はじめに:下肢静脈瘤は治療経過におけるバリアンスが少なくクリニカルパス(以下、パス)導入による治療の標準化を図りやすい疾患である。当院では2012年4月に下肢静脈瘤手術1泊2日入院パスを導入した。院内パス大会でDPCに対する出来高の評価を行い、短期滞在手術等基本料の導入に向け、パスの見直しを行った。
概要:当院はDPC機能評価係数Ⅱで、下肢静脈瘤手術のDPC点数は2,339点(1~2日)であった。代表症例の出来高193,560円に対しDPC 172,898円で、出来高が20,662円上回っていた。パス運用開始後の経験から不要な検査と薬剤をパスから削除した。血液検査を中止し処方薬は抗生剤と鎮痛剤のみとした。注射薬は出来高算定可能な手術中のみ使用した。総合評価加算と薬剤管理指導を徹底した。その結果、代表症例の出来高186,225円に対しDPC 176,879円で、依然として出来高が9,346円上回っていた。
考察:パス大会での評価を受けパスを効率化したが、出来高合計は依然DPCを上回っていた。当院のようなDPC病院では下肢静脈瘤手術は包括点数が低く、バリアンスのない最小限の医療でも病院経営に不利となる可能性があった。2014年4月の診療報酬改定により短期滞在手術基本料3(273,110円)で算定されるようになり、病院経営を圧迫しない構造となった。
結論:DPC病院において包括点数の低い下肢静脈瘤手術はパスによる標準化を行っても出来高がDPCを上回っていた。短期滞在手術等基本料により収益構造となり、入院期間の延長や薬剤追加などバリアンスへの対応が柔軟となった。
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