日本クリニカルパス学会誌
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17 巻, 2 号
日本クリニカルパス学会誌 第17巻 第2号
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研究報告
  • 宮崎 美子, 池田 豊, 美間 由紀, 濃沼 政美
    2015 年 17 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     誤嚥性肺炎は治療に難航するケースが多い。我々は誤嚥性肺炎治療におけるより的確な治療アプローチへのヒントを得るための探索的調査を行った。イムス(IMS)グループ14施設のDPC様式1データ(2011年1月~2012年3月)より、誤嚥性肺炎による入院症例(1,143例)を抽出した。解析用データテーブルを作成し、患者属性、入院時併存症、肺炎重症度判定A-DROPシステムによる重症度指標を集計した。次いで誤嚥性肺炎の入院後の転帰に関連する因子ならびに関連度について多変量解析および決定木分析を行い、誤嚥性肺炎患者の入院時の重症度判定指標と退院時転帰の関係を明らかにしたところ、重症度判定指標と退院時転帰の間には一定の関係が認められた。

実践報告
  • 浦川 隆司, 山田 浩二
    2015 年 17 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    目的:急性期リハビリテーションでは早期離床により廃用症候群、合併症を予防していくことが求められている。当院では脳梗塞患者に対しクリニカルパスを用いた段階的離床を実施している。そこで離床遅延が在院日数に及ぼす影響について検討した。

    方法:2012年に脳梗塞クリニカルパス連携コースを使用し段階的離床を実施した284例を対象とした。端坐位を30分以上実施した日を離床開始日とし、早期離床の現状と離床遅延例の特徴、在院日数延長要因について検討した。

    結果:284例中、離床遅延例は82例(28.9%)であった。在院日数は16.1±8.4日であり、非遅延202例の在院日数13.0±7.0日より有意に延長していた(p<0.01)。遅延要因は、離床前の要因として全身状態不良31例、症状変動19例、離床時の要因として血圧変動21例、自覚症状1例、その他15例であった。在院日数延長の要因については、合併症、症状進行が影響していた。

    考察:離床遅延は在院日数延長をもたらし、在院日数延長には合併症と症状進行が影響していた。つまり、離床遅延は在院日数延長に影響を及ぼすクリティカルインディケーターとなる可能性が示唆された。

  • 下村 裕見子, 大石 智, 廣岡 孝陽, 高橋 恵, 宮岡 等
    2015 年 17 巻 2 号 p. 116-122
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     歯科医が認知症に関する知識や歯科治療を行ううえで困難と感じている項目を抽出し、その背景要因を明らかにする探索的研究を行うことを目的に、相模原市内の歯科医療機関345ヵ所を対象に質問紙調査を行った。アンケートの回収数は102通、回収率は29.6%であった。

     本調査において認知症に関して相談を受けたことがある歯科医は40%、認知症患者の歯科診療をしている歯科医は60%だった。また歯科医にとって認知症に関する相談を受けることや認知症患者を歯科医として診療する経験は、認知症に関する知識を習得することへの動機付けとなり、認知症患者への助言・対応が不安なくできていることに繋がっていると推測された。困った時にかかりつけ医・専門医(病院医師)に相談できることが、歯科医が認知症患者を診察するうえでの一助になっていたが、歯科医は認知症に関する病状や受療状況等を聴取することができておらず情報共有に課題を認めた。

     一方で、歯科医は患者家族、かかりつけ医、専門医(病院医師)、保険薬局薬剤師等に口腔ケアの重要性が認知されていないと感じていた。また、歯科医自身も認知症に関する知識不足を認識しており、双方に研修の必要がある。

     顔の見える関係の構築と情報共有が喫緊の課題であり、認知症地域連携クリニカルパスを活用していくことが解決の一助になると考えられた。

  • 杉野 安輝, 加藤 早紀, 滝 俊一, 奥村 隼也, 三田 亮, 大田 亜希子, 髙木 康之, 柴田 悦子, 中林 敏, 岡本 泰岳
    2015 年 17 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     当科では2005年4月からユニット式の肺炎電子化クリニカルパス(以下、パス)を導入し、肺炎入院診療を行ってきた。パスは市中肺炎4種類と誤嚥性肺炎3種類で、パスに設定した抗菌薬以外に担当医が抗菌薬を選択できる抗菌薬選択用パスも運用した。2012年1月からの2年間に肺炎パスを適用した265例を対象に、パスの内訳と抗菌薬の使用実績について検討した。パス適用率は市中肺炎パス(Ceftriaxone+Azithromycin-SR(AZM-SR))が33%と最多であったが、抗菌薬選択用パスが市中肺炎で27%、誤嚥性肺炎で9%と合わせて36%に適用されていた。抗菌薬選択用パスでは、海外のエビデンスを意識したAZM併用療法や日本の医療・介護関連肺炎診療ガイドラインを反映したTazobactam/Piperacillin(TAZ/PIPC)治療が選択されている症例が増加していた。市中肺炎の非定型肺炎パス(Minocycline)は、非定型肺炎の迅速診断が困難なため、パスの適用症例がなかった。今回の分析結果に基づき、AZM-SR併用療法とTAZ/PIPCをパス抗菌薬に組み込み、非定型肺炎パスを廃止した。また、耐性菌リスク因子の評価ツールを新たに導入し、パス診療フローチャートを改訂した。パスの現状分析によりパスの課題が抽出され、パス抗菌薬の標準化やパス運用の見直しにつながった。

  • −医師、看護師へのアンケートおよび患者インタビュー調査から−
    鈴木 恵美子
    2015 年 17 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     神奈川県立精神医療センターせりがや病院では、アルコール依存症教育入院の患者に対し、クリニカルパス(以下、パス)を導入した。今後のパス改善の示唆を得るため、医師・看護師へのアンケート、患者インタビューを実施したため報告する。

     医師・看護師へのアンケートでは、医療者用パスが患者の現在の状態や治療段階を把握しやすくし、患者理解に役立っていることがわかった。患者へのインタビューでは、パスは治療段階を理解するのに役立てられ、不安を取り除くこともあったとされた。しかし、パスの使用で明確に治療意欲が変化したり、主体的に臨めるようになったかという点はわからなかった。依存症治療は、治療プログラムの進行と本人の回復が同時進行するとは限らず、病識や社会環境などによっても病状が変わるため、個別的なケアが必須となる。パスを導入し、ARP参加などのチェックを簡便化することで、個別ケアをより重視した看護が行えるよう期待したい。

  • 小西 康信, 宮本 征弥, 山本 靖子, 中西 寛子, 小山 忠明, 坂井 信幸
    2015 年 17 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    はじめに:下肢静脈瘤は治療経過におけるバリアンスが少なくクリニカルパス(以下、パス)導入による治療の標準化を図りやすい疾患である。当院では2012年4月に下肢静脈瘤手術1泊2日入院パスを導入した。院内パス大会でDPCに対する出来高の評価を行い、短期滞在手術等基本料の導入に向け、パスの見直しを行った。

    概要:当院はDPC機能評価係数Ⅱで、下肢静脈瘤手術のDPC点数は2,339点(1~2日)であった。代表症例の出来高193,560円に対しDPC 172,898円で、出来高が20,662円上回っていた。パス運用開始後の経験から不要な検査と薬剤をパスから削除した。血液検査を中止し処方薬は抗生剤と鎮痛剤のみとした。注射薬は出来高算定可能な手術中のみ使用した。総合評価加算と薬剤管理指導を徹底した。その結果、代表症例の出来高186,225円に対しDPC 176,879円で、依然として出来高が9,346円上回っていた。

    考察:パス大会での評価を受けパスを効率化したが、出来高合計は依然DPCを上回っていた。当院のようなDPC病院では下肢静脈瘤手術は包括点数が低く、バリアンスのない最小限の医療でも病院経営に不利となる可能性があった。2014年4月の診療報酬改定により短期滞在手術基本料3(273,110円)で算定されるようになり、病院経営を圧迫しない構造となった。

    結論:DPC病院において包括点数の低い下肢静脈瘤手術はパスによる標準化を行っても出来高がDPCを上回っていた。短期滞在手術等基本料により収益構造となり、入院期間の延長や薬剤追加などバリアンスへの対応が柔軟となった。

  • 小田切 範晃, 宮本 剛士, 五味 卓, 宇根 範和, 井出 大志, 加藤 博樹, 山田 豊, 平野 龍亮, 吉福 清二郎, 三澤 賢治, ...
    2015 年 17 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    対象・方法:2011年11月から2013年12月に胃癌、結腸癌、直腸癌に対して予定手術が施行された400例を対象に、術後尿閉のリスク因子について統計学的に検討を行い、その結果に基づいてクリニカルパス(以下、パス)の改訂を行った。パス改訂後の100例について尿閉頻度などを集計し、パス改訂前の症例と比較、検討を行った。

    結果:術後尿閉を来した症例は43例(10.8%)であった。単変量解析、ロジスティック回帰分析では後期高齢者、硬膜外麻酔が有意なリスク因子であった。硬膜外麻酔が施行されて尿閉を来した症例は全例硬膜外カテーテル留置下で尿道カテーテルが抜去されていた。

    パスの改訂:硬膜外カテーテル留置下での尿道カテーテル抜去が術後尿閉の主因と考えられたため、主治医の指示で術後1〜3病日のいずれかの朝に硬膜外カテーテルを抜去し、その3時間以降に尿道カテーテル抜去の方針とした。

    パス改訂後の結果:パス改訂後の100例の中で術後尿閉を来した症例は1例(1%)のみであった。硬膜外カテーテルは中央値術後2病日(最小1 〜最大3)と改訂前より有意に早期に抜去されていたが、NRS(Numerical Rating Scale)による疼痛評価ではパス改訂前後で統計学的に有意な差は認められなかった。

    まとめ:硬膜外カテーテル、尿道カテーテルの抜去時期の変更のみで、疼痛の増悪を伴わずに術後尿閉を著明に減少させることが可能であった。

  • 渡邊 美由紀, 石塚 正人, 山田 真由美, 田子 みゆき
    2015 年 17 巻 2 号 p. 148-154
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     当院では2000年に人工膝関節置換術パス(以下、TKAパス)を作成し、三度の改訂を経て現在に至っている。四度目のクリニカルパス(以下、パス)改訂にあたり、TKAパスを使用している医師・看護師・リハビリテーションスタッフ全員の意見をアンケートにより収集し、KJ法を用いて問題点を整理するとともに、過去5年間にTKAパスを使用した348症例についてバリアンス分析を行った。

     収集した意見を検討した結果、情報共有が不十分である、評価が不足している、適切に運用されていない、患者用パスがわかりにくいなどの問題点があげられた。また、医師からは人工膝関節置換術施行全症例でのパス使用について要望があった。バリアンス分析では、退院調整の遅れや適応基準が守られていないなどの問題が明らかとなった。

     改訂では、全例にパスを使用するため、患者状態に応じて歩行獲得目標を個別に設定し、退院基準を変更することで全例に適応させた。情報共有を強化し、評価を確実に実施するため、中間目標ごとのADL・歩行状態と、医師の評価欄を設けたオーバービューシートを新設した。さらに退院調整を円滑に行うため、術前の生活状況と退院調整の進捗状況欄を設けた。患者用パスをわかりやすくするため、中間目標ごとに患者目標を明記した日めくり形式のパスに変更した。適切に運用するために運用マニュアルを作成した。

  • 下條 隆, 永田 裕子, 野村 小夜子, 小嵜 まゆみ
    2015 年 17 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    目的:当院のクリニカルパス(以下、パス)委員会の活動はこれまで、カルテの電子化、認定基準の厳格化等により、新規パス申請数は減少し、使用率も伸び悩み、分析・評価も不十分な状態となっていた。このため我々は、ファシリテーションの手法を用いることで、パス活動の活性化・推進を目指した。

    方法:まずパス委員会でブレインストーミングを行い、パス活動の阻害要因・推進要因を議論し、パス活動のフォースフィールド分析を行った。その後、委員会の活動方針を決定し、各部署でのパス活動のゴールツリーを作成し、活動予定を3W1Hにまとめた。活動内容は部署ごとに週単位で検討することとし、ダッシュボードとしての進捗状況表を作成し、それに記入することでそれぞれの活動がリアルタイムに確認できるようにした。毎月行うパス委員会で、各部署の1ヵ月間の活動内容をグループ単位で発表しあい、互いにディスカッションする場を設けた。

    結果:ファシリテーションによるパス活動を導入後、毎月の委員会でのメンバー同志の議論が活発化し、パスの申請数・認定数は徐々に増加し、使用数の上昇につながった。以上より、院内パス活動の活性化に、ファシリテーションスキルは有用であると考えた。

    考察:ファシリテーションは、ともすれば会議の司会・進行役とのみ認識されがちだが、ファシリテーションスキルを応用することで、パス活動の活性化を図ることができた。

  • 仲田 紀彦, 侭田 敏且, 早坂 豪, 栗本 久嗣, 橘 知子, 井上 純羽, 宮﨑 華子, 熊谷 幸恵
    2015 年 17 巻 2 号 p. 161-165
    発行日: 2015/06/10
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

     2009年12月以降電子クリニカルパスを適応し棘突起縦割法頸椎椎弓形成術の周術期医療を進めてきた。これまで2回バリアンス分析を経たクリニカルパス(以下、パス)の改訂を行った。2009年12月から2014年5月までに施行した128例を適応したパス別に3群に分けて、アウトカムおよび術後在院日数についてバリアンス分析を行ったところ、長い入院期間を対象とするパスを円滑に運用するためのポイントが明らかとなった。待機的な手術である頸椎椎弓形成術では、術前全身評価に時間的ゆとりがあるため、合併症のコントロールを良好に行えば設定したアウトカムに対するバリアンスが生じにくい一方、術後在院日数をアウトカムとした場合、患者と患者家族の希望や都合が負のバリアンスの3/4を占め、この因子の減少が課題であった。2012年12月の2回目の改訂の折に運用方法を変更し、術前から退院基準および退院予定日を明確化するなどの患者教育の充実と術後早期からの退院後生活指導を行うことにした後、術後在院日数延長に大きく関与した患者と患者家族の希望や都合による負のバリアンスを減らすことができた。2週間を超える長い期間を対象とするパスの円滑な運用には、周術期合併症・併発症を未然に防ぐための術前身体検査および既往症に対する患者教育の充実、術後経過に応じた患者ごとへの個別対応、さらに患者とその家族の疾患および治療経過の理解への術前からの配慮が重要である。

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