日本クリニカルパス学会誌
Online ISSN : 2436-1046
Print ISSN : 2187-6592
17 巻, 1 号
日本クリニカルパス学会誌 第17巻 第1号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
実践報告
  • 福田 亜紀子, 古川 正隆
    2015 年 17 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     佐世保市立総合病院における前立腺がん地域連携クリニカルパス(以下、パス)は、国の政策とは関係なく長崎県の統一パスに基づいて独自に進め、2013年7月より運用を開始した。

     今回運用を開始したパスは、内分泌療法、前立腺全摘術後、放射線療法後、PSAフォローの4種類である。内分泌療法、前立腺全摘術後、放射線療法後は、一年ごとに計画策定病院である当院の再受診を義務付けた循環型の連携パスである。PSAフォローは、PSA値が一定以上の値に上昇した際に再紹介してもらう非循環型の連携パスとした。

     導入3ヵ月と期間が短い現時点では、バリアンスの発生はなく順調な運用開始といえる。しかし、離島や地域によっては連携先がなく、連携先となる医療施設の確保が十分にできていない現状がある。このため、今後も地域連携の啓発活動を行って連携医療機関の増加を図り、どの地域であっても同じ治療が受けられるよう医療体制を確立していく必要がある。そして、定期的にパス説明会、バリアンスを認めた場合の解析を行い、地域連携パスを改良して円滑な地域連携が図れるよう取り組んでいく。

  • −アンケート調査から−
    田村 尚子, 懸田 可奈子, 高橋 奈美, 藤原 惠美子, 佐藤 光太朗, 北村 道彦
    2015 年 17 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     岩手県立中部病院では2009年4月の開院と同時に電子カルテを導入、同時にクリニカルパス(以下、パス)運用を開始した。今回、患者や家族の意見を参考に患者のニーズに応えたパスへと改善し、患者満足度の向上につなげたいと考えアンケート調査を実施した。

     アンケート調査の結果から大部分の患者が患者用パスを理解され満足されていることがわかったが、自由記載欄には改善を求める意見も多く、医療に対する患者のニーズが高まっていることも改めて感じた。

     患者・家族の意見を聞くことでパスの改善策や病院全体で取り組んでいかなければならない課題を見いだすことができ、患者のニーズに応えるために多職種で連携していくことの大切さを再確認することができた。

  • −片側人工膝関節全置換術パスでの試み−
    清水 秀美, 勝尾 信一, 角 奈央子, 吹矢 三恵子, 坂下 香苗, 恩地 英年, 中川 美絵, 片岡 亜季子
    2015 年 17 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     片側人工膝関節全置換術パス(以下、TKAパス)の適応期間の見直しを検討するためにアウトカム評価を実施し、在院日数に関わる因子を抽出した。また、電子カルテ上にて各アウトカム結果を自動的に抽出できる新手法を開発した。

     アウトカム評価の対象は、平成25年1月~6月に退院し、TKAパスを使用した症例20例とした。20例の在院日数の中央値35日を基準に35日以内を早期群、36日以降を遅延群とした。統計処理は、χ2 検定にて比較し有意水準は5%未満とした。また今回、TKAパスを用いて、従来どおり手作業にてアウトカム評価を行ったものと、電子カルテシステムに蓄積されたデータを、ツールを用いて抽出する新手法で行ったものと、データ収集にかかる時間を比較した。

     アウトカム評価の結果は、杖歩行自立、階段昇降自立の項目において早期群では達成している症例が有意に多かった。作業効率の結果は、手作業で行ったアウトカム評価は1,370分要し、新手法で行った場合では10分程度で行うことができた。

     TKAパスの適応期間を短縮し、アウトカム項目および設定日を見直す必要がある。杖歩行・階段昇降自立をクリティカルインディケーターととらえ早期獲得を目指していきたい。また、新手法導入によりアウトカム評価を短時間でできるようになった。

  • 金森(瀬谷) 裕貴子, 中川 晴夫
    2015 年 17 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     早期前立腺がんで前立腺全摘除術が施行された症例の多くは長期予後が良好なため、泌尿器科非専門医であっても定期的なPSA(Prostate Specific Antigen)値測定による経過観察が可能である。今回、前立腺がん全摘除術後の経過観察に用いる地域連携クリニカルパス(以下、前立腺がんパス)を作成し、前立腺がんの地域連携の現状と課題について検討した。宮城県内一部地域の医師会会員を対象に、あらかじめ前立腺がんパスの原案を示したうえで構成的質問紙法およびリッカートスケールを用いたアンケート調査を実施した。設問は前立腺がんパス、5大がん地域連携クリニカルパス(5大がんパス)、地域連携診療の体制および地域連携パスの課題に関する20項目から構成した。前立腺がんパスの印象は「判断に迷った時、専門医に相談しやすい」「開業医の役割が明確だ」が上位を占めた。また、前立腺がんパスを用いた場合、82%の医療機関が前立腺がん患者の対応が可能と回答した。さらに、調査結果をもとに宮城県の地域医療機関を対象とした学術講演会を開催し、国際的に標準化されたPSA値による前立腺がん再発の基準を取り入れ、開業医の要望に沿った前立腺がんパスの普及に努めた。地域における前立腺がんパスの導入は可能であり、専門医・非専門医の役割を明確に示すことで、非専門医の受け入れが容易になることが示唆された。地域医療機関の要望を反映した前立腺がんパスの作成により、泌尿器科専門医と非専門医間での診療連携体制の向上が期待できる。

  • 高田 悠, 上谷 道子, 梶山 幸恵, 小池 隆志
    2015 年 17 巻 1 号 p. 30-36
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     小児科はクリニカルパス(以下、パス)導入が他科に比べて遅れている分野である。特に、新生児疾患は病態に動きが多いことからパス導入が困難と考えられている。当院は分娩件数が月平均60件と多く、低出生体重児や早産児も多くみられる。そこで低出生体重児・早産児クリニカルパスを作成し、その有効性について検討した。適応基準は出生体重2,500g未満、在胎週数35週以上37週未満として、積極的治療が必要とならない新生児を対象とし、観察の標準化と早期のケア介入を目的とした。観察項目は新生児に起こりうる病態に対応できるものを設定し、それぞれに評価基準を設けて標準化を図ることができるパスを作成した。2011年9月から2013年9月までで113例がパスを使用した。スタッフアンケートによる有効性検討により、医療者の観察の標準化とケア介入の標準化が行えたことが確認できた。また、看護記録時間や時間外勤務の短縮効果も確認できた。バリアンス件数は25件みられたが、うち16件は対応可能なバリアンスでパスの変動であった。残りの9件はパス逸脱となったが、早期に異常を発見でき、適切な治療介入が行うことができた。今回のパスの成功により新生児でもパスを活用することが可能であると思われ、今後は新生児呼吸障害など病的新生児に対するパスを作成することも可能と考えられる。

セミナー報告(2014年教育セミナー:大阪)クリニカルパスを役立てよう!広めよう!〜実践ノウハウ
サマリー(第15回学術集会)シンポジウム2
サマリー(第15回学術集会)シンポジウム3
サマリー(第15回学術集会)シンポジウム7
サマリー(第15回学術集会)パネルディスカッション3
サマリー(第15回学術集会)パネルディスカッション4
サマリー(第15回学術集会)パネルディスカッション5
サマリー(第15回学術集会)パネルディスカッション6
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