatment of Cancer Quality of Life Questionnaire(QLQ-C30)を使用した.初回治療4回を完了できたのは10名で,2回目にC30の[健康度]や[趣味や仕事などの遂行]に改善があるものの,4回目では低下を認めた.完了10名と病状進行のため治療変更した8名を継続群とし,未継続群4名との2群でベースラインのC30を比較したところ,未継続群は[運動機能][趣味や仕事などの遂行]が低く,有意差を認めた.EORTC QOL Groupの参照値と比べても,未継続群の[健康度]や[趣味や仕事などの遂行]は参照値の標準偏差を超えて低かった.これらの結果は,治療3回目に看護支援を強化する必要性や治療前のQOLから臨床経過を予測した支援の必要性を示唆するものであった.

  • 徳永 瑠奈, 林 直子
    原稿種別: 原著
    2025 年39 巻 論文ID: 39_58_tokunaga
    発行日: 2025/05/14
    公開日: 2025/05/14
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,脳腫瘍患者に対するリハビリテーション看護の実践内容や学習ニーズを明らかにすることを目的として実施した.

    方法:脳腫瘍患者に対する看護ケアに関わる看護師15名に対して半構造化面接を実施した.得られた回答をGraneheimとLundmanが示した方法に基づいて内容分析し,脳腫瘍患者に対するリハビリテーション看護の「実践内容」と「学習ニーズ」を抽出した.

    結果:「実践内容」では “看護師が捉える脳腫瘍患者へのケアとしてのリハビリテーション”というテーマ,「学習ニーズ」では“看護師が自覚する脳腫瘍患者へのケアとしてのリハビリテーションの課題”というテーマを生成した.脳腫瘍患者に関わる看護師は,脳腫瘍患者に対するリハビリテーション看護実践を模索しつつ行いながら,脳腫瘍という疾患特異性が反映された学習ニーズをかかえていた.

    考察:今後は,看護師のもつ知識や技術の統合に働きかけるような,学習ニーズに対応した看護教育方法を開発することが必要であると考える.

  • 村上 美華, 国府 浩子
    原稿種別: 原著
    2025 年39 巻 論文ID: 39_68_murakami
    発行日: 2025/07/11
    公開日: 2025/07/11
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,補助化学療法中の初発乳がん患者の倦怠感に対する取り組みを明らかにすることである.補助化学療法を受けている22名の初発乳がん患者を対象に,半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した.

    その結果,倦怠感への取り組みとして,【やるべきことを選り分け今を乗り切る】【体調を見極めながら活動量を調整する】【動くペースを意識して消耗しない方法を見出す】【自分なりの方法で活動を拡げ新たな活力を得る】【回復に合わせた活動ができないことを自覚する】【いつもどおりの生活を維持するために必要な支援を受ける】【思うようにならない状況を1人でかかえ込む】の7カテゴリーが得られた.患者は,倦怠感の変動性に応じて,単にエネルギー消費を抑えるだけではなく,身体に意識を向けてその日の体調を指標に活動の量や質に注意を払い行動していた.また,自分に合った方法を模索しながら活動を拡げていた.

    患者の倦怠感に対する対処能力を高めるためには,生活の支障に応じた活動調整の方法や,患者に合わせた活動の指標を示す看護支援の重要性が示唆された.

  • 温井 由美, 山田 忍, 水田 真由美, 宮井 信行
    原稿種別: 原著
    2025 年39 巻 論文ID: 39_108_nukui
    発行日: 2025/10/27
    公開日: 2025/10/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,緩和ケア病棟の看護師が体験している共感疲労の構成要素と増強要素を明らかにすることである.緩和ケア病棟の看護師10名を対象に半構造化面接を行い,質的帰納的分析を行った.

    緩和ケア病棟の看護師が体験している共感疲労の構成要素として,【勤務外での患者の状態の想起および看護実践の反すう】【共感困難に対する憂鬱】【QOLを重視した看護ができないことの無力感】【自己の看護への自責の念】【患者との関わりへの抵抗】【身体的不調】の6カテゴリが抽出された.共感疲労の増強要素として,【医療者間のケアの方向性の相違による患者の苦痛継続】【患者を尊重した看護実践の苦慮】【過大および過小な共感による患者との適切な心理的距離の維持困難】【緩和ケア病棟の看護実践に対する不全感】【緩和ケア病棟の看護師としての強すぎる使命感】【緩和ケアおよび共感疲労に関連した知識不足】【不十分な人的支援体制】の7カテゴリが抽出された.

    緩和ケア病棟の看護師は,被援助者に共感し苦痛緩和を強く願うことにより,勤務外に患者の状態の想起や自己の看護への自責の念などの共感疲労を体験していた.また,共感疲労の増強要素の1つとして,看護師間の協力不足や相談相手がいないなどの人的支援の不備があげられた.倫理的葛藤や看護のなかで生じた負の感情を話し合える職場環境の整備が共感疲労の予防の1つとして有効である可能性が示唆された.

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